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恋人でもありメイドでもあること(かねだなつみ「彼女なメイド」)

2012.06.23 23:33|百合作品
かのじょなメイド (IDコミックス 百合姫コミックス)かのじょなメイド (IDコミックス 百合姫コミックス)
(2012/06/18)
かねだ なつみ

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読んで非常にいい作品だと感じたので、何か記事を書こうと一念発起しました。

非常に簡単にあらすじを述べれば、まず結子がのばらの小間使いになり(給与は定期代に)、
そこから次第にそれ以上の恋愛関係に発展していくという感じです。
結子は「彼女」になった後、のばらから「メイド」としてお金をもらうことについて、
色々悩むのですが、最終的にメイドのバイトは続けることになります。
タイトルの通り、結子は「彼女なメイド」として、今後ものばらと関わっていくわけです。

私が面白いと感じたのは、お金をやり取りする関係が、恋人になっても維持されるところです。
これが非常に珍しく、面白い展開であるように私には見えました。

例えば、最初はメイドだったけれども、それが恋人に「変わっていく」話は多いと思います。
しかし、『彼女なメイド』は「彼女」でもあり「メイド」でもあるのが結論なのです。
彼女になったからと言って、メイドではなくなるということはありません。
ここが非常に興味深い部分です。

そこで、今回は「結子がメイドであり続ける意味」というテーマを考えてみようと思います。
追記から、感想や紹介を踏まえながら、自分の考えを述べていきます。




○のばらにとっての「プレゼント」

まず、作中でののばらの「プレゼント」への意識から考えていきたいと思います。

のばらは非常に無垢な女の子で、打算なしに人にぽんぽん贈り物をします。
この行動は彼女がお金持ちであるという事実以上に、
彼女の持つ考え方によると考えていいでしょう。

すなわち、のばらは「贈り物が親愛を表す」と考えています。
特に、Story.1でクラスメイトに贈り物をしようとする姿にそのことは表れています。

なんでみんなに小物?

あ えっとね
「いつもはげましてくれてありがとう」と あと 
これからもずっと 仲良しのしるし なんだー(32ページ)


そのため、とりわけ恋人である結子にはプレゼントをどんどん贈ろうとします。
家のリフォームすらいきなり行おうとするわけです。
しかし、結子はその行動が理解できず、Story.4では当惑してしまいます。
ここで、のばらのプレゼントに関する考え方がより詳らかに言明されます。

お花のストラップも ネックレスも
プレゼントしたらすごく喜んでくれたから だから
もっとすてきな物あげたら もっともっと笑ってくれると思ったの…っ(71ページ)


結子はこの説明で、贈り物がのばらの不器用な「愛情表現」だったと悟ります。
のばらは、「愛情からプレゼントをする」というよりは、
「プレゼントにより愛情を表す」という考えが強かったわけです。


これに対して結子が行ったことは二つです。
つまり、①「プレゼントより確かな愛しかた」を教え、②ペンダントを受け取りました

ここで素晴らしいと思うのは、のばらの考え方が否定されているわけではないことです。
すなわち、結子はプレゼント「だけが」愛情の表現ではないことを、
キスという別の方法を提示することで柔らかく諭した上で、ペンダントを受け取っています。
のばらの「愛情がつまった物」だからです。
贈り物という手段自体を否定しているわけではありません。

まとめると、結子は、「贈り物→愛情表現」だったのばらの考え方を、
贈り物に変わる愛情表現の方法を提示した上で、
「愛情→贈り物」という逆の考え方に緩やかに引っ張っていっているのです。


ここでのやり取りがあったからこそ、のばらが結子の誕生日に贈ろうとしたのが、
「キス」であったのだと私は考えます。

のばらの考え方を完全に否定するわけではない結論が、とてもいいと感じました。



○のばらにとっての「バイト」

のばらにとって、プレゼントがどういったものであったかを読んできましたが、
それでは、のばらにとって結子に提供するバイトはどのようなものだったのでしょうか。

バイトは一見、既述の贈り物の文脈で考えることができます。
親切にしてくれた結子に対する、愛情表現としてのプレゼントというわけです。
結子が躊躇ったので、定期代はプレゼントとしてではなく、
バイト代として払われることとなったと言えないこともありません。

しかし私は、のばらがバイトをプレゼントとは違うものとして考えていたと思います。
それは以下の部分から分かるのではないでしょうか。

助けてもらうばかりじゃなくて みんながしてくれたように
私もみんなを助けてあげられるようになりたい
ひとりでなんでもできるようになりたいの(31ページ)


のばらは、困っているときに皆が助けてくれるように、自分も皆を助けたいと考えています。
好意を持っている人に対してプレゼントを贈りたいという気持ちとは違う、
困っている親しい人に対して、自分が助けになりたいという気持ちです。

これは、のばらのもう一つの基本的な考えと言えます。
結子のバイトは、こちらに関係しているのではないでしょうか。

すなわち、駅で困っていたのばらを結子が助けたように、
定期代がなくて困っている結子を、のばらは助けたいと思ったのではないでしょうか。


これは一歩間違えれば、持つ者の持たざる者への上から目線の施しですが、
のばらの圧倒的な純粋さが、それを結子への「手助け」として成立させているように思います。

のばらと結子は、助けが必要な部分を、それぞれお互いが助けることにしたのです。
その結果が、結子が小間使いとしてのばらに色々教えることであり、
のばらが結子に定期代を出すということだったので、
たまたま「バイト」という形式が選ばれました。




