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アイドルとして「輝ける」場所は東京ではなくて (壱号『アイコンタクト』)

2015.02.08 16:19|百合作品
百合アンソロジー ユリボン (バーズコミックス デラックス)百合アンソロジー ユリボン (バーズコミックス デラックス)
(2014/12/24)
ほか 渡辺ペコ

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今回は、百合アンソロジー『ユリボン』に収録されている作品から、
壱号さんの一連の作品、『アイコンタクト ホームゲーム』と、
『アイコンタクト ビジターゲーム』について私なりに考えてみます。
簡単にあらすじを紹介すれば、有名になりつつあるご当地アイドルのかなえと、
彼女を近くで応援してきた初めてのファンの透子のお話です。
ご当地アイドルの枠を超えて、全国的に有名に、人気になっていくかなえを、
複雑な気持ちで眺めていた透子の気持ちが前者で描かれ、
それに対してかなえの気持ちが後者に描かれていく構成となっています。

注目すべきは、かなえが東京の事務所に移籍するかどうか迷っていたのに対し、
透子が自身の気持ちに整理を付けて背中を押す言葉をかけるにもかかわらず、
かなえはその言葉を受け取って東京行きを決めるわけではないということです。


というのも、かなえが有名になっていくことについて、
「手の届かない存在になっちゃうのかな」(141ページ)と考え複雑な気持ちでいた透子が、
「大好きだから」(142ページ)どこにいても応援するという、送り出す覚悟をしたのに対して、
かなえはそれを受け入れず自分は残るという選択をするのです。
透子が「どこにいてずっとずっと応援してる」と伝えた後、
かなえは彼女に対して次のように答えています。

「待って!」

――何で迷ってたんだろう そんな必要無かったのに
 かなえが一番笑顔を届けたいのは 透子ちゃんだから

「かなえ?」
「透子ちゃんは! かなえの初めてのファン!
 だから… ずっと持ってて!
 初めてのサイン… あげる!」

――かなえが笑っていられるのは かなえが輝けるのは
 それはきっと 大好きな人が側にいるから (143-147頁)


透子は背中を押しているにもかかわらず、
かなえはそこからむしろ透子の存在の大きさを再認識しており、
結果として地元に残る決意をしたのだろうということがここから推定できます。
透子が言葉とともにかなえに投げ返した始球式の野球ボールを、
かなえが更に透子に投げ返しているのは象徴的です。

この部分は、東京の事務所への移籍がかなえにとっての前進に見え、
地元に残るという選択は前進を拒み留まることを選んだように見えるだけに、
この答えで良かったのかという疑問を人によっては抱き得るのではないでしょうか。
特に「沢山の人達を笑顔にさせたい それがかなえの願いだったろう」(135ページ)とあるため、
この疑問は浮き上がってきやすいものかと思います。

今回は、だからこそ、この結末の意味を考えてみたいと思います。
かなえが送り出される展開ではなかった意味とは何なのでしょうか。
換言すれば、透子に背中を押されて東京へと前進していくかなえの姿の代わりに、
この作品は何をテーマとして提出しているのでしょうか。

一つ考え得るのは、前進を拒んだかのように見える地元に残ることの選択が、
実はかなえにとっての前進であったのではないかということです。
そもそも東京に行くことが前進であって、
地元に残ることが前進の拒否であるという捉え方自体が、
あくまで一つの捉え方でしかなく、必ずそうとは限らないのではないでしょうか。
この作品は、それとは別の考え方を提示しているように思います。

つまり、通常東京へ行くか地元に残るかということは、
前進を選ぶか前進を拒むかという選択のように見えますが、
実際は地元に残ることも別種の前進なのではないかという考え方です。
アイドルが到達すべき場所は何処なのか。
この問いに対し、アイドルが到達すべき場所は必ずしも東京ではないと突き付けるのが、
この『アイコンタクト』という作品であったのではないかと思います。
アイドルが到達すべき場所は、必ずしも多くの人の目に留まる東京ではなく、
彼女が最も「輝ける場所」であり、それゆえに東京行きを辞めたことは、
前進の拒否でなくて、かなえの前進の選択に他ならないのではないでしょうか。
かなえはアイドルとして、透子の側へと改めて「前進」したのです。

かなえの暴投が、始球式でプロには取れなくて、透子には取れたのは、
以上に述べたことを表す事柄であったのではないかと思います。
かなえは始球式のインタビューで次のように語っています。

「プクプク動画です! 配信を見てるリスナーに何か一言!」
「いや~気合い入れてスパイク履いてきちゃって ちょっとリキんじゃいましたー
 それに… …女房役(よめ)がボール受けてくれないとダメみたい
 もっと練習してきます!」 (31-32ページ)


圧倒的な暴投は、ご当地アイドルの枠には収まらず、
全国区でも活躍できそうなかなえ本人を象徴するものと読めます。
それをプロが取れず透子が取れるということは、
彼女を受け止める場所が、そうであるべきでありそうなプロ(東京の事務所)ではなく、
あくまで透子に他ならないということを示しているのではないでしょうか。

かなえが進むべきアイドルとして「輝ける」場所とは、
ただ一人の「女房役」の側に他ならなかったのです。


テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック

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