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姉妹や恋人のようで (原悠衣『きんいろモザイク』)

2013.11.24 12:58|きんいろモザイク
きんいろモザイク (4) (まんがタイムKRコミックス)きんいろモザイク (4) (まんがタイムKRコミックス)
(2013/09/27)
原 悠衣

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前回の記事では、忍とアリスの関係について、四巻の内容を肴にして考えてみましたが、
今回の記事では「陽子と綾の関係」について、既刊の内容を踏まえて考えていきます。
とりわけ、陽子と綾は自分たちの関係をどのように捉えているのでしょうか。
二人の関係について、今改めて考えてみることにしましょう。



○陽子と綾の関係:姉妹や恋人のようで


まず、陽子と綾の関係は「姉妹」「恋人」に近いものとして提示されることがあります。
すなわち、空太と美月、二人の姉である陽子は、綾を「妹」に重ねて考え、
恋愛乙女である綾は、綾と陽子を「恋人」に重ねて考えるのです。
陽子は実際に姉であることから、綾は恋愛に憧れる少女であることから、
自分たち二人の関係も「姉妹」や「恋人」という枠組みを使って捉えようとします。
実際に、そう考えられている場面を引用してみましょう。

「いいかげん機嫌直しなよー」
「べ 別に怒ってないわ」
「ケーキおごるからさ!」
「!」
――ケーキ…
綾みたいな妹ならかわいいのになー
「いもうと…?」
「私 何か変なこと言った!?」 (2巻99ページ)


ここで陽子は、自分と綾の関係を「姉妹」の枠に収めて考えてみています。
それに対して綾は、自分たちの関係を「恋人」の枠に収めて考えます。

「お昼ですが早弁したのでお弁当がありません
 からあげ一個ちょーだい?」
「しょーがないわね…」
――は…っ
「あ… あーあー」
「え!? 何っ」 (2巻25ページ)


ここで綾はバカップルの姿を見て、自分も陽子に「あーん」を試みています。
綾が、自分と陽子の関係を「恋人」の延長で捉えようとしていることが分かる場面です。

このように陽子と綾の関係は、主観の上で「姉妹」、「恋人」に近いものとして提示されています。
つまり、陽子にとっては「姉妹」に、綾にとっては「恋人」に重ねて考えられるような関係なのです。
しかし重要なのは、一方で二人が自分たちの関係を「姉妹」や「恋人」の延長で捉えながら、
他方でそれらの関係とは違ったものとしても捉えているということです。

それぞれの典型的な関係に、二人の関係はすんなりと収まるわけではありません。

第一に、陽子は実際に姉であるために、綾を妹のような存在として見ようとする一方で、
自分の実の妹とは異なる「一番」としても考えています。
陽子にラブレターが届けられた話の、次の場面での言葉に注目しましょう。

「手紙は嬉しいけど最初から断る気でいるよ」
「どうして!?」
相手が誰であっても綾の方が好きだからさ!」 (1巻101ページ)


ここで綾は「妹」のイメージの下で捉えられていません。
ラブレターの申し出を受けることで、その人と「恋人」になることは、
「妹」と両立するはずですが、陽子は誰であっても綾のために断ると言っています。
綾が「妹」に留まらない「一番」なので、ラブレターの申し出は受けられないのです。
ここでは「姉妹」という枠組みが先にあり、それに関係を当てはめているのではありません。
「姉妹」という言葉では回収できない、二人の関係が浮かび上がっています。

第二に、綾は恋愛に憧れているために、陽子を恋人として見ようとする一方で、
「恋人」のイメージの典型である、「白馬の王子様」ではないとも考えています。
忍が物語の才能を発揮する話で、綾も身近な人で色々と想像します。

「綾のことだから白馬の王子様とか?」
「そんなんじゃないわ ロバよ! 茶色の!!」
「ロバ!?」
陽子に白馬なんて似合わないわ
「私なんだ?」 (2巻105ページ)


ここで綾は、「白雪姫」のような「恋愛もの」に憧れている(2巻16ページ)にもかかわらず、
その中での「恋人」の典型的イメージである「白馬の王子様」の下で陽子を捉えていません。
同じような役割ではあるものの、乗っているのはあくまでロバです。
ここでもやはり、「恋人」という枠組みが先にあるのではありません。
むしろ陽子が先にいて、それに合わせて枠組みの方が変質しています。

こうした場面に表れているのは、陽子も綾も、
自分にとって身近な「姉妹」、「恋人」という典型的な関係に、
自分たち二人の関係を重ねて考えているだけではないということです。
一方で「姉妹」や「恋人」のような関係として捉えられていく二人の関係は、
他方でその「典型的な関係」であることを否定されています。

換言すれば、陽子は綾を「家族」のように、綾は陽子を「恋人」のように大事にしながら、
その枠に留まらない「綾」としても、「陽子」としても、大切にしているのです。

二人の関係は「姉妹」や「恋人」のような関係として提示されながら、
それでいて同時に、それらと等しくはないものとして提示されています。
そうした典型的な関係であることを否定したところに、「陽子と綾の関係」はあるのです。


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テーマ:きんいろモザイク
ジャンル:アニメ・コミック

みんなで作り上げたステージ (アイカツ!第五十八話考察)

