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カレンが語らなかった本当の気持ち (ハロー!!きんいろモザイク:第七話考察)

2015.05.31 17:05|きんいろモザイク
今回は、『ハロー!!きんいろモザイク』第七話について考えます。
第七話の物語は、カレンが家出して忍の家に泊まる話(第三巻95ページから)と、
カレンが幼少期の思い出を皆に語る話(第四巻103ページから)で主に成り立っていました。
その他、カレンが母親のことを話す部分など、少し他の話(第四巻55ページから)も含んでいます。
この記事で注目するのは、カレンが幼少期の思い出を皆に語る話において、
原作から細かいアレンジが加えられていることです。

このアレンジがどのようなもので、どのような意味を持っているかを考えます。

それでは、第七話における原作からのアレンジについて考えていきます。
第七話の原作からの興味深いアレンジは、カレンの過去語りの締めである、
意外と猪突猛進で本当に日本に行ってしまったアリスに対して、
私も人のこと言えないかもデスと言う場面について、
カレンはその台詞を言ったのではなく思っただけであると明確に示していたことです。
この場面について、まずは確認しておきましょう。

「そうしてアリスは私に何も告げずに一人日本へ旅立つのデス」
「それはっ だってカレンずっと旅行中だったでしょ!」
「アリスは意外と猪突猛進デス」

でも 私も 人のこと言えないかもデス!」 (第四巻115-116ページ)


原作だと下線を引いたカレンの台詞は、吹き出しの中に書いてあるので、
皆に話していた延長で、そのことも話していたとも読めるのですが、
アニメでは明らかに話していないんですよね。

言い出しの「でも」のところで、カレンの口は動いていない。
カレンは忍のことを想って日本へと飛んでいったアリスと同じく、自分もまた猪突猛進なことに、
アリスのことを想って日本へとやってきたことをアリスたちに語らなかったのです。
カレンはアニメでは密かにそれを思うだけになっています。

ここで、カレンが自分もアリスを追って日本へとやってきたことを、
みんなに言わなかったのは、二期一話で、忍がアリスをきっかけとして、
本気で通訳者を目指し始めたことを言わなかったことに相当するものであったと思います。
二人とも、アリスがきっかけとなったということを秘密にしているのです。

つまり、二期七話でカレンは、アリスをきっかけとして日本語を本気で学び、
日本へとやってきたことをあの場で言わず、二期一話で忍は、
アリスをきっかけとして本気で通訳者を目指し始めたことをあの場で言いませんでした。
そしてこの二人の場合、黙していたことは意味があったと考えられます。

というのも、忍もカレンも、いつも割と率直であって、
アリスへの好意を表現している方なのにもかかわらず、
二人ともアリスがきっかけになったことについて、同じく黙っていた訳です。
これは、例えば綾がはっきりと素直に気持ちを伝えた場合と同等の意味があると思います。

つまり、綾が率直に伝えた自分の気持ちというのは、
彼女が普段それを伝え(られ)ないからこそ、
「それだけ綾が伝えたかった気持ち」としての意味を持っています。
綾は敢えて語ったときに、その語られた気持ちの強さが現れるのです。
次に掲げる場面は、綾が敢えて語った一例と言えるでしょう。
アリスがペットを恋しく思う話の末尾です。

「でも 私 ペットは必要ないわ」
「何で?」
ペットがいなくてもみんながいるし 陽子がいるもの
 それじゃあ!!」
――えっ 今のどういう意味? 私ペットってこと? (第三巻92ページ、二期三話)


綾は、みんなが一緒にいてくれることをとても大切に考えていて、
これについては「はずかしい」と思っても、結構率直に伝えるんですよね。
ここの他に、第五巻の最後には、次のような場面があります。

「でも お金で買えない価値てあると思うんです
 今私があげたのは「友情という絆」です
 これからもいい友達でいてほしいという気持ち… ハートを載せました」(中略)
ありがとう しの」 (第五巻112ページ)


それと同様に、忍やカレンが敢えて語らなかった自分の気持ちというのは、
二人が普段自分の気持ちを率直に伝える性質だからこそ、
「二人でも相手に秘めようと思うほどの、強い本当の気持ち」として現れてくると思うんですよね。
忍については二期一話の、ホームステイでアリスと出会って本気で通訳者になろうと思ったこと、
カレンについては二期七話の、アリスを追って日本へとやってきたこと。
ここに現れているアリスへの強い気持ちは、二人が秘めるほどに本物であったのです。

