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友達がいるから踏み出せた一歩 (乙ひより『お友達からはじめましょう。1』)

2013.08.03 16:27|その他の漫画
お友達からはじめましょう。 1巻 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)お友達からはじめましょう。 1巻 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
(2013/07/25)
乙 ひより

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高校生になったんだから、一緒に笑って、一緒に泣ける、友達が欲しい。

 この娘と 友達になりたい  (1巻帯)


乙ひよりさんの連載の単行本が、先日ついに発売されました。
タイトルから分かるように「友達」をテーマにした作品です。
不器用美人の姉・明(あきら)と、元運動バカの弟・遥(はるか)が、
友達と過ごすハイスクールライフをまったりと描いています。

特徴的なのは、明と遥の物語が並行して進んでいくという点です。
二人の物語はほとんど重なることなく独立していて、
それぞれ別のところで展開していきます。
学校での出来事をお互いに話すということはありますが、
二人の物語が交わるということは今のところありません。
いわば、一つの作品で二つの物語を読むことができるのです。
ガール・ミーツ・ガールの物語と、ボーイ・ミーツ・ボーイの物語。

今回は、この作品の紹介も兼ねて、一巻のテーマについて考えていきます。
上述した通り、明の物語と遥の物語はそれぞれ別々に進んでいきますが、
一巻の時点ではほとんど同じテーマを抱えていたように思います。
すなわち、「二人が過去と決着をつけて先に進んでいく」というテーマです。
明も遥も、高校での「お友達」との関わりを通して、一応は前進していくことになります。
具体的に作品の表現を見ながら、この部分を確認してみましょう。



○友達がいるから踏み出せた一歩:高校での新たな日々へ


まず、明の物語から確認していきます。
明は、かつて些細なことで友達から無視されたことが一つの傷となっていました。

突然無視された

「え ちょっ まき?」
「あーっ ほっときな! ほら まきの好きな佐藤がさ
 あんたのこと好きみたいなんだよ まー しっとだわなー」

変なの… 私は佐藤なんかより まきのほうがずっと好きなのに…
結局まきとは卒業まで話すことはなかった…

――うっとおしい
髪 切ろうかな……

高校はとにかくまきと違う学校ならどこでもよかった…
特に夢も希望もない春  (1巻7-10ページ)


まきとの関係の破綻のために明は傷つき、長かった髪も切ってしまいます。
そしてそのほの暗い気持ちのままで、高校へと進学することになるのです。
ここで注目すべきなのは、「短い髪」が明の過去の傷を象徴しているということです。
まきとの関係が壊れたから、明は自身の髪を切るに至りました。
ゆえに、彼女の短い髪は、間接的に彼女の過去を示していると言えます。

このように暗い気持ちで進学した明ですが、千鶴(ちづる)との出会いが転機になります。
常に自分らしく、はっきりとものを言う千鶴は、明にとって魅力的でした。
明はなかなか千鶴に話しかけられませんでしたが、期せずしてその機会を得ます。

「仲良くなりたいのよね?」
「そっ そう!」
「…… 断る!」

「なんで? 別にいいじゃない」
「だって こいつ隣にいたらチビが目立つじゃん!」
「まー ちづちゃん 心までちっちゃくなっちゃったのね…」
「うっ うっせー! 嫌なもんは嫌なんだ!!」

「ごめんね ちづちゃん口以外は悪い子じゃないんだけど…」
「あっ いや… 大丈夫です ちょっとショックだったけど…」

「はっきりしてていい…」
無視されるよりずっといい…  (1巻39-41ページ)


この後、明は千鶴や、彼女の友達であるあみと仲を深めていきます。
そして、彼女たちとの関わりの中で、明は過去から一歩踏み出すことになるのです。
明は家に帰ってから、遥との会話の中で以下のように述べています。

「めずらしーよなー アキが俺より帰り遅いの」
「うん ……」
「何かあった?」
「別に… 何もないけど… また髪伸ばそうかなー
「おっ 何? 好きな人でもできた?」

好きな人…

「なのかな~?」 (1巻63-64ページ)


