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マジカルトイを着るもう一人のアイドル (アイカツ!第六十六話考察)

2014.01.25 17:39|アイカツ!
KIRA☆Power/オリジナルスター☆彡KIRA☆Power/オリジナルスター☆彡
(2013/10/23)
STAR☆ANIS

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先日、第六十六話「ステキな両想い」が放送されました。
この話の中で、きいに関する極めて重要な問題に答えが与えられたように思います。
その問題とは、きいがマジカルトイを着る二人目のアイドルであるということです。
現時点で二人が自分のブランドとしているのは、マジカルトイ以外にはありません。
何故きいは、かえでと同じマジカルトイを着るアイドルとして登場しているのでしょうか。
思うにそれは、彼女のカツドウの底にあるものがかえでと非常に近いためです。
今回は物語を振り返りつつ、このことについて説明してみたいと思います。



○『アイカツ!』第六十六話:マジカルトイを着るもう一人のアイドル


今回の話では、再びアイドルとして頑張るきいが描かれました。
当初はセイラのプロデュースを頑張りたいという気持ちから、
なかなか自分のアイドルカツドウに没入できませんでしたが、
美月からもらった言葉をきっかけに、本気でオーディションに向かって行きます。

「知ってた? 人の素敵なところに気付けるっていうのは、
 それだけでもとっても素敵なことだし、自分も素敵になれるってことなんだよ」
「え?」
「セイラちゃんもそれが分かってるから、あなたにもっと素敵に輝いて欲しくて、
 オーディション頑張れって言ってるんじゃないかな? あなたのことが好きだから。
 素敵になれば大好きな人が喜んでくれるんだよ。頑張れる気がしない?」 (66話)


この直後、きいはセイラが本気で応援してくれていることに気付いて、
アイドルカツドウも一層全力で頑張ることを決意し、デザイナー探しに奔走するのです。
そして、セイラを初めとする「素敵な友達」の助けもあり、ついにマルセルに追いつきます。
そこできいが語ったのは、「セイラを喜ばせたい」という率直な気持ちでした。

「それは、足つっちゃった私の代わりに、セイラが追いかけてくれたんです。
 いつもそうなんです。きい、自分のこととなると全然ダメで、
 なのにセイラがいつも助けてくれて。そんなセイラが、
 きいがブレインサンダーガールに選ばれるのを楽しみにしてくれて。
 だからどうしても、オーディションで選ばれて、セイラを喜ばせたくて。
 お願いです! マジカルトイの星座ドレスを着させてください!」 (66話)


オーディションで受かりたいという気持ちより先に、
セイラを喜ばせたいという気持ちがあることが分かります。
これは彼女が初めてアイドルになる第五十五話でも同じでした。
つまり彼女はそこで、母親に元気な姿を見せるために、母親を喜ばせるために舞台に上がるのです。
アイドルになることへの躊躇は、母親への想いによって完全に克服されていました。
言うなれば、きいは「誰かを喜ばせたい」という気持ちでもって、
全力で取り組み、最高に輝くことができるアイドルなのです。

今回はそのことが、「セイラへの想い」で改めて説明されています。
親友のためなら、きいはぶっ倒れるほどに全力で走ることができるし、
星座アピールを出すほどに最高に輝くことができる。

そして、この「誰かを喜ばせたい」という気持ちは、
マジカルトイを着るもう一人のアイドルであるかえでにも見出せるものです。
彼女の場合は、「みんなを楽しませたい」という気持ちが根っこにあります。
かえでが第三十四話で、マルセルからカードをもらう場面を確認してみましょう。

「あなたのことなら何でも知ってる! 人を楽しませることが好きで、
 ピエロに変装して町を歩き、デザインのヒントを探してる。でしょ?」

「私も同じ! 人を楽しませることが大好き!
 だからアイドルになりたいって思ったの。
 私! マジカルトイが大好きで、ずっとあなたを探してたの。やっと会えた」

「Yes! 私、必ずトップアイドルになってみせる!
 約束します。だからカードをください!」 (34話)


「努力」や「意志」は、他のトップデザイナーもアイドルに求めるものです。
それに加えて、遊園地やマジシャンをモチーフとするマジカルトイの場合は、
「誰かを楽しませたい」という気持ちが肝要であることが分かります。

トップデザイナーであるマルセル自身も、それをすごく大切にしているのです。
これはきいの、「誰かを喜ばせたい」という気持ちと同根のものではないでしょうか。
楽しんでもらいたいという心情は、誰かのために何かをしたいと思う点においては、
喜んでもらいたいという心情とあまり変わらないと考えられます。

また、かえではトライスターのオーディションに際してもこの気持ちを大切にしています。

「パラシュートもタップダンスもマジックも、
 かえでちゃんはみんなを楽しませるためにやってたんだよね」
「うん、そうだよ」
「明日のファイナルオーディションも?」
「もちろん! みんなを楽しませてみせるよ」
「でも、オーディションって選ばれるためのものでしょ」
「そう! だけどオーディションだってステージだよ。
 ステージに立つからにはどんなときだって、観客を楽しませなくっちゃ。
 それがアイドルってものだから!」 (34話)


かえでにとっては、オーディションに受かりたいという気持ちより先に、
みんなに楽しんでもらいたいという気持ちがあるのです。
このオーディションへの向かい方も、きいと似ていると言うことができます。
つまり、二番目の引用のところで確認したように、
きいの場合もオーディションに受かりたいという気持ちより先に、
セイラに喜んでもらいたいという気持ちがあります。
誰かを想ってオーディションに臨む点で、きいはかえでと同じです。

けれども、二人は完全に同じというわけではありません。
「誰かを楽しませたい/喜ばせたい」という気持ちがあること、
オーディションにもその気持ちを持って臨む点では似ていますが、
その気持ちが向かう対象が異なっているのです。
すなわち、かえでは「みんなに」楽しんでもらいたいと考えており、
きいは「特別な誰かに」喜んでもらいたいと考えています。

ここは、二人の間にある最大の違いであると言うことができます。

この違いに関連するものとして、第五十話の美月の言葉を引用したいと思います。
美月が僅差でいちごに勝ち、インタビューを受ける場面です。

「応援してくださったみなさん! ありがとうございました!
 再びクイーンになることができて、毎日の努力が報われた想いです!
 そして今年私を輝かせてくれたのは、
 ファンのみなさんであり、星宮いちごです!」 (50話)