2013.11.23 13:40|アイカツ!
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(2013/09/25)
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第58話「マジカルダンシング♪」が放送されました。
セイラときい二人での初ステージ、可愛らしい新曲など、見所はたくさんありましたが、
今回の話の特徴はステージでの「振り付け」に目が行くようになっていたことです。
これまでの話の中で最も、ステージでの振り付けに注目できる話であった気がします。
ジョニーの教示や仲間の助言を受けて、結局どのような振り付けになったのか。
この記事では、第58話のこの側面について述べてみようと思います。



○『アイカツ!』第58話:みんなで作り上げたステージ


今回の話でよかったのは、先にも述べたように、
振り付けにスポットを当てたことで、ステージ本番が最高に熱かったことだと思います。
五十八回もやっていれば、最後にパフォーマンスがあることは既におなじみなわけですが、
みんなで考える過程を描きこむことで、それを改めて楽しめるようになっていました。

「きい」
「セイラがさっき言っていたみたいに、おもちゃのお人形が動いている感じがしない?」
「何となくする!」
「だよね! そういう感じで書いてみよっか」

「何か楽しいな。ふわー、ふわわわわー」
「ぴょん! おしりをフリフリフリフリ」
「うん! うー、ドッカーン!」
「ドッカーン?」
「敬礼敬礼、ぴょんぴょんぴょん!」
「あー! それ可愛い!」
「使っていいよ」
「本当か!」 (58話)


このようにジョニー流レッスンの中で、アイドルたちが考える過程が描かれたため、
ステージ前に既にパフォーマンスへの期待が高められていきます。
『アイカツ!』という作品の場合、毎回モデルが進化していたり、
モーションに微妙な変化が加わっていたりしているので、
ステージはただでさえ一つの見所になっていると言えます。
しかし今回は物語自体が、更に注目を集めるように働いているのです。
入念な準備の後に、一体どのような本番がやってくるのか。

個人的にはこの辺りが、第16話・第17話に近かったと思います。
いちごが初めて、美月と一緒にステージに上がる話です。
あの話でも、おなじみになりつつあった「アピール」に注目して特訓を描きこむことで、
ステージ本番が一層熱く、アピールが一層輝かしく見えるようになっていた気がします。

今回は、同じように「振り付け」の一つ一つが活きるように仕組まれていたのです。

また、第58話のステージは「みんなで作ったもの」として提示されていました。
アイドルたちがジョニーに振り付けの極意を学ぶだけではなくて、
自ら最高のステージを作り上げてもいく点が、極めて特徴的だったと言えます。
ステージのプロデュースを任されていたきいだけではありません。
いちごやあおいや蘭も大いに関与して、パフォーマンスを磨き上げています。

「そっか、あたしたちは何か、上手くいってないなって思っちゃうんだよな」
「やり切れてない感じがするんだ」
あ、もしかしたら! セイラちゃんときいちゃんも、
 楽しんじゃえばいいんじゃない? ふわーって!」
「ふわー?」
「確かにね。だって振り付け自体は可愛いし!」
楽しむことは大事だからな
「そっか!」
あとは、全部のポーズで写真を撮られていると思えば、もっと決まると思う
「それすごい!」
「さすがモデルだな!」
「あおいだったらこういうとき、どうする?」
もしも私がいちごや蘭と一緒に振り付けを考えるとしたら、
 とにかくずっと、いちごと蘭のこと見てるかも
「照れますな~」
「見てれば、どうすればもっといいか、分かるはずだから」
「そっか!」
「そうだね!」 (58話)


ここでいちごたちは、三者三様、それぞれ「らしい」アドバイスを送っています。
地味に注目すべきは、蘭が「楽しむことは大事だからな」と言っていることです。
第23話で絵麻の姿から学んだことを、蘭はそのまま言葉にしていると言えます。
こうしたアドバイスを受けて色々やってみた末に、二人のステージは完成するのです。

このように、セイラときいだけではなくて、いちごもあおいも蘭も巻き込んで、
「みんなのコミットによって作り上げられたステージ」としてばーんと提示されたから、
今回のパフォーマンスは最高に熱いものとして表れてきたと思います。
曲調はふわふわした可愛いものなのですが、ステージはその意味で熱かった。


テーマ:アイカツ!
ジャンル:アニメ・コミック

大切な誰かに認めてもらうために (ガールズ&パンツァー:第四話考察)

2013.11.20 17:15|ガールズ&パンツァー
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今回は、第4話「隊長、がんばります!」についてです。
『ガールズ&パンツァー』と言えば、迫力ある試合シーンが目を引きますが、
注目して見てみると試合以外のところもなかなか面白いんですよね。
とりわけ第4話は、この作品の中で特徴的な考え方が提示されています。
そのためこの記事では、その部分に着目してきたいと思います。



○『ガールズ&パンツァー』第4話:大切な誰かに認めてもらうために


第4話は、ダージリン率いる聖グロリアーナ女学院との練習試合と、
華と彼女の母親・百合が対立する模様が描かれていました。
その中で特に重要だと思われるのが、次の場面です。

