スポンサーサイト

--.--.-- --:--|スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

みやびが見上げて想うものは ――「お別れ」しないかぐや姫 (アイカツ!第121話考察)

2015.02.22 15:57|アイカツ!
Beautiful SongBeautiful Song
(2015/02/25)
AIKATSU☆STARS、もな from AIKATSU☆STARS! 他

商品詳細を見る


今回は、先日放送された『アイカツ!』第121話を考えます。
一ヶ月前に交換留学生としてやってきたみやびが、京都に帰る一話。
この中で示されたことを語るに当たって、今回は次の二つの問いから始めたいと思います。

すなわち、OPで何かを見上げるみやびは、結局何を見上げていたのかということと、
みやびは『かぐや姫』に登場するかぐや姫との関連において、
どのようなアイドルとして提示されていたかということです。


第一に、みやびが登場した第118話から、OPの珠璃が登場していた部分が改変され、
満開の桜の樹の下にただずむみやびが何かを見上げているものとなりました。
このときみやびは何を見上げて想っているのでしょうか。
第121話は、これが何であるのかを示したと思います。
まずはここから、みやびというアイドルに接近していきます。

第二に、みやびは背景が竹林のステージからして、かぐや姫と重ねられていると考えられます。
一ヶ月で京都に帰るという位置付けも、月に帰ったかぐや姫と被っているところです。
しかし、みやびは単にかぐや姫と重ねられるアイドルとしてだけ、
作品内に登場していたのでしょうか。
以前の記事で述べたように、三年目の『アイカツ!』は、
物語のヒロインをモチーフにしながら、それを越えていくアイドルを描き、
越えていくところにそのアイドルのテーマを描き出してきたと考えられます。
林檎をその手に持つ白雪姫、魔法が解ける五分前から再び踊り出すシンデレラ、
オディールとともに踊るオデット、気持ちを伝える人魚姫……。

物語のヒロインとの差異が、強烈にテーマを浮き彫りにしてきたのです。
この視点で見ると、みやびはかぐや姫に対して、
どのようなアイドルとして登場していたのでしょうか。
次にこの問いからみやびというアイドルのテーマを考えていきます。

それでは、もしよろしければお付き合いいただければ幸いです。

(1) OPでみやびが見上げて想うものは

第一に、みやびがOPで何を見上げ想っているのかを考えます。
みやびはOPで満開の桜の樹の下、上方を見上げています。

aikatsu06.png

ここでみやびが満開の桜の花を見上げているのだということは、
みやびのただずんでいる場所からして自明のことかと思います。
背景いっぱいに埋められた桜色を鑑みれば、
みやびは桜の花を見上げていると考えるのが普通でしょう。
しかし、それだけであったのでしょうか。
第121話の末尾には、みやびがあかりの天気予報を聞いた後、
大空を見上げている姿が描かれています。

aikatsu07.png

この姿は、OPでのみやびの姿に被せられるものと捉えられます。
これを念頭に置くと、OPのみやびは、二つのものを見上げていたと考えることができます。

すなわち、OPでみやびは、一方で満開の「桜の花」を見上げ、
他方で「大空」を見上げていたのではないでしょうか。
OPでは、みやびが映る場面の次の場面で映されるのは「大空」となっています。
みやびの視線の先に、大空もまたあるということを仄めかすような形になっているのです。

みやびが「桜の花」と「大空」を見上げていたと考えられること。
これは、第121話の内容と合わせて考えると、
みやびがどのようなアイドルであるかということが分かってきます。
つまり、みやびは、大和撫子である「さくら」を見上げて進むと同時に、
「あかり」たちとの思い出を胸にアイドル道を進んでいくアイドルなのです。

みやびがOPで一方で「桜の花」を、他方で「大空」を見上げる様は、
一方でさくらを、他方であかりたちを想い進んでいくことを象徴していると考えられます。

この二分法は、いわばシャイニングラインの縦のラインと横のラインとも言い表せるもので、
前者が「憧れ」に、後者が「友情」に主に繋がっていると考えられます。
劇場版においても強調されていた、二種類の繋がりです。
『アイカツ!』は、この繋がりの中で進んでいくアイドルを描き続けてきました。