結論として、第七話においては、カレンがアリスをきっかけに、
自分も日本までやってきたことを言わなかった点が改変されていました。
通常自分の気持ちを率直に伝えるカレンが黙して語らなかったことにより、
その言葉の中に表れているアリスへの気持ちが、
如何に強く本物であったかということが表現されていたと思います。


テーマ:きんいろモザイク
ジャンル:アニメ・コミック

勇のスランプの話における二つのアレンジ ――忍とみんなの二方向の強調 (ハロー!!きんいろモザイク:第五話考察)

2015.05.24 14:53|きんいろモザイク
今回は、先日放送された『きんいろモザイク』第五話について考えます。
第五話の物語は、原作で言えば第四巻のうちの物語で、
勇がスランプに陥ってしまう話(第四巻39ページから)と、
アリスがわらしべ長者を目指して物々交換をしていく話(第四巻47ページから)でした。
アニメ一期の第五話はサブタイトル「おねえちゃんといっしょ」で、
勇をピックアップした一話となっていましたが、
今回二期も第五話で勇が中心となる話が入れられています。

この記事で注目するのは、勇のスランプの話における、原作からのアレンジです。
勇のスランプの話は、アニメでアレンジが加えられています。
そして、このアレンジの加え方が非常に特徴的であると思います。
大きなアレンジとしては二つあるのですが、
この二つは、ある意味で真逆の方向へのアレンジと言えるものです。
今回はここに注目することで、勇と忍たちの関係が、
どのようなものとして提示されているかを読み取っていければと思います。

それでは、物語中で際立つ大きな二つのアレンジに注目していきます。
まず、第一のアレンジは、原作では勇が皆との息抜きの中で、
いつしか復活したことになっていたのに対し、
アニメでは旅行代理店の場面で忍をきっかけに復活していることです。

原作とアニメ、それぞれのこの場面を確認してみましょう。

まず原作では、みんなとの息抜きを通していつの間にか立ち直っています。
何か具体的なきっかけがあって、復活したという風に描かれてはいません(第四巻44ページ)。
対してアニメでは、大量の旅行パンフレットを手に取り、
危うく転びそうになった忍を受け止めたことをきっかけに立ち直っています。

「大丈夫、です。これで、しばらくの間、旅に出放題です! ああっ」
「シノ!」
「忍!」

「あっ、おねえちゃん」
「もう、危ないじゃない。お店に迷惑よ。全部返してきなさい」
「は、はい!」
まったくもう。ダメね、忍は。私がちゃんとついてないと
「イサミ!」
「いつもの勇姉の顔だ」
「さすがシノです!」

「お姉ちゃん……!」
「さあ、まだまだいっぱい遊ぶわよ」 (二期第五話)


次に第二のアレンジは、原作では勇が忍に対して「ありがとね」と言っていたのに対し、
アニメでは皆に対してそう言っていたことです。

同じくそれぞれのこの場面確認してみましょう。
まず原作では、勇は忍と二人きりになったときに忍にお礼を言っています。

忍 今日は…ありがとね
「ベ…ベリーマッチ!」
「その返事 間違ってるわよ」 (第四巻44ページ)


対してアニメでは、忍だけでなくみんなに対してお礼を言っています。

忍、アリス、綾ちゃん、陽子ちゃん、カレンちゃん。
 今日は…ありがとね、楽しかったわ
「お姉ちゃん……! ベ…ベリーマッチ!」
「その返事、間違ってるわよ」 (二期第五話)


この中で興味深いのは、第一のアレンジにおいては、
勇にとって忍の存在が大切であることが強調されているのですが、
第二のアレンジにおいては、勇にとっては忍だけでなく、
みんなが大切であることが強調されていることです。
この意味において、二つのアレンジは真逆の方向に進むアレンジと言えます。

つまり、片や勇の中の「忍を特別化する」アレンジになっていて、
片や勇の中の「忍を相対化する」アレンジとなっているのです。
私はこのバランスが、非常に『きんいろモザイク』らしいものであると思います。
特に重要な誰かとの関係があるのだけど、
同時に皆との関係も重要なのだということを描いているのです。