ここで、美月を輝かせるものとして挙げられているものは、
かえでときいがそれぞれ大切にする、「みんな」と「特別な誰か」に他なりません。
ここでは、この二つがアイドルを輝かせるものとして語られています。
このうち、かえでは特に前者を、きいは特に後者を意識して輝くアイドルと言えます。
二人は似通った気持ちで輝きながらも、異なる二つの道を示しているのです。

結論として、きいがかえでと同じくマジカルトイを着るアイドルとして登場するのは、
「誰かを喜ばせたい」という気持ちで頑張り、輝くことができるという点で、
彼女がマジカルトイのテーマに合っているアイドルであるためと言うことができます。
しかし仮に二人が同じなら、二人目としてきいが出てくる必要はありません。
マジカルトイのアイドルを務めるのは、かえでだけで事足りるはずです。
けれどもきいは、かえでが「みんな」を意識するのに対して、
自分は「特別な誰か」を意識するという、かえでとは異なる点を持っています。
ここにおいて、二人目のアイドルとして描かれる意味が生れていると思います。

かえでとは「似て非なる」道を示せるアイドルであるからこそ、
きいは「マジカルトイを着るもう一人のアイドル」として登場するのです。



○関連記事

  伯仲する「アイドルへの想い」 (前回の記事:第六十五話)

  自ら輝く太陽として――「太陽」という目標からの卒業 (第五十話)
  今傍にいる友人として、アイドルとして (第五十五話)
  

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テーマ:アイカツ!
ジャンル:アニメ・コミック

仲直りと告白の物語 (桜Trick:第二話考察)

2014.01.20 17:00|桜Trick
桜Trick (1) (まんがタイムKRコミックス)桜Trick (1) (まんがタイムKRコミックス)
(2012/08/27)
タチ

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今回は、アニメ『桜Trick』二話の、コトネとしずくのケンカの話に注目します。
二人の擦れ違いは何故起こり、また解決に何を必要としたのか。
問題が解決した結果として、二人の関係はどこに帰着したのか。
こうした問いに答えていく中で、この物語が特に描いたものを考えていきます。

先に結論を言ってしまえば、それは二人の「仲直り」の物語でしたが、
同時に関係を進展させる「告白」の物語としても読めるものでもあったと思うのです。
アニメ二話の前半を振り返りながら、このことについて明らかにしていきます。



○『桜Trick』二話:仲直りと告白の物語


まず、コトネとしずくの擦れ違いが何故起きたのかというところから考えてみましょう。
直接の原因は、コトネが何気なく伝えたしずくへの感謝の言葉でしたが、
不和が長引いてしまったのは、しずくがそれ以降コトネと口を利かなかったからです。
それでは、しずくは何故自分の不満をコトネに直接伝えなかったのでしょう。
作中では、彼女の「シカト」は「逃げ」であったと強調されています。

「私だってシカトしまくって申し訳ないとか一応思ってるよ
 でも学校と近いから私の家が好きとかさ
 学校が近ければ誰の家でもいいのかよって感じじゃん
 居候させてくれれば誰にだってキスするんじゃない?」
――ほっぺにキスしてきたから怒ってるわけじゃないんだ
「けどこんなこと考えてるなんて誰にも言えるわけないし」
――私たち 今聞いちゃってるんだけどな…
「しずくちゃんはコトネちゃんとケンカしたままで本当にいいの…?
 嫌な事から逃げてるままじゃ状況は変わらないよ」 (2話、1巻38-39ページ)


ここの、優たちとのやり取りで「逃げ」であるとされていることが分かります。
そして、しずくを逃げさせている「嫌な事」とは、
コトネに自分が怒っている理由を伝えたときに、それを否定されないという可能性です。
つまり、「居候させてくれれば誰でもいいのではないか」という疑惑が、
コトネの返答により確信に変わってしまうことを恐れていると考えられます。

だからしずくは、怒っているポーズを取るだけで直接の異議申し立てをしません。
自分が想っているほどにはコトネが自分を想っていないということを、
はっきりと確定させてしまうことを恐れて「シカト」へと逃げているのです。

あまり明白にはなっていませんが、コトネにも似た事情があったと考えられます。
つまり、しずくに怒っている理由を確認すれば、彼女が自分にキスを許すほどには、
自分のことを想っているわけではないということが確定してしまうかも知れないのです。
それを鑑みて、強引にでも解決へ引っ張っていくことを避けた可能性があります。
コトネはこの話の中で飄々としているように見えますが、いつも通りではありませんでした。

「おはモニ!」
「わー!」
「あ コトネちゃん」
「びっくりしただろ!」
「ねえ コトネちゃん しずくちゃんがいつもと違うんだけど… 何かあったの?」
「んー? 昨日の夜ケンカしちゃって 怒ってるみたいなの てへ」
――なんでケンカしたらこういう反応になるの… (2話、1巻35ページ)


しずくほどでないにせよ、コトネもしずくと同じように普通でない反応を見せています。
ケンカが長引いた直接の原因はしずくの無視でしたが、
その中でコトネもしずくと似たような心情でいたことを、
この場面での「いつもと違う反応」に見出すことができるのではないでしょうか。
もちろん、これだけでそこまでは言うことはできないかも知れませんが、そうだとしても、
後に「しずくちゃんと話せなくなるのは嫌だしね」と述べている(2話、1巻41ページ)ことから、
下手したらしずくと話せなくなるかも知れないと考えていたことは推測できます。

コトネにとっても、しずくと向き合うことが勇気の要ることだったということは確かでしょう。

こうした状況下にあったため、不和の解消には「勇気」を必要としました。
とりわけ焦点となっていたのは長期化の直接の原因となっていたしずくの側の勇気です。

――でも もしかしたら 私と話がしたくて持ってったのかな
 本当は別の理由があって コトネも実は私と同じ事考えていて
 それを伝える為とか …… 違う

 話がしたいの 私だ (中略)

「わ 私は別にキスしたことに怒ってるんじゃない…
 コトネが私の家に居るのは学校が近いからなの?
 それともお母さんが優しいからなの?
 そんな理由で私と一緒に暮らしてるの?