みやびもこの繋がりの中で進んでいくことが、表現されていたのではないでしょうか。

(2) 「お別れ」しないかぐや姫としてのみやび

第二に、みやびが「かぐや姫」との関連において、
どのようなアイドルとして表れていたかということを考えます。
先述のとおり、物語のヒロインを越えて行くところに主なテーマを描くのが、
三年目の『アイカツ!』の一つの型であると見ることができます。
その中でみやびもやはり、かぐや姫を越えて行っていました。

すなわちかぐや姫というのは、最終的には月に帰って行ってしまう、
決定的に「別れる」プリンセスなのですが、第121話においては、
みやびはあかりたちと「別れない」のだということが強調されていました。
みやびは「お別れ」はしないで、「またね」で「未来に約束」をするのです。

今回『アイカツ!』にしては珍しく、最後の最後で後日談的に、
帰った後のみやびの様子を描くシーンが挿入されていますが、
ここであかりの天気予報を見て、大空を見上げて「行ってきます」をするみやびは、
確かにあかりたちと別れてはいないと言えるでしょう。
彼女は寂しく思いつつあかりたちのことを思い出すわけではないのです。
ここに、みやびとあかりたちは、近い場所にいないとは言え、
別れたときの心情ではいないということが見出せます。

みやびは、「お別れ」をしないかぐや姫として登場し、
物語中のかぐや姫との対比の中において、
「未来に約束」するというテーマを強く提示していたのではないでしょうか。



○関連記事

   ステージの大時計が零時五分前で止まっている理由 ――真っ赤な薔薇のシンデレラ (第110話)
   人魚姫のドレスが登場した理由 ――気持ちを「伝える」人魚姫 (第120話)

  その他の『アイカツ!』(三年目)の記事

   再定義されるあかりの原点――本当の目標は真似でなくて (第101話)
   これまでの別れの経験の上に――さくらだから語れる言葉 (第102話)
   ブレーキを踏まずにいられるのは (第105話)
   白雪姫と林檎というミスマッチへの挑戦 (第108話①)
   スミレの「いつかはきっと」に見える強さ (第108話②)
   あかりとスミレの選択、その根底にある友情 (第117話)


スポンサーサイト

テーマ:アイカツ!
ジャンル:アニメ・コミック

人魚姫のドレスが登場した理由 ――気持ちを「伝える」人魚姫 (『アイカツ!』第120話考察)

2015.02.15 16:24|アイカツ!
Beautiful SongBeautiful Song
(2015/02/25)
AIKATSU☆STARS、もな from AIKATSU☆STARS! 他

商品詳細を見る


今回は、『アイカツ!』第120話「スター☆バレンタイン」について考えます。
人魚姫をモチーフにしたドレスが物語中では初お披露目となり、
ひなきと珠璃がこれを着てステージを彩った今回の話においては、
視聴後に二つの疑問が浮き上がってくるものであった気がします。
すなわち、第一に何故「人魚姫」のドレスが今回の話で持ち出されたのかということと、
第二に何故ひなきと珠璃がステージに上がったのかということです。

第120話の内においては、『人魚姫』という物語についての直接の言及はありませんでした。
また、他の誰かでなく、ひなきと珠璃がステージに上がった理由についても説明がありません。
ゆえに、人魚姫のドレスが登場したことと、ひなきと珠璃がステージに上がったことは、
一見したところ唐突にも思える部分であり得るところでしょう。
しかし私は、よく考えてみると、今回に人魚姫のドレスが登場して、
それをひなきと珠璃が着てステージに出たことには理由があったと思います。
以下この記事においては、この二つの問題について論じていきます。

(1) 『人魚姫』のドレスが登場した理由

第一に、今回の話で『人魚姫』をモチーフにしたドレスが登場した理由を考えます。
これを明らかにするために、まず確認しておきたいことは、
『アイカツ!』がここまで、物語をモチーフにしたドレスを登場させながら、
アイドルがその物語のヒロインを越えていくイメージを提示してきたということです。

