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主人公としての穏乃と、パートナーとしての憧 (『咲-saki-阿知賀編』感想)

2013.06.19 18:11|咲-saki-
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阿知賀編のアニメの最終回がついに各所で公開されました。
一話の放送からおよそ一年。
かなり長かっただけに、終わりを見たときの感慨も一入でした。
みなさまはどのような心持で、16話をご覧になったでしょうか。

今回は阿知賀編の完結記念ということで、本作全体を眺めながら記事を書きたいと思います。
特に注目するのは、阿知賀編の主人公である穏乃と、彼女のパートナーである憧です。
阿知賀編という作品の中で、彼女たちがどのような人物であったのかを考えていきます。

ゆえに、この記事は対局シーンを細かく考えていくという主旨ではありません。
それでもよろしければ、少しの間お付き合いいただければ幸いです。
私も、『咲-saki-』という作品の見所の一つは麻雀の場面であると思っているのですが、
そこから少し離れてみると、それはそれで違った作品の魅力が発見できる気がします。



○二つの顔を持つ主人公としての穏乃:「和の友達」かつ「阿知賀の大将」


それでは、穏乃について考えてみましょう。
彼女が主人公として特徴的なのは、二つの顔を持っているという点です。
すなわち彼女は、「和の友達」としての顔と、「阿知賀の大将」としての顔を有しています。
穏乃はそれぞれの立場から、二つの目標を物語中で掲げることになるのです。
それぞれの顔を順番に確認していきます。

まず、「和の友達」としての顔を見ていきましょう。
穏乃は中学に進学すると、かつての麻雀教室の仲間たちとどんどん疎遠になっていきます。
いつしか麻雀も「昔取った杵柄」(1巻65ページ)になってしまう。
そんな穏乃の日々を変えたのは、インターミドルでの和の雄姿でした。
それを見てから穏乃は和と遊ぶことを目指して、インターハイを目標とします。

「あと全国大会に行きたい!」
「全国!」
「春までに阿知賀の麻雀部を復活させて… インターハイに挑むんです…!!」
「面白そう!」
「そこにはたぶん和がやってきます…」
「和ちゃんが?」
「またそこで…みんなで遊ぶことができるんです
 麻雀をしていればいつかどこかで巡り会える!」 (1巻80ページ)


この直後に、「遊ぶんだ… 和と!!」(1巻88ページ)という、憧の代表的な台詞が来るわけです。
ここで穏乃は明確に、「和のかつての友達」として、彼女と遊ぶことを目標に掲げています。
言うまでもないかも知れませんが、この穏乃の目標はかなり個人的なものです。
憧や玄はともかく、阿知賀のメンバー全員で共有できる類のものではありません。
照との和解を目指す咲と同じように、「個人的な目標」から穏乃も全国を目指すのです。
これは『咲-saki-』という作品の主人公に共通の特徴と言えます。
彼女たちは「個人的な目標」から出発する。

しかし、それだけに留まらないのが、阿知賀編という物語であり、穏乃という主人公です。
けだし穏乃のもう一つの顔は、そのことをはっきりと示しています。

それでは次に、その「阿知賀の大将」としての顔を見ていきましょう。
穏乃は晴絵がプロ行きを断ったと聞いたことを契機に、
阿知賀の一員としての自分を強く意識したと考えられます。

「がんばろう! 準決!! 千里山強い 白糸台強い そんなのわかってる……!!
 でもうちらだって今朝よりも今この時の方が――強い…!!」
「県民未踏のベスト4」
「ハルちゃんが行きたかった場所――」
「目前だね」
「うん…」
「たどり着くんだ うちらの代で――… 決勝戦へ――!!」 (3巻37-40ページ)


ここで穏乃は部員の先頭に立って、阿知賀の悲願である「準決突破」を掲げています。
和と遊ぶこととは別に、新たな目標が明確に意識されているのです。
これが一つ目の目標と同列であるということは、どこか憧の「遊ぶんだ… 和と!!」を想起させる、
「たどり着くんだ うちらの代で―… 決勝戦へ――!!」という言い回しにも見ることができます。

ただ、これは先のものとは異なり、個人的な目標ではありません。
それは阿知賀に関わる人全員に共有され得る目標です。
こうした「みんなの目標」は、阿知賀編の特徴的な要素と言えます。

実際に作中では、準決勝が「10年越しのリベンジ」(4巻157ページ)であるため、
その突破は現役メンバーだけではない、周辺地域全体の悲願として描かれています。
このように阿知賀編では、「みんな」「阿知賀」が『咲―saki―』本編よりも強調されているのです。
以下の引用部もこの側面を押し出していると考えることができるでしょう。