 私の事なんてどーでもいいみたいじゃん!」 (2巻、1巻41ページ)


コトネが「話せなくなるのは嫌」との考えから勇気をもってきっかけを作ったことを受けて、
しずくは自分が「話がしたい」と思っているのを認めて、勇気を出して不満だった点を伝えます。
お互いに真意を確認しようとし、実際に本心を言葉にしたことで二人は仲直りに向かいます。

ただ重要なのは、ここで行われた「仲直り」の結果、
その言葉の表す通り、二人の関係が元に戻ったというわけではないことです。
二人の関係は元に戻るのではなく、元のところから更に先に進みます。
「ノリ」にしてしまえない「唇と唇」のキスを通して、特別な関係に踏み出すのです。

「つかまえた しずくちゃんがなんで怒ってたのかわかった
 しよっか 昨日の「やり直し」」
「待って! 別に学校が近いから私の家が好きってのも
 全然嬉しいから なかった事にしなくていい
 でも今日は 昨日と違う「やり直し」がいい
「唇と唇?」

「しずくちゃんがいるから狭くても好き
 あったかいとこもおばさんも好き
 しずくちゃんがいるからしずくちゃん家が好き」 (2話、1巻42-43ページ)


ただの「やり直し」でもって、元の鞘に収まるというわけではないことが分かります。
二人の関係が「仲直り」の結果、このように更に先に進んだのは、
仲直りの際の言葉が恋愛における「告白」のようなものでもあったからであると考えられます。
すなわち、自分の家を褒める文言に自分のことが入っていなかったことに対して、
「私の事なんてどーでもいいみたいじゃん!」と思ったことを伝えるということは、
はっきり言って、相手にも自分のことを想っていて欲しいということの表現に他なりません。
あなたが私のことを想っていないみたいで嫌だったと述べることが、
どうして好意の「告白」の言葉でなかったと言えるでしょうか。

ここで改めて物語の全体を眺めてみると、このケンカの話の流れというのは、
恋愛を題材にした物語で言う、「告白」の物語の流れに極めて近いことに気付きます。
勇気がなくて、相手に本心を伝えるのを先送りにする。
それでも伝えたいという気持ちを見つけて、相手に告白する。
その告白を契機として、二人の関係は一歩先に進む。
逡巡の後に告白して付き合い始めるというような物語と極めて似た路を辿っているのです。
こうした面を鑑みると二人の仲直りの物語は、「告白」の物語でもあったと言うことができます。

相手が寝ている間に、誤解を生む言い回しで、「頬への」キスとともに行われたという意味で、
コトネのしずくへの好意の表現は非常に中途半端とも言えるものでした。
それを二人で勇気を持ってやり直し、面と向かった明白な告白と「唇への」キスでもって、
特別な関係に至るというのが、仲直りの物語の別の側面であったのです。



○関連記事

  キス以外に注目して見る『桜Trick』 (第一話)


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ジャンル:アニメ・コミック

伯仲する「アイドルへの想い」 (アイカツ!第六十五話考察)

2014.01.17 18:32|アイカツ!
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(2013/12/21)
STAR☆ANIS

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昨日、第65話「夢への扉」が放送されました。
いちごに美月がいて、美月にマスカレードがいたように、
ティアラやセイラにも、「憧れ」に近い存在がいたことが示された話だったと思います。
その中で改めて鮮明になったのは、『アイカツ!』は「憧れ」を描くけれど、
その対象をただ追いかけることを描くわけではないということです。

いちごは美月から離れてアメリカに行き、美月も織姫から離れてドリアカに行きました。
それと同じように、ティアラも織姫を追うのではないし、セイラもいちごを追うのではない。
二人は自分の「なりたい思い」で、むしろ契機をくれた彼女たちに対峙していく。
以下の回想の場面で、ティアラがセイラにかける言葉は象徴的です。

「でも、きらきらふわふわしてないし……」
「なりたい思いがあれば、誰でもアイドルになれる。
 いいじゃない。誰かを目指すことなんかないし、あなたはあなたのままでいい。
 音城セイラ。あなたはどんなアイドルになりたいの?
「あたしは……音と一緒に、自由に輝きたい!
 そして、きらきら輝くあたしの音を、世界中に広げたい!
 あたしの音で、みんなが楽しく、しあわせになって欲しい!」 (65話)


『アイカツ!』は、誰かに影響を受けながら、「わたしの夢」を追う物語なんですよね。
その意味で、自分だけの光を持つ「オリジナルスター」を誰もが目指していく。
美月がティアラと意気投合したのも、同じく織姫に憧れながら、
彼女とは違う道で頑張ろうとしているティアラに共感したからであると思います。

さて、この記事では前回の話も交えつつ、
今回の話の中で特に何が示されたのかということを考えていきます。
とりわけ注目するのは、いちごとセイラの勝負が「引き分け」だったことです。
そこにはどのような意味を見出すことができるでしょうか。



○『アイカツ!』第65話:伯仲する「アイドルへの想い」


それでは、「引き分け」は何を意味しているのかという問いから始めていきます。
いちごとセイラは既に何度も直接対決を経験しており、
その都度、勝ったり負けたり引き分けたりしてきましたが、
とりわけ前回、福女レースでセイラがいちごに敗れていることに注目してみましょう。
前回はセイラが負けましたが、今回は引き分けに持ち込んだ。
思うにこの流れにこそ、意味を見出すことができます。

注目すべきは、前回と今回の物語の主なテーマの違いです。
前回は「アイドルの適性」を、今回は「なりたい思い」をテーマにしていたと考えられます。
まず、福女レースについては、ティアラが次のように言っていました。

「このレースでみんなが競うのは、運動神経の良さとアイドルの適正なんだって」 (64話)


そして、レース中にセイラが躓いたのは、「アイドルの適性」の方でした。
すなわち、最高の笑顔を作るという適性検査を、セイラは突破することができなかったのです。
ここはソレイユの面々がすんなりと通過できたのと対照的で目立っています。
この原因としては、セイラはアイドルになってまだ日が浅く、
一年目で散々学んできた三人に比べて経験値が足りなかったからであると考えられます。
適性検査では、そのアイドルが「如何にアイドルらしいか」が計られたと言えますが、
そういった「アイドルらしさ」という点ではセイラはいちごたちにまだ劣る面があるのです。

