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「環境の変化」を「関係の変化」に繋げないために (ひだまりスケッチ四期七話感想①)

2012.11.20 19:06|ひだまりスケッチ
「変わったところと変わらないところ、どっちもあるから、また会いたくなるんだよね」

ひだまり七話は、有沢さんのこの言葉が全てだったと思います。
この一節は、その短さであまりに多弁であり、胸を打つ類のものです。
ゆのは天の配剤で、本当にいい先輩と出会ったんだなと再認識いたしました。

お久しぶりです。

本当は六話がとてもよかったので、先週何かしら書こうと思っていたのですが、
週初めに大詰めを迎える企画があって忙しく、とても時間が取れなかったのでした。
文章を書くのって意外と体力が要るのだと、改めて思い知る日々です。
しかし、それでも楽しいから今日もこうして書き始めている次第です。

さて今回は、六話と七話でここ二週に渡って再び強調されている、
「環境の変化による人間関係の変化」について考えてみたいと思います。
近づいてくるヒロと沙英の「卒業」。
その大きな環境の変化によって、変わらざるを得ない「六人の関係」。
その重い事実に対して、『ひだまりスケッチ』という作品は如何なる答えを提示したのでしょうか。
話を振り返りながら、自分なりにまとめてみようと思います。
今回は少し長くなるため、前編後編に分けます。
前半は、六話の「ヒロさん」に関する話が中心となります。

もしよろしければ、少しお付き合い下さい。



○「環境の変化」を「関係の変化」に繋げないために

最初に、三期からの流れを確認しておきたいと思います。

三期は乃莉となずながひだまり荘に加入したために、
「六人になること」が主要なテーマとして描かれていました。
四期はその後を受けて、冬が近づいてくるに連れて現実味を帯びてくる、
ヒロと沙英の「卒業」が主要なテーマの一つになっています。
それは換言すれば、「四人になること」が問題となるということです。

ヒロと沙英がひだまり荘を空けるという意味で、
「疑似的な卒業」と言うことができる修学旅行の回において、
元々ひだまり荘にいた関係の深い「四人」と、
ヒロと沙英が卒業した後もひだまり荘に残ることになる「四人」が、
それぞれ強調されていたことは、前回の記事で指摘した通りです。

「乃莉となずなの入学からヒロと沙英の卒業へ」、「六人になるから四人になるへ」。
これが三期と四期の間のテーマの変化と言えるでしょう。

そして修学旅行で軽く示唆されたヒロと沙英の「卒業」が、
二学期となっていよいよ「近い未来」として現れ、問題化してきたことを示すのが、
六話、七話であったと考えることができます。
具体的には、9月29日~30日「ヒロさん」、10月6日~8日「ひみつのデート」です。
言うまでもないかも知れませんが、これらは「卒業」という環境の変化に対して、
どう振る舞おうとするのかということに関する答えを提示しました。

前者は上級生の、後者はゆのを代表とする下級生の、暫定的な答えです。
それぞれどのような答えであったのか、振り返ってみましょう。


(1)ヒロの悩みと三年生の答え


まず、六話の「ヒロさん」について考えていきます。
この話では、ヒロの進路の悩みを通して、
卒業という環境の変化に対して上級生が採用する態度が描かれています。
そしてヒロの進路の悩みの根底にあったものこそ「変化への不安」です。

私ね、卒業するのさみしい。
ひだまり荘出て、沙英とも離れ離れになっちゃうし……。


ここには、「環境の変化による関係の変化」へのヒロの恐れが表れています。
ヒロの悩みは、先生としてやっていけるか不安といったようなものとは異なります。
沙英や、後輩たちと離れてしまうことが、堪らなく不安だったのです。
この恐れの結果として、ヒロは環境の変化から逃げて、
「やまぶき高校に赴任する」という進路を、無意識に思い描いていました。
それは、変化したくないという想いの表現としての「後ろ向きの夢」でしかありません。
ゆえに、吉野屋先生は優しく諭すことになります。

先生が生徒に与える影響って大きくて、
ちょっとした一言で苦手意識を与えちゃうこともあるんですよ。
生徒たちの最も多感な時期に関わる。
教師というのは、そんな大事なお仕事です。
ヒロさん、あなたは先生になりたいのですか。
それとも、ここにいたいの?
もし先生になって、やまぶきに赴任できたとしても、そのときのやまぶきには、
沙英さんもゆのさんたちもいないけど、大丈夫?


