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あたたかいひだまりの方へ (菅野マナミ『ひまわりさん』)

2013.11.02 14:01|その他の漫画
ひまわりさん 4 (MFコミックス アライブシリーズ)ひまわりさん 4 (MFコミックス アライブシリーズ)
(2013/10/23)
菅野 マナミ

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幻想文学な夢を見たり、商店街をお散歩したり、
過去の情景に心を委ねたり、クリスマスに奔走したり――。
本と本屋に集まる人たちをめぐる、ハートフルストーリーをお楽しみください。

季節が秋から冬へ移ろいゆく中――
 ひまわり書房はいつでもあなたを待っています。(4巻帯より)


本日は菅野マナミさんの作品、『ひまわりさん 4』を紹介します。
古くて小さな本屋、ひまわり書房の店主であるひまわりさんと、
彼女のことが大好きな少女、まつりを中心とした人間関係を描くこの作品。
四巻は二人の関係を、改めて大事に提示して見せた話が多かった印象です。
今回はそのひまわりさんとまつりの関係に注目することで、
私なりに作品の魅力を明らかにしていきたいと思います。

既に読んでいる方は、一緒に振り返りながら作品を鑑賞してみましょう。
まだ読んでいない方は、少しでも作品の雰囲気を感じていってくだされば幸いです。



○『ひまわりさん』:あたたかいひだまりの方へ


(1)まつりからひまわりさんへの言葉

四巻では、前のひまわりさんやひまわりさんの兄の師匠・夕のような、
インパクトのある新しい人物は登場しませんでした。
その分改めて、まつりとひまわりさんの関係が大切に描かれたという印象です。
とりわけ、前向きで率直なまつりの言葉が、ひまわりさんに示唆を与える話が目立ちます。
まずはそうした、「まつりからひまわりさんに向けられた言葉」に注目してみましょう。

第29話・第30話では、夕が持ってきた「ひまわりさんへの」ラブレターが問題になります。
夕のからかいもあって、まつりはそれが今のひまわりさんへのものだと早とちりしますが、
実際はそれは今のひまわりさんの兄が書いた、前のひまわりさんへの恋文でした。
生前に手渡されることのなかった、想いの詰まった一葉。
ひまわりさんは少し悲しげに、その真実をまつりに語ります。

「それは 私宛てじゃないんだよ その手紙は届けられなかったんだ
 その人を想って書いたのに無意味になってしまうのは 少し悲しいな」
そんなことないですよ きっと意味のないことなんかじゃありません
 もしかしたら自分の気持ちを文章にすることで整理がついたのかもしれません
 わたしも…… 今回改めて再確認したのですよ」
「?」
「わたしもひまわりさんに手紙を書きます!」 (4巻82-84ページ)


ここでまつりは、非常に前向きにその手紙を捉え直しています。
手紙に書かれている想いに、自分の今のひまわりさんへの好意を重ねた上で、
手紙は無意味ではなかったと明るく言ってのけるのです。
そして、ひまわりさんへの手紙を自分でも書いてみることにします。
このまつりの言葉と行動を見て、ひまわりさんは穏やかな微笑みを浮かべます(84ページ)。
まつりはひまわりさんとは異なる解釈をして、
ひまわりさんの心の内にぼうっと小さな明かりを灯すのです。


続く他の話でも、同様の構図が現れています。
第32話では、安房直子さんの『きつねの窓』が話のタネになっていて、
書店に集うメンバーで実際に指を染めて「きつねの窓」を作ってみます。
けれどもただ一人、ひまわりさんだけはそれにあまり乗り気ではありません。
本来であれば、「きつねの窓に映るのは 会いたくてももう決して会えない人」。
しかし既に大人になってしまったひまわりさんには、それを見ることができません。

実際に窓を作って覗いてみて、何も見えなかったとき、
自分が取り残されたことをどうしようもなく知ることになる。

前のひまわりさんのことを想って、彼女は少し悲しい気持ちになっていました。
そこに、初めて『きつねの窓』を読んだまつりが現れます。

「読んだ感想はどうだった? きつねの窓」
「ほわわって感じですかね!」
「……そうか 全然わからん」
「窓を覗いて見えるのはもう会えない人だから それはすごく切ないです……
 もし もう ひまわりさんと会えないなんて想像したら…っ
 でも それは 会えないけど会いたいって思うくらい
 大好きってことだと思うのですよ
 大好きな人を想うと ほわわ――ってあたたかくなるでしょう?」(中略)

「………私 本当はずっと思い出すことが辛かったんだ
 指で窓を作ったって 現在しか見えない
 思い出す度に あの人はもういないのだと 私はひとりなのだと痛感する でも」
「何か見えましたか ひまわりさん」
「うん まつりが見えた」
「いぇ~い」
「だから なんだそれ」

「はああっ 冷たい風が! 秋ですねー! 中に入りましょう ひまわりさん!」

私はちょっとだけあたたかくなれたよ」 (4巻112-118ページ)