セイラの敗北という結果は、そうした事実を示唆していたと読むことができます。

このように「アイドルの適性」、「アイドルらしさ」が問題となった前回に対して、
今回は「なりたい思い」、「アイドルにかける気持ち」が問題になっていました。
そのことは上述の引用部や、果てはアイカツ格言から窺い知ることができます。
とりわけ掘り下げられたのは、セイラのアイドルに対する気持ちでした。

「たのもー!」
「なになに!? あなた面白い!」
ここに来れば、なりたい思いがあれば、
 誰でもアイドルになれるって聞きました。
 あたしも、アイドルになれますか? らららって音を出せますか?」 (65話)


「なりたい思い」、「アイドルにかける気持ち」でもって、
「最初の扉」を強引にでもこじ開けたセイラの姿が非常に印象的です。
このように今回は「アイドルらしさ」ではなくて、「アイドルへの想い」がテーマでした。

そして、そうした物語の末尾でセイラがいちごに引き分けたということは、
彼女が「想い」の面ではいちごにちっとも劣っていないことを示していたと思います。
アイドルとしては経験が浅く、「アイドルらしさ」という面からみると、
一年目で散々学んできたソレイユ三人に負けるところもあるセイラですが、
「アイドルへの想い」の面では堂々と肩を並べることができる。

そういったことが、今回の引き分けによって示されていたのではないでしょうか。
アイドルへの想いは伯仲しているということが、第65話には表れていたと考えられます。



○関連記事

  福女レースの順位から見えてくるテーマ (第64話考察)


テーマ:アイカツ!
ジャンル:アニメ・コミック

キス以外に注目して見る『桜Trick』 (桜Trick:第一話考察)

2014.01.13 17:09|桜Trick
桜Trick (1) (まんがタイムKRコミックス)桜Trick (1) (まんがタイムKRコミックス)
(2012/08/27)
タチ

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今回は、アニメ『桜Trick』について考えてみたいと思います。
特に注目するのは作中の「キス以外」の部分です。
色々なところで話題になっているように、「キス」が非常に印象的な作品ですが、
『桜Trick』はそればかりの作品というわけではありません。

一話の中に現れていた「三つの柱」とでも言うべき、キス以外の要素を提示していきます。
そのため今回は考察というより、紹介の色が強いかも知れません。
全文を通して、後の内容がはっきりと分かってしまう決定的なネタバレはないので、
アニメで初見の方は見所の紹介だと思って気楽に読んでいただければ幸いです。

また脚注には、その要素が後に実際に絡んできたと考えられる箇所を原作から例示しておきます。
既に原作をお持ちの方は、そのページを確認していただければよりよく分かると思います。

それではアニメ一話の内容を、キス以外の部分に注目して振り返ってみましょう。



○キス以外に注目して見る『桜Trick』:一話に見出す三本の柱


(1)春香の優に対する頑張り

まずは、春香と優の関係に注目してみたいと思います。
アニメ『桜Trick』は、高校入学前夜、春香が決意を新たにするところから始まります。

「明日から高校生かぁ… 私…ちゃんと友達できるかな…」

――優ちゃんに相談してみよっかな…
 ううん 優ちゃんに頼ってばっかじゃダメ!
 もう高校生になるんだから! (1話、1巻3ページ)


春香は何でも優に頼ることを止めて、高校生として頑張っていこうと考えるわけです。
この始まり方を見た時点では、春香は作中で優離れしていくのではないかとも予想できます。
優に頼り切りだったこれまでとは決別し、高校入学を機に新しい日常へと向かっていく。
そのような物語として、『桜Trick』の今後を期待することができるのです。

しかし、その予想は外れであると早々に告げられることになります。
優に頼るまいとして電話をかけるのを止めた春香は、
直後に優からの電話を受けて、そこで色々と世話を焼かれて、明らかに喜んでいるのです。
これまでのように優に頼らないという目標から導かれる、
優から相対的に離れるという選択肢はここで早くも否定されることになります。

けれどもこれで、春香の計画が頓挫したというわけではありません。
彼女は優から離れることはできませんが、別の方法で頼り切りの関係から脱け出ようとします。
入学式で校長が話している最中、春香は次のように考えます。

――もう高校生かぁ… きっとあっという間の三年間なんだろうな…

「あっ 寝てる…」

――私はまだまだ側にいたいんだよ 優ちゃん

 今でも覚えてる 初めて優ちゃんに会った日のこと
 優ちゃんに会うまで 私 一人だったんだよ
 だから今度は 私が返す番だね
 部活とか文化祭とか体育祭 修学旅行も 
 いっぱい いーっぱい 楽しもうね (1話、1巻14ページ)


これまで頼らせてくれて、支えてくれていた優に対して、お返しをしようと決意するのです。
ここが『桜Trick』という作品の、一つのポイントであると思います。
これまで優に世話になりっぱなしだったらしい春香が、
限りある高校三年間の中で如何に優に「お返ししていくか」。
そうした意味での「春香の優に対する頑張り」が、描かれていくものの一つなのです注1
優のことを考え、春香が色々と行動していく姿に注目して、視聴してみてはいかがでしょうか。
それは春香の成長の現れとして、また二人の関係の新しい形として提示されていきます。


(2)変わることとの対峙

次に、物語の舞台に注目してみたいと思います。
『桜Trick』は、三年後の廃校が決まっている「美里西高校」を舞台にしています。

我が校は三年後には東校と合併し 廃校となります
 よってみなさんは西高最後の一年生となるわけですが」 (1話、1巻14ページ)


やがてなくなってしまう学校で、春香たちは過ごしていくわけです。
この特殊な舞台設定が、不可避な変化を意識させるのに一役買っています。
卒業や環境の変化に伴い、友人との関係もいずれ変わっていってしまうかも知れない。
そういった寂しい雰囲気が、作品の中でふとした瞬間に思い出されていきます。
現に一話では、春香が空き教室で不安にかられています。