以前一期のときに申し上げましたが、『きんいろモザイク』という作品においては、
忍とアリスとか、陽子と綾とか、特に際立った二人の関係が強調されもするのですが、
それはみんなとの関係と全く対立せずに、むしろその中において存在しています。
みんなとの関係から離れたところに、二人の関係を配置しないのです。

今回の勇のスランプに係る話についてのアレンジについても、
こうした作品の作ってきた轍の上を行くものであったと思います。
一方で、勇にとっての忍の大切さを描きながら、
同時に他方で、勇にとってのみんなの大切さを描いていることを強調するような、
ある意味で真逆の方向へ向かう二つのアレンジ。

それは、際立った二人の関係を描きながら、
それをみんなの関係と全く対立させない、
作品の特色をよく示すものであったのではないでしょうか。


テーマ:きんいろモザイク
ジャンル:アニメ・コミック

姉妹や恋人のようで (原悠衣『きんいろモザイク』)

2013.11.24 12:58|きんいろモザイク
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(2013/09/27)
原 悠衣

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前回の記事では、忍とアリスの関係について、四巻の内容を肴にして考えてみましたが、
今回の記事では「陽子と綾の関係」について、既刊の内容を踏まえて考えていきます。
とりわけ、陽子と綾は自分たちの関係をどのように捉えているのでしょうか。
二人の関係について、今改めて考えてみることにしましょう。



○陽子と綾の関係:姉妹や恋人のようで


まず、陽子と綾の関係は「姉妹」「恋人」に近いものとして提示されることがあります。
すなわち、空太と美月、二人の姉である陽子は、綾を「妹」に重ねて考え、
恋愛乙女である綾は、綾と陽子を「恋人」に重ねて考えるのです。
陽子は実際に姉であることから、綾は恋愛に憧れる少女であることから、
自分たち二人の関係も「姉妹」や「恋人」という枠組みを使って捉えようとします。
実際に、そう考えられている場面を引用してみましょう。

「いいかげん機嫌直しなよー」
「べ 別に怒ってないわ」
「ケーキおごるからさ!」
「!」
――ケーキ…
綾みたいな妹ならかわいいのになー
「いもうと…?」
「私 何か変なこと言った!?」 (2巻99ページ)


ここで陽子は、自分と綾の関係を「姉妹」の枠に収めて考えてみています。
それに対して綾は、自分たちの関係を「恋人」の枠に収めて考えます。

「お昼ですが早弁したのでお弁当がありません
 からあげ一個ちょーだい?」
「しょーがないわね…」
――は…っ
「あ… あーあー」
「え!? 何っ」 (2巻25ページ)


ここで綾はバカップルの姿を見て、自分も陽子に「あーん」を試みています。
綾が、自分と陽子の関係を「恋人」の延長で捉えようとしていることが分かる場面です。

このように陽子と綾の関係は、主観の上で「姉妹」、「恋人」に近いものとして提示されています。
つまり、陽子にとっては「姉妹」に、綾にとっては「恋人」に重ねて考えられるような関係なのです。
しかし重要なのは、一方で二人が自分たちの関係を「姉妹」や「恋人」の延長で捉えながら、
他方でそれらの関係とは違ったものとしても捉えているということです。

それぞれの典型的な関係に、二人の関係はすんなりと収まるわけではありません。

第一に、陽子は実際に姉であるために、綾を妹のような存在として見ようとする一方で、
自分の実の妹とは異なる「一番」としても考えています。
陽子にラブレターが届けられた話の、次の場面での言葉に注目しましょう。

「手紙は嬉しいけど最初から断る気でいるよ」
「どうして!?」
相手が誰であっても綾の方が好きだからさ!」 (1巻101ページ)


ここで綾は「妹」のイメージの下で捉えられていません。
ラブレターの申し出を受けることで、その人と「恋人」になることは、
「妹」と両立するはずですが、陽子は誰であっても綾のために断ると言っています。
綾が「妹」に留まらない「一番」なので、ラブレターの申し出は受けられないのです。
ここでは「姉妹」という枠組みが先にあり、それに関係を当てはめているのではありません。
「姉妹」という言葉では回収できない、二人の関係が浮かび上がっています。

第二に、綾は恋愛に憧れているために、陽子を恋人として見ようとする一方で、
「恋人」のイメージの典型である、「白馬の王子様」ではないとも考えています。
忍が物語の才能を発揮する話で、綾も身近な人で色々と想像します。

