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アイドル・大空あかりの歩む道 ――虹のかかった空のように (アイカツ!第170話考察)

2016.02.21 20:40|アイカツ!
今回は、『アイカツ!』第166話と第170話を中心に振り返り、
大空あかりというアイドルについて考えていきたいと思います。
第166話においては、あかりが目指すクイーンの姿が描かれるとともに、
かつていちごに、見失った最初の風を思い出させてもらったあかりが、
スミレにとっての最初の風を思い出させる様が描かれていました。
また、第167話や第170話においては、翼がドレスを完成させていく過程で、
あかりがどのようなアイドルであるのかといったことが、明確に示されたと思います。
この記事では、第166話で示されたあかりの目指すクイーンの姿について確認し、
そこからあかりがどのような道を歩むアイドルなのかということについて考えたいと思います。
もしよろしければ、あかりが二年目に登場して以降、
これまでに歩んできた道を想いつつお付き合いいただければ幸いです。

(1) 憧れのアイドルへの飛翔

まずは、あかりが第166話で提示した、
どのようなクイーンになりたいかという問いへの答えを確認します。

「あかりちゃんは、どんなクイーンになりたいですか?」
「そうですねー。アイドルって、頑張ったら誰かの笑顔のきっかけになれると思うんです。
 だから私は、もっと大勢の人たちに笑顔になってもらえる、
 そんなスターライトクイーンになりたいと思ってます!」(中略)

――みんなの笑顔。そう、そのために、私はアイドルの階段を上っていきたい。
 星宮先輩に憧れて上り始めた、アイドルの階段。
 どこまで行けるか確かめたい!
 私は、星宮先輩との約束を、果たしたいんだ。 (第166話)


このあかりの答えの特徴は、
あかりがいちごのことを想って出した答えであるということです。
スミレは、おそらく第117話で自分が歌を選択したところから、
歌でアイドルを究めるという答えに至り、
ひなきは、おそらくルミナスで日本全国を回り、色々なアイカツと出会ったことから、
有名になって色々な領域に挑戦し、皆を楽しくさせるという答えに至りました。
あかりは、この二人に対して、いちごとの約束を胸に答えを出しました。
ルミナスの三人は、同様の過程をもってともに成長してきたアイドルと言えますが、
その中でスミレは第117話前後の自分の道の選択、
ひなきは第152話前後の様々な領域への挑戦、
あかりは二年目から続いて来た憧れのアイドルへの飛翔の中から、
特に自分の答えを見つけ出したと考えられます。

三人の答えは、ここまでのアイカツをそれぞれに振り返るものになっているのですが、
あかりはその原点であるところの彼女の憧れのアイドルを、
今一度振り返ることによって、更に上へと飛んでいくことを決意しているのです。
第166話であかりが、上空へと続く階段の先に、一時だけいちごが見える場面は象徴的です。
ここまで階段を上ってきたあかりは、ようやくいちごの後ろ姿を捉えるまでになったのですが、
そのときにはいちごは更に上へと進んでいるに違いないということを、
あかりが思っていたからこそのイメージであったと思います。

さて、第166話は、一方で上述のように、
あかりがいちごのことを想って、その後を今後も追いかけることを改めて描きながら、
他方であかりが現にかつてのいちごのように振舞えるようになったことをも描いていました。
すなわち、あかりはスミレに言葉をかけて、
彼女が「最初の風」を再発見する助けとなったのです。
これは、第101話において、あかりがいちごの言葉によって、
自身の最初の風を思い出させてもらったことと対応する場面と考えられます。
かつて、いちごによって思い出させてもらう側であったあかりが、
今度はスミレに思い出させてあげているのです。

ちょうど『START DASH SENSATION』の二番で歌われるように、
最初の風を一緒に探してあげられる、
かつてのいちごのようなアイドルに、あかりは既になっていました。

キミが見つけた最初の風を
いつか見失いそうな時は
一緒に探せるような
わたしになっていたいな

あの日があって今が 最高になる
教えてくれたんだ今日の笑顔 忘れないよ (『START DASH SENSATION』)


第166話は、スミレが答えを出してスタートダッシュを決めるまでの物語でありながら、
同時にそのスミレの手をあかりが引く物語にもなっていたと思います。
あかりは、憧れのアイドルであるいちごのところへ飛翔するアイドルとして描かれていました。

(2) 停滞からの飛翔 

ここまでは、第166話であかりは、一方でいちごの後を今後も追いかけるアイドルとして、
他方で今現にかつてのいちごのように振舞えるアイドルとして描いていると論じましたが、
第166話はあかりをいちごとの繋がりだけをもって描いたわけではありませんでした。
つまり、あかりたちならではのテーマも、その中で描いていたのです。
この側面についても触れておこうと思います。