林檎を身に着ける白雪姫(第108話)や、
魔法が解ける五分前に踊り始めるシンデレラ(第110話)や、
オディールとともに踊るオデット(第111話)。

こうしてモチーフのヒロインを越えていくところにこそテーマがありました。

この流れの中で第120話は、「伝える」人魚姫を描いた回と考えられます。
人魚姫は物語においては、自身が水泡に帰すまでずっと、
王子様に気持ちを「伝えられなかった」ヒロインでした。
この側面は、今回の挿入歌、『Poppin' Bubbles』にも表現されています。
こういった「伝えられなかった」ヒロインをモチーフとして登場させながら、
感謝を「伝える」、「伝えられる」アイドルを描いた一話であったのです。

アイドルとファンというのは、それこそ海の中の人魚姫と船の上の王子様と同じくらい、
遠く離れたところにいるものとも捉えられるわけですが、
アイドルはそれだけ遠いところにいるファンに気持ちを「伝えられる」存在なのです。
かつてアイドルであった春(四ツ葉さん)は、テレビを通して気持ちを伝えました。

「四ツ葉さんはアイドル時代に、お料理やお菓子作りが大好きになって、
 やがてシェフになろうと思うようになったと聞きました。
 シェフとしての新しい人生は如何ですか?」
「幸せです。心を込めて作った料理を
 その人たちの笑顔のために、もっと頑張ろう、もっとおいしいものを作ろう。
 そう思えることを、本当に幸せに思ってます」

「四ツ葉くん……」
「よかった」
「夢が叶ったんだね」(中略)

「最後になりますが、アイドル時代に、僕を応援してくれた皆さん。
 そして、今も忘れずにいてくれる皆さん。
 本当に、本当に、心からありがとう」 (第120話)


例え、遠く離れていても、アイドルはファンに気持ちを届けることができるのです。
同様のテーマは、前回第119話においても示されていました。
みやびは、一歩踏み出す勇気をキラキラッターを通じてトモヨに伝えようとします。

「あ、みやびちゃんがキラキラッターでつぶやいてる。
 大和撫子アイドルフェス!?」

「伝統ある和の素晴らしさとフレッシュなアイドルの魅力を一つのステージで感じて頂く…
 そのような大役、アイドル界の新参者である私につとまるかとも思ったのですが…
 ただ怯え立ち止まっているだけでは…
 その先に広がっている素晴らしい景色を見ることはできない。
 その一歩を踏み出さねば、新しい世界を訪れることはできない。
 そう思い、お引き受けすることにしました。
 では、皆さんとステージでお会いできることを、心より楽しみにしております。
 藤原みやび かしこ

 追伸。まだまだ上手に文字も打てませんが…私の気持ち、届きますように。」 (第119話)


そして、みやびの気持ちは実際にトモヨに届くのです。
この場面は、春がテレビを通じて気持ちを伝えた場面と重ねられます。

このように、アイドルが遠いところにいるファンに「伝えられる」ことは、『Let's アイカツ!』でも、
「全力で走るよ 笑顔を届けたいから きみが世界の隅にいたって」という部分で強調されています。
『アイカツ!』という作品において、アイドルはファンに「伝えられる」存在なのです。
これに対して、ファンも、遠いところにいるアイドルに「伝えられる」ことが描かれています。
それが、第111話、あさひが登場した話でした。

つまり、第111話は、終始あさひがあかりに直接は会えないまま終わるのですが、
それでも気持ちをあかりに伝えることはできていたことを描いていました。
手紙やアバターでの応援という手段は、ファンも、
遠いところにいるアイドルに「伝えられる」ことを描いていたと言えるでしょう。

以上のように考えた上で再度第120話に戻ってみると、ここまで、
遠い所にいても「伝え合える」アイドルとファンの関係を描いてきた上での、
満を持しての『人魚姫』というモチーフの登場であったと思います。
この、王子様に「伝えられなかった」ヒロインを比較対象として、
「伝えられる」アイドルが改めてテーマとして強調されていたのです。

(2) ひなきと珠璃がステージに上がった理由

第二に、今回の話でひなきと珠璃がステージに上がった理由を考えます。
けだし、第120話でステージに上がったのがひなきと珠璃であった理由は、
二人が昔から芸能界にいて、芸能界における「過去」を持ち、
そして「今」はその過去とは決別して輝いているアイドルであるためです。