「お嬢、奥様が目を覚まされました。お話があるそうです」
「わたくし、もう戻らないと……」
「お嬢!」
「お母様には申し訳ないけれど……」
差し出がましいようですが、お嬢のお気持ち、
 ちゃんと奥様にお伝えした方が、よろしいと思います!」 (4話)


ここは、『ガールズ&パンツァー』でかなり特徴的な場面であると思います。
というのも、ここで華は家を出て行こうとするのを止められて、
きちんと母親と向き合って話し合うように求められています。
この流れの中に、単に家を離れて自分の道を行くだけではダメで、
それをきちんと認めてもらう必要があるということがはっきりと表れています。

自分の道を邁進するだけではなく、それを「認めてもらう」ことが肝要なのです。

もちろんそれは、五十鈴の家に奉公している立場である、
新三郎の考えている「あるべき形」として提示されているに過ぎません。
けれども『ガールズ&パンツァー』は、みほにも同じ道を選び取らせています。
すなわち彼女も、家を出て自分の道を行くというだけではなくて、
その上できちんと西住の家と対峙することが物語の上で求められているのです。

そのことを鑑みると、自分の道を「認めてもらう」ことが重要というのは、
単なる奉公人の私見に過ぎないものではないと思います。
現に次の場面では、明らかに華の立場とみほの立場が重ねられています。

「返りましょうか」
「でも……」
「いつか、お母様を納得させられるような花をいけることができれば、きっと分かってもらえる」
「お嬢!」
「笑いなさい、新三郎。これは新しい門出なんだから。わたくし、頑張るわ」
「はい!」
「五十鈴さん」
「はい?」
わたしも、頑張る」 (4話)


ここで、みほも自分の道を行くだけでなくて、
それを認めてもらうために「頑張る」ことが方針として示されています。
『ガールズ&パンツァー』というのは、認められるために対決する物語なのです。

それでは何故、自分の道で誰かにぶつかって、それを認めてもらうことが重要なのでしょう。
考えてみると、自分の道は自分で確立することで完成するのではなく、
重要な誰かに認められて初めて完成するという考え方があるからではないかと思います。
その「重要な誰か」とは、自分が何かに取り組むに当たって大きな影響を受けた人物です。
これまでに大きな影響を受けたからこそ、その人に認めてもらうことが、
自分の道を自信を持って自分で認めるための要件になり得ます。

みほに関しては、第12話でまほに認められて初めて、彼女の戦車道は確立されました。
それまで過去を突かれたときには絶えず揺れていた「みほの道」が、
あのときを境に決定的に固まったと言えるのではないでしょうか。

彼女がまほから受けた影響についてはアニメではあまり描かれていないものの、
第12話でまほに認められたときのみほの嬉しそうな表情が、
漫画『リトルアーミー』で描かれたような姉妹の過去を仄めかしています。

結論として『ガールズ&パンツァー』では、単に自分の道を行くだけではなく、
対抗する重要な誰かとぶつかって、それをきちんと「認めてもらう」ことが重要視されています。
みほの場合はまほに、華の場合は百合に認めてもらうことで、
家の流儀から離れた彼女たちの道は初めて確立されるのだと思います。


テーマ:ガールズ&パンツァー
ジャンル:アニメ・コミック

穂乃果は「one of them」であること (ラブライブ!第六話感想)

2013.11.16 09:23|ラブライブ!
これからのSomeday/Wonder zoneこれからのSomeday/Wonder zone
(2013/03/06)
μ's

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第6話「センターは誰だ?」が再放送されました。
話の中で印象的なのは、次のリーダー不在を選び取る場面です。

「じゃあいいんじゃないかな、なくても」
「なくても!?」
うん、リーダーなしでも全然平気だと思うよ。
 みんなそれで練習してきて、歌も歌ってきたんだし」
「しかし……」
「そうよ! リーダーなしなんてグループ、聞いたことないわよ」
「大体センターはどうするの?」
「それなんだけど、私考えたんだ。みんなで歌うってどうかな?」
「みんな?」
「家でアイドルの動画とか見ながら思ったんだ。
 なんかね、みんなで順番に歌えたら素敵だなって。
 そんな曲、作れないかなって」 (6話)


今回はここで示されている、リーダーは形式的には不在だけれど、
実質的には穂乃果であるということの意味を考えてみます。
実際にリーダーのような役割を演じていて、
メンバーにもこの後でそのことを認められながら、
何故穂乃花は表向きにはリーダーにならなかったのでしょうか。

思うにこの疑問は、μ'sというグループの特性に結びついています。
この疑問を通じて、μ'sに肉薄してみることにしましょう。



○『ラブライブ!』第6話:「μ'sの一部品」としての穂乃果


仮にμ'sにおいて穂乃果のリーダーシップが最も重要であれば、
彼女がリーダーになっても全く問題はなかったと思います。
けだし穂乃果がリーダーにならないのは、
彼女のリーダーシップ以上に重大な要素というものがあって、
それが彼女をリーダーにすることと対立するからです。

穂乃果のリーダーシップ以上に、μ'sにとって必要な要素とは、
「メンバー間で支え合うこと」であり、この要素の有する相互的、水平的な響きが、
リーダーを決めることと対立するのだと思います。
第6話では、作詞作曲、ダンスなど、技術的な面が強調されますが、
支え合いはそこに留まらず、性質的な面にも及びます。