「早速だけど インハイの地区予選は――個人戦はどうする?」
「誰か出たい?」
「個人戦はみんなでって感じがしないし…」
「和は団体戦にもエントリーしてたっぽいからね…きっと出てくる!」 (1巻140-141ページ)


また晴絵は勝利に重要なこととして「総合力」(1巻191ページ)を挙げています。
「みんなで」戦って勝つことが阿知賀編では特にテーマとなっているのです。
準決勝で結果的に、他校に比べて平板な収支で一位抜けを決めたことは、
こうした阿知賀の路線の到達点と言えるかも知れません。
準決突破は阿知賀の周辺地域に住む「みんな」の悲願であり、
阿知賀女子のメンバー「みんな」で追いかけるべき夢なのです。

穏乃はそのような阿知賀編という作品の中で、「阿知賀の大将」としても振る舞います。
つまり、彼女は和と遊ぶという個人的な目標だけではなく、
阿知賀全体で共有できる目標も掲げ、みんなを引っ張っていくのです。

ここが咲とは少し異なる、穏乃という主人公の特異性と言えるでしょう。
穏乃は「みんなの目標」も掲げて邁進する。


さて、上述のように、穏乃は二つの顔を持つ主人公です。
彼女はそれぞれの顔に対応する目標を掲げ、ついに決勝戦まで駆け上がっていきました。
ここで注目したいのは、穏乃がそれを成し遂げるに相応しい特徴を備えているということです。
すなわち、彼女の麻雀の特性は、「二つの顔」に結びつくようなものになっています。
まずは穏乃が、自身の麻雀に関して述べている場面を確認してみましょう。

なんかのインタビューで和が言ってた。
一年半くらいずっと一人でネットで打ってたって。
和の一人な時間は無駄にならず、今の和を形作っている。
私は二年半、一人で山を駆け巡っていただけ。
和と比べて最初はへこんだけど、今は違うんだ!
それもまた力になっているから! 視界良好! (アニメ16話)


ここで穏乃は山での経験が、今の自身の力に繋がっていると述べています。
その中でまず強調されるのは、それが「一人の時間」であったということです。
この「一人の時間」こそ、穏乃を和を目指す者たらしめると考えることができます。
麻雀から遠ざかっていた穏乃が、和と遊ぶことを目指すのは一見分不相応に見えます。
しかし、彼女は自分だけの「一人の時間」を過ごしたという点では、和と変わりありません。
この点において、穏乃は和と遊ぶことを目標に掲げて、それを実現する人物として相応しいのです。

また、山での経験は、少し後の場面で以下のようにも言及されています。

あの頃、山の中で一人でいることが多かった。
だからこそ、自分自身というものをはっきりと感じ取ることができたし、
色々と考える時間ができた気がする。
いつか意識は自然の中に溶け込んで、深い山の全てと一体化しているような。
そんな気分にもなったんだ。
今、牌の山も対戦相手も、あの頃の山のように感じる。 (アニメ16話)


ここで強調されるのは、山での経験が「地元の山々との一体化」をもたらすものであったということです。
この「山々との一体化」こそ、彼女を阿知賀の大将たらしめると考えることができます。
誰よりもその地域を駆け回り、半ば地元の山々と一体化するに至った穏乃だからこそ、
周辺地域の悲願を目標に掲げて、それを実現する中心人物として相応しいのです。

achiga2.png
 (地元の山々と一体化する穏乃 アニメ16話)

まとめると、穏乃の麻雀を根底で形作っている山での経験は、
それが自分を形作る「一人の時間」であった点で和と穏乃を結び付け、
「山々との一体化」であった点で阿知賀と穏乃を結び付けています。

そういった経験を持つ穏乃だったから、上述の二つの目標を掲げ、
やがて達成する「阿知賀編という物語の主人公」たり得たのではないでしょうか。
二つの目標の達成を決定づけるのに、穏乃の麻雀以上に相応しいものはなかったと私は思います。



○穏乃のパートナーとしての憧:同じ風景を共有する者として


ここからは特に憧について考えていきます。
彼女を考えることで、阿知賀編という作品をより理解できるようになると思います。

言うまでもなく、憧は「穏乃のパートナー」として描かれています。
阿知賀のメンバーの中で特に彼女がそのように描かれる理由は、
彼女が、二つの目標の両方とも穏乃と共有することができるためであると考えられます。
準決勝突破は阿知賀のメンバー全員で共有できる目標ですが、
「和と遊ぶ」という穏乃の個人的な目標を共有できる人物は限られています。
だからこそ、穏乃とともに両方を掲げ得る憧がパートナーなのです。