「綾のことだから白馬の王子様とか?」
「そんなんじゃないわ ロバよ! 茶色の!!」
「ロバ!?」
陽子に白馬なんて似合わないわ
「私なんだ?」 (2巻105ページ)


ここで綾は、「白雪姫」のような「恋愛もの」に憧れている(2巻16ページ)にもかかわらず、
その中での「恋人」の典型的イメージである「白馬の王子様」の下で陽子を捉えていません。
同じような役割ではあるものの、乗っているのはあくまでロバです。
ここでもやはり、「恋人」という枠組みが先にあるのではありません。
むしろ陽子が先にいて、それに合わせて枠組みの方が変質しています。

こうした場面に表れているのは、陽子も綾も、
自分にとって身近な「姉妹」、「恋人」という典型的な関係に、
自分たち二人の関係を重ねて考えているだけではないということです。
一方で「姉妹」や「恋人」のような関係として捉えられていく二人の関係は、
他方でその「典型的な関係」であることを否定されています。

換言すれば、陽子は綾を「家族」のように、綾は陽子を「恋人」のように大事にしながら、
その枠に留まらない「綾」としても、「陽子」としても、大切にしているのです。

二人の関係は「姉妹」や「恋人」のような関係として提示されながら、
それでいて同時に、それらと等しくはないものとして提示されています。
そうした典型的な関係であることを否定したところに、「陽子と綾の関係」はあるのです。


テーマ:きんいろモザイク
ジャンル:アニメ・コミック

お互いがキッカケとなって (原悠衣『きんいろモザイク』)

2013.11.03 11:42|きんいろモザイク
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本日は『きんいろモザイク』四巻の紹介も兼ねて、忍とアリスの関係を考えます。
四巻に収録された話というのは一つもアニメにはなっていませんが、
忍とアリスの関係を考える上で極めて重要な新事実が提示されています。
今回は特にその部分を取り上げ、二人の関係を改めて考えていきたいと思います。

原作を読み込んでいる方も、アニメから興味を持ったという方も、
少しの間だけお付き合いいただければ幸いです。



○忍とアリスの関係:お互いにお互いがキッカケとなって


二人の関係を考えるに当たり重要な事実が提示されたのは、
シノ部の一員としてアリスが、一見何を考えているか分かりにくい忍を調査する回です。
忍を除いたメンバーで、改めて色々と忍について考えていると、
やがて「どうしてホームステイに行こうと思ったのか」という話に行き当たります。

「外国によりハマったのはホームステイからだと思うけれど
 そもそもどうしてホームステイに行きたいと思ったのかしら」
「それは~ 駅で困ってる外国人のお婆ちゃんに出会ったからですよー」

「「「わぁーっ」」」

「何だか今日はみんなコソコソしてますね?
 私も仲間に入れてほしいです…」
「ごめんねシノ!!」

あれは私が小学生の頃 道に迷ってるお婆ちゃんがいて
私は話しかけたのですが言葉が全然分からなくて…
困っていた時に英語ペラペラなお姉さんが助けて下さいました

それ以来私も言葉で人を繋ぐ人になれたらと思ったんです」 (4巻37ページ)


ここで忍がホームステイに行こうと考えた契機が提示されています。
しかしより重要なのは、アリスと出会えたホームステイの影響が示されるこの後の部分です。

でも通訳者になろうと本当に決心したのは
アリスと出会えたホームステイがキッカケだったんですよ

「ふふっ」
「何?」
「何でもありませんよ~」 (4巻38ページ)


忍が通訳者になろうと決心した最も大きなきっかけとして、ホームステイは挙げられています。
元々忍の中にあった外国への関心や、言葉で人を繋ぐ人になりたいという気持ちを、
アリスと出会ったことがさらに「加速」させて、現在の忍に繋がっているわけです。

これは、忍との出会いがアリスに与えた影響とほとんど同じと考えられます。

アニメ一話によれば、アリスは福笑いや花札を元々知っていたので、
忍と会う以前から日本にそれなりに興味があったと推測できます。
しかし、実際に日本に行きたいと考え始めて、
日本語を勉強するようになったのは、忍のホームステイを経た後でした。
忍と会って興味が「加速」し、留学するまでに至ったと言えます。
これは、忍がアリスとの出会いから受けた影響と変わりません。
お互いに相手との交流を経て、元々あった自分の関心が加速した結果、
アリスは日本に留学しようと決意し、忍は通訳者になろうと決心したのです。