例えば、第11話で顕著に示された通り、穂乃果のリーダーらしい性質は、
他方で抑制を必要とするのであり、海未やことりが支えて初めて上手く機能するものです。
第6話でも、取材に対する反応に、二年生三人のそれぞれの役割を見出せます。

「取材……何てアイドルな響き!」
「穂乃果!」
「オッケーだよね、海未ちゃん! それ見た人μ'sのこと覚えてくれるし」
そうね、断る理由はないかも!
「ことり!」 (6話)


この取材に対する反応も、穂乃果がアクセルを踏んで、
海未がブレーキを踏むという形になっています。
こうなったときに最終的に重要な役割を演じるのがことりで、
今回は穂乃果に加担したので、取材に応じることになりました。
調整役としてのことりの役割の重さがここには表れています。


このように、穂乃果一人がリーダーとして重要なのではなく、
μ'sの支え合いの中ではそれぞれが重要な役割を演じるのです。



結論として、μ'sが活動するに当たって、穂乃果のリーダーシップよりも、
「相互の支え合い」が重要だからこそリーダーは不在であると考えられます。
穂乃果は、特に誰かが及び腰になっているときに、
相対的に重要になる「μ'sの一部品」に過ぎません。
他のメンバーと比較したときにとりわけ重要になる立場にあるのではなく、
μ'sの中の「one of them」として、リーダーのような役割を演じるのです。
第6話はリーダー不在を選び取らせることで、
そうしたμ'sのスタンスを浮き彫りにしているのだと思います。


テーマ:ラブライブ!
ジャンル:アニメ・コミック

強く気高い獅子のように (アイカツ!第五十七話考察)

2013.11.15 17:00|アイカツ!
Second Show!Second Show!
(2013/01/30)
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ということで、第57話は待ちに待った蘭の話です!
一番の見所は、やはりかっこいいステージだったかと思います。
ただ『Trap of Love』は、曲調はオシャレでかっこいいのですが、
歌詞を見ると「あなた」の前で背伸びしようとする可愛らしい少女を描いているんですよね。
作中の蘭も、要所で背伸びしてかっこよく振る舞う彼女と同じく、
えびポンを愛好する普段の姿から一変して本番ではきちんと決めているわけで、
そういう意味で曲を真に自分のものにしていた感があります。



○『アイカツ!』第57話:強く気高い獅子のように


さて、第57話は、えびポンのために大分コミカルになっていますが、
一年目で提示された蘭の課題に一定の決着を付けたものだったと思います。
第8話のヒカリとの対峙、第23話の絵麻からの学び、第37話のトライスター脱退と、
これまで課題ばかりが示されがちだった蘭の、成長が示された一話と言えます。

とりわけ解決されたのは、第37話で提示された蘭の課題です。
今回は、物語のこの側面に注目してみることにしましょう。

第37話では、「一緒だから輝ける」ソレイユ三人を描いた裏で、
「一緒でないと輝けないのか」という疑問が、
特にトライスターを脱退した蘭に不可避に向けられることになったと思います。

「美月さんの言う通りだ。いつからだろう。前の私はこんなんじゃなかった」(中略)

「頑張ってね、か。ついこの間までは、頑張ろうって手を重ねてたのに。
 会いたい、いちごとあおいに会いたい」 (37話)


このように、トライスター脱退の過程で蘭の弱さが浮き彫りにされてしまったため、
「一人でも輝けるのか」ということに、彼女は向き合う必要がありました。
そして今回の話で、蘭はこのことにきっちりと決着をつけることになります。
一人で問題を乗り越えて、輝くことができるということを明示するのです。

実際蘭は、星座アピールを求められたプレッシャーで寝つけなかったとき、
えびポンを使って自分の気持ちを自分でしっかり整理しています。
朝、いちごとあおいが駆けつけたとき、既に蘭が練習に出ていたことは象徴的です。
蘭は二人に助けを求めず、今回は全て一人(withえびポン)で解決しました。
いちごとあおいは蘭がプレッシャーを感じていたことを知ることすらなく、
えびポンのことで「勝手に大騒ぎ」していたに過ぎません。

これにより、第37話が不可避に提示する、
「いちごとあおいと一緒でなければ輝けないのか」という蘭に対する疑念が、
今回の話で決定的に払拭されていると考えることができます。
えびポンというゆるキャラの助けは用いたものの、
蘭は自分の力でミューズになったし、星座アピールを出したのです。


そのことを暗示するものとして、最後の学園長との会話があると思います。

「紫吹蘭を名指しで、新たな仕事のオファーが来たわよ」
「ほんとですか!」
「あなたにはね、えびポンPRの専属モデルになって欲しいそうなの!」
「え!?」
いわば、えびポンとのユニットね
「はい! 頑張ります!」 (57話)


織姫の「えびポンとのユニット」という言葉。
ここで、えびポンは「同じユニットのメンバー」という、
いちごとあおいのいる位置と同じところに来ています。
これは蘭がいちごやあおいたちと一緒にいるときのように、
えびポンと一緒でも、すなわち一人であったとしても、
問題なく輝くことができることを示唆していた気がします。

