スポンサーサイト

--.--.-- --:--|スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

看護師からの逸脱と「Flucht」 (浅田あみルート感想①)

2012.07.24 23:01|百合作品
『白衣性恋愛症候群』の浅田あみルートをクリアしました。
とてもよいお話だったので、感謝も込めて感想と考えを書きたいと思います。

ちなみに私は諸事情により、昨年購入できなかったため、
リセラピーで初見になります。
そこで初めてクリアしたのがあみちゃんルートだったので、
色々知らないゆえの的外れな意見もあると思いますが、甘く見て頂けると幸いです。

それでは、少し長めですがお付き合いください。




○あみが必要としているケア:「看護師」からの逸脱

まず、あみが必要としていた「ケア」とは何だったのかを考えたいと思います。
あみルートにおいて、そのことが一つ重要なテーマであったと思うからです。

私は、あみが求めていたのは「精神的なケア」であったと思います。
それだけであれば、看護師の職務内と考えることができます。
しかし、あみが必要としているのは、看護師の職務を時に外れるような、
「看護師からの逸脱」を要求する看護であったと言えると思います。
あみに対して、かおりが「精神的なケア」を行おうとするとき、
どうしても看護師から逸脱せねばならないことがしばしばあるのです。

そのことは、共通ルートから個別ルートまで、
一貫して意識して描かれていたように思います。

中でも象徴的なのが、屋上のことを主任に伝えるか否かの選択肢です。
あみのルートとしては、ここは「黙っておく」のが正解です。
しかし、伝えた場合にやすこによって主に言われるように、
看護師としては転落の危険がある屋上を放置しておくことは誤りと言えます。
患者は治療のために入院しているのであって、
楽器の練習や癒しのためにいるわけではないからです。

しかし、看護師としては閉鎖は何も間違ってはいない処置だけれども、
それでもあみにとっては「屋上は憩いの場だから」必要だったと言えます。
だから、「黙っておく」のが正解なのです。
その意味であみは、「看護師からの逸脱」を必要とする患者でした。

その根拠は、ルートの終わり近くで明かされる、
あみが再入院した原因に求めることができます。

……わたしね、素直になれなかったんです。
友達に嫌なこと言って、先生にも素直になりなさいって叱られて……
フォルテールは気持ちをうつす鏡なんだから、そんな気持ちで演奏しては、
聴く人にモヤモヤした嫌な気持ちを発生させてしまうでしょうって。
そんな時でした。
友達が……わたしの音を『聴いた人を不幸にする死神の音だ』って
陰で笑ってるのを聞いてしまったんです。
辛かった……。
モヤモヤした気持ちで演奏してたから否定もできなくて……っ。

そのストレスでネフローゼが悪化した……?


あみの再入院は、身体的にはネフローゼの悪化でした。
しかし、その身体的な疾患の裏にあったのは「ストレス」です。
当然「治療」も必要でしたが、それ以上に彼女には「癒し」も必要だったのです。
現実と戦う勇気を思い出すまで、精神的に癒される必要がありました。
あみにとって、病院は治療の場というより、「避難所」であったのです。

あみにとって、治療よりも癒しが必要だったというのは、
彼女の退院間際の行動からも分かります。
順調に治療は進んでも、現実と戦えるだけの決断ができていなかった彼女は、
食事を放棄し、長く病院に居続けるという「逃げ」に至ります。
彼女の精神的な問題が癒されなければ、結果的に看護は達成されないのです。

彼女が真の意味で完治するためには、
「看護師から逸脱」しながら、かおりが「癒しの看護」を行っていく必要がありました。


しかし、「看護師からの逸脱」を求める以上、
かおりは本来、あみに対してそれを行う必要はありません。
むしろ、そうしたケアを続けることは自身の身を危うくします。
それなのに、何故、かおりはあみをケアし続けたのでしょうか。

ここが、ルート終わり近くのかおりの言葉に結びつき、
けだしその言葉こそ、あみルートの本旨です。
引用します。

ナースさんたちは……
かおりんさんたちは仕事だから、
わたしに優しくしてくれてるのに……。

それは違うよ、あみちゃん。

え……?