これまでの話では、アリスにとって忍との出会いが重大だったことは明白に描かれても、
忍にとってアリスとの出会いが如何なるものであったのかということは曖昧にされていました。
元々外国に興味を持っていたことが分かっているだけに、忍が通訳者になりたいと言っても、
そこにアリスとの出会いがどれだけ絡んでいるのか、よく分からなかったのです。
けれども、引用部はそれをはっきりさせています。
忍はアリスと出会って、「通訳者になろうと本当に決心した」
現在の目標を立てる決定的なきっかけとして、交流は強調されているのです。

結論として、二人が出会ったホームステイは、
実際に行動を起こすアリスだけでなく、忍にも大きな影響を与えました。
アリスが日本に行こうと考え、言葉を勉強するようになったように、
忍も通訳者になろうと本当に決心したのです。
今はまだ、アリスのように成果が出ているわけではありません。
しかし忍の決心が本当だったことは、今もまだ彼女が努力を続けていることが証明しています。
お互いにお互いがキッカケとなって、それぞれの行動に繋がっている。
四巻で提示された先の事実は、忍とアリスの関係が、
忍からアリスへ、一方的に大きな影響を与えるようなものではないと改めて示しています。
二人はお互いに影響を与え合って、今一緒に並んでいるのです。


テーマ:きんいろモザイク
ジャンル:アニメ・コミック

きんいろを描く絵本のような (きんいろモザイク:第十二話感想)

2013.09.25 17:05|きんいろモザイク
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ついに第十二話「きんいろのとき」が放送されました。
前回、五人の進級の直前で切り上げた上での最終回です。
個人的には、素晴らしい締め方だったのではないかと思います。
とりわけミュージカルパートは楽しくて、色々と考えることを止めて見入ってましたね。

そして次回予告が不在で、エンドカードまで至ったときの確かな満足感と寂寥感。
アニメ化決定以前より好きな作品であったため、そこでの感慨もひとしおでした。

しかし、いつまでも燃え尽きたかのようにぼんやりしているわけにはまいりません。
今週はDVD一巻や、待ちに待った原作四巻が発売されます。
今月の『まんがタイムきららMAX』の表紙はアリスたち五人が飾りましたが、
そこに添えられていた「See You, AGAIN!」という言葉が示す通り、
まだまだ『きんいろモザイク』という作品自体は続いていくのです。
きちんと自分の中で一区切りをつけて、これからに備えなければなりません。

そこで、今週はいつもより力を入れて、記事を書こうと思います。
今回は大きく分けて二つのことを扱っていきます。
まずは、アニメオリジナルだったミュージカルのパートについて。
次に、最終話全体を眺めたときの、その締め方についてです。
この二つについての考えをまとめて、自分なりの一区切りにしたいと思います。

もしよろしければ、話の内容を思い出しながら、少しの間お付き合いください。



○五人で作る五人のミュージカル:これまでの日々の上に


まずは、最終話の中でも最も目を引く、忍の語りの内容に注目してみましょう。
忍がみんなに物語りをする話自体は原作二巻にありますが、
どのような話をしたかということはほとんど示されていません。
そのため、物語の中身はアニメのオリジナルであったと言えると思います。
あのミュージカル調の物語に関して私がとりわけ注目したいのは、
物語の中の五人が、きちんとそれぞれの「らしさ」を持っていたということです。
演じてはいるものの、普段の五人を思い出させるような役柄になっています。
その意味で忍の物語は確かに、「五人のミュージカル」だったと言えます。

物語の内容を確認しながら、一人ずつ見ていきましょう。
まずは、海賊船の船長として登場してきたカレンです。
忍は自分をさらったカレンに対して、率直に問いかけます。

「どうして私を? 宝物なら他を探せばいくらでも…」
「手に入りマス 何でも手に入る それはつまらないデス!」

 世界中を旅したデス 金銀財宝 どきどきの毎日
 けれど今はもう どきどきしない 我ら七つの海を 支配する海賊だ
 世界には果てがあると知ってしまった 

「果てなんてありません 世界は丸いんですよ 本で読みました」
「本の話デス!」
「確かめに行きませんか まだ見たことのない世界」

 きっとありますよ
 あなたと一緒なら見つかるかもしれない あなたとなら

「しのでいいですよ」
「シノ シノ シノシノー!」 (12話)

