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「自己の倒壊」から生まれてくる未来 (『その花』璃紗×美夜ルート感想)

2012.12.04 18:22|百合作品
昨日『その花びらにくちづけを ミカエルの乙女たち』の璃紗×美夜ルートをクリアしたので、
やっていて考えたことを、感想を踏まえて書いてみようと思います。
そのため、これからプレイする方はネタバレを含みますので、見ないことを推奨します。

なお今日から、簡潔な短い記事で「小さな考察」を書くことを試みているため、文章が短めで、
かつ形式もきっちりしていない感じですので、気楽にお付き合いいただければ幸いです。

まず、私がプレイしていて気になった場面は以下の部分です。
二人が付き合い始めてからしばらく経って、璃紗が現状に疑問を抱く場面です。
節のタイトルで言うと、「本当に、好きだったら……」の部分ですね。

「……やっぱりまだ、私……溺れるのが怖い」
美夜とエッチすると、快感に流されてしまう。
ドンドンのめりこんでしまいそうになる。
そんな自分がイヤ、認めたくない……そう思えてしまう。
その悩みはまだ、解決しそうになかった。(中略)

このまま美夜と愛し合って、欲情に流されて……いいのかな。
それとも私はもっと、自分を律した方が……


ここは璃紗と美夜、二人のストーリーの一つ目の山場であると思います。
取り上げられている問題自体は、大して特殊なものではありません。
では何故、私がここを特に取り上げたかというと、この璃紗の葛藤に対する答えが、
非常に特徴的であると物語を進めていて思ったからです。

その答えが提出される場面も抜き出しておきましょう。
「一年生会」の面々に璃紗が自分の悩みを相談した後の述懐です。

「自分に、素直に……どうなりたいか考える……」
言われてみて、気づいた。
私、自分が変わってしまうことばかり怖がっていた。
今までの自分を否定するのが怖かった、
それに恋にばかり気持を持っていかれるのが怖かった。
それじゃママと同じ……私を傷つけた、あのママと同じになる。
でもこれって多分、私の本心じゃない。
自分の素直な気持じゃない。
私が今、心から望んでいるのは。
それはきっと……美夜に全てを捧げたい、美夜の全てを受け入れたい。
そのせいで、勉強に手がつかなくなったとしても。
自分が変わってしまって、エッチなことばかり考えちゃうとしても。


これを答えとして、璃紗は美夜を「誘いに行く」ことになるわけです。
この答えは、かなり強烈で特徴的なものであると思います。
欲情が自分を自分でなくしてしまうという問題は、古代から現在まで議論されてきた問題です。
しかしそれに対して、欲情に従うことに全力でGOサインを出す意見はあまり聞きません。
例えば道徳や教育の領野においては、その反対に自制を促したり、自制の重要性を前提とした上で、
ある程度の欲情は許容されるという折衷案を勧めたりする場合の方が、遥かに多いように思います。
欲望に対して自制し、「自分を保つ」ということの方が、様々な場面でよく推奨されるのです。

それにもかかわらず、璃紗は正直に「欲情に従う」方を選択しています。
しかも、それが中途半端な選択ではないことは、「勉強に手がつかなくなったとしても」、あるいは、
「エッチなことばかり考えちゃうとしても」そうしたいという部分に明確に現れています。


璃紗は、勉強や委員会活動に真面目に取りくんできた、
「これまでの自己」の倒壊を視野に入れながら、それでもなお美夜との関係の進展を望むのです。

ここに、私は璃紗×美夜ルートの神髄があるのではないかと思います。
すなわち、情欲を自制して「自己の保存」を達成するのではなく、
素直な思いに従って、情欲を否定せずに関係を進展させて、
「自己の倒壊」を達成するということが重要なのではないでしょうか。

璃紗は、それまでの「優等生」としての自らを保つ選択肢を捨てて、美夜を誘いに行きます。
この瞬間、璃紗は「これまでの自己」を確かに自らの手で破壊しているのです。
この璃紗の「これまでの自己」、「優等生としての自己」は、環境のために作られたと言えます。
最初の引用の中略部に当たるところを以下に引用します。

これだけ真面目に頑張ってきたのに、エッチなことを知ってからは、
そのことばかり考えてしまう。
これって……あの人と、ママと同じなんじゃないの?
他の全てを捨てて、放りだして、愛欲のためだけに生きる人。
そんな人間になりたくないから、一生懸命努力してきた。
恋愛というものからも、おそらく無意識に距離をおいてきた。


ここから窺い知ることができるのは、「これまでの璃紗」、「委員長であり優等生である璃紗」は、
家庭環境が作り上げた自己であるところが大きいということです。
美夜との関係は、その支配的だった璃紗の「これまでの自己」を破壊しました。
しかし、壊すだけではありません。
同時に、「新しい自己」を育むものだったのではないでしょうか。
璃紗が最終的に重視したのは「自らの素直な気持ち」です。
美夜との関係において生まれた、素直で正直な、嘘偽りのない気持ちから、
「これまでの自己ではない自己」「新しい自己」が生まれていると考えることができると思います。
「これまでの自己の倒壊」の上に、それは新たに創造されていくことになる。

これは、璃紗だけに言えることではありません。
同時に美夜も、「これまでの自己」を破壊し、「新しい自己」を築いていくのです。
二人の物語の第二の山場とも言える、美夜の両親との関係に璃紗が意見して、
物別れになりそうになった後の仲直りの場面に、以下の言葉があります。
璃紗が美夜の説得に成功し、両親と話し合いの機会を持つことを認めた路上での場面です。

「そんな風に……わたくしが言えないこと、できないことをサラッとできる……
そういう璃紗にね、本当は憧れていたの」


保健室での看病のシーンでも、美夜は同様の言葉を璃紗にかけています。
そしてこの言葉の通り、「今までの美夜」では考えられなかった両親との話し合いへと向かうのです。
憧憬の対象である璃紗といることで、少しずつ自分も変わっていく。
そこにもやはり、璃紗との関係において美夜が「これまでの自己」を倒壊させ、
「新しい自己」を獲得する姿を見出すことができると思います。

現に卒業式のシーンでは、皆の中で憮然としていた美夜が「変わったこと」が強調されています。

以上から、璃紗×美夜ルートは、二人がその関係の中において、
ある部分では「これまでの自己」と決別して、
「新しい自己」を獲得していく物語であったと言えます。

最終的に二人が掴み取った、「来たるべき二人での留学」という未来は、
璃紗が「これまでの自己」を見失う可能性を見据えながらも二人の関係を進める決断をし、
美夜が璃紗の言葉を受け入れて「これまでの自己」が嫌忌した両親との対話を行った結果、
初めて手にすることができた、「新しい二人の未来」でした。

テーマ:百合
ジャンル:アニメ・コミック

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