アイドルを辞めてはいませんが、この辺りが春と重ねられます。

つまり、ひなきは幼少期のジャンプ失敗の経験から自分を抑えていた過去があって、
そこから今は特にあかりとの出会いを契機として変わっており(第105話)、
珠璃もふわふわとした印象でもってテレビ等に出ていた過去があって、
そこから今は変わっている(第109話)アイドルであるということが描かれていました。
二人は、過去の二人からはがらりと変わってしまっています。
それでも今、二人はファンに応援して貰えているのです。

このように、「今」とは違うやり方で活動していた「過去」を持っている二人だからこそ、
四ツ葉さんの後にファンに「サンクス」を伝えるアイドルの役として、
最も適しているとは考えられないでしょうか。
そこまでに描かれてきたテーマを引き継ぎ、
ステージ上に表すことができるのは、ひなきと珠璃だけなのです。

第120話のテーマは、「アイドルがファンに感謝を伝えること」でしたが、
その中で特にフィーチャーされた「感謝」は、
春の「今は過去と違う形で活動しているのに、
依然応援してくれていることに対しての感謝」でした。
そこで、それに共感し得るひなきと珠璃が舞台に上がったと考えられます。

最後にもう一度、ひなきと珠璃がステージに向かう直前の場面を見てみましょう。

「よーし、私たちも、サンクス届けちゃお!」
「おー!」 (第120話)


この「私たちも」の「も」の部分に、
チョコをもらったこと以上のことへの感謝も込められるのが、
あかりたち五人の中にあっては、特にひなきと珠璃であったのです。



○関連記事

     ステージの大時計が零時五分前で止まっている理由 ――真っ赤な薔薇のシンデレラ (第110話)
       …今回同様、物語のシンデレラとの対比からテーマを読み解いた記事。

  その他の『アイカツ!』(三年目)の記事

     再定義されるあかりの原点――本当の目標は真似でなくて (第101話)
     これまでの別れの経験の上に――さくらだから語れる言葉 (第102話)
     ブレーキを踏まずにいられるのは (第105話)
     白雪姫と林檎というミスマッチへの挑戦 (第108話①)
     スミレの「いつかはきっと」に見える強さ (第108話②)
     あかりとスミレの選択、その根底にある友情 (第117話)


テーマ:アイカツ!
ジャンル:アニメ・コミック

アイドルとして「輝ける」場所は東京ではなくて (壱号『アイコンタクト』)

2015.02.08 16:19|百合作品
百合アンソロジー ユリボン (バーズコミックス デラックス)百合アンソロジー ユリボン (バーズコミックス デラックス)
(2014/12/24)
ほか 渡辺ペコ

商品詳細を見る


今回は、百合アンソロジー『ユリボン』に収録されている作品から、
壱号さんの一連の作品、『アイコンタクト ホームゲーム』と、
『アイコンタクト ビジターゲーム』について私なりに考えてみます。
簡単にあらすじを紹介すれば、有名になりつつあるご当地アイドルのかなえと、
彼女を近くで応援してきた初めてのファンの透子のお話です。
ご当地アイドルの枠を超えて、全国的に有名に、人気になっていくかなえを、
複雑な気持ちで眺めていた透子の気持ちが前者で描かれ、
それに対してかなえの気持ちが後者に描かれていく構成となっています。

注目すべきは、かなえが東京の事務所に移籍するかどうか迷っていたのに対し、
透子が自身の気持ちに整理を付けて背中を押す言葉をかけるにもかかわらず、
かなえはその言葉を受け取って東京行きを決めるわけではないということです。


というのも、かなえが有名になっていくことについて、
「手の届かない存在になっちゃうのかな」(141ページ)と考え複雑な気持ちでいた透子が、
「大好きだから」(142ページ)どこにいても応援するという、送り出す覚悟をしたのに対して、
かなえはそれを受け入れず自分は残るという選択をするのです。
透子が「どこにいてずっとずっと応援してる」と伝えた後、
かなえは彼女に対して次のように答えています。

「待って!」

――何で迷ってたんだろう そんな必要無かったのに
 かなえが一番笑顔を届けたいのは 透子ちゃんだから

「かなえ?」
「透子ちゃんは! かなえの初めてのファン!
 だから… ずっと持ってて!
 初めてのサイン… あげる!」

――かなえが笑っていられるのは かなえが輝けるのは
 それはきっと 大好きな人が側にいるから (143-147頁)