ここで明が「髪伸ばそうかなー」と言っていることが重要です。
これは明が過去と一応の決着を付けて、先へ進み始めたことを暗示しています。
先述の通り、明は友人との関係が壊れたことを契機に髪を切りました。
それを改めて「伸ばそうかなー」と考えているということは、
過去のことを引きずって、ほの暗い気持ちでいる状態から抜け出て、
これからに向けて一歩踏み出したことを象徴していると読めます。
その一歩は、千鶴たちがいたからこそ踏み出せた一歩です。
以上のように、一巻では明が千鶴たちとの出会いを通して、
過去と一応は決別し、新しい日々を過ごし始めるまでを描いています。



次に、遥の物語を確認してみましょう。
遥はサッカー少年でしたが、事故により運動全般ができなくなってしまいます。

朝起きてサッカーして授業中寝て
昼休みサッカーして授業中寝て
放課後サッカーして帰って寝る日々

あの時までは…

それから
ドラマで何回か聞いたことあるあの言葉を聞いて

「リハビリすれば普段の生活に支障はありませんが残念ながら運動は…」

暇だから勉強しまくったら進学校に受かってしまった。 (1巻67-68ページ)


遥は全く気にしていないかのように振る舞いますが、
内心ではサッカーができなくなったことに大きなショックを受けていました。
その抑え込まれた気持ちは、再会したくなかったかつてのサッカー仲間、
隼(はやと)を前にしてある時ついに爆発します。

「お前さー なんなの? なんでいちいち俺の気分下げんの?」
「… …無理してるから…?」
「無理しちゃいけないのか?」
「体にわりーぞ」
「じゃあ どうすればいいんだ?
 俺は俺をひいた運転手を一生恨んでいくほど嫌な奴でもないし
 誰かのためにってマネージャーやるほどいい奴じゃない…」

お前なんでここにいんの? お前さえいなければ
 何も思い出さずに高校生活がおくれるはずだったのに…

なんでいんだよ…

「そうやって また俺をさけるのか…?」
「は?」
「俺は… お前しか友達がいなかったのに…」 (1巻91-94ページ)


ここで遥は、サッカーに対する複雑な気持ちを全てぶちまけています。
その結果、隼には会いたくなかったということまで本人にぶつけます。
この遥の壮絶な内心の吐露に対して、隼は率直な告白で応えました。
すなわち隼も、遥が離れていくことで負った自身の傷を彼に見せるのです。
この「とてつもなく恥ずかしい青春ごっこ」(96ページ)は、
何かを解決したわけではありませんが、遥の気持ちをかなり軽くしました。

結局なんにも解決してねーけど
色々ぶちまけたせいか なかなかスッキリした気分だ…

…近所のガキにでもやるかな…」 (1巻99ページ)


ここで遥は自分のサッカーボールを、「近所のガキにでもやるかな」と考えています。
これまでサッカーから目を背けながらも、そこから脱却できてはいなかった遥が、
ボールを誰かに譲ることを考えているこの場面は示唆的です。

遥は隼との告白合戦を通して、過去に一応の決着を付けたと考えられます。
実際に遥はこの後、隼とともに康太郎の調理部に参加することにします。
高校での新しい友達と、経験したことのない新しい活動を始めていくわけです。
以上のように、一巻では遥が隼との関わりを通して、
過去と一応は決別し、新しい日々を過ごし始めるまでが描かれてます。



結論として、明の物語にしても遥の物語にしても、
一巻では二人が過去と一応の決着を付け、一歩踏み出すまでを描いています。
言うまでもなくその一歩は、「友達がいるから踏み出せた一歩」です。
特に明の「また髪伸ばそうかな」と、遥の「近所のガキにでもやるかな」が、
それぞれ一歩踏み出した事実を象徴的に伝えているように思います。

乙ひよりさんの柔らかい筆致、穏やかな雰囲気で描かれていく、友達との物語。
一歩踏み出した二人がこれからどこへ向かうのか、今から続きが楽しみです。


テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック

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