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再び一人で「虹の彼方」へ ――自らの「知恵」と「勇気」と「心」で行くドロシー (アイカツ!第144話考察)

2015.08.09 17:37|アイカツ!
今回は、先日放送された『アイカツ!』第144話について考えます。
スミレの『エメラルドの魔法』での新ステージと、
あかりとひなきがスミレにドッキリをしかけようと奮闘する物語で構成されていた本話。
この記事でまず指摘したいのは、このどちらにおいても、
『オズの魔法使い』が強く意識されていたというころです。
『オズの魔法使い』との重なりを意識したときにこそ、
初めて第144話のテーマが本当に見えてきます。
思うに、第144話はそのような物語でした。
そこで、この記事では、ステージと物語の両方について、
『オズの魔法使い』との結びつきを指摘した上で、
そこに表されていたスミレに係るテーマを考えていきたいと思います。
もしよろしければ、内容を思い出しつつ、お付き合いいただければ幸いです。

(1) 第144話のステージ:虹の彼方のエメラルドの光へ

第144話のステージは、ここでスミレが着たドレスが、
『オズの魔法使い』の主人公ドロシーをイメージした、
グロウスドロシーコーデであったことを踏まえて、
この物語を強く意識したものになっていました。
黄色いレンガの道を歩いて、虹の彼方のエメラルドの光を目指すイメージです。

『オズの魔法使い』は、内容をざっくりとまとめると、
虹の彼方により良い場所があると夢見ていたドロシーが、
ある日竜巻に巻き込まれて別世界に辿り着き、元の世界に戻るために、
黄色いレンガの道を歩いて魔法使いのオズのいるエメラルドの都を目指すというものです。

だからこそ、ステージ曲の『エメラルドの魔法』は、「その(=風の)渦に巻かれても」、
恐れずに「遠く虹の彼方へ」向かい、「エメラルドを掴む」ことを歌うことで、
『オズの魔法使い』のドロシーと重ねつつ、
これからもアイドルとして進んで行くスミレの姿を表現しています。

また、この曲だけでなく、この曲を歌うステージも、虹へと続く道の途中となっていて、
サビの辺りからはそのままドロシーたちの歩いた「黄色いレンガの道」が登場します。
そして、その上を歩くスミレの履く靴は、ドロシーの履いていたルビー色の靴なのです。

aikatsu11.png
 スミレの足を彩るのは、寒色に映えるルビーの靴。

ここまでは調べ物の範囲なのですが、問題は、
こうして『オズの魔法使い』と重ねられていることを意識した上で、
スミレの物語を如何に読むかということです。
物語のドロシーのように、虹の彼方へと進むことを歌ったスミレにとっての、
目指すべき虹の彼方とは何であったのでしょうか。

一つ考えるべきだと思うのは、今回もさらっと登場していた、
観客の盛り上がりを示すステージ頭上のゲージです。
これが今回は、曲の最後の時点でほとんど満タンになっていましたが、
この満タンのゲージの色が虹色と目せるものでした。
第144話のステージの最後で、背景の虹と被っています。
とすれば、スミレにとっての目指すべき場所は、
その意味での「虹の彼方」ではなかったでしょうか。

aikatsu10.png
 背景の虹と、ゲージの虹色が同一の画面に映るラスト。

つまり、ゲージが虹色になるくらいに、
観客を盛り上げることができるアイドルとなったスミレが、
アイドルとしての更なる高みを目指すことを指して、
「虹の彼方へ」という言葉が出て来ているのではないかと思うのです。

今「七色の光のその中で」、もっと熟し得ることを象徴する緑色を目指す物語。

さて、『エメラルドの魔法』が、そのように『オズの魔法使い』を多分に意識したものであっても、
他方でスミレがこれまでに歩んできた、
長い道のりを思い出させるものでもあったことには注意するべきでしょう。
歌詞の中の、「グリーンアップル」と「”目を開けて”辿り着く」という部分です。

第一に「グリーンアップル」については、言うまでもなく、
スミレが第108話以降表現してきた「リンゴを抱く白雪姫」の先に見るべきですし、
第二に「”目を開けて”辿り着く」については、
第130話以降表現してきた「休息するバレリーナ」の先に見るべきです。

つまり、今までリンゴとは「白雪姫の毒リンゴ」でしかなく、
専らロリゴシック的なダークなイメージを持つモチーフとして登場してきたのですが、
ここに来て成熟の余地があるイメージを持つモチーフとして登場してきたのであり、
スミレが更に先に進み得ることを表現していた気がします。