ここでヒロの問題として二つのことが浮き上がっています。
第一に、この後でヒロ自身が認めるように「変わりたくない」と思っていること。
第二に、その後ろ向きな想いの結果として、先生を進路にしているということです。

この二つの問題を解決するのが、六話の「ヒロさん」という物語でした。
そしてその解決を促すのは、ヒロの場合には沙英以外には有り得ません。
沙英は、一人で思い悩んでいたヒロに対して率直に以下のように語ります。

すごくいいね、先生。
ヒロって人に説明するの上手いじゃん。
相手の立場になって教えてくれるから、分かりやすいんだよね。
優しいし、よく気が付くし、包容力もあるし、すごいぴったりな夢だよ。
ほら、私むかし、美術の先生の言葉で動物描くの苦手になったって話したよね。
ヒロが先生だったらよかったのに、って思うよ。


起床したヒロにまず向けられたこの言葉は、前向きに考えた場合でも、
ヒロには先生が合っているという、親友からの後押しです。

この言葉で、沙英はヒロの第二の問題を解決させています。
その証拠に、ヒロは翌日に吉野屋先生の前に立って、
改めて美術教師を目指して美大を受験すると宣言することができています。
「私よりも私のことを知ってくれている人に、背中を押してもらえたので」
この胸を打つ末尾の言葉の引用の他に、私が何か付け加える必要はないでしょう。

しかし、第二の問題の解決は、それが第一の問題と深く関連するために、
第一の問題の解決がない限り、もたらされなかったように思います。
ヒロの変わりたくないという想いが払拭されることなしに、
すっきりした表情で、「教師」を目指すと述べることはできなかったでしょう。

沙英は、卒業するのがさみしいというヒロの告白に対して、以下の答えを与えています。

そりゃあ私もさみしいよ、めちゃくちゃさみしい。
でもさ、大丈夫だよ、変わらないよ。
私たちが望んでいれば大丈夫だよ。
きっと、今よりもっとよくなるよ。


ヒロは、環境の変化が関係の変化に繋がると考え怯えていました。
それに対して沙英は、ただ一つ「私たちが望んでいる」という条件さえあれば、
環境の変化は関係の変化へ繋がらないと伝えることで、恐れからヒロを解放します。
ここでヒロは、第一の問題を解決しました。
環境が変わっても、関係までも変わるということはない。
そのことが分かったためにヒロは、環境の変化と向き合えるようになったのです。

そして「望み続ける」ことこそ、三年生の答えとして提示されています。
環境の変化は得てして関係をも変えてしまうものです。
しかし、環境の変化に対して、関係を望み続けるという、
変わらない部分を持つことで関係を維持していく。

それがヒロと沙英の「卒業」に対する答えと言えるでしょう。

前半の結論として最後に、二話の修学旅行のあるシーンを確認しておきたいと思います。
ヒロと沙英が一緒に夕食を取っている場面です。

私達ばかりこんなにおいしいものいただいて。
ゆのさんたちにも食べさせてあげたい。

そうだね、大人になったらみんなで来ようよ。

それ素敵ね、絶対に六人で来ましょうね。


六話は、このときの未来の夢を実現する具体的な手段を描き出しました。
卒業しても六人という関係を「望み続ける」という手段です。
大人になったら六人で北海道に行くというのは、普通なら実現できない夢かも知れません。
しかし私には、望み続けることでその夢を実現することは、
ヒロと沙英の二人ならば、十分に可能であるように思われます。

修学旅行で後輩四人と離れていても、気付くと四人へのお土産を探し、
気付くといつか六人で北海道へ来ることを考えてしまうような二人に、
それが成し遂げられないということが、どうしてあると言えるでしょうか。



前半の、六話「ヒロさん」に関しては以上です。
後半の、七話「ひみつのデート」に関する記事も数日のうちに書き上げたいと思います。

例えば卒業など、「環境の変化に対してどう振る舞うか」ということは、
様々な作品で取り上げられている重大なテーマと言えます。
それゆえに使い古されたテーマでもあると思うのですが、
同じテーマでも、それぞれの作品の答えは微妙に異なってくることも多いため、
それを比較しながら観賞するというのも、楽しみ方の一つであると思います。

私の狭いアニメ知識で恐縮ですが、例えば最近の作品で言えば、
アニメ『けいおん』はどちらかというと、これまでの関係を維持するために、
環境をなるべく変えない方向に行ったと解釈できると思います。
また『ARIA』は、過去を思い出として抱えながらも、そこに留まるのではなく、
前に進んでいくということを何度も何度も形を変えて描いていました。

そうした中で『ひだまりスケッチ』は、作品の中で、
関係を構成する主体の「想い」を強調する立場にあるように思います。

想いがあれば、「環境の変化」は「関係の変化」に直結しないと述べる立場です。
次回も引き続き同じテーマに関して考察し、それを明らかにしていきます。

それでは、ここまで読んで下さってありがとうございました。
後半はなるべく早く書きたいと思います。


テーマ:ひだまりスケッチ
ジャンル:アニメ・コミック

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