たしかに仕事だからっていうのもあるよ。
でもね、それだけじゃないよ。
優しくしてあげたいから、優しくしてるのよ。


時に「看護師から逸脱」しながら、あみを見てきたかおりだから、
この言葉は言えるのだと私は思います。
看護師だからではなく、優しくしたいから、彼女はあみに優しく関わるのです。

看護師として判断するのなら、間違いなく屋上のことを主任に報告すべきだし、
他の場面に目をやっても、身体のことを第一に考えて泣かれても病室に返すべきだし、
演奏会にどうしても参加したいと言われても断るべきです。

しかし、精神的な部分をフォローするとき、
どうしても「看護の本質」から外れなければ看護ができないという、
まさにその難しさを、あみルートは示しているのだと思います。


なぎさが頼まれて無断で屋上の演奏会に連れ出した女の子の言葉が、
さゆりによって伝えられます。

……彼女から伝言です。
無理をして浅田さんの演奏を聴けたお陰で、
手術を受ける勇気が湧きました……だそうです。


これに対して、かおりは考えます。

でもそうなると、なぎさ先輩の行動は、
全部が全部、間違ってたわけじゃないのか……。
怪我の功名ってやつかも知れないけど、
やっぱり看護って難しいなぁ。


悪化の危険があった彼女を屋上での演奏に連れ出し、
実際に倒れてしまったことにより、なぎさと、彼女を庇おうとしたかおりが謹慎になるわけですが、
手術への勇気、恐怖からの癒しという精神的な面では、正解だったのです。

この結論からも分かるように、あみルートは、
「看護からの逸脱」を描き、それが危険をはらむものであることを提示しつつも、
精神的な癒し、現実に立ち向かう勇気へのケアを必要としていたあみには、
それがどうしても必要なものであったことを示しているのだと思います。

あみにとっては、かおりの優しさ、癒しの看護は正解に他ならず、
それゆえに逸脱から、彼女との「未来」に繋がったのだと私は読みました。



○Flucht(逃亡):現実からの逃亡、そこから現実への脱却

あみの個別ルートには、「Flucht」という名前が付けられています。

多様な意味を持つドイツ語であるため、様々に解釈できますが、
私は、あみが現実から「逃亡」することで始まり、
その「逃亡」から脱却するルートであるという意味が、
込められているのではないかと考えています。


現にあみルートは、ルートにもよりますが、
あみが退院を恐れて食事拒否を行い、現実から全力で逃げる状態になった後で、
やがてあみ自身が現実に立ち向かっていく決意をするルートです。

あみは、現実から「逃亡」している状況から、「脱却」して現実に立ち向かっていきます。

これをかおりの立場に置き換えてみれば、
現実のストレスから避難してきたあみの「癒し」である状況から、
現実に立ち向かうための「勇気」へと変わっていくルートと言えると思います。


あみは、悲劇のヒロインぶっているだけだと叱咤するさゆりを始め、
病院で病気と戦っている周囲のみんなからも、
現実と戦う重要性を学んでいると考えられますが、
中でも「勇気」を授けてくれる存在は、かおりをおいて他にありません。
最後近くのあみの言葉を引用してみましょう。

わたしに……現実と戦う勇気をください。


NormalとZukunftでは、かおりが「勇気を与えてくれる存在」になっていると、
ここにはっきり表れていると考えることができます。

「Flucht」と名付けられたあみルートは、
あみにとっては、かおりの助けを得て「逃亡」から「脱却」へ至るルートで、
かおりにとっては、あみのために「癒し」から「勇気」へと変わるルートと考えられます。


それでは、このルートのそれぞれの選択肢を中心に考えて見ましょう。

選択肢は五つあります。
最後以外は、かおりが自己の中の少女からの質問に答える形で提示されます。
友達って――何?
人はどうして生きていかなくちゃいけないの?
こうした質問に、かおり自身が答えていくわけです。

そこでの質問は、あみの抱えている問題に関係するものが多くなっています。
友達関連は特にそうでしょう。
少女への答えはあみに直接は向けられませんが、有意に関連し、
そこでの選択があみの今後に大きく関わってきます。
特に三番目と四番目は、深くあみに関わっている質問であると思います。

まず、三番目の質問です。

好きだって気持ちを伝えるには、どうすればいいと思う?


選択肢は、①正直に、好きって言えばいい、②気持ちが伝わるまで待つ、です。
正解は①です。
これは、あみが上述の引用のように「素直」になれず、
友人と仲違いした状況と符合します。
ここで②を選択してしまうと、問いかけた少女には不評ではないのですが、
あみの「逃げ」を是認することに繋がります。
ゆえに、①が正解なのだと私は思います。
あみが病院での「癒し」の上に安住しようとしないようにするためには、
大切な人に対して「素直」になることが必要であることを提示すべきなのでしょう。


次に、四番目の質問です。

友達に『他人を不幸にする死神』って言われたら、どうしたらいいんだろう?