ここでまつりは、ひまわりさんの『きつねの窓』の解釈とは異なる解釈をしています。
すなわち、「もう会えない人」を、「それでも会いたい大好きな人」と捉え直すのです。
「もう会えない人」と言ったときの重い響きが、「大好きな人」と言ったときにはありません。
まつりの言葉を受けて、ひまわりさんは改めて前のひまわりさんを思い出します。
そのとき彼女が感じたのは、先述した取り残された悲しみではなく、
まつりの言ったような「ほわわ」としたあたたかさでした。

再びひまわりさんは、穏やかな微笑みを浮かべます(116ページ)。
ここでもまつりは、ひまわりさんの心の内に小さな光を灯すのです。

この二つのケースでは、まつりが「知らないこと」が極めて重要だと思います。
まつりは前のひまわりさんのことをあまり知りません。
だからこそ、ひまわりさんとは別の考え方を提示することができます。
前のひまわりさんを知っているひまわりさんが、どうしても悲しく捉えてしまうところを、
まつりは知らないことを武器に、前向きに解釈し直すことができるのです。

『きつねの窓』の感想に関しても、あまり本を読んだことのないまつりらしく、
拙くふわっとしたものですが、それゆえに率直で示唆に富むものになっています。
今のひまわりさんとは全然異なるまつりだからこそ、
ひまわりさんに明かりを灯すことができるのです。


(2)ひまわりさんからまつりへの言葉

ここまでは、まつりからひまわりさんに向けられた言葉に注目してきました。
けれども、『ひまわりさん』では逆方向の言葉も印象的です。
すなわち、ひまわりさんからまつりにかけられる言葉も、
まつりに勇気を与えるあたたかいものなのです。
今度は「ひまわりさんからまつりに向けられた言葉」に注目してみましょう。

まつりがひまわりさんから言葉を受け取る話として外せないのが第1話です。
まつりがひまわりさんに言葉を送る話を見ていると忘れそうになりますが、
まつりは単なる前向きで明るい少女というわけではありません。
自分がドジで何もできないことに落ち込み、悩んでしまうという一面も持っています。
以下の場面では、そうしたまつりが現れています。
そして、そういった彼女に対して言葉をかけるのがひまわりさんです。

「見返したかったんですよ …きっと 先生も親も
 わたしにはどうせ出来ないって決めつけて 信じてもらえないのが悔しくて」
「…だからウチでバイトを?」
「わたしにも出来ることあるって 言いたかったのね…
 でも結局 出来ないことから逃げて やるべきこと何も出来てない
 この間のテストで 数学の点数一桁取ってしまったし…っ」
「そんな告白されても反応に困るのだが
 …悔しいと思うのは 諦めていないということだ 共感したり時には励まされたり
 世の中にはたくさんの本があるけれど 自分のために書かれた物語は無いのだろう
 でも その人にはその人だけの物語が確かにある
 それを諦めていないのならきっと大丈夫だ」 (中略)

――わたしの為に書かれた本は無くても
 わたしの為に言葉をくれる人がいてくれるから… 頑張ろう (1巻10-17ページ)


ひまわりさんの言葉を受けて、まつりが立ち直っていることが分かります。
受験前にノイローゼに陥っていたときにも、
まつりを支えたのは「大丈夫」というひまわりさんの一言でした(2巻34ページ)。

一方で、まつりの言葉がひまわりさんの心に明かりを灯しているのに対し、
他方で、ひまわりさんの言葉がまつりの心に明かりを灯しているのです。

四巻でも、ひまわりさんがまつりを勇気付けていることが分かる話があります。
それが、まつりの学校での態度が問題となる第27話です。
まつりは意外にも学校では「おしとやか~」に過ごしているということが、
友人たちによってひまわりさんに知らされます。
何故猫を被るような真似をしているのか。
気になったひまわりさんはまつり本人に尋ねてみます。

「まつりは学校では猫被ってるんだってね」
「え… え――っ?」
「なんで?」
「昔から「なんでそんな失敗するの」っていうドジばかりして
 「もういいよ」って呆れられて 自分でもすっかり自信とか無くしちゃったんですね
 だから失敗して迷惑かけたくないって いつも考えちゃうんです
 そんな自分は嫌なんですけど…」
「ふーん… 私といる時はそんなことないのに?」
「そっ それはその… ………すっ 好きだからです!」
「どうした突然」
自分でも不思議なんですが 失敗して嫌われたらどうしようとかよりも
 ひまわりさんの役に立ちたいとか 
 一緒に居たら嬉しいとか そういう気持ちの方が大きいんです」 (4巻12-15ページ)


ここでは、まつりがひまわりさんから直接言葉を受け取ったわけではありません。
しかし、ひまわりさんの存在がまつりにパワーを与えていることは分かります。
ひまわりさんへの好意が、まつりに前を向かせる原動力になっています。
少し悲しげな表情を浮かべたひまわりさんを、まつりが微笑ませるように、
少しうつむき気味なまつりを、ひまわりさんが明るい笑顔にしているのです。



(3)あたたかいひだまりの方へ

結論として、まつりとひまわりさんの二人は、特に言葉を通して、
お互いの心の内に小さな明かりを灯していると言えます。
第32話での言葉を借りれば、二人はそうして「ちょっとだけあたたかくなる」のです。
こういった二人のやり取りが、四巻では再び見所になっていたと思います。
二人はお互いに言葉をかけ合いながら、あたたかいひだまりの方へ歩いていく。



テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック

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