無論、これにより蘭にとっていちごとあおいの存在が重要でなくなるわけではありません。
第37話の「一緒だから輝ける」という主題はそれにより壊されるわけではないのです。
現に、第54話では三人でのステージが特別であると改めて強調されています。
えびポンは、三人だと「もっと」輝けるということに関しては全然否定していません。

結論として第57話は、「一緒でないと輝けないのか」という、
とりわけ蘭に向けられ得る疑問に見事に答えてみせた回であったと言えます。
星座ドレスのモチーフとされた、強く気高い獅子のように、
蘭は一人で自分の問題と向き合い、自分で輝けることを証明したのです。


テーマ:アイカツ!
ジャンル:アニメ・コミック

今咲き初める友情の花 (ガールズ&パンツァー:第一話考察)

2013.11.12 17:35|ガールズ&パンツァー
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今期は、『ガールズ&パンツァー』も再放送されています。
本放送の際には色々書き貯めていたにもかかわらず、
忙しなさのために何も記事を上げられなかったので、
今を良い機会と見て、考えたことをここに示してみようと思います。

今回は、みほが戦車道への復帰を決意する、
第1話「戦車道、始めます!」を読み込んでみることにします。
みほの復帰に関して疑問を立てて、それについて考えていきます。



○『ガールズ&パンツァー』第一話:今咲き初める友情の花


第1話でみほが、半ば忌避していた戦車道の選択を決意できたのは、
生徒会の圧力を置いておくとすれば、華や沙織との「友情」のおかげです。
現に第5.5話でみほは、次のように振り返っています。

「一度、戦車道に背を向けた私が、再び戦車に乗る日が来るなんて……。
 こんな素敵な友達と出会わなければ、ここに立つことはなかったんだと思う」(5.5話)


生徒会による脅迫めいた要求はあったものの、
みほは最終的に、友情のために戦車道を改めて選択したのです。
第1話で実際にみほが決心する場面も確認しておきましょう。

――二人とも、本当は戦車道やりたいのに、私に合わせてくれて、
 私をかばってくれて……。私のために……。
「あの、私! 戦車道、やります!」(中略)

「本当によかったんですの?」
「うん」
「無理することないんだからね」
「大丈夫」
「でも……」
私、嬉しかった。二人が、私のために一生懸命……。
 私、そんなの初めてだった。ずっと私の気持ちなんて、誰も考えてくれてなくて。
 お母さんもお姉ちゃんも、家本だから戦車やるのが当然みたいな感じで。
 まあ、あの二人は才能があるからいいけど、でも、ダメな私はいつも……」(1話)


ここに関して懐疑的な見方をするのであれば、
「数日の友情でそれだけの決意ができるのか」と考えることもできます。
第1話前半では、みほが如何に戦車道を避けているかが強調されただけに、
この最後の場面での反転がいささか唐突にも解せるわけです。
友情に基づくみほの決心は、疑問を生じさせるものであり得ます。


しかし私は、ここには「みほの友情観」が表れていると見るべきだと思います。


自己紹介のサウンドドラマによれば、みほの座右の銘は、
「友情は瞬間が咲かせる花であり、そして時間が実らせる果実である」です。
そのため彼女はこの言葉の向こうに友情を捉えていると考えられます。
そこでは、時間によって友情が果実として熟成される前に、
瞬間によって友情が花として結実する段階が想定されています。


みほに避けていた戦車道を選択させた、
華や沙織との友情は確かに未だ数日のものでした。
その意味では果実にはなっていなかったかも知れません。
けれども、花にはなっていたのではないでしょうか。
決定的だったのは、二人がみほのために自分の気持ちを曲げたときだったと思います。

「ごめんね……。私、やっぱり、どうしても戦車道をしたくなくて、ここまで来たの」
「分かった」
「ごめんなさいね、悩ませて」
「私たちもみほとの一緒にする!」
「そんな! 二人は戦車道を選んで!」
「いいよー、だって一緒がいいじゃん!」
「それに、私たちが戦車道をやると、
 西住さん、思い出したくないことを思い出してしまうかも知れないでしょう」
「私は平気だから!」
お友達に辛い思いはさせたくないです
「私、好きになった彼氏の趣味に合わせる方だから大丈夫!」 (1話)


ここで二人は自分の気持ちよりも、大切な友達のために動いています。
この場面の返答として、先のみほの決心はあります。
つまり、第1話の時点ではみほにとって戦車道は依然嫌なものですが、
自分の気持ちよりもみほのことを想って寄り添ってくれた二人に対して、
みほも自分の気持ちよりも二人を優先して、戦車道を選ぶのです。

華と沙織が戦車道を選ばないみほを認めてくれた瞬間、
みほの中で友情の花は確かに咲いたのだと思います。
故に、それが数日の友情であることは意思を弱める要因たりません。

結論として、みほが数日の友情で戦車道への決断に踏み切れたのは、
華や沙織との間に、「友情が花開いたと感じさせる瞬間」があったからです。
座右の銘から推測できるみほの友情観からして、
その大切な瞬間さえあれば数日という期間は問題になりません。
あの決心のときには既に、友情の花は咲いていたのです。


テーマ:ガールズ&パンツァー
ジャンル:アニメ・コミック

「アイドルかファンか」ではなく (アイカツ!第五十六話考察)