透子は背中を押しているにもかかわらず、
かなえはそこからむしろ透子の存在の大きさを再認識しており、
結果として地元に残る決意をしたのだろうということがここから推定できます。
透子が言葉とともにかなえに投げ返した始球式の野球ボールを、
かなえが更に透子に投げ返しているのは象徴的です。

この部分は、東京の事務所への移籍がかなえにとっての前進に見え、
地元に残るという選択は前進を拒み留まることを選んだように見えるだけに、
この答えで良かったのかという疑問を人によっては抱き得るのではないでしょうか。
特に「沢山の人達を笑顔にさせたい それがかなえの願いだったろう」(135ページ)とあるため、
この疑問は浮き上がってきやすいものかと思います。

今回は、だからこそ、この結末の意味を考えてみたいと思います。
かなえが送り出される展開ではなかった意味とは何なのでしょうか。
換言すれば、透子に背中を押されて東京へと前進していくかなえの姿の代わりに、
この作品は何をテーマとして提出しているのでしょうか。

一つ考え得るのは、前進を拒んだかのように見える地元に残ることの選択が、
実はかなえにとっての前進であったのではないかということです。
そもそも東京に行くことが前進であって、
地元に残ることが前進の拒否であるという捉え方自体が、
あくまで一つの捉え方でしかなく、必ずそうとは限らないのではないでしょうか。
この作品は、それとは別の考え方を提示しているように思います。

つまり、通常東京へ行くか地元に残るかということは、
前進を選ぶか前進を拒むかという選択のように見えますが、
実際は地元に残ることも別種の前進なのではないかという考え方です。
アイドルが到達すべき場所は何処なのか。
この問いに対し、アイドルが到達すべき場所は必ずしも東京ではないと突き付けるのが、
この『アイコンタクト』という作品であったのではないかと思います。
アイドルが到達すべき場所は、必ずしも多くの人の目に留まる東京ではなく、
彼女が最も「輝ける場所」であり、それゆえに東京行きを辞めたことは、
前進の拒否でなくて、かなえの前進の選択に他ならないのではないでしょうか。
かなえはアイドルとして、透子の側へと改めて「前進」したのです。

かなえの暴投が、始球式でプロには取れなくて、透子には取れたのは、
以上に述べたことを表す事柄であったのではないかと思います。
かなえは始球式のインタビューで次のように語っています。

「プクプク動画です! 配信を見てるリスナーに何か一言!」
「いや~気合い入れてスパイク履いてきちゃって ちょっとリキんじゃいましたー
 それに… …女房役(よめ)がボール受けてくれないとダメみたい
 もっと練習してきます!」 (31-32ページ)


圧倒的な暴投は、ご当地アイドルの枠には収まらず、
全国区でも活躍できそうなかなえ本人を象徴するものと読めます。
それをプロが取れず透子が取れるということは、
彼女を受け止める場所が、そうであるべきでありそうなプロ(東京の事務所)ではなく、
あくまで透子に他ならないということを示しているのではないでしょうか。

かなえが進むべきアイドルとして「輝ける」場所とは、
ただ一人の「女房役」の側に他ならなかったのです。


テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック

憧れの初ステージに係る「意志」と「緊張」 ――手をとり合うシンデレラ (『シンデレラガールズ』:第三話考察)

2015.02.01 16:51|アイドルマスター
THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT 01 Star!!【初回限定盤CD+Blu-ray】THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT 01 Star!!【初回限定盤CD+Blu-ray】
(2015/02/18)
CINDERELLA PROJECT

商品詳細を見る


今回は、アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』の第三話までを考えます。
第三話は、卯月たち三人が初めてステージに立つまでを描いていました。
ここにおいて一際目立っていたシーンと言えば、一つは、
凛が緊張して動けない状態にあった卯月と未央、
特に未央を、引っ張っていく箇所ではなかったかと思います。
凛はアイドルに最も縁遠かったにもかかわらず、
あの場面ではまるでリーダーのごとく二人に声をかけていました。
このことを鑑みれば、三人の初ステージは、
凛が二人を引っ張ったことで挑むことができたものだったと言えるでしょう。