――思わず逃げ出しちゃった ここ空き教室?
 変わっちゃうのかなぁ… 私と優ちゃんも この教室みたいに
 前はちゃんとそこに在ったのに (1話、1巻16ページ)


このように、この学校で過ごす限り、来たるべき変化というものに対峙せざるを得ません。
やがて変わってしまう学校は、自分たちが変わってしまうことを意識させてしまうのです。
こうした「変わることとの対峙」が、作品の柱の一つであると思います注2
近い将来の変化を前にして、今どのように行動し、今をどう過ごしていくか。
例えば、春香と優は「特別」な関係になって歩んでいくことを選びました。
何てことのない日常の裏にある、この一種の寂寥感も作品の要素であると言えるでしょう。
先程は、春香が優に頼り切りの関係を変えていこうと決意していた点を取り上げましたが、
『桜Trick』には、それとは逆に変わることに立ち向かっていく側面もあるのです。


(3)特別な関係の外側

最後に、春香と優を取り巻く人物たちに注目してみたいと思います。
『桜Trick』は、春香と優の特別な関係が中心に据えられた作品ですが、
二人の関係は辞書通りの意味で「特別」であり、必ずしも「普通」ではないということが、
彼女たちの関係の外側の人物たちによって度々強調されています。

一話ではゆず(と楓)が、二人に対して自分の「普通」を提示していました。

「腕組みやなの?」
え… しないでしょフツー 高校生にもなって
「ゆずちゃんは 楓ちゃんを同性として意識しすぎ!」
「アンタらはお互いを異性だと思ってんだ?」 (1話、1巻12ページ)


このように、そもそも腕組みすらしないというような他者が近くに存在するのです。
春香たちの関係は、こうした外部の存在によって絶えず「特別」なものに定義され続けていきます。
親しい二人がキスをすることは、この作品の中の世界では当たり前という設定にはされていません。
こうして春香たちに対して提示される、「特別な関係の外側」に位置する人物たちこそ、
春香たちの関係の裏で描きこまれていくものであると思います注3
彼女たちがどのように春香と優に対して関わって、どのように変化していくか。
ゆずや楓を初めとする外部の人物たちの立ち回りや漸進的な変化が見所の一つになっています。
『桜Trick』を見るときは、「キスをしない面々」にも注目してみるといいかも知れません。



以上の三つが、『桜Trick』という物語には欠かせない要素なのではないかと思います。
もちろん、春香と優の「キス」は、これらを超える最大の注目点です。
当初、関係が変わっていくことを恐れて、「特別な関係になるために」行われたキスは、
次第に「特別な関係だから」行われるようになり、そこからさらに「特別な関係」とは何なのか、
二人は結局どのような関係なのかということが改めて問われていくことになります。
キスの意味と二人の関係の変容は、この作品に触れるなら必ず直面するテーマでしょう。
けれども今回は、敢えてそれ以外の部分に注目して一話を振り返ってみました。
春香の優に対する頑張り、変わることとの対峙、特別な関係の外側。
物語の冒頭で既に現れてきていた、こうした要素を心に留めておくと、
アニメ『桜Trick』がより魅力的な作品として見えてくるのではないかと思います。



 注1 例えば、春香は優がやりたがったことの実現のために奮闘します(1巻57-65ページ)。
 注2 特に、コトネとしずくは関係の変化と対峙せざるを得ません(3巻23-25ページ)。
 注3 楓の考え方は最も分かりやすく変化しています(1巻36ページ→2巻97ページ)。
    また三巻は、美月が卒業の前に気付き、変わっていく姿を描いています(3巻57-92ページ)。


テーマ:桜Trick
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福女レースの順位から見えてくるテーマ (アイカツ!第六十四話考察)

2014.01.11 14:13|アイカツ!
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(2013/10/23)
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今回は、第64話「ラッキーアイドル☆」での福女レースで、
それぞれのアイドルが何故その順位だったのかということについて考えます。
一方でいちご、セイラ、あおい(と蘭)は上位でゴールし、
他方でおとめ、ユリカは目立つ形でそこから離脱しましたが、
そこにはどのような意味を見出せるのでしょうか。
順位を考えることから、今回の話のテーマに肉薄してみたいと思います。



○上位入賞の理由:「下準備」の段階での努力


まず、いちご・セイラ・あおいが上位に入れた理由について考えます。
今回の話では、本番に向けて如何に「下準備」を行うかということが問題になっていたと思います。
物語の前半で、あおいが分かりやすく次のように述べています。

綿密な下調べをしたものが、レースを征す」 (64話)


一度しかない本番に備えて、全力で準備するということが重要だったのです。
とりわけ福女レースは二つの要素から成り立っていました。
ティアラの言葉を引用してみましょう。

「このレースでみんなが競うのは、運動神経の良さとアイドルの適正なんだって」 (64話)


よって、この二つの方面についての下準備こそ重要でした。
そして、いちごたちはここにおいて勝っていたために、上位に入れたと考えられます。
それぞれ順番に見てみることにしましょう。


(1)いちごたち:「アイドルの適正」とは何かを考える

第一に、いちごを初めとするソレイユ三人組は、
あおいのリードで綿密な下準備を行っていました。
福女レースの経験者や関係者に話を聞きにいっていたわけです。
また「アイドルの適正」について、彼女たちはきちんと考えようとしていました。

「アイドルの適正?」
「アイドルに向いてる人ってどんな人だと思う?」
「うーん、ファンをわくわくさせたりとか、うきうきさせたり、
 ずっと見てたくさせちゃうパワーとか、素敵な笑顔を持ってる人かなあ
「それは分かるなあ」
「でも、ファンがわくわくするアイドルって、色々なタイプがいるよね」
「ああ、難しいな」 (64話)


ここでらいちはファンの視点から、「笑顔」が重要であることを地味に当てています。
らいちのアドバイスがレースで実際に役立ったというような描き方はされていないものの、
「あるに決まってる」と考えてしまいそうな「アイドルの適正」について、
三人はしっかり考えようとしたということが、上位の遠因になっていたと思います。