2013.11.11 16:03|アイカツ!
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第56話「恋のトップシークレット」が放送されました。
アイドルが不可避に向き合わなければならない、
「スキャンダル」が話の種になったのは、第20話以来でしょうか。
今回はそれに絡めて、プロデューサーとアイドルを兼業するきいの決意と、
アイドルは「秘密」とどう向き合うべきかということの二つが描かれました。
この二つのテーマのそれぞれについて、振り返りながら考えていきます。



○『アイカツ!』第五十六話:「アイドルかファンか」ではなく


(1)「二兎を追う」というきいの答え

まず、プロデューサーとアイドルを兼業することになったきいが、
どのような意志で二つをこなしていくかということが劇中では示されました。
きい自身のアイドルの仕事と、セイラのプロデュース。
後者をより重視しているように見えるきいの態度を、セイラは問題視します。

「今はきいもアイドルだ。大事なファッションショーの前だし、
 自分のことだけ考えろ。きいの邪魔はしたくないんだ」 (56話)


確かに56話で、きいはセイラのプロデュースの方に力を入れているように見えます。
実際に、仕事前であるにもかかわらず、きいはセイラのスキャンダル対策に奔走するのです。
そこでは、きいもアイドルであるのにもかかわらず、
きいの秘密が狙われるとは考えられていません。

きいはあくまでセイラが危ないと考え、自分についてはノーマークになっています。
これは、それぞれの秘密が狙われていると考えたいちごたちとは対照的です。

このことは、いちごたちに対するきいの態度を見ても分かります。

「ドリアカには、きいちゃん専用のラボがあって、
 きいちゃんは自分の部屋には帰らないで、ほとんどそのラボで過ごしたり、
 友達みたいにパソコンに話しかけるんだよね」
「どうしてそれを?」
「それは、この前ドリアカに潜入して」
「あおいはアイドル博士だから!」
ま、知られちゃっても、オケオケオッケー☆」(中略)

「ところで、セイラちゃんのスキャンダルって、何?」
「気になる!」
「おい、それじゃMr.エスと一緒だろ。とは言いつつ、気になるな」
そんなこと、ライバルのスターライト学園のアイドルに言えるわけないでしょ。
 ロックなセイラが、まさかラブラブだったなんて」 (56話)


ここできいは、自分の秘密については大して気にしていない一方、
セイラの秘密に関してはいちごたちにさえ絶対厳守の構えで臨んでいます。
自分の秘密に関しては緩く振る舞い、セイラの秘密に関しては守ろうと奮闘する。
こういった点を鑑みると、確かにきいにアイドルとしての自覚があるのか、
アイドルの仕事よりもプロデュースが先にあるのではないかと勘繰ることができます。
提示されているのは、アイドルとプロデューサーを兼業するきいが、
本当に両方の仕事に取り組むことができるのかという問題です。

両方に取り組む中で、どちらかが疎かにされてしまうのではないか。
上述のように、プロデュースの方に寄っているように見えるきいの姿と、
それを問題視するセイラによって、これが浮き彫りにされています。

これに対して、56話はきちんときいに答えを提示させます。

「なんでそんなこと言うの!? きいはアイドルになったけど、
 セイラのプロデューサーだって、ちゃんとやるんだから!
 二足のわらじ履いて、二羽のうさぎさん追っかけるんだから!
「きい……ごめん」
「うんうん」 (56話)


二足のわらじを履いて、二兎を追う。
それが、アイドルとプロデューサーを兼任することになった、きいのシンプルな答えです。
それは、いちごがお弁当屋を捨ててアイドルになるのではなく、
いわばスイッチヒッターが左から右へ移るのに似た気軽さで、
おしゃもじをマイクに「持ち替えた」ことにも似ています。
彼女もまた、休日など、状況に応じてお弁当屋の娘に変わるのです。
「どちらか」ではなく、「どちらも」選び取って、全力で頑張ればいい。
非常に『アイカツ!』らしい、明快な答えであったと思います。


(2)「アイドルかファンか」ではなく

次に、スキャンダルを材料にして、アイドルが「秘密」とどう向き合うかが示されました。
ファンと向き合うに当たって、秘密にしたり、否定したりすべきとされる種々の事柄。
これに関して『アイカツ!』は、隠しごとをほどほどにオープンにしていくことを推奨します。

「そうなんだ、セイラちゃん、猫が好きなんだ」
「うん」
「しまった!」
「しかも会話できるなんて!」
「猫と話せるアイドル、新しいな」
「本当に話せているわけじゃないけど、
 何となく気持ちが通じるような気がするんだ。
 あたしは別に隠そうなんて思ってない。みんなに知られても全然かまわない
「セイラちゃんが猫が好きじゃダメなの?」
「だって、クールでロックなセイラが、
 にゃんこと、みゃみゃん、みゃみゃみゃみゃんって話してたら、
 可愛くなっちゃうでしょ。イメージ崩れちゃうよ」
「そうかな? みんなセイラちゃんのこともっと好きになると思うけど」
「うん! ファンはアイドルの色々な顔を知りたいものだから」 (56話)


