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「憧れ見上げる」から「隣に立つ」へ (『その花』七海×優菜ルート感想)

2012.12.10 16:41|百合作品
『その花びらにくちづけを ミカエルの乙女たち』の七海×優菜ルートをクリアしたため、
途中で気になったことを踏まえながら、物語の感想を書いていきたいと思います。
それゆえ、これからプレイする予定の方は、見ないことを推奨いたします。

前回くらいの記事だとコンスタントに書いていけそうなので、今回も短めだと思います。
時間もかからないと思うので、気軽にさくっと読んでいただければ幸いです。

まず、今回私が気になったのは以下のシーンです。
七海が優菜に頼りっぱなしの周囲に我慢ができず、激昂して委員会で叫んだ後、
麗奈に拉致されて、そのまま一緒に浴室で温まった場面ですね。

「私は、アナタを軽くお説教するために、ここに連れて来たのよ」
「お説教……ですか?」
「そう、お説教よ」(中略)

多分、先生の言う通りなんだと思う。
認めたくない、間違っているとは思いたくない。
やっぱりみんなも悪いし、お姉さまに頼りすぎだと思う。
でも……一番大切なのは、優菜お姉さまの気持ち。
お姉さまを困らせたり、悲しませたりはしたくない。
わたしが一人でカラ回りして、お姉さまを困らせていたとしたら……


ここで麗奈は、「黙って見守ることも必要」として、七海を諭します。
恋人のために何かしたい……その気持ちだけが先走って、
優菜本人の気持ちをむしろ蔑ろにしていたという事実を七海に突き付けるわけです。
麗奈の言葉は七海にとって重要な学びをもたらすものになったと思います。

このシーンで私が気になったのは、七海に重大な成長をもたらす言葉をかける、
極めて大きな意味を持つ役割を「何故、麗奈が担ったのか」という一点につきます。
一連の七海がカラ回りする場面は、優菜の代行を七海が務めるこの後のシーンに繋がるものです。
七海が失敗を正し成長した個所として、物語上極めて重要なものと考えることができます。
そして、物語上重要な成長だからこそ、以下のように考えることができます。

すなわち、優菜が間違いを諭し、七海を成長させるという展開でもよかったのではないでしょうか。

あくまで七海と優菜の物語においては、麗奈は脇役に過ぎません。
事実、このルートにおいては、以上の場面以外ではほとんど登場機会なしです。
彼女よりも、七海の憧れでもあり、「お姉さま」である優菜の方が、
彼女の重大な成長に寄与する存在としては、ふさわしいと言えるのではないでしょうか。

しかし、現実には優菜はこのとき手持無沙汰で、七海のことを教室で想っているだけでした。
私は当初、そのことをとても不思議なことだと思いました。

けれども、このルートをクリアし終えた現在、物語を俯瞰的に眺めて見ると、
この私の感じた不思議こそ、「物語の主題」に繋がるヒントであったと解釈することができます。
つまり、「このルートの主旨」を考えて見ると、説教をする役は優菜では不都合があるのです。
少し詳しく説明していきます。
最初に、ルートの主題を顕著に示す場面としては、以下の部分が挙げられます。
優菜が副委員長を決めようと環境整備委員会に提案するところです。

「では今日は……せっかくなので、
環境整備委員会の、副委員長を決めたいと思います。」

「え!?」
当然の優菜お姉さまの言葉に、わたしを含むみんなが驚いた。

「私ももうすぐ三年生……引退も迫っています。
ですのでここで副委員長を立てて、新たな体制の準備を進めたく思うのですが……」
その直後、一人の委員が立ちあがった。

「わたし……次の副委員長は、七海さんが良いと思いますわ!」


物語の最後に、この「七海が副委員長になること」が結果として置かれています。
ここから、物語全体の主題は「七海の成長」であったということができるように思います。
具体的に言うならば、七海が成長して「優菜の隣に立つもの」になることこそ物語の中心です。
七海にとって、これまで優菜は「憧れのお姉さま」でした。
「委員長として働く優菜」は、七海にとって「憧れて見上げる存在」であったと言えると思います。
この点では、七海は「優菜の下」に自分を置いていました。
確かに七海は優菜と恋人で、その意味では二人は既に隣同士の関係です。
しかし、仕事の面から見てみると、けだし二人の間には高低差がありました。

実際に七海は作中でも、優菜と比較して自分の働きぶりをまだまだであると考えています。

この二人の間の高低差をなくしていくことが、物語の主題であったと私は考えています。

そして、その意味で「七海が優菜の隣に立つ」ということがテーマである以上、
「優菜が七海を指導・育成する」という関係は物語中で強調されない方が、
七海の成長による二人の関係の変化は浮き彫りになります。
だから、七海の成長を促す導き手は麗奈だったのではないでしょうか。
そこで仮に優菜が諭してしまっていたら、七海が「優菜の隣」にいくことによる関係の変化が、
優菜が諭し七海が従うというこれまで通りの関係によって塗り潰されてしまう危険があるためです。
仕事上優菜に教わることが中心だったという意味で「優菜の下」にいた七海が、
優菜の代行を務め切ることにより「優菜の隣」にいく物語においては、
七海を教え諭すのは「先生」である麗奈の方が、優菜以上に適切であると考えられます。

もちろん、作中で幾度か強調される、七海が優菜の「後継者」であり、
かつ現時点での「副委員長」であるという表現からも分かるように、
七海が完全に優菜の隣に並んだとは言えません。
現に、優菜は七海に対して「スパルタ」式での教育を行っていくという宣言をしています。
その意味で優菜が七海の上に立つものであるということは、完全には否定されていません。
しかし、限りなく「優菜の隣」に近い位置まで七海は辿り着いたと言うことはできます。
それを表すのが、皆に認証された「後継者」の位置であり、「副委員長」のポストです。

そして、そこに至る過程においては、七海は優菜の助けをほぼ借りませんでした。
七海は生徒として、麗奈の助言は受けます。
しかし、優菜の助言は受けませんでした。
また、優菜が倒れた後も、誤字脱字のチェックという些細な例外を除いて、
七海はほとんど自力で卒業アルバムの製作の指揮をやり遂げました。
優菜に教えられるのでなく、自分の足で「隣に行く」ことを成し遂げたということが重要です。

結論として、七海×優菜ルートは、七海が「優菜の隣」にふさわしい相手になるまでを描いたものです。
換言すれば、それは「憧れ見上げる」から「隣に立つ」へと至る物語です。
恋人として隣に立つだけではなく、副委員長としても隣に立つ。
今回のシナリオでは、そこへの七海の成長に重点が置かれていたと思います。



○関連記事

  「自己の倒壊」から生まれてくる未来 (『その花』璃紗×美夜ルート感想)


テーマ:百合
ジャンル:アニメ・コミック

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