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これからの祥子と歩む祐巳への ――優の「もっと上のステージを目指せよ」が持つ含意 (『マリア様がみてる 薔薇のミルフィーユ』)

2015.10.25 18:09|マリア様がみてる
今回は、『マリア様がみてる 薔薇のミルフィーユ』について考えます。
時期としては、祐巳が瞳子との問題に本格的に直面する直前、
一冊の本の中に、紅薔薇、黄薔薇、白薔薇――それぞれの姉妹の物語を詰めた、
題名どおり薔薇がミルフィーユのように折り重なった作品です。
アニメでは、第四期第五話において、紅薔薇の物語のみアニメ化されました。
この記事では、祐巳と祥子の物語の次の場面に焦点を当てます。
祐巳が祥子と念願の遊園地に向かうものの、
祥子の具合が悪くなったときに優のように対応できず、
それゆえに嫉妬していたのに対し優が言葉をかけた場面です。

「僕は確かに、さっちゃんを好きだし、愛しているかと問われればイエスと答える。でも、好きにもいろいろある」
「いろいろって」
「さっちゃんが好きだが、祐麒も好きだ。そして、もちろん祐巳ちゃんのことも好きだよ」(中略)

「最後に一つだけ。僕を倒したって、君は勝てないよ」
「それは、どういう――」
「僕に嫉妬しているようじゃ、まだまだってこと。こんな所に留まってないで、もっと上のステージを目指せよ」
 (「薔薇のミルフィーユ」、181-183ページ)


この場面の優の「もっと上のステージを目指せよ」というメッセージは、
単に祐巳と優は祥子との関係において、
別々の位置に立っているということを示唆するだけのものではありません。
そういったテーマと同時に、祐巳が優の位置にいては駄目だということ、
優の位置は「こんな所」に過ぎないことまでも示唆しているのです。

ゆえに、このときの優の言葉は、祐巳が自分の内には、
色々な部屋があることを知覚し(「くもりガラスの向こう側」、144-148ページ)、果てには典に、
「好きは比べられない」と述べるに至る(「薔薇の花かんむり」、94-102ページ)辺りで明確になる、
「人間関係には順位が付けられないことがあり得る」という、
紅薔薇の物語のテーマとはある意味で独立に存在していると捉えられます。

「もっと上のステージを目指せよ」の直前の、
「好きにもいろいろある」という優の言葉については、
「好き」に順位を付けることができない場合もあるというテーマを含んでいるので、
明らかに後の典との対峙の場面に繋がっていますが、
この「もっと上のステージを目指せよ」という言葉だけは、
そういったテーマ以上のことも示しているのではないでしょうか。

今回は、この問いから、祐巳と優の立ち位置の違いを考えたいと思います。

先の言葉の中で強調されているのは、祥子との関係において、
祐巳と優は別々の部屋の中にいるため、競い合う関係にないということと言うより、
祐巳が優に優越している(優越し得る)ということです。
優は祐巳が自分と競おうとするのを、「それぞれ違う立場だから」というのではなく、
「君はこんな所で競うべきではないから」という理由で諌めています。

これは何故かを考えてみると、祥子にとっての優との関係というのは、
「これまでの祥子」――それはお嬢様、ないし生粋のリリアン生というイメージに適合するものです
――を形成するものであるのに対して、祐巳との関係というのは、
それとは異なる「これからの彼女」を形成するものであるためです。

優が遊園地で祥子を助けたとき、祥子は人ごみでまいってしまう、
いかにもお嬢様的な「これまでの祥子」として扱われていると言うことができます。
優は、祥子が「これまでの祥子」のまま生きていけるように振舞うのです。
それは重要な役割ですが、祥子が変わろうとし、また変わる鍵にはなりません。

祐巳はそうした優の立場に対して、
「これまでの祥子」から祥子を抜け出させる位置にいます。
祐巳は、祥子をハンバーガーショップに連れ出し、
遊園地に連れ出し、果ては花寺に連れ出しました。
祐巳は、祥子を「これまでの祥子」から抜け出させて、
「これからの祥子」に成長させる鍵なのです。

だから、祐巳は優の位置で留まっていてはいけないと考えられます。
「これからの祥子」にしていく祐巳が、
「これまでの祥子」を補佐して肯定するような優と同じステージにいるべきではない。

優が祐巳に自分の位置を下げて語るのは、
彼が祐巳による祥子の変化を望ましく思っているからに他なりません。

実際、祐巳が優のように振舞えるようになったらどのような事態が想定されるかというと、
極端に言えば、祐巳が「これまでの祥子」のことを鑑みて、
遊園地等に連れ出すこと自体を躊躇するようになるのではないかと考えられます。
「これからの祥子」に変えていく祐巳が、そうあるべきではないことは自明です。

それでは、優自身が「これからの祥子」に変えていく立場に付くことはできないのでしょうか。
けだし、優との関係自体が、「これまでの祥子」を形作ってきたために、それはできません。
とりわけ顕著なのは、男性が苦手であるという「これまでの祥子」の中心的性質とも言えるものを、
作り出してしまったのは優その人に他ならなかったということです。
優は、祥子が「これまでの祥子」のままでいられるように補佐するだけでなく、
その「これまでの祥子」をある程度作ってしまった張本人でもありました。
それゆえに、祥子が祥子自身を克服する鍵にはなれないのです。

そこで、祥子が克服するために助けになるのが祐巳(と蓉子)でした。
優はただ、そこで祥子が「これから」へ移行しようとする際に、
必然的に生じる相応の摩擦を捉えて、
必要ならば「これまで」のやり方で支えるという立ち位置にあるのです。

結論として、優の「もっと上のステージを目指せよ」という言葉で表されているのは、
次に言うような、祥子に対する祐巳と優の立ち位置の違いに他なりません。
すなわち、優は「これまでの祥子でもいられるように補佐する立場」であり、
祐巳は「これまでの祥子から抜け出させる立場」なのです。
そして優は、祐巳による祥子の変化を好ましく思っているので、
祐巳が自分と「こんな所」で競おうとするのを諌め、
「もっと上のステージを目指せ」と言ったと考えられます。
それは、これからの祥子とともに歩む祐巳への、
これからの祥子を願う「同志」からの発破であったに違いないのです。



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テーマ:マリア様がみてる
ジャンル:アニメ・コミック

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