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お互いに、少しずつ変わって (吉田丸悠『きれいなあのこ』)

2013.12.07 15:04|百合作品
きれいなあのこ (ひらり、コミックス)きれいなあのこ (ひらり、コミックス)
(2013/11/30)
吉田丸 悠

商品詳細を見る


私のことバカだと思ってるくせに。

大切なあのこを泣かせてしまった。
グループは解散の危機――。
俊英が描き出す、生傷だらけのフツーのアイドル――。(帯より)


先月末ひらりコミックスから、吉田丸悠さんの『きれいなあのこ』が発売されました。
アイドルグループ「絶会」のメンバーである六人の少女たち、
そのそれぞれの人間模様を描いて見せた短編集です。
芸能活動にまつわる対抗心やコンプレックス、
かわいいと見られることへの執着などが、主なキーワードでしょうか。

単に百合作品として二人の関係を描いていくだけではなく、
そうした複雑な心情まで掘り下げて見せている作品と言えます。
感情が爆発する、ここぞという場面は鋭く胸を突きます(30、113、150ページ等)。

今回はその中でも表題作である「きれいなあのこ」に注目します。
この物語を紹介しながら、その内容について考えていきたいと思いますので、
未読の方も既読の方も、もしよろしければお付き合いください。



○『きれいなあのこ』:お互いに、少しずつ変わって


(1)感想を交えつつ「きれいなあのこ」あらすじ

まずは、「きれいなあのこ」の内容を軽く確認しておきましょう。
この短編は、アイドルグループ「絶会」に所属する真鈴と、そのクラスメイトの加代の物語です。
小さい頃から子役として芸能界にいたため、「処世術」(8ページ)ばかり上手くなった真鈴は、
ささいな事に感動し、またすぐに次のささいな事を見つける、清純な加代に惹かれていきます。
そしてあるとき真鈴は、その感覚を率直に加代に伝えます。

「一応「リアルJK」とか「天然清純派」とか
 そーゆー感じで売ってんだけどさ
 だからあんまりハデなおしゃれもできないし 彼氏とかも作れないし
 でもねーリアルJKだったら彼氏くらいいるよねえー?
 髪だって茶パとか金パにしちゃってさー
 だから「天然清純派」なんてクソくらえとか思ってたの
 でも谷本さんはそーゆーのとは違う気がする なんていうか……
 きれいな水とか 光とか 空気とか そんな感じ 谷本さんは私の理想なの
 谷本さん ずっとそのままでいてね……」 (14-16ページ)


けれども、真鈴は加代のいないところで、いつもの「処世術」を使ってしまいます。
すなわち、加代を「バカ」と言われて、一瞬言い返そうとするのですが、
すぐに思い直して「いい笑顔」で答えてしまうのです。
ここの真鈴が答える直前の一瞬間の描写が極めて秀逸です。
何かを言い返そうとしたのを引っ込めて、いつもの笑顔で肯定する。

それが真鈴の口の動きだけで分かるようになっています。

「あらー あなたここのお嬢さんのお友達?」
「あ はい……」
「昔っからあそこのお父さん問題あってねェ 前にも事件起こしたのよ
 娘さんもいい子なんだけどねェ
 ちょっと頭弱いっていうか おバカさんっていうか……あらやだ!」

……そうですね
「ねー家柄って学力に影響すんのねェ」 (22-23ページ)


けれども、このやり取りの一部始終は実は加代に聞かれていたのです。
加代が親戚の元へと引っ越していくまさにそのとき、
真鈴が加代の好きだったドラマの決め台詞で送り出した直後、加代は感情を爆発させます。
一度読んだ方には言うまでもないと思いますが、この場面は確実に胸に刺さります。
コマ送りでゆっくりと進む時間、真っ白な背景、その中で表情が全てを持っていくのです。
文章の引用では一割も良さが伝わらないので、是非実際に見てみて欲しいと思います。

「じゃあうち行くね! メールするね!」
「うん」
「また遊びに来るね!!」

「チェリーの下で会いましょう! あばよ!!」


あたしの事バカだと思ってるくせに!!」 (27-30ページ)


そのまま二人は別れてしまう。
加代は遠い東北の地へ、手紙に返信もありません。
そこからラストシーンに繋がるのですが、そこまでは書かないでおきましょう。


(2)お互いに、少しずつ変わって

それではここからは、「きれいなあのこ」という物語について私なりに考えていきます。
結末のネタバレも含みますので、是非一読した後にお読みください。
この短編は結局、どのような二人が、どうなっていく様を描いたものなのでしょう。

最初に、真鈴と加代は「そのままでは一緒にいられない二人」として提示されています。
長らく芸能界にあって世間を知りつくし、「処世術」に慣れてしまった真鈴と、
全然世間を知らず、小さなことに感動できる純粋な加代。
正反対の二人は、決して二人ともそのままで一緒にい続けることはできないのです。

そのことを痛烈に示したのが、上述の一連の事件です。
真鈴は加代が「バカ」と言われたときに、「処世術」で肯定してしまいました。
純粋な加代は純粋だからこそ、それを「処世術」に過ぎないとは考えられません。
真鈴の肯定を本心の肯定としてそのまま受け止めざるを得ないのです。
だからこそ、加代の「あたしの事バカだと思ってるくせに!!」に繋がります。
これは、二人の正反対の性質から引き起された、不可避の物別れだったと言えます。
真鈴は加代に「ずっとそのままでいてね」と言いましたが、
ずっとそのままでは二人は一緒にい続けることはできないのです。

そこで二人が選んだのは、お互いに少しずつ変わることでした。
物語の結びの部分を引用してみましょう。

四カ月後――

「ありがとうございましたー」
「やー木原さんはホントよく働いてくれるねぇ」
「いえ そんな事……」

「懐かしい?」
「いっ…いや そんなんじゃ」
「そんな気になんならまた事務所入りゃいいのにー」
……友達に謝っても謝りきれないような事をしてしまったので
 自分だけ悠々と夢を追うのはなんかいけないような気がして……
 別れてすぐ一度手紙を出した事があるんですけど返事がなくって……
 嫌われたってわかってましたけど」
「いやいやなかなかできる事じゃないよ 強くなったよ真鈴ちゃん」
「……オモテ掃除してきます」
「はーい」

「手紙読んだよ ごめんねあの時あんな事言っちゃって
 いやーあたしも子供だったからねえ!
 でもここしばらくでちょっとは世間を知ったから!
 ちょっとはず太くなったから…… だから……」

アイドルは泣かないの!
「……うん……」 (31-34ページ)


この場面に、二人の「変化」を見て取ることができます。
すなわち、加代は真鈴の「処世術」をそのまま受け止めてしまう原因となった、
「バカ」とすら解され得る純粋さを、「ちょっとは世間を知った」ことで変質させています。

また真鈴に関しては、最後の「アイドルは泣かないの!」と注意される箇所が示唆的です。
彼女は今や実際にアイドルではなく、またアイドルらしくもありません。
加代を傷つける原因となった「処世術」は、芸能界と結びついたものでしたが(8ページ)、
そこから引きあげたことで真鈴も変わったと考えることができます。

二人はそうして少しずつ変わることで、二人で歩いていく道を選んだのです。

結論として「きれいなあのこ」は、片や世間すれ、片や純粋という、
そのままでは一緒にいられない二人の関係を扱った物語であると言えます。
最終的に二人は少しずつ変わって、二人で「これから」(168ページ)へ向かっていきます。


テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック

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