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「神さまの物語」の終焉 (一花ハナ『神さまばかり恋をする』)

2013.06.02 18:02|百合作品
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(2012/08/10)
一花 ハナ

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神様は人の願いを叶えてくれるんじゃない
きっかけをくれるだけ
ほんの少し背中を押してくれるだけ
あとは 自分がどう動くか (1巻21ページ)


半人前の縁結びの神様、コトリを主人公としている点で異色な本作。
最終的にコトリが選択したのは「全部の事 応援したい」(2巻135ページ)という立場でした。
彼女は誰かと誰かの縁を繋げる能力を持っています。
縁を切る能力を持つ者が存在することも知っています。
しかしコトリは、全部を応援し、能力を行使せずに「見守る」立場を選択するのです。
この結論にどのような意味があるのか、今回は読み解いていきたいと思います。

正直、本作のラストには物足りなさを感じた方も多かったのではないでしょうか。
事実、作中ではそれぞれの想いがどう決着するかは描かれません。
私も一読後には、そこにもやもやとしたものを感じずにはいられませんでした。

では何故この作品は、関係の決着を描かず、上述のコトリの選択で終幕を迎えたのでしょうか。
そのことを考えてみると、物語は違った姿を現してくるように思います。
コトリの考え方の変化に注目しつつ、もう一度作品を読み直してみましょう。



○「神さまの能力」から「人の意志」へ:コトリの「見守る」という選択


コトリは当初、「縁は繋げてこそ」(2巻112ページ)であると考えており、
非常に積極的に縁を結ぶ能力を行使していました。
実際に、一巻では聡香や、見知らぬ子どもたちや動物たちにまで、力を使っています。
彼女曰く、それは対象の「気持ちをいじるような事」ではなく、「お手伝い」です(1巻18ページ)。
ゆえに二人の絆の行く末は、最終的に当事者がどう動くかということにかかっています。
そうした性質の「お手伝い」ないし「応援」を行うことを、
コトリはみんなの幸せのためになることであると考えていました。

このコトリの考え方が揺らぐきっかけが、縁を切る神であるヒワとの邂逅です。
縁を結ぶことがみんなの幸せのためであると考えていたコトリは、ここで思い悩むことになります。
そしてその最中、千佳と出会うのです。
彼女はコトリに、人を好きになってみることを勧めます。

「みんな幸せになるにはどうしたらいいと思います!?」
「…無理だと思うけどなー そんなの」

――変な子だなあ

「視点変えたら?」
「視点?」
「人に好かれたいなら まず人を好きになる、とか
 受動と能動で そんなの うまくいくか知らないけど」 (1巻119-120ページ)


そこで、コトリは千佳を好きになってみることにします。
そして、この千佳との関わりと、後のヒワとの語らいが、コトリの考え方を変化させるのです。
この過程が二巻では描かれていくことになります。
順番に二人とコトリのやり取りを見ていきましょう。


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第一に、千佳との関わりです。
コトリが日々千佳を追いかけ続けていると、ある夜、示唆的な夢を見ます。
まず、夢の中のコトリが自身と千佳の間に「赤い糸」を結びます。
そして、今度は聡香との間に赤い糸を結ぼうとします。
しかし、どうしても結べないのです。
この夢の意味を、コトリは千佳から聞くことになります。

「まあ…なんていうか あんたが私にまとわりついて
 仲良くなりたい云々は置いておいて
 赤い糸って運命の赤い糸でしょ?」
「そうです それです!」
「じゃあそれっておかしくない? 運命って特別ってことだから 色んな人と繋がったら
 特別じゃなくなっちゃうじゃない 一人とじゃなきゃ」 (2巻53-54ページ)


ここでコトリが悟るのは、ある縁を結ぶということが、
他の縁を排してしまうことが有り得るということです。

これまでコトリは自身の「お手伝い」を極めてポジティブに捉えていましたが、
このときそれに限界があることを学んだと捉えることができます。
縁を結ぶという行為は、時に「どれか」を応援することになりうるのです。

第二に、ヒワとの対話です。
コトリが何となく学校に向かってみると、
ヒワがまさに、聡香としおりの縁を切ろうとしている場面に出くわします。
それを何とか制止して、コトリはヒワと語らいます。

「縁結びの神 貴方は人間に肩入れし過ぎだし 振り回され過ぎだと思うわ」
「…それは…分かってます でも大事な人達なんです
 それに縁は繋げてこそですよ! どの縁を太くするかは人間が決めることで!」
「余分な縁は切り落としてこそ 洗練された先にその人間の未来がある」 (2巻112ページ)


片や人の想いを拾って縁を結ぶ神、片や人の想いを拾って縁を切る神。
二人はここで「一般論として人の縁を結ぶべきか切るべきか」ということに関して議論を行っています。
縁を結ぶのが人のためなのか、縁を切るのが人のためなのか。
二人の意見は真っ向から対立していることが引用部から分かります。