セイラが猫語で猫とコミュニケーションを取れるということは、
イメージ戦略を考えれば、当然秘密にしておくべき事実です。
ファンの抱くアイドルへのイメージを守るために、
猫と仲良くするセイラの可愛い一面は否定され得るのです。

しかし最終的に、セイラときいはその道を進まずに、
情報をファンに公開して、逆にギャップを武器にしていくことにします。
ファンも実は、その方が喜んでくれる。
ファンのためにアイドルの本当の姿を秘密にしたり、否定したりするのではなく、
その本当の姿も分かってもらおうというのがセイラたちの答えでした。

これは、アイドルとファンの関係を考えたときに、
最も緊張をもって語られる、「アイドルの恋愛」に関しても同様です。
現に織姫は、いちごたちに恋愛をしないように指示しません。

「ちょうどいい機会だから、話しておきましょう。
 私の考える、アイドルと恋愛について」
「はい」
「アイドルも恋愛することはあると思う、それはいけないことではないわ。
 でも、ずっと応援してくれていたファンの中には、がっかりする人がいるのも事実よ。
 だから、恋をするなら中途半端な恋はしないこと。
 でも、スターライト学園には、恋愛をしたアイドルへの罰則はないわ。
 もしあなたたちが恋をしたときには、私に隠さないで欲しいの。
 真剣な恋、誠実な恋、太陽のようにまわりを明るくする恋。
 そして、何よりも大切なのは、本人が幸せであること……。
 アイドルが幸せそうだったら、きっと応援してくれるファンもいる。もちろん私も応援するわ」
「応援……うん!」
「あおいや蘭や、そして学園長やお父さんやママやらいちに応援してもらえたら嬉しい!」
家族や友達や先生、そしてファンのみんなに応援してもらえるような
そういう恋ってことですよね
「ええ、そうよ。三人ともいつかするなら素敵な恋をなさい」
「はい!」 (56話)


織姫はファンに配慮して、アイドルの恋愛を禁止することはしません。
ファンのために自分の気持ちを秘密にしたり、否定したりすることを、
アイドルの責務として生徒に要求するようなことはしないのです。
かといって、ファンの気持ちを完全に無視しているわけでもありません。
彼女は、ファンにも応援してもらえるような「素敵な恋」をするよう諭します。
それは、アイドルの気持ちもファンの気持ちも考えたからこそ至れる答えだと思います。

ここから分かるのは、「アイドルの恋愛」という緊張をはらむ問題に関して、
『アイカツ!』が「アイドルかファンか」という二択で事を済ませていないということです。
そのうちのファンを取って、ファンのためにアイドルが自分の気持ちを秘密にしたり、
否定したりすることが、アイドルが取るべき道として提示されてはいません。
そうではなくて、二つのちょうど間を取っていきます。


恋愛をするなら、ファンにも応援してもらえるような「素敵な恋」をしなさい。


この結論には、「アイドルの気持ちもファンの気持ちもどちらも大事」であるから、
両方に配慮して、二つを上手く調整していこうとする意志を見出すことができます。

けだし、「アイドルかファンか」ではなく「アイドルもファンも」というのが、
『アイカツ!』のスタンスとしてここでは提示されています。


テーマ:アイカツ!
ジャンル:アニメ・コミック

にこの勧誘に見る「μ'sのやり方」 (ラブライブ!第五話感想)

2013.11.07 17:30|ラブライブ!
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最近移動中にベストをよく聞き直しているわけですが、
『Mermaid festa vol.1』の、それぞれが「さよなら」を言っていくパートで、
希が「楽しかったよ♪」って言うのが結構好きなんですよね。
あの歌詞からしたら場違いとすら思える明るさ。
それを希が言うことで、「敢えて明るく言っている」という感じが生まれる妙です。

さて、第四話に引き続き、第五話に関しても考えていきたいと思います。
とりわけにこを引っ張り込むために、
どのような方法が取られていたかを確認します。
けだし、にこを加入させるために取られた方法というのは、
真姫に曲を作ってもらうときにも取られ、
この後絵里の加入の際にも取られる、特徴的なものです。
その「μ'sのやり方」とでも言うべきものを、今回は見ていくことにしましょう。



○『ラブライブ!』第五話:にこの勧誘に見る「μ'sのやり方」


(1)穂乃果・ことり・海未のバランス

まず、余談ではありますが、前半に気になる場面があるので注目します。
雨が降っているにも係らず、穂乃果と凛が屋上に突貫していく場面です。

「あ、雨少し弱くなったかも」
「やっぱり確率だよ! よかった」
「このくらいなら練習できるにゃ!」
「ですが、下が濡れていて滑りやすいですし、またいつ降り出すかも」
「大丈夫大丈夫! 練習できるよ」
「う~テンション上がるにゃー!」(中略)

「私帰る」
「わ、私も、今日は……」
そうね、また明日にしよっか」 (5話)


ここで、無理する穂乃果(たち)を海未が諌めるもののそれでは止まらず、
ことりが「また明日にしよっか」と最終的に決断を下すという流れが提示されています。
調停役のことりの考えが確定した時点で、穂乃果もようやく諦めるのです。
ことりがきちんと機能していれば、穂乃果の暴走をかくのごとく止めることができます。
これは、彼女がきちんと機能できなかった11話とは対照的です。
二年生三人の中で、穂乃果がアクセルを踏み、海未がブレーキを踏むのに対し、
ことりがどちらにつくかということが重要であるとここで示されています。