しかし、それにもかかわらず、私は初ステージまでの展開というのは、
凛が未央と卯月を引っ張る、凛を中心とした物語ではなかった気がします。
そうではなくて、未央と卯月が凛を引っ張り、
凛が未央と卯月を引っ張るという、三人を中心とした物語であった気がするのです。

ここが第三話までの流れの中で、最も重要なことであったと思います。
最後の最後に凛が二人を引っ張るため、そのことが深く印象に残りますが、
そのように二人を引っ張った凛も、二人に引っ張られてこそ、
初ステージに進み出ることができたとは考えられないでしょうか。

次の疑問は、上述の「三人の物語」の側面を浮き彫りにすると思います。
すなわち、何故未央が特に初ステージ前に緊張状態に陥ったのかという疑問です。
三人とも、初めてにしては大き過ぎる舞台に臨むという意味では条件は変わりません。
それでは何が、未央にとりわけ大きな緊張をもたらしたのでしょうか。
この問題に対して、キャラクターの問題にしてしまうことは容易いことでしょう。
つまり、未央は三人の中で本番に弱いキャラクターであって、
それゆえに非常に緊張したということを回答にしてしまうのです。
そう読むこともできないわけではないでしょう。
しかし私は、第三話までの物語が、未央の緊張を性質上の、
所与の問題としてだけ提示しているわけではないと思います。
思うに未央は、美嘉とともに立つステージへの気持ちが三人の中で特に強く、
それゆえに他の二人以上の緊張を感じることになったのです。

美嘉への憧れが未央の本番前の緊張に繋がったのではないでしょうか。
この記事ではこの部分から、第三話の物語を捉え直していきます。



○憧れの初ステージに係る「意志」と「緊張」――手をとり合うシンデレラ


まず、未央が美嘉に憧れていたことが分かるシーンとして、
第三話でライブに向けた練習が始まる箇所を引用します。

「くぅ~! あの城ヶ崎美嘉と一緒にレッスンできるなんて!」(中略)

「ふーん。ま、やってみないと分かんないよね。
 ここはババーンと、アタシにまっかせて!」
「美嘉ちゃん……!」
今日から、美嘉ねーと呼ばせてもらいます!」 (第三話)


上記のように、未央は初ステージのライブに立てるということだけでなく、
美嘉と一緒のステージに立てることについても、希望と期待を抱いています。
未央にとっては、憧れのアイドルと一緒のステージに立つことも重要であったのです。
もちろん、卯月も未央と同様の美嘉への憧れを持っていたとは思います。
しかし、未央については、これが特に強かったことが推測できるのです。
第二話において初めて美嘉と対面したときも、未央は最初に反応し、
かつ、卯月よりも先に美嘉のところに駆け寄っていました。
アーティスト写真を撮影するに当たって、未央が最初に取ったポーズが、
直前に見た美嘉の撮影でのポーズを明らかに真似したものであったことも、
未央の美嘉への気持ちの大きさを言外に語るものであるでしょう。

そして、この特に大きかった美嘉への憧れが、
未央の特に大きな緊張に繋がったのであると思います。
未央は、緊張するにつれ何も語らなくなってしまったので、
あのとき彼女が何を考え、何で足が動かなくなってしまっていたのかは分かりません。
しかし、あの「普通でない状態」の原因の一端が美嘉への憧れであったことは、
第二話のアーティスト写真を撮影する場面で暗示されている気がします。
当初撮った写真が没になってやり直しになった際に、未央は二人と語り合います。

「何か、がちがちだったね」
「うん……」
「何だか緊張して……」
普通って難しい……」 (第二話)


未央は撮影の際に、「もっと普通に」と言われてしまいました。
あのとき普通でないポーズと指摘されたのは、
未央が直前に見ていた美嘉の撮影でのポーズに酷似したものに他なりません。
美嘉への憧れは、未央を「普通」から遠ざけることがここに表れています。
ここを捉えるならば、第三話で未央が普通でない緊張状態に陥ったことも、
美嘉への憧れで説明できる部分があったと考えられると思います。
未央は、憧れのアイドルである美嘉と一緒にステージに立つこと、
その重さを本番前に誰よりも意識して、緊張するに至ったのです。