実際に三人は、「アイドルの適正」検査のゾーンで全くつまづかないのです。

三人の中でもいちごが一位になれたのは、
「下調べ」の延長で太一から有用な言葉を受け取れたからであると解釈できます。

「そう、今日がんばったら、明日のことは明日また考えればいい。
 お父さんも毎日、そうやっている」
「お父さん、レースで何が起こっても驚かないようにするためには、どうすればいいの?」
「驚かないようにか……」
「お父さんは世界中を旅して色々なハプニングに出会うの、怖くないの?」
「お父さんだって、みんなのいる家に帰りたいって思うことはあるよ。
 でも誰も知らない美味しい食べ物に出会ったとき、お父さんが最初に考えるのは、
 この美味しさをたくさんの人にも味わってほしいということなんだ。
 それと同時に、作った人の気持ちも大切に届けたいと思う。
 一旦始めたら、できるかできないかなんて考えないかな。夢中で頑張ればいいと思うよ
「うん、分かった! わたしもステージを見に来てくれた人に幸せを届けたい!
 エンジェリーシュガーの星座ドレスをゲットしたいのだって、
 応援してくれるファンやデザイナーの天羽さんに、
 早く星座アピールを見せてあげたいから!」 (64話)


今回の要の部分であると思うので、長く抜かせていただきました。
ここで「夢中で頑張る」というアドバイスを受けていたため、
ラストスパートでセイラに競り勝てたということは、作中でも強調されていました。

太一の言葉が最終的な勝負の分かれ目になっていたと思います。

またあおいが蘭に勝って三位だったのは、彼女が「下調べ」を提案したことからも分かるように、
今回のテーマであったそれがあおいの得意な領域であったからではないでしょうか。
実際にあおいは唯一人スペシャルグッドコーデを出すなど、最も完璧に関門を突破しています。
それは、「下調べ」を問題とする回だからこそ行われた、あおいの強調だったのではないでしょうか。


(2)セイラ:トレーニングを頑張る

第二に、セイラが二位になれた理由についても考えてみましょう。
ソレイユ三人と比較すると、セイラは「アイドルの適正」については考えられませんでした。
「あたしたち、アイドルの適正があるから、ここにいるんだよな」と考え、
それ以降何も考えないままに本番に臨むことになってしまったのです。
彼女が最高の笑顔を作るゾーンでつまづいたのは、このことの現れであったと思います。
いちごとは対照的に、ここで色々と考えてしまったのかも知れません。

それでも彼女が二位になれたのは、もう一つの道で彼女が頑張っていたからです。
先に述べたように、福女レースの二大要素は「アイドルの適正」と「運動神経」でした。
このうちでセイラは、「運動神経」に関連する方向で頑張ったと考えられます。
彼女がいちごに負けないためにも懸命にトレーニングを積んでいたことは、
ランニングマシーンの場面で、きいと比較されながら強調されていました。
ソレイユ三人とは別の方向での「下準備」が、二位に繋がったと見ることができます。


(3)まとめ:「下準備」の段階での努力

結論として、上位入賞の裏には「下準備」段階での努力があったと言えそうです。
逆に言えばその重要性が、福女レースの結果を通じて描かれたということができます。



○離脱・脱落の理由:譲れない「自分のカツドウ」


次に、ぽわぽわプリリンやユリカが上位に入れなかった理由について考えます。
思うに彼女たちの脱落は、今回の裏のテーマとでも言うべきものを表していました。
すなわち、アイドルには「そのアイドルならではのカツドウがある」ということです。
そのアイドルとは切っても切り離せない、譲れない要素があるということが、
華々しい上位争いの裏で示されていたように思います。

これは、これまで主にヒカリが示してきたテーマです。
例えば、大半の生徒が参加したトライスターのオーディションで、
彼女が不参加を選ぶとき、「ヒカリにはヒカリの領域がある」ことが提示されていました(33話)。

今回はそのことを、まずはデザイナーでもあるそらが語ってみせます。

「ところで、どうやらそらはエントリーしてないな」
その代わりわたしには、お仕立て券のオーダーが来るかも知れない
「そらちゃん、デザイナーだもんね」
「お仕立て券、一着の賞品か」
「星座ドレスを目指すアイドルたちの想いと、
 トップデザイナーがアイドルの想いに応えて、どんな星座ドレスを作るのか、すごく楽しみ!」
「そらちゃんらしい!」(中略)

「もしかして、新しいドレスの?」
「うん」
「見せて見せてー!」
「まだダメ。完成したときに見せる。
 これでも、わたしなりのアイカツに燃えているの」 (64話)


そらはレースには出ないで、「わたしなりのアイカツ」に取り組みます。
これはトライスターオーディションのときのヒカリと同様の選択です。
それぞれに自分のアイカツがあるということが、デザイナーの視点から改めて示されています。

レースに出場することを決めながら脱落してしまった面々に関しても、
このテーマの中で考えることができます。
すなわち、ぽわぽわプリリンやユリカの脱落は、彼女たちの課題を示したとも読めますが、
同時に彼女たちには彼女たちならではの領域があることを示していたとも読めるのです。

おとめたちは、人形焼の屋台を見つけたためにそのまま上位から離脱してしまいます。

「あ! あそこに人形焼の屋台が!」
「おいしそうな人形焼!」
「確かに」
ぽわプリは餡子とクリームを素通りできないのです~」 (64話)


「お菓子」は、ぽわぽわプリリンの結成の段階から三人のカツドウに関わってきました。
そして三人は、人気になった今でもお菓子の食べ比べを続けています(60話)。
おとめが人形焼に釣られてレースを離脱したとき、
そこでは彼女たちとは切り離せない重要なものとして、お菓子が現れていると読めます。

ユリカに関しても同じことを言うことができます。
彼女は「ドラキュラとしての夜の徘徊」のために、翌日寝坊してしまっています。
朝早いことが分かっているのならば、さっさと寝てしまえばよかったのに、
ユリカはドラキュラとして夜に出かけていくことを止めていません。
これは台詞からするとユリカの油断ゆえとも取れなくもないのですが、
彼女の登場回辺りを踏まえると、欠かせないカツドウであったとも取れます。
スワロウテイルのオーディションでドラキュラであることを突き通したり(21話)、
トライスターのオーディションで日傘を持ち続けたりした(33話)のと同じように、
いつものようにドラキュラとして振舞って自分を貫いたのです。

