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繭にとっての「約束」エンドについての一考 ――必ずしも最良ではない、不確定なはじまりを描くもの

2016.04.10 14:59|零シリーズ
今回は、零シリーズのうちの『眞紅の蝶』について考えていきます。
この作品においては、主に五つのエンディングが用意されています。
「紅い蝶」、「虚」、「約束」、「陰祭」、「凍蝶」エンドの五つです。
今回は、この中でも澪にとって明らかに最良のエンドである「約束」エンドについて、
繭にとってどのようなものであるかという視点で改めて考えてみたいと思います。
これにより、単なるハッピーエンドではない「約束」エンドの側面を、
浮き彫りにすることができるのではないかと考えます。
けだし、他のエンドと比較して、「約束」エンドは極めて特異な位置にあります。
それだけは、二人の行く末を確定させる類のエンドではなかったのです。
以下では、主にこの側面について比較しつつ論じていくつもりです。
もしよろしければ、ゲームの内容を思い出しつつ、お付き合いいただけると幸いです。

それでは、「約束」エンドについて考えていきましょう。
「約束」エンドは、澪にとっては最良のエンドですが、
繭にとってはそれだけでは最良のエンドではないと考えられます。
それは、澪と繭の間で約束が結び直されるだけに過ぎず、
二人が後年一緒に死ぬ時になって初めて、
繭にとってもそれがハッピーエンドとして確定されるのではないでしょうか。

繭にとっては、「一つになる」こと、あるいは「一緒にいる」ことが、
撤回されずに確定される「紅い蝶」、「陰祭」エンドや、
ほぼ確定される「虚」エンドこそ、至上のハッピーエンドだったと思います。
「約束」エンドは繭にとっては始まりでしかなく、
「一緒にいること」が確定される二人の死の間際にこそ、
ハッピーエンドが獲得されると考えられます。

しかし、その私の繭の解釈には、「澪に一人で無事に逃げ帰る」ことを勧めた、
澪を思いやる姉としての繭を看過しているとの批判を当てられるかも知れません。
ああいう場面に現れていた姉としての繭にとっては、
二人で帰ることができた「約束」エンドが紛うことなきハッピーエンドであったと言えるでしょう。

作中において繭は、一つの強固な想いを持つ者として描写されておらず、
様々な、場合によっては相互に対立するような想いを、
同時に複雑に抱え込んでいる者として描写されているので、
繭にとっての「約束」エンドについても一概には評価できないのです。
繭は、それを最良と捉えられそうであり、かつ、捉えられなそうでもある。

ただ眞紅の蝶においては、繭が自分だけ澪に対して置いてかれ得る、
マイナス状態であるという意識を持ってもいたのは確かです。
そして、この不安定状態が唯一解消されるエンドは、
澪が視力を失う「虚」エンドに他ならなかったと思います。
繰り返しになりますが、「約束」エンドは、繭の心理的な不安定状態を必ずしも解消しないので、
その意味では彼女にとって必ずしも最良の選択ではないのです。

だからこそ、「約束」エンドの繭は、微妙な表情で明ける夜を見送るのではないでしょうか。
繭にとっては、自身の足の被傷に対応する澪の被傷によって、
「ずっと一緒にいる」ことが「確定」される「虚」、「凍蝶」エンドと比較して、
澪と繭の間の約束が結び直されたに過ぎず、
相対的に繭の最良とは言えないからこそ微妙な表情をしているのではないかと思います。

そういう感覚を抱きつつ、「陰祭」エンドについて考えてみましょう。
作中の繭の基本的な二つの希望は、①澪と一つになること(紅い蝶)と、
②澪とずっと一緒にいられる保証を得る(虚、凍蝶)ことであり、
澪の最大の希望は、繭と一緒にいられる(約束)ことであるので、
一緒に死ぬという「陰祭」エンドの結論は、
二人の希望が両立されているエンドであると言えると思います。


考えてみると「陰祭」エンドは、「約束」エンドの向こう側を見せてくれたとも思うのです。
仮に生涯にわたり約束が果たされて、繭と澪がともに死ぬことができるのだとしたら、
そのときにこそ初めて二人(特に繭)は、
「陰祭」エンドの二人のように安らかな表情で眠り救われるはずです。
その意味では、「約束」エンドは、今後のハッピーエンドに続き得るエンドであり、
「陰祭」エンドは、その今後のハッピーエンドを仄めかすようなエンドです。

実際、陰祭エンドにおける繭の幸福そうな姿は、
最後まで澪と一緒にいられたという「確定」の事実によると解釈でき、
その点から見ると、「約束」エンドは澪にとっては最良のエンドですが、
繭にとっては終わりでなくはじまりに過ぎず、
その後二人で死ぬ時にこそ最良のエンドになるのだと思います。

さて、ここまでは、「約束」エンドのいわば「不確定性」を取り上げ、
それゆえに繭にとっては最良ではないのではないかということを論じてきましたが、
それでは何故、繭はその不確定な約束を目下受け入れることができたのかを考えてみましょう。

繭にとって、「澪とずっと一緒にいる」ということは不可能に近いからこそ、「一つになる」(紅い蝶)か、
「ずっと一緒にいられる保証(確定)を得る」(虚、凍蝶、陰祭)を望むに至ったと解釈できますが、
そうすると「約束」エンドで、繭が一度は信じられなくなった約束に、
何故回帰できたかということが問題になります。

それに関しては、けだし繭が、最後までずっと意志を同じくして、
遂に悲願を達成した幸せな紗重と八重を実際に見たためです。

だから、澪の「私たちは一つになれないけれど」、
「もうこの手を離さない」という約束を再び信じることができたのではないでしょうか。
紗重と八重が、それは達成できるのだということを繭に実証したのです。
そう考えると、「約束」エンドは、他のエンドのように二人が一緒にい続けることを確定し、
また十分に担保しないけれども、い続けることを繭も夢見ることはできるような、
それだけの希望に満ちたエンドでもあると考えることができるのだと思います。

結論として、「約束」エンドは、澪と一緒にい続けることを確定しないという意味で、
繭にとっては必ずしも最良のエンドではないと言えます。
澪と一緒にい続けることを確定し、または高度に保証する、
他の四つのエンドに対して、「約束」エンドだけは「不確定」なものなのです。
それは、澪と繭の結び直された約束の「はじまり」を描いたに過ぎません。
単なるハッピーエンドではない、そうした側面を見出せるのではないでしょうか。



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テーマ:零シリーズ
ジャンル:ゲーム

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