スポンサーサイト

--.--.-- --:--|スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

二人は二人で「自分」を掴む (慎結『星振り坂一丁目三番地』) 

2013.09.01 11:55|百合作品
星振り坂一丁目三番地 (IDコミックス 百合姫コミックス)星振り坂一丁目三番地 (IDコミックス 百合姫コミックス)
(2013/08/17)
慎結

商品詳細を見る

あの日、通り過ぎた恋のような、透き通って切ないガールズ・ラブ作品集。 (帯より)


慎結さんの作品が先日発売されました。
高校生や大学生のみずみずしい想いを描いていく短編集です。
今回は特に、「サクラフル」を中心に紹介していこうと思います。

それとは別に印象に残ったのは、「my sweet clover」でしょうか。
緋衣と七葉と江鈴の「三人の関係」が描かれていきます。
後半の七葉の言葉が物語の核であると思います。

あたし いつも二人のまんなかがいい
 どっちか選ぶとか選ばれないとかじゃなくてね
 だめかなぁ あたし わがままかなぁ」

「だめなんかじゃ ない!」
「まぁね あたし七葉のこと絶対ゆずらないし!」 (133-135ページ)


三人は作品内で、三人という関係を選び取るのです。
緋衣と江鈴は二人とも七葉に好意を寄せており、ここでも衝突しているわけですが、
お互いにそれは敵意ゆえにではなく、ただならぬ感情も抱いていることが描かれています。
クローバーの葉っぱのように、三人がそれぞれ等間隔にある関係が目下の終着点なのです。
ここで提示される関係が非常に特別で、注目すべきものであると思います。
スタンダードな二人の恋人関係とは異なる関係を、是非ご覧になってみてください。



○二人は二人で「自分」を掴む:みうと英子の関係


さて、それでは「サクラフル」の紹介に入ろうと思います。
短編集の先鋒を飾る本作を読むと、まずは「サクラ」や「花びら」を使った表現が胸に残ります。
けれども今回は、この中で描かれるみうと英子の関係に注目することにします。
みうと英子の形成した関係は、どのようなものだったのでしょうか。
最初に物語の概要を確認しておきましょう。

春、好きな男子にフラレタ。
「お嬢様じゃないとつき合う気がしないし」って。
そんな時、お嬢校の女子に声かけられ、なんか懐かれた。
ウザイ、メンドクサイ、コンプレックス刺激すんな…って最初は思ってたのに…。
フツー校女子×お嬢様「サクラフル」。 (裏表紙より)


ここで言うフツー校女子がみうで、お嬢様が英子です。
英子は母親の指示に従って生きてきた、「自分」のない自分とは異なり、
「素直」(15ページ)に生きているみうに惹かれ、彼女に懐いていきました。
そんな英子と関わるうちに、みうも彼女に次第に惹かれていきます。
しかし英子の母親は、身分違いということで二人を遠ざけようとしました。
そこでみうは、一瞬へこんだ後、英子を連れ出すために立ち上がります。
以下の場面はそのクライマックスで、みうが英子に語りかけるところです。

「英子! 一緒に帰るよ!」
「みうさん 私は…」
「まだ二人でプリ撮ってないし!」
「母が失礼なことを言ったと思います ごめんなさ…」
英子は!? 英子はどうしたいの!? 自分で考えろ!

「わ 私は… みうと一緒にいたい ずっと ずっと!」(24-26ページ)


ここの「自分で考えろ!」が個人的にすごく好きです。
英子はこの一言により、これまで難しい哲学書を読んでまで必死に探し、
それでも見つけられなかった「自分」を、確かに掴み取っています。

「みうと一緒にいたい」という想いの下に、確かに彼女自身はいるのです。
二人はそのまま自転車で、一緒に遠くへと駆けて行きます。

こうしてみると「サクラフル」は、一般人がお嬢様を助けるという、よくある話にも見えます。
けれどもこの話において重要なのは、みうも英子に助けられているということです。
すなわち、英子がみうのおかげで「自分」を掴むことができたのと同じように、
みうも英子のおかげで「自分」を改めて掴むことができているのです。
詳しく見てみることにしましょう。

まず、概要にもあるように、みうは英子と出会う前に男性に告白して深く傷ついています。

「お前がオレのこと好き?」
「冗談は偏差値だけにしろよ」
「オレ成涼女子みたいなお嬢様じゃなきゃムリだし」
「お前南高だろ? まじカンベンだよ」 (5ページ)


みうは傍から見ると、このことについてあまり気にしていないように見えます。
しかし英子と出会ったとき、また英子の母親に突き放されたときに、
このときのことを思い出していることを鑑みると、
その男性の言葉が深くみうに刺さるものだったことに疑いはありません。
それは強烈な「自分への否定」であり、彼女を苦しめる記憶になっています。
そして、みうにこれを乗り越えさせたのが、他ならぬ英子であったと言えます。

そっか そういえばあたし 失恋したんだっけ
なんか どうでもよくなってる
それより英子と話したい 英子を見ていたい (17ページ)


ここでは英子への想いが、自身のコンプレックスを忘れさせています。
英子の存在は、みうに自分を回復させるものであったと言えるでしょう。
さらに英子の母親に近付くなと言われたときには、
みうは英子への想いを糧に、その過去を乗り越えています。

「お前 南高だろ マジかんべん」

きっと いつかはこうなってた
桜の季節は すぐに終わるから
なのに なんで泣いてんの あたし
胸の奥に 花びらがつまって 息が できないよ (中略)

「もう失恋したの? 前より重症だ――」

してない まだ してない
あたしは あたしのままで (21-23ページ)


こうして、みうは英子のところへと駆けて行きます。
嫌な過去を思い出した上で、それを乗り越えていることが分かります。
彼女もまた、かつて否定され揺らいだ「自分」をここで確立しているのです。
二人の関係があったから、ここで嫌な記憶に打ち勝って駆け出すことができたと考えられます。

よって「サクラフル」は、みうが英子に「自分」を掴み取らせて、
彼女を助け出すというような一方的な物語ではありません。
二人が二人で「自分」を掴み取る物語です。
みうは英子のおかげで「自分」を否定した過去を克服し、
英子はみうのおかげで探していた「自分」を獲得する。
そうした相互の関係を、この作品は描いていると言えるでしょう。


テーマ:百合
ジャンル:アニメ・コミック

コメント

非公開コメント

プロフィール

天秤

Author:天秤
天秤と申します。
アニメや漫画など、好きなものについて考えたことを書き込みます。
よろしくお願いいたします。

カレンダー

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

カテゴリ

最新記事

最近のつぶやき

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

アクセスカウンター

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

RSSリンクの表示

リンク

QRコード

QR

  • ページトップへ
  • ホームへ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。