ぽわぽわプリリンと同様に、彼女はこれまで大事にしてきたものを堅持しています。

結論として、ぽわぽわプリリンやユリカのレースからの脱落は、
何としても譲れないような、彼女たちの「自分のカツドウ」を描き出しています。
もちろんレース途中の離脱や寝坊は問題行動であり、
その意味で課題を提出してもいるとも言えるのですが、
他方でそのアイドルならではの譲れない領域があることを示していたとも言えるのです。



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テーマ:アイカツ!
ジャンル:アニメ・コミック

みんなで勝とうとする戦車道へ (ガールズ&パンツァー:全体考察)

2014.01.09 20:07|ガールズ&パンツァー
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今回はアニメ『ガールズ&パンツァー』の考察の総括として、
最後に提示された「みほの戦車道」について考えてみたいと思います。
第12話で黒森峰に勝利した後で、みほはまほに「わたしの戦車道」を見つけたと伝えましたが、
それはどのようなもので、またどのように確立されたものだったのでしょうか。

この二つの問いは非常にシンプルではありますが、
必ずしも答えが自明である類のものではありません。
そのため、今年予定されている映画化やゲーム化などで、
作品が新たに展開していく前に、私の考えをここにまとめてみようと思います。



○みほの戦車道の内容:みんなで勝とうとする戦車道


まず、みほの戦車道がどのようなものだったのかという問いについて考えます。
これを考えるに当たっては、「勝利」を重視する西住流との関係を考えないわけにはいきません。
というのも『ガールズ&パンツァー』は、みほがそこから離れるところより始まり、
その下にいるまほ「に対して」自分の戦車道を提示して終わる物語だったためです。
「みほの戦車道」を述べるときには、元々の西住流と如何に異なるのかを考える必要があります。
とりわけ西住流では重視される「勝利」を、どのように扱っているかということが重要です。

一見、みほの戦車道は「勝利ではないもの」を重視しているように見えます。
現にみほは「勝利」を絶対とすることについて、母親に異議を申し立てようとしました(7話)。
これは「勝利」以上に大切なものがあるとの考えがあったからであると考えられます。
大洗がプラウダの作戦で危機に陥ったときにも、徹底抗戦を主張する桃に対して、
みほは「勝利」よりも重要なことがあるということを語って説得しようとしています(8話)。
特にこのときの言葉の中に、みほが重視するものというのが現れているように思います。

「でも、こんなに囲まれていては……。一斉に攻撃されたら怪我人が出るかも」(中略)

「だめだ! 絶対に負けるわけにはいかん! 徹底抗戦だ!」
「でも……」
「勝つんだ! 絶対に勝つんだ! 勝たないとだめなんだ!」
「どうしてそんなに? 初めて出場してここまで来ただけでもすごいと思います。
 戦車道は戦争じゃありません。勝ち負けより大事なものがあるはずです
「勝つ以外の何が大事なんだ!」
「わたし、この学校に来て、みんなに出会って、初めて戦車道の楽しさを知りました。
 この学校も、戦車道も大好きになりました。
 だからその気持ちを大事にしたまま、この大会を終わりたいんです!」 (8話)


ここでみほは、勝利を引き続き目指すことと、
仲間の安全を確保することの二つを天秤にかけています。
また、みほは桃に対して、大洗という場所やそこで出会った仲間たちの大きさを語っています。
これらから考えるに、みほが勝利以上に大切にするものとは「仲間」です。
これまでの試合でやってきたように、みんなで頑張って戦い抜いてこそ、
彼女にとって戦車道は楽しいものであり得ます。
勝利のために無理に前進して怪我人が出るような事態になれば、
それは最早戦争のようであって、みほにとっては決して望ましいものではありません。

ここでみほは、かつて黒森峰で全てを放棄して激流に飛び込んだときのように、
「勝利」よりも「仲間」を取ろうとしているのです。


みほが重視する「勝利ではないもの」とは、「仲間」であると言えます。
とりわけチームメイトの安全に関しては、みほはずっとこだわってきました。
走行不能の連絡を受けたときに、彼女たちはまず仲間の無事を確認するのです。

それではみほの戦車道は、「勝利ではなく仲間を重視する」ものであると言えるでしょうか。
上述のみほの考え方を見ると、どうやらそうであると言えそうなものです。
けれども私は、これでは正確でないと思います。
というのも、確かに当初のみほのスタンスはそれに近かったものの、
最終的に「みほの戦車道」として提示されたものは異なるものだった気がするのです。
先程の引用の直後、大洗は勝利を目指さねばならないことが桃たちにより語られます。

「負けたら我が校はなくなるんだぞ!」 (8話)


この事情により、みほは「勝利でなく仲間」とは言っていられなくなります。
負けてしまったら、みほが何より大切に思う「仲間」とも一緒にいられなくなるのです。
そこでみほは、当初の自身の態度に少し修正を加えることにします。

「この学校がなくなったら私達、ばらばらになるんでしょうか……?」(中略)

「まだ試合は終わってません。まだ負けたわけじゃありませんから」
「西住ちゃん」
「頑張るしかないです。だって、来年もこの学校で戦車道やりたいから、みんなと」(中略)

降伏はしません。最後まで戦い抜きます。
 ただし、みんなが怪我しないよう、冷静に判断しながら」 (8話)


大洗で手に入れた「仲間」を大切に想うゆえに、「勝利」をも目指すことにするのです。
みほは勝利か仲間かという対立の中で後者を取るのではなく、
二つを擦り合わせて両方を目指していくことにしています。

これこそ作中で提示された「みほの戦車道」であると言えます。
そのため、「勝利ではなく仲間を重視する」と言ってしまうと正確でないのです。
この時点である程度定まった「みほの戦車道」の内容は、
第11話の渡河の場面で、柚子により改めて確認されています。

みんなで勝つのが、西住さんの西住流なんですね」 (11話)


ウサギさんチームが河の真ん中で身動きが取れなくなったとき、
みほは仲間の後押しを受けて、「前進することより仲間を助けること」を選びます。
それは黒森峰で仲間の救出に向かったときの状況に似ていて、
一見「勝利ではなく仲間を取った」ように思えるのですが、
実際にそこで目指されているのは「みんなで勝つ」ことに他なりません。
みほの戦車道においては、「仲間」によって「勝利」の価値が相対化されていますが、
それにより決して「勝利」が軽視されているのではないのです。
「勝利ではなく仲間を重視する」のではなく「みんなで勝つことを重視する」。
これがみほの戦車道において、最も重要な部分ではないかと思います。