また、ここでは二人が、大切な人に対して対照的な態度を取っていることが強調されています。
一方でコトリは、大切な人の縁こそ応援しようとします。
実際に彼女は、一巻の冒頭で聡香としおりの友情を取り結んであげていました。
そして今回もヒワが聡香たちの縁を切るのを止めようとします。
彼女は「大切な人だから縁を結びたい」という気持ちを持っているのです。

他方でヒワは、しおりが大切だからこそ彼女の縁を切ろうとしています。
彼女の心中の言葉から、そのことは窺い知ることができます。

……しおり… 私は
 貴方の心の中から私の存在が消えるのが怖いんだわ (2巻122ページ)


ヒワはしおりが多くの縁を抱える中で、自身の存在が消えることを恐れています。
だからこそ彼女は千佳の気持ちに寄り添い、しおりの縁を切ろうとします。
それが彼女の未来のためでもある。
ヒワは以上のように考えて、「大切な人だから縁を切りたい」と思っているわけです。

コトリが、以上のように自身とは対照的なヒワとの対話で学んだのは、
同じく大切な人がいるとしても、全く異なる立場に至ることが有り得るということです。

それは彼女にとっては不可解なことに他なりません。
しかし、ヒワが同じく大切な人を持つ神さまであると知って、コトリは彼女に歩み寄りたいと考えます。
何故ヒワは自分とこんなにも似ているのに、正反対の位置にいるのだろう。
その答えを知るために彼女は、「納得できるまで色々聞かせてほしい」と頼むことにするのです。


さて、この二つの学びの結果、コトリは立場を変えることになります。
つまり、「見守る」という選択に至るのです。
ヒワとの対峙の後、コトリは千佳に告げます。

「ねぇ千佳」
「走ることをやめないで下さいね
 先輩に追いつくんでしょう? 応援してますから」 (2巻123ページ)


ここでコトリは、これまでのように千佳としおりの縁を結ぼうとはしていません。
能力を使うことなく、普通に「応援」しています。
その理由は、みんなの笑顔のために「縁を積極的に結ぶ」という手段を取ることが、
必ずしも正しいわけではないことを千佳やヒワとの語らいを通して学んだためです。

縁を結ぶことは「どれか」を応援することで有り得るために、他の縁を排することがある。
大切な人がいるという点で似通っているのに、縁を切る立場にある少女がいる。
そこからコトリは、縁を結ぶという行為を相対的に見るようになったと考えられます。

そして、コトリはその先で「見守る」という不作為を選択します。
彼女は縁結びで「どれか」を応援するのではなく、見守ることで「全部の事」を応援しようとするのです。
最終話での聡香との会話にそのことは表れています。

「いいの? 大好きな石松さん しおちゃんに取られちゃうぞー」
「良いですよー 2人とも大好きですもん」
「その理由ってさ どうなんだろう 意味が分からないなあ」
「そうですか? まあー… それにほら」
「千佳がしおりを追いかけるみたいに
 私も千佳を追いかけられたらいいかなって思うんです」
「…ねぇ それってどういうこと?」
「んー…」

――笑顔を見守っていたい あなたもそう思うでしょう? ヒワ

「今はまず全部の事 応援したいって思うんです」 (2巻130-135ページ)


神さまのみが持つ種々の能力こそ、神さまを特徴づけるものでした。
コトリがそれを、行使せずに「見守る」という決断をした時点で、
縁結びを行う「神さま」の物語は終焉を迎えたと言えます。

代わりに始まるのは、他ならぬ「人の物語」です。
それは「能力」で特徴づけられる「神さまの物語」とは異なり、
誰かを追いかける「意志」で特徴づけられます。
そこでは、神さまが能力でもって介入することはありません。
神さまは、想い人を追いかける人をただ見守るか、
人と同じように誰かを追いかけることで物語に参加することになるのです。
実際にコトリは、人を「見守る」ことと、人のように「追いかける」ことを選択しています。

『神さまばかり恋をする』は、コトリの能力の行使で幕を開ける「神さまの物語」でした。
ゆえに、その能力の物語の閉幕をもって、作品も終わりを告げるのではないでしょうか。
それぞれの想いの決着は全く描かれていません。
それは「人の物語」の領分であり、「神さまの物語」が終わった後の話であるためです。
あくまで「神さまの物語」として、「人の物語」にバトンを渡すところで敢えて止まる。

以上のように考えると、決着を付けない最後を選んだからこそ、
この作品は「神さまを描いた百合作品」として完成しているとすら言えるのではないでしょうか。
好みは人それぞれでしょうが、その点で本作は、確かに異彩を放っていると思います。


テーマ:百合
ジャンル:アニメ・コミック

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