本番前の卯月も、未央に準ずる緊張感を持っていたと考えられます。
だからこそ本番直前には、凛が冷静に二人を引っ張っていたのです。


ところで、ここで考えてみるべきことは、アイドルへの憧れが、
初ステージ前の緊張感だけをもたらすものであるのかということです。
憧れがもたらす普通でない状態とは、緊張した状態のみに過ぎないのか。
第三話までの物語は、そうではないことを示していました。
すなわち憧れは、一方で初ステージ前の「緊張」をもたらすものとして描かれ、
他方で初ステージに向かう「意志」をもたらすものとして描かれていたのではないでしょうか。
第二話の末尾、初ステージが決まる場面で、未央は次のように述べています。

「こんな簡単に決まっていいのかな?」
「大丈夫、大丈夫。私って本番に強いから、意外といけちゃう気がするなあ
「へー」
ライブかあ、楽しみだな」 (第二話)


未央の根拠のない自信は、実際には「実際のライブ会場で決めてみせたい」、
「上手くやってみせる」という「意志」の表現であったと思います。
仮にこういう気持ちがなければ、練習を始める前から「いけちゃう」と言い切って、
果敢に初ステージへと進んでいくことはできなかったでしょう。
卯月もライブへの憧れゆえに、不安よりも先に期待を抱いています。
第三話の冒頭にも、前向きに進んでいく未央と卯月に対して、
踏み出すのに躊躇する凛という関係は引き継がれています。

「私たちがステージに立てるなんて」
「入って早々の大抜擢。何が起こるか分からない。
 いやー、アイドルってすっごく楽しいよね!」
「はい! 凛ちゃんはどうですか?」
「まだ実感湧かないかな。ステージに立ってる自分がまだ想像できないし。
 アイドルの仕事って、こんな感じで決まっていくものなのかな」
それは分かんないけど、やってみなきゃ分かんないって!
「痛いって」 (第三話)


ここでは明らかに、未央と卯月、特に未央が、凛を引っ張る形になっています。
言うまでもなく、ここで凛の背中を小突く未央は、
本番直前に未央の肩を叩く凛に対応するものです。

本番直前まではむしろ、未央と卯月が凛を引っ張っていたと読めます。

本番直前までは、憧れに基く強い前進の「意志」を持った二人が凛の手を引き、
本番直前においては、凛が憧れに基づく強い「緊張」に囚われた二人の手を引く。

これが、未央の緊張の原因を探ることで見えてくる第三話の物語の全容です。
第三話は、一方で未央や卯月が、憧れが生むステージへの「意志」で凛の手を引き、
他方で凛が、憧れが生む「緊張」によって停止した未央や卯月の手を引いていく、
三人で前に進み、初ステージの舞台に辿り着く物語であったのです。
換言すれば、凛がステージの上に至るには、二人の情熱が必要であり、
未央と卯月がライブに進むには、凛の冷静さが必要であったと言えるでしょう。

輝かしく、楽しく、「最高」であった初ステージ。

それは、三人で手を引き合ってこそ辿り着けた場所であったのです。



○関連記事

  アイドルマスター シンデレラガールズ アニメ
   二つの魔法から始まるシンデレラストーリー (第一話)

  アイドルマスター シンデレラガールズ一般
   凛・卯月・未央の持ち歌から考えるシンデレラガールズ ――新世代性、シンデレラ性、多様性
   『お願い! シンデレラ』から考えるシンデレラガールズ ――拡散するアイドル
   歌詞に注目して聴く『jewelries』 ――シンデレラガールズらしい恋愛ソング

  アイドルマスター シンデレラガールズ 漫画作品
   シンデレラガール「ズ」というタイトルの意味 (namo『ニュージェネレーションズ』)


テーマ:アイドルマスター
ジャンル:アニメ・コミック

プロフィール

天秤

Author:天秤
天秤と申します。
アニメや漫画など、好きなものについて考えたことを書き込みます。
よろしくお願いいたします。

カレンダー

01 | 2015/02 | 03
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28

カテゴリ

最新記事

最近のつぶやき

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

アクセスカウンター

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

RSSリンクの表示

リンク

QRコード

QR

  • ページトップへ
  • ホームへ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。