 
この場面は、普段のカレン、また普段のカレンと忍の関係を想起させるものです。

まず、カレンはアリスと取り合うくらいに忍には特に懐いていて、
「シノは特別な感じするデス」と発言しています(3話、1巻92ページ)。
また忍が風邪で休んだときには、「いないとつまらないデス」と述べています(4話)。
カレンはみんなのことが好きですが、忍は中でも少し特別な存在であるわけです。
物語中の船長と姫の間にも、同様の関係を見出すことができます。
当初打ち解けられなかったカレンが、忍の言葉を受けて前に進んだように(3話、1巻92ページ)、
海賊船の船長も姫の言葉を受けて、まだ見ぬ世界へと歩み出していきます。
劇中でもカレンと忍の普段の関係が描き出されていることが分かります。
また、カレンは日本の漫画が好きで、その主人公に影響されることからも分かるように、
ロマンに満ちたアドベンチャーのようなものに憧れている嫌いがあります。

猫を追って見知らぬ土地まで行ってしまうような冒険が似合うのです(10話、2巻95ページ)。
その意味で、どきどきを求めて冒険する海賊船長というのはカレンの適役と言えます。

このように、カレンに合った役で、カレンと忍の日常の関係を基にした筋書きになっているのです。


次に、陽子と綾について見てみることにしましょう。
綾が人魚として忍を助けるところから、忍の語りは再開します。

「ここは…? 足がつきません!」
「大丈夫 しっかりつかまって… あ あの船は…!」

 もう一度 一目合いたかった ずっと
 手を伸ばせばとどきそう でもいいの ここから見つめるだけでいい

「大好きなんですね」
「ちょっと気になるだけよ」
「もしかして君は遭難した私を助けてくれた人だよね?」
「違うわ!」
「ずっと思っていた もう一度会いたいって思ってたよ!」 (12話)


自分の本意を抑え込んで遠くから見守るだけでいいと述べる人魚は、
陽子がラブレターを受け取ったときの綾に重ねることができます。
あのときも綾は自分の気持ちから目を背けて、せいいっぱい陽子を見守ろうとしたのでした。
涙目での陽子への「おめでとう!」は複雑な心境を示しています(4話、1巻100ページ)。
そしてそのとき、素直に自分の気持ちを陽子に伝えられない綾に対して、
陽子は率直な好意を逆に綾に届けるのです。

「何かカン違いしてない?」
「え?」
「手紙は嬉しいけど最初から断る気でいるよ」
「どうして!?」
「相手が誰であっても綾の方が好きだからさ!」
「…と とっとと開けなさいよ!」
「何の話してるデス?」
「友達っていいなって話ー」 (4話、1巻101ページ)


ここで陽子は劇中の王子のように、綾に気持ちを伝えています。
このように、遠くから見つめることを選んだ人魚に対し、
王子がもう一度会いたかったと伝えるラブストーリーは、
陽子と綾の、ラブレター騒動のときの経験に重ね合わせることができます。

人魚と王子は、確かに綾と陽子にこそふさわしい役であったと言えるのです。


最後に、忍とアリスについて見てみることにしましょう。
二人は無二の親友として、冒頭より登場してきます。

「はい できましたよ」
「ありがと シノ お散歩いこう!」

 シノは本当に金髪が好きだね
 ええ 宝物です アリスの宝物は何?
 シノ! (12話)


ここでは忍とアリスの宝物の不均衡が提示されています。
つまり、アリスは忍が宝物なのに対し、忍はアリスが宝物とは言っていません。
これは、私が十一話の感想で述べた、作品に対して当然湧いてくる疑問に関係します。
すなわち、アリスだけでなくカレンや他の金髪少女にも好意を向ける忍は、
外国好きや金髪好きの延長で、アリスに好意を向けているのではないかという疑問です。
今回のクラス分けの話のように、アリスが忍を恋しく思うのに対し、
忍が割と平気でいるとき、この疑惑は深まることになります。