第166話は、『START DASH SENSATION』の二番が主なテーマになっていて、
同曲の「最初の風」というフレーズがサブタイトルに使われています。
ここで、何故「風」なのかということを考えてみましょう。
『アイカツ!』中でアイドルは、星等に重ねられますから、
憧れの存在の重要さを示すのであれば、例えば「最初の光」でもよかったはずです。
しかし、ここでは「最初の風」というフレーズが使われています。
ここには、どのような意味があるのでしょうか。
この問いの答えは、『START DASH SENSATION』のOPを見ると見えてきます。

OPは、かかっていた雲が流されて、太陽が顔を出すところから始まっています。
例えば朝日が昇るところから始まるというわけではないのです。
冒頭のあかりの髪が僅かに雫に濡れているようにも見えることから、
もしかしたら小雨が降っていたのかも知れないことが分かります。

aikatsu21.png
 OP冒頭、あかりの髪は雫に濡れているように見える。

aikatsu22.png
 直後タイトルロゴが出る部分では、虹が印象的。

この始まり方を鑑みると、光にかかっていた雲を流してくれるものとして、
「風」を用い、「最初の風」としているのではないかと思います。
当初は雲がかかっていたけれども、それを最初の風が流してくれる。
これは、あかりたちの物語に重ねられる展開です。

あかりたちの物語がいちごたちの物語と区別される一つの重要な部分として、
あかりたちの物語は「リスタートからの物語」であったということがあります。
あかりたちは、以前に「光」に出会って、途中までは空へ向かっていたのですが、
いつしかそこに雲がかかってしまって進めなくなってしまっていました。

すなわち、あかりはトップアイドルになるという目標を、
いちごの真似をするということと取り違えてしまい、
スミレは入学後に立ち止まって孤立してしまい、
ひなきはかつての失敗から自分を制御してしまっていました。

そういった「雲」がかかっていた所からのリスタートが、
あかりたちの新たな活動のスタートであったからこそ、
「最初の風」というフレーズであったのではないかという気がします。
第166話は、あかりたちの「最初の風」をテーマにする中で、
あかりたちが停滞の状態から上がってきたアイドルであることを想起させるものでもありました。

とりわけあかりは、誰より重い停滞の中にあったアイドルと言えるでしょう。
二年目終盤にかけての彼女の懊悩は、
ここまでの全話を振り返ってみても、かなり重い部類に入るものでした。
しかし、そのようなあかりだからこそ、
勇気付け、背中を押すことができる人たちがいるとも考えられます。
ノエルは、おそらくそういった人たちのうちの一人であったと思います。
第172話でノエルは、ドリームアカデミーの生徒として登場して次のように語りました。

「アイドルに興味を持ったきっかけは、いちごちゃんのステージから元気をもらったことで、
 その後2wingSで輝いているお姉ちゃんを見ていたら、
 胸の奥に、小さく、自分もアイドルになりたいって想いが生まれたの。
 そんな小さかった想いが、同い年でアイカツを頑張っている、
 あかりちゃんたちを見ているうちに、どんどん、大きくなっていったの!」 (第172話)


ここで重要なのは、いちごやセイラをきっかけに芽生えた想いが、
あかりたちによって大きく育てられたということです。
これは、ノエルにとってあかりたちが同級生であり、
いちごやセイラよりも近い存在であったからこそのことであったと思います。
ノエルがそうであったかどうかということは明白ではありませんが、
自分から遠過ぎる憧れの存在は、そこへ踏み出すのを躊躇させるものでも有り得ます。
自分がそこに近付くことができるのか、自分がそこを目指してもいいのか。
そういった想いが、自分を今いる場所に引き止めてしまうのです。
そこで、どん底から這い上がってきたあかりは、一つの勇気となり得ます。
努力で憧れに近付けることを誰よりも強く発信できるのは、あかりに他ならないのです。
あかりはこのように、停滞から飛翔するアイドルとしても描かれてきたと言えると思います。

(3) 虹のかかった空への飛翔

ここまでは、あかりが第166話で、第一に憧れのアイドルへと飛翔するアイドルとして、
第二に、停滞した状況から抜け出して飛翔するアイドルとして描かれていると述べました。
ここからは、第167話から第170話までの流れの中、特に第170話において、
あかりがどのように描かれていたかを考えていきます。

まず、あかりはここで、かつて自分が頭の中でイメージしていたアイドルに、
現実で追いつくことができたアイドルとして表現されていたと思います。
このことは、『START DASH SENSATION』のステージにおいて象徴的に示されていました。

このステージは、巨大な王冠の中であかりが踊るものとなっており、
あかりがいわば『START DASH SENSATION』の冒頭の、
「アタマのなか膨らむイメージ」として表れていたと思います。
王冠の中にいたあかりは、頭の中にあったイメージと重ねられます。