しかし、「二つの目標」は、和と一緒に麻雀をした玄も共有し得るものです。
何故彼女は憧とは異なり、穏乃のパートナーとして作中に現れて来ないのでしょうか。

けだし決定的なのは、穏乃や憧と、玄で想起する光景が違うことです。
穏乃と憧の場合、彼女たちの中で大切に保存されている光景は、
和と出会い、三人で駆けまわった際のものであると想像することができます。
穏乃は和が現れたからこそ、麻雀クラブでも「上級生4人で打てる機会が増え」(1巻35ページ)、
結果として「ちょっと楽しみ増えてきた」(1巻36ページ)と述べています。
ここから分かるように、穏乃にとっては「和との光景」が特別であり大切なのです。
憧は穏乃ほど和との時間を特別視しているわけではないでしょうが、
穏乃や和と最初から三人で一緒に過ごしてきたため、
穏乃が思いを馳せる光景と同じものを一緒に思い描くことができます。

しかし、玄にとって大切な光景は、二人のものとは少し違うところにあります。
すなわち、彼女にとっては「阿知賀こども麻雀クラブでの光景」こそ思い出深い光景なのです。
二年以上もの間、教室の管理を自主的に行っていたことにそのことは表れています。
この点において玄は、必ずしも穏乃と同じ光景を目指すことができるわけではありません。
彼女は穏乃や憧にとって重要な意味を持つであろう和との邂逅の瞬間にも立ち会いませんでした。
照との対局で窮地に陥った際に彼女を助けたのが、「和との光景」と言うより、
「和も含めたみんなとの光景」(4巻48ページ)であったことも示唆的です。
玄は穏乃のパートナーとして、彼女にとって大切な光景を一緒に取り戻そうとするのではなく、
少し違う位置から、自分にとって大切な光景を取り戻そうとしていると言えると思います。

以上の事情から、憧がとりわけ穏乃のパートナーとして描かれていると考えられます。

さて、その憧ですが、彼女は穏乃の目指す光景を共有できる無二のパートナーとして、
要所要所で穏乃に自身の目標を改めて意識させる役割を負っています。

例として、全国大会のために東京に来たシーンを挙げてみます。

「ついに来たね 東京… 全国大会」
「うん…」
「和に会いにいく?」
「いや 向こうが来ないならこっちも行かない」
「まず清澄と戦ってみたいね」 (1巻210ページ)


ここで和の話を振っているのは憧です。
憧はこのように、時折穏乃に目標の話を振ることがあります。
これは、穏乃に目標を改めて意識させる効果があると思います。
憧は穏乃のパートナーとして、穏乃に和のことを想起させる役割を負っているのです。

今の例は「個人的な目標」の方でしたが、「みんなの目標」も憧は穏乃に意識させています。
すなわち憧は、穏乃に「阿知賀の生徒」としての自覚をもたらすことで、後者を意識させるのです。
準決勝の大将戦の前に、そのシーンはあります。

「灼さん! お疲れ様です」
「制服?」
「憧に借りたんだけど。これ着てると何か自分が阿知賀の生徒って感じしますね」
「最初からそうだけどね。まあ、頑張ってほし」

――あとはよろしく、阿知賀の大将。
――はい、せいいっぱいやってきます。 (アニメ15話)


憧が服装を交換した直後のシーンです。
ここで穏乃は、憧の制服を着たことにより、「阿知賀の生徒」であることを再認識しています。
服装の交換は二人の絆が最も強調された部分であると言えますが、
ここで憧は結果的に、穏乃に「阿知賀」を意識させているのです。

その先には当然、彼女がかつて掲げた準決勝突破という目標があります。
制服は、穏乃を「阿知賀の生徒」に仕立て、目標を改めて意識させる効果があったと思います。

このように、穏乃に二つの目標を意識させることこそ、憧が物語において担っている役割と言えます。
憧は穏乃の隣で、彼女の目標への歩みを後押ししていくのです。
このことを象徴するかのように、阿知賀編は「二人で」駆けて行く姿で閉幕を迎えます。

achiga4.png
 (穏乃の手を引いて駆けて行く憧 アニメ16話)

結論として、憧は穏乃の思い抱くものと同一の光景を共有できる唯一のパートナーとして、
道中で穏乃に二つの目標を意識させる役割を担っています。
その意味で穏乃は、時に憧に手を引かれながら、
目標の達成へと突き進んでいったと言えるのではないでしょうか。

咲と和の関係は、「二人で指切りをする光景」で象徴されると思いますが、
穏乃と憧の関係は、こうした「二人で駆けて行く光景」でこそ象徴されると思います。


テーマ:咲-saki-阿知賀編
ジャンル:アニメ・コミック

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