こういった「ダークなイメージ」からの更なる成熟と言って最初に想起するのは、
第89話でハッピーレインボーを着て朝のシリアルのCMをやってのけた、
偉大で高貴な吸血鬼の姿なのですが、スミレが今後挑戦するのは、
そういった類の「更なる成熟」なのかも知れません。
ダークなイメージからの更なる成熟は、ユリカの歩んだ道を思い出させるものなのです。

第二に、「”目を開けて”辿り着く」という部分については、
『オズの魔法使い』でドロシーが経験した冒険が、
最後にドロシーの夢であったことが示されることと対比的で、
スミレの辿り着くべき「虹の彼方」が単なる夢の世界でないことを示しています。
スミレは、夢の中でその場所に辿り着くのではなく、
自らの手で、現実においてその場所に辿り着かねばならないのです。

また、「"目を開けて"辿り着く」という表現は、
一時の休息を描いた『チュチュ・バレリーナ』と合わせて考えるべきものです。
『エメラルドの魔法』は、スミレが凛と一緒にユニットを組んでいた、
ある意味での休息の時間から、再び一人で歩み始めることを描いていたと考えられます。

そもそもスミレたちあかり世代の目標として設定されていたのは、
第124話で示されているように、スターライトクイーンになることでした。
それは、スターライト学園で最も輝く「一人」になるということです。
この目標を鑑みると、ユニット活動は次のステップに進むための、
転機となる重要な活動であったに違いないのですが、
同時に二人で進んで行く、ある種の休息の時間でもあったとも考えられます。
そこから起き上がって、スミレが再び一人で「虹の彼方」に歩んでいく姿が、
『エメラルドの魔法』においてはテーマとなっていたと思います。

(2) 第144話の物語:スミレの「知恵」と「勇気」と「心」

さて、第144話のステージと『エメラルドの魔法』が、
『オズの魔法使い』を意識したものになっていたということは上に述べたとおりですが、
重要なのは、第144話の物語もそうであったということです。
どっきり作戦の中で、スミレはどのようなアイドルとして語られていたか。

けだし、第144話でスミレは、三つの徳性を持ったアイドルとして語られていました。
それが、『オズの魔法使い』でかかしとライオンとブリキの木こりによって求められた、
「知恵」「勇気」「心」であったのです。
どっきり大作戦は、スミレのこの三つの側面を浮き上がらせた。

第一に「知恵」は、生魚を平然と扱って見せるシーンです。
ここは、スミレが生魚という自分にとっての困難を、
自分の知恵でどうすれば克服できるかを考え、実際に克服した場面であり、
ドロシーたちが地割れという困難に直面したときに、
かかしが知恵を出して乗り越えた場面に重ねられます。

第二に「勇気」は、脱走した羊を飛びついて止めるシーンです。
ここは、スミレが羊のために自身の身の危険を冒してまで飛び出した場面であり、
ドロシーたちがカリダに襲われそうになったときに、
ライオンが持っていないはずの勇気をもってその前に立ちはだかった場面に重ねられます。

第三に「心」は、自分でどっきりマシーンに引っかかってしまったあかりを心配して、
スミレがその目に涙を溜めていたシーンです。
ここは、あかりに対して強い想いを抱いているスミレの心がよく表れている場面であり、
ブリキの木こりがカナブンを踏みつけてしまって涙を流した場面に重ねられます。

このように第144話の物語は、『オズの魔法使い』において、
かかしとライオンとブリキの木こりにそれぞれ求められ、
その実それぞれが最初から持っていた三つのものを、
スミレが持っているということを描くためのものであったと読むことができます。
その上に、『エメラルドの魔法』のステージがあったのです。

つまり第144話では、スミレは以前のような試練もなく、
『オズの魔法使い』のドロシーをイメージしたドレスを手に入れているのですが、
スミレがそのドレスを着るにふさわしいアイドルであることは、
物語中でスミレの「知恵」、「勇気」、「心」が語られることにより示されていました。
スミレはここにおいて、ドロシーと重ねられ、かつ、ドロシーを越えています。
すなわち、『オズの魔法使い』でドロシーは、
それぞれに「知恵」、「勇気」、「心」を持った者たちとともに、
困難を乗り越えながらエメラルドの都へ向かって行ったのですが、
対してスミレは、自分の「知恵」と「勇気」と「心」で困難を越えつつ、
一人で悠然と、黄色いレンガの道を歩いていくのです。



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