けれども忍は、単に金髪で外国人らしいから、アリスが好きというわけではありません。
「どんなに日本人らしくなっても 例え侍になっても アリスはアリスです」。
初夢騒動のときの忍のこの言葉は、そのことを明確に示しています(11話、3巻24ページ)。
忍はアリスに関しては、単に外国好きの延長で好きなわけではないと言えます。
物語もこの忍の気持ちをなぞっていくことになります。
忍が戦いを止めるために、魔女に頼みごとをする場面に注目してみましょう。

「魔女のおねえちゃん 戦いを止めたいんです!」
「いいわよ 何でも叶えてあげる ただしあなたの大事なものと引きかえ」
「私の 大事なもの… 綾ちゃん! はさみをお持ちですか?」
「ええ」
「早くしないとみんななくなるわよ」

「シノ」
「アリス…!」

「さしあげます! 戦いを 止めてください――」 (12話)


宝物の金髪を捨て去る際に、忍がアリスのことを思い出していることが重要です。
金髪よりもアリスの方が大切であることが、ここから分かります。
劇中で忍が演じる姫はアリスのことを想うと、金髪すら捨てられるのです。
初夢の話のときに示された忍の気持ちが改めて、ここで描写されています。
二人の姫の関係の中に、普段の忍とアリスの関係を見出すことができるのです。


ここまでの結論として、忍は五人に合った役をそれぞれに設定し、
普段の五人を思い出させるような話に劇を仕立て上げています。
その意味で物語は、これまで五人が過ごしてきた日々の上に築かれている、
「五人のミュージカル」であったと捉えることができるのではないでないでしょうか。
五人が役を演じ、物語が普段の五人を思い出させる、そういう五人のミュージカルです。
それは最終回らしく、これまでのことを振り返らせる物語であるとも言えます。


また、この物語を忍だけが作っているわけではないということも重要です。
忍が語っているという体裁を取っている以上、物語の作者は忍ですが、
他の四人も助言によって、製作過程に参画し協力しています。
忍が海賊船長のカレンにさらわれたとき、一度語りは中断されます。

「シノはどうなるデス? 海の藻屑と消えマスか?」
「バッドエンド過ぎるわ」 (12話)


ここで聞き手として、綾たちが展開に意見を出しています。
また、カレンと一緒に忍が行くことを決めた後にも、一度劇外へと戻ります。

「お二人は 何の役がいいですかね?」
「私たちも出るの?」
「うーん… 綾は人魚とか」
「陽子は王子様デス!」
「え?」
「うん すごく似合ってる!」
「ではそうしましょう」 (12話)


四人の意見を受けて、忍は役を決定しています。
単に忍だけが物語を作っていくわけではなく、忍を中心に五人で作っていると言えます。
語られているのは「五人でつくる五人のミュージカル」なのです。
これまでに築かれた五人の関係、これまでに過ごした五人での日々を基にした劇は、
忍が中心ではあるものの、五人の手により作られたものとして描かれていたと思います。



○きんいろを描く絵本のような:振り返られる二つの始まり


次に、特に締め方に注目して最終話全体を眺め、まとめてみたいと思います。
第十二話は、二年生になってクラス分けが行われたという話と、
忍が物語を作り語るのに才能を発揮する話を中心に構成されていました。
後半は一年生の頃の話で、敢えて時間が戻されています。
それぞれ、第一話の内容を振り返るような締め方になっているのに注目してみましょう。
まずはクラス分けで落ち込んだアリスが、忍に慰められる場面です。

「シノはあんまり寂しそうじゃないね…」
「え? だってアリスは海を越えて来たんですよ
 それに比べれば全然です! たったの教室一個分です!」
「うん うん そうだよね!」(中略)

「一年前 シノに会いたくて日本に来た あのとき思い切って海を越えたように
 教室も越えればいいんだよね!」 (12話、3巻58ページ)


アリスが忍の言葉を受けて復活したところで、早くもエンディングが流れます。
その直前で強調されたのは、「アリスが海を越えてきたこと」でした。
物語の始まりの場面を振り返りつつ、とりあえず一回締められています。
エンディングの最中には、これまでの日々を収めた写真が映し出されます。
川遊び、夏祭り、学校祭――様々な思い出を想起させつつ、
最後にアリスが「今日も楽しいことあるかなー!」でまとめるのです(12話、2巻8ページ)。
これまでを振り返りつつ、これからを示唆する最後になっています。