①そんなのひどい!、②それは才能だよ、の二択です。
ここで②を選ばないと、グッドエンドであるZukunftには向かえません。
他人を不幸にする能力も才能で、使いようではないかとかおりは言います。

これがなかなか難しい選択肢であると私は思います。
何故、一緒になって怒ってはいけないのでしょう。
実際に①を選ぶと、少女は「ありがとう」と言ってくれます。
②は、かおりの言葉にはなかなか納得できない部分もあります。

この場面は、あみが友人からフォルテールの演奏を、
「死神の音」と言われたという事実に重なります。
それを踏まえて考えて見ると、あみと友人とを仲直りへと歩ませるためには、
②である必要があるのではないでしょうか。

①は、友人の言葉に自分も怒ることで、
少女の心にもあっただろう、友人への怒りを正当なものと是認することになります。
少女にとって、それは「癒し」にはなるかも知れませんが、
友人と仲直りする方向へは進むことができません。

むしろ、仲違いが継続する手助けをすることになります。

あみに必要なのは、仲直りの方へと引っ張っていく、
後に「勇気」となる、そのような言葉だったのではないでしょうか。
そうだとすれば、友人の言葉をポジティブに捉えるかおりの言葉は、
少女の傷を癒すとともに、少女に仲直りへ進ませる契機になり得ます。

だからこそ、②であるのだと私は思います。

そして、最後の選択肢です。
ここでは、少女からの問いかけではなく、かおり自身が行動を選択します。
なぎさとともに謹慎処分になっている最中に、
あみの元へ向かうかどうかの分岐です。
ここで大人しくしているを選ぶと、
それまでの選択の正否に係らず、あみから笑顔が消えます。

けだし、この最後の選択は、あみルートにふさわしく、
「看護師からの逸脱」の極致になっています。

看護師としては、謹慎処分中であるのだから、当然大人しくしておくべきです。
そうしなければ、下手をすると解雇になりかねません。

しかし、間違いなく傷ついているあみのために、
かおりが看護師から逸脱できるのか、それが再び問われているのです。
逸脱できれば、あみはかおりを勇気の契機となすことができます。
けれども、できないのならば、あみにとって最大の裏切りとなるでしょう。

あみが身体的に具合が悪いというわけではなく、
精神的に傷つき臆病になっているからこそ、
かおりの「看護」が必要なのだけれど、
同時にそれはかおりが「看護師」の枠から外れることにより、
初めて成されるような「看護」なのです。

結論として、「Flucht」は、かおりの「看護師からの逸脱」の果てに、
かおりがあみにとっての「癒し」から、「勇気」への契機となって、
あみを現実「逃避」から「脱却」させられるかということが問われているのだと思います。




以上で一先ず終わりです。
しかし、あみの四つあるエンドについては、後に個別に考えていきたいと思います。
とりあえず、今日はあみルートの総括でした。

実は一度、記事のデータがすっとびまして、
一から書き直す破目になったのですが、
何とか今日中に挙げることができました。

実際とても面白く、考え甲斐のあるシナリオでしたので、
感謝の念も込めて書かせていただきました。

テーマ:百合
ジャンル:アニメ・コミック

コメント

面白かった。

読み応えのある文章で凄く面白かったです(^∇^)
介護の資格を持っているので、主人公の動きを文章を通して読むとツッコミたくなりますが、ハッピーエンドが好きな僕には手強いゲームだと思いました(^_^;)

返信です。

>ケージさん

コメントありがとうございます。
そう言っていただけると幸いです。

介護の資格をお持ちなんですね。
そうなると一層、あみルートのテーマについては色々と考えるところがありそうですね。
職業上の原則だけでは上手くいかない部分があるということは、個人的に結構悩ましい問題です。

白恋は、確かにハッピーエンド以外のエンドが充実していますよね。
ものによってはかなり衝撃的なものもあって当時は驚嘆したものですが、それも今では良い思い出ですw
非公開コメント

プロフィール

天秤

Author:天秤
天秤と申します。
アニメや漫画など、好きなものについて考えたことを書き込みます。
よろしくお願いいたします。

カレンダー

03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -

カテゴリ

最新記事

最近のつぶやき

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

アクセスカウンター

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

RSSリンクの表示

リンク

QRコード

QR

  • ページトップへ
  • ホームへ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。