○「バイト」の発展

相互の「助け合い」として、「バイト」が採用されましたが、
結子は自分がのばらにとって十分な助けになれているのか、
お金をもらうだけの働きができているのか疑問を抱き、カフェで働くことにします。

そこにのばらも付いてきますが、幼馴染のまことと出会ったことによって、
結子はますます不安になり、のばらと喧嘩してしまいます。
この喧嘩のシーンで、のばらのバイトへの考え方が提示されています。
結子がバイトをやることによって、お荷物になることを嫌がる場面です。

私はのばらちゃんのお荷物になりたくないの…っ

…どうして?
私だって協力したいのに 頼ってもらえないのってさびしいよ
なんでもひとりでやろうとして 私なんか必要ないみたいでやだよ(101ページ)


のばらは、困っている恋人、結子を助けたいという気持ちがあるため、
バイトを行っているということを結子に言います。
しかし、まことの存在もあって、ここで結子にはのばらの役に立ててないという意識があります。
そのためにそれだけでは収まりません。
もっと他の言葉を必要としていました。
それが以下の言葉です。

プレゼントでしか気持ちを伝えられなかった私に こんなよろこびを教えてくれた
私をこんなにうれしい気持ちにしてくれて
「なにもできてない」なんてことないでしょう?(110ページ)


のばらの役に立っているということを、このとき結子は再認識するのです。
これにより、バイトは勉強を含んで、少し形を変えて継続することになりました。
秀才の結子は教育を、お金持ちののばらは定期代を提供することにより、
これまで以上にお互いの不足を補い合う関係に発展したと言えます。

これをバイトの発展と述べることができるでしょう。

この一連の問題が起こった、Story.5とStory.6は、
まことと言うライバルを通して、恋人として二人が絆を強固にする話でありながら、
同時に主人とメイドとしても、仲を発展させたと考えられるように思います。




○結子とまことの差異

ちなみに、Story.5とStory.6では、結子とまことの差異が強調されています。
92ページからの二人の掛け合いに表れているように、
まことはのばらが失敗しないように動くのに対して、
結子はのばらが失敗から学べることもあると考え失敗を許容しています。


結子にはまことにはない「厳しさ」があると読めます。
それは114ページで、嫌がるのばらに勉強を教える場面からも読み取れます。
これは何を表しているのでしょうか。

けだし、結子は恋人として、そして小間使いとして、のばらが「みんなを助けてあげられるように」、
「教える立場」を担っていることが示されています。

それに対して、まことは傷つかないように「守っていく立場」です。
それも一つの正しい関わり方なのですが、結子はさらに「教える立場」でもあるのです。
まことの考え方が否定されるわけではありません。
その証左として、結子がはまことののばらのための行動を考えて言います。

私がのばらちゃんのためにしてあげたかったこと
そのものだった(98ページ)


またStory.2の最後でこうも思っています。

その純粋さ…
誰にも利用されないように守ってあげたい…(41ページから)


まことの「守っていく立場」は否定されず、
その上に「教える立場」が積み重ねられていると考えられます。


再び、考え方を否定せずして、一つ上へシフトさせていっているところがとてもいいです。



○「かのじょなメイド」である意味とラストシーン

まとめとして、結子がバイトを続けることによって、「双方向性」「相互性」が保たれています。
二人が単なる恋人だけの関係であれば、守っていく、教えていく結子の立場が上になります。
それを、バイトの存在によって、お互いが助け合う「水平な関係」に変えているのです。
二人が自分の「個性」で以て、お互いの困っている点を補っています。

結論として、バイトがあるために二人は横に並んだ恋人でいられるのです。
(37ページで結子は「貧乏人やお金持ち」も「個性や魅力」のうちに入れています)

しかし、一方でこのバイトは二人が想い合う恋人だからこそ、堕落しないとも言えます。
仮に想いがなければ、バイトの関係は支配や恣意的な利用を呼び込むことになります。
二人の純粋な想いがあるからこそ、バイトは「綺麗なバイト」であり得るのです。

その意味では、一方で、水平的な「恋人」であるためには「バイト」が必要であり、
他方で、健全な「バイト」のために「恋人」であることが必要だったと言えます。

結子は「かのじょなメイド」であるからこそ、のばらの横に立っているのです。

最後に、ラストシーンを見ておしまいにしましょう。

のばらちゃんの暴走気味の愛情で私をめちゃくちゃに困らせてね
それはとってもしあわせなことだから ずっと ずっとね――(146ページ)


この結子の言葉から、ウロボロスのように、冒頭の場面に帰っていきます。
結子がのばらの愛情に振り回されている導入のシーンです。
ここでは、恋人として、また同時に、メイドの主雇い主として、のばらが結子を振り回しています。

この場面一つを取ってみても、二人にとって恋人であることと、
主人とメイドであることは交じり合っていて、
不可分なものであることが分かるのではないでしょうか。

テーマ:百合
ジャンル:アニメ・コミック

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