少し形を変えて、これと同じことが後半にも繰り返されます。
忍が作り話を終えた後、アリスは気になったことを忍に聞いてみます。

「ねえ シノ 二人のお姫さまはずっと離ればなれなの?」
「そんなことないですよ いつだって会えますし
 ずっと友達です 私たちみたいに!
 今の時代飛行機を使えばひとっ飛びです!
「えっ? 現代の話だったの!?」
「どうなんでしょう?」 (12話、2巻108ページ)


このすぐ後、海の向こうへと飛んでいく飛行機が映し出されます。
これは第一話の冒頭と同じで、「忍が海を越えていったこと」を思い出させるものです。
前半のアリスが日本に来たことを想起させる締め方と対応する形で、
今度は忍がイギリスに行ったことを想起させる締め方になっています。
浮かんでくるのは作品のもう一つの始まりである、忍のホームステイの光景です。
そこから、アリスが忍に出した思い出深いエアメールへと繋がります。

「この手紙が始まりでしたね」
「そーだねー」
「忍ー アリスちゃん」
「はーい! 行きましょう!」
「うん! 陽子たち もう待ってるかも」 (12話、1巻8ページ)


ここでもやはり、これまでを振り返りながら、これからを示唆して終わっています。
最終話は、前半と後半で二回、この形式を取ってまとめているのです。
第一話を振り返りながら終わるという形自体はあまり珍しくありません。
注目すべきは二回それを行う中で、アリスが日本に来たことと忍がイギリスに行ったこと、
物語の始まりを告げる二つの契機を描き出しているという点です。

これがあるため、とても綺麗で印象に残る終わり方になっていたと私は思います。
 

しかし、最後に忍が物語を聞かせる話を持ってきたことには、他の意味も見出すことができます。
すなわち、「五人に語られる物語」としてこれまでのことを振り返るために、
敢えて時間を遡ってまで物語の話を持ってきたとは考えられないでしょうか。
実際に忍とアリスは、時間があればエアメールを肴に色々と語り合ったことでしょう。
それこそDVD/BDに付いてくる、キャラクターコメンタリーのような会話を挟みながら。

ここで、サブタイトルが「絵本」の題名から取られていることが活きてくると思います。
「ふしぎの国の」、「ねないこだれだ」、「きんいろのとき」辺りが分かりやすいですが、
全てのサブタイトルには元となっている絵本作品が存在しています。
そういった状況の下で最後に、忍が実際に物語を聞かせる話が登場してきます。
それも、「お話ができないと夜アリスを寝かしつけられません」という言葉と、
劇の内容から分かるように、「絵本のような」作り話を聞かせる話です(12話、2巻106ページ)。
最後を飾るのがこの話であった上で、二人が今までを振り返ることにより、
思い出が本当に、絵本のように語られるものとして表れてくるように思います。


未知の国で少女が少女と出会う、「ふしぎの国の」。
コンプレックスと不安から始まる、「ちっちゃくたって」。
新しい友達が外国からやって来る、「どんなトモダチできるかな?」。
ラブレターから始まった一騒動、「あめどきどきあや」。
二人のおねえちゃんの物語、「おねえちゃんといっしょ」。
五人で過ごす日本の夏、「金のアリス、金のカレン」。
食欲の秋だから仕方がない、「はらぺこカレン」。
学校祭と大切な記念日、「今日はなんの日?」。
トラウマにはならないお泊りの話、「ねないこだれだ」。
偶然出会った休日のある日、「すてきな五人にんぐみ」。
初夢と二人の想いを描く、「どんなにきみがすきだかあててごらん」。
これまでを振り返りこれからへ向かう、「きんいろのとき」。


語られるのはどれも、時に面白おかしく、時にシュールに、時に不安にさせながら、
いつだってどこかしらいい話になっている、優しい絵本のような物語です。
そこでは五人にとってかけがえのない、きんいろな毎日が描かれて、語られます。
最後の最後で忍が物語を聞かせる話が展開され、その後で振り返りが行われることで、
これまでがこうした絵本のような物語として、再び表れてくるのです。


アニメ『きんいろモザイク』は、きんいろを描く絵本のような作品であったと私は思います。



○関連記事

   全てになり得る合言葉 (第一話感想)
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テーマ:きんいろモザイク
ジャンル:アニメ・コミック

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