結論として、「勝ち負けよりも大事なものがある」と考えるみほが、
「勝たなければならない」大洗という学校に辿り着いた結果として生まれたのは、
「仲間」を大切にしつつ「勝利」も諦めない、「みんなで勝つ」戦車道だったと言えます。


仮に再び仲間が激流に飲まれたのであれば、みほは迷いなく飛び込むでしょう。
けれどもその上で勝とうとするのが、みほであり、また大洗というチームなのです。
そうした「仲間」による「勝利」の相対化は、エリカに言わせると「甘い」(11話)のですが、
けだしそこから、「心を合わせて戦う」(10話)ことのできる大洗の強さも生まれています。



○みほの戦車道の確立の要件:自分の考えを認めてもらうこと


次に、みほの戦車道が如何に打ち立てられたかということを考えてみたいと思います。
換言すれば、自らの道を確立するために必要としたものは何かということです。
自信のなかったみほに、「わたしの戦車道」を提示するに至らしめた要件とは何だったのでしょう。
先程も引用した渡河の場面に、ヒントとなるかも知れない華の一言があります。

「私、この試合絶対に勝ちたいです。
 みほさんの戦車道が間違っていないことを証明するためにも、絶対に勝ちたいです!」 (11話)


ここを見ると、みほが自身の戦車道を確立するためには「勝利」が必要であったとまず考えられます。
実際に、みほが「わたしの戦車道」を見つけたと述べたのは、優勝した後のことでした。
先に述べたように、みほの戦車道の内容はプラウダ戦の時点でほとんど定まっていましたが、
黒森峰との戦いが始まった時点においても、それを自らの戦車道として提示するには至っていません。

「西住殿、よかったですね。仲間を助けた西住殿の行動は間違ってなかったんですよ」
「今でも本当に正しかったかどうかは分からないけど、
 でも、あのときわたしは助けたかったの、チームメイトを。
 だから、それでいいんだよね」 (10話)


試合直前、かつて水没する戦車から助けた張本人(赤星小梅)にお礼を言われたことを受けて、
みほは優花里に、以上のように自分の心境を語っています。
そこにはみほが「やりたいこと」を選べるようになったことが表れていますが、
この時点ではまだそれを自らの戦車道として掲げるには至っていません。

実際にそれを成し遂げるのは、試合後、まほを前にしてのことです。

それでは、様々なチームに「勝利」し、果てに優勝したことが、
みほの自信に繋がったと考えることができるのでしょうか。
戦車道を確立する要件は、それでもって「勝利」することだったのでしょうか。
仮にそうだとすれば、「勝利」を絶対視しないみほの戦車道は、
それを確立するに当たっては、「勝利」を絶対に必要としたという、
奇妙な難局が目の前に現れてくることになります。

私は、「勝利」が確立の要件であるというのは、正確ではないと思います。
というのも、「勝利」は戦車道を確立するための「間接的な」要件でしかなく、
より直接的な要件があったと考えられるからです。

思うに、「勝利」は戦車道を確立するために必要だったのではなく、
戦車道を確立するために必要な何かのために必要であったに過ぎません。


その何かとは、「承認」、すなわち「認めてもらうこと」です。


しほなど、周囲に自分の考え方を否定された結果、戦車道から逃げたみほに必要だったのは、
自分の考えを誰かに認めてもらうことだったのではないでしょうか。
とりわけ重要な承認は、大洗の面々と、まほによってもたらされます。
この両者に認めてもらうことこそ、みほが自らの道を打ち立てるための要件であったと思います。

そして「勝利」は、この二種類の「承認」を受けるために必要なものだったと言えます。
まず、「勝利」をしなければ、「承認」してくれている大洗の面々と別れることになります。
次に、「勝利」をしなければ、一応西住流のもとにいるまほには認めてもらえません。
こうした局面において、「勝利」はあくまで間接的に、道の確立に関わってくるのです。

とりわけ、みほが大洗の面々だけでなく、まほの「承認」をも必要としていたということは、
黒森峰に勝った後で、「わたしの戦車道」を宣言する場面に最もよく見て取れます。

「お姉ちゃん!」

「優勝おめでとう。完敗だな。
 みほらしい戦いだったな。西住流とはまるで違うが」
「そうかな?」
「そうだよ」
「あっ。じゃあ行くね」
「ああ」

お姉ちゃん! やっと見つけたよ! わたしの戦車道!」 (12話)


ここでみほは自らまほに声をかけるわけですが、その後に言葉が続いていません。
少しの間沈黙があって、それからまほが「おめでとう」を述べた後で、
初めてみほは「わたしの戦車道」を見つけたということを伝えることができました。
この伝えるまでの一連の流れが重要であると思います。
すなわちみほは、まほが認めてくれるまでは、「わたしの戦車道」を宣言できなかったのです。
みほの正面にまほを、背後にあんこうチームの面々を位置取らせる、
この夕焼け色の場面の構図は象徴的だと思います。
認めてくれる両者の間に立って初めて、みほは自分の戦車道を確立するのです。

結論として、みほの戦車道は「承認」されることによって確立されたと言えます。
特に重要だったのは、大洗の面々とまほによって認められるということです。
それがみほの自信に繋がって、ついには自ら「わたしの戦車道」と述べるに至りました。
この両者の承認が鍵となっているのは、以前の記事で述べたように、
彼女たちがそれぞれみほにとって大切な存在であったからと考えられます。
みほにとってのまほの存在の大きさは、『リトルアーミー』で詳しく取り上げられている一方、
アニメ本編では語られませんでしたが、先のまほと対峙する場面から知ることができます。

認めてくれる誰かと出会い、最も認めて欲しい相手に認めてもらうことが、
みほの戦車道の確立のためには必要だったのです。



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  今咲き初める友情の花 (第一話考察)
  大切な誰かに認めてもらうために (第四話考察)


テーマ:ガールズ&パンツァー
ジャンル:アニメ・コミック

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天秤と申します。
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よろしくお願いいたします。

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