このステージで示唆されるのは、今のあかりが、
かつてアタマのなかに膨らんでいたイメージでしかなかった、
輝かしいアイドルの姿そのものになっているということに他ならなかったと思います。
今や「アタマのなか膨らむイメージ」に、現実のあかりが追いついていて、
その理想的なイメージとしてパフォーマンスすることができるのです。
だからこそ、王冠の中であかりは踊っていたのではないでしょうか。

つまり、今回の「王冠の中」というステージは、
歌詞中の「アタマのなか」の表現であり、そこであかりが躍ることは、
今の現実のあかりが、かつて頭の中で膨らんでいたイメージのあかり(あたらしいわたし)に、
なることができていることを示していたのではないかと思います。


第170話は、このようにあかりがかつての自分の頭の中のイメージに近付いたことを描く一方で、
あかりというアイドルを一つの事物をもって表現していました。
すなわち、その言葉は一回も作中で使用されませんでしたが、
あかりは、「虹のかかった空」として表現されていたと思います。
だからこそ翼は、案段階では青と白のみのシンプルなドレスであったところに、
胸元にかかった七色の花の飾りを加えたのではないでしょうか。

「虹のかかった空」は、あかりというアイドルの端的なイメージと考えられます。
「空」は、外に出れば確実に目に入るもので、
それだけであれば「普通」の、ありふれたものなのですが、
そこに「虹」がかかったとき、ふと目を引き、元気をくれるものになると考えられます。
その意味で「虹のかかった空」は、学(あかりの父親)と翼がそれぞれ語っていたように、
「普通だけどいい」、「元気になる感じ」のものと言えます。

「珍しい?」
「珍しいとは言えないけど……」
「色が違うのは?」
「これは、ただ湿ってるからだね」
「あ、そう言えば、ドリーミーレイクの辺りは、昨日雨だったかも。
 ってことは、普通の土かあ」
いや、極めて普通だけど、いい土だ!
「パパ相当嬉しいのね、あかりが土持って帰って来て」 (第170話)


「ずっと大空を、青い空と白い雲をイメージして作ってた。
 でも何か足りない気がしてた。それが何か、昨日大空が来てくれて分かったんだよ。
 ただの明るい空よりも、もっと元気になる感じっていうかさ。
 正直、昨日来てくれて……迷いなくこれを作れたんだ。
 大空にふさわしいドレスになったと思う」
「すっごく素敵です! すっごくきらきらしてる!」
「ありがとな」
「え?」
「自信を持って完成だって言えるものができたよ」
「こちらこそありがとうございます。こんなに素敵なドレス! ふふっ」
「ほんと、アイドルってすげえな。笑顔で人を元気にできるんだから」 (第170話)


また、「虹」は雨の後にかかるものですが、
これが、泣いた後に笑顔になろうとする、
あかりの特長に結びついていると思います。
あかりの涙の後の笑顔は、雨の後の虹と同様に、
暗いところから明るいところへ、「元気になる」ことを象徴するものと言えます。
そして、あかりがそのように元気になることによって、
小陽(あかりの母親)がそうであったように、周囲もまた元気をもらうのです。

あかりには、どこか「普通」な面があって、
例えばスミレについては歌が、ひなきについてはモデルが、
特筆すべきものとして語られるのに対し、
特段何が一芸が秀でていると語られるわけではありません。
あかりの主たる活動である「大空お天気」は、
あかりを何かに秀でるアイドルとしては表現する類のものではないのです。

しかし、あかりは単なる普通ではありません。
普通は普通でも、目を離せなくさせ、人を笑顔に、元気にすることができる「普通」なのです。
あかりのこうした側面を、「空」というありふれたものに、
「虹」という人を元気にさせるものが加わった状態で表現しているのではないでしょうか。


確かに、第170話は「虹」という言葉を一回も使いませんでした。
しかし、翼が青空のドレスに最後に加えたのは主に七色の花の飾りでしたし、
ステージはあかりがドリーミングハートで空を虹色に変えるものでした。
ここには、「虹」があかりと関係するものとして提出されていることを見出せます。
あかりは、雨上がりに虹のかかった空のように、
人を笑顔に、元気にするアイドルとして描かれていたと思います。

(4) 結論

結論としてあかりは、第166話からの流れの中で、
主に三つの側面を持つアイドルとして提示されていたと思います。
つまり、第一に憧れのアイドルへと飛翔していくアイドルとして、
第二に停滞した状況から脱却して飛翔していくアイドルとして、
第三に苦境にあってすら笑顔になれ、それによって人を笑顔にすることができる、
虹のかかった空のようなアイドルへと飛翔していくアイドルとして、描かれていました。
どん底から憧れのアイドルを目指して大空へと飛び立ったあかりは、
憧れのアイドルの後を追いかけていく中で、
やがてその空に虹をかけて、人を笑顔にし、また元気にするアイドルへと、
更に高く飛翔していくアイドルとして、示されていたのではないでしょうか。



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テーマ:アイカツ!
ジャンル:アニメ・コミック

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