(2)にこの勧誘に見る「μ'sのやり方」

次に、本題であるにこ加入までの過程を見ていきたいと思います。
5話でにこは、μ'sのメンバーを色々な理由でダメだしします。
具体的には、ハンバーガーショップでは「ダンスも歌も全然なっていない」こと、
部室では「キャラづくりを全然していない」ことが指摘されています。

このようににこが穂乃果たちを認めない理由は二転三転するものの、
結局大きいのは「にこと同じ所を見ることができていない」(と思われる)ことに他なりません。
それが反対する根っこにあって、歌やダンスやキャラづくりのことは、
それを証明する不真面目の現れに過ぎないのです。

にこにとってはダメだしの向こうにあるものが反対する理由であり、
歌やダンスやキャラづくりは、反対の理由として提示されているものの、
実際はそれ自体が直接的な理由というわけではありません。

ゆえに、にこを説得するためには「にこと同じ所を見られる」ことを示す必要がありました。
穂乃果は海未と仲良くなった経験から、これに直感的に気付きます。
そして、これまでの方針を転換してにこを七人目として巻き込むことにするのです。

「おつかれさまです!」
「なっ……」

「お茶です! 部長!」
「部長!?」
「今年の予算表になります、部長!」
「部長、ここにあったグッズ、邪魔だったんで棚に移動しておきましたー」
「こら! 勝手に!」
「さ、参考にちょっと貸して。部長のおすすめの曲」
「な、なら迷わずにこれを……」
「あー! だからそれは!」
「ところで次の曲の相談をしたいのですが、部長!」
「やはり次は、さらにアイドルを意識した方がいいかと思いまして」
「それと、振り付けも何かいいのがあったら」
「歌のパート分けもよろしくお願いします!」

「……こんなことで押し切れると思ってるの?」
押し切る? 私はただ相談しているだけです。
 音ノ木坂アイドル研究部所属の、μ'sの七人が歌う、次の曲を!」 (5話)


最後の穂乃果の言葉から分かるように、これは既に説得ではありません。
にこの説得ではなくて、にこの勧誘になっています。
にこにとってそれは、「私たちはにこと同じ所を見る」という、
穂乃果たち全員の決意の表明に他なりませんでした。

そのために彼女はこれまでの頑なな態度を翻します。
にこの目からすれば、ダンスも歌もキャラづくりも問題外。
けれども彼女たちは、自分と同じ所を見るという意志を持っている。

ここで重要なのは、穂乃果だけではなく、μ's全員で勧誘しているということです。
にこの加入過程においては、穂乃果が中心的な役割を担うものの、
結局はみんながにこと同じ所を見据える決意を示したことが、
にこ加入の直接のきっかけになっていると考えられます。
ここでいわば、「穂乃果の物語」から「みんなの物語」への転換が行われています。
この転換は他の箇所でも見出せる、「μ'sのやり方」とでも言うべきものです。

これまでの部分なら、真姫に曲を依頼する2話がまさしくこれと同じ過程を取っています。
つまり、そこでは穂乃果が中心的な役割を演じましたが、
最終的には三人の神社での練習光景を見て、真姫は曲を送ります。
穂乃果ではなく、「μ'sのみんなが」引っ張り込んだ形になっています。

この、穂乃果が中心的な役割を演じながら、
形式的にはみんなで引っ張り込むという「μ'sのやり方」は、6話でさらに端的に描かれます。
すなわち、実質的なリーダーとして穂乃果がいる一方、形式的にはリーダー不在で横並び。
このμ'sの特徴的な考え方が、誰かの勧誘の際にも表れています。
穂乃果が中心になるけれども、勧誘するのはみんななのです。



○関連記事


  「穂乃果の物語」としてではなく「三人の物語」として (1話、2話、3話感想)



テーマ:ラブライブ!
ジャンル:アニメ・コミック

みんなで叶える夢として (ラブライブ!第四話感想)

2013.11.06 17:01|ラブライブ!
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現在、アニメ『ラブライブ!』の再放送が行われています。
テレビで改めて眺めていると、初めて気付くことも結構多いんですよね。
今回は少し短めですが、第四話を見ていて考えたことを書きたいと思います。
もしよろしければ、少しの間お付き合いください。



○『ラブライブ!』第四話:みんなで叶える夢として


まず4話は、「やりたいのならやればいい」という考え方で、
一人で道を決めて選び取ることの難しさが、すごく強調されていると思います。
花陽、凛、真姫の三人の姿を通じて描かれたのは、
「本当はやりたいのに選べない」ということでした。
次の場面には、それが分かりやすく表れています。

「私がスクールアイドルに?」
「うん。私、放課後いつも音楽室の近くに行ってたの。西木野さんの歌、聞きたくて」
「私の?」
「うん。ずっと聞いていたいくらい、好きで。だから……」
「私ね、大学は医学部って決まってるの」
「そうなんだ」
だから、私の音楽はもう終わってるってわけ……。
 それよりあなた、アイドル、やりたいんでしょ?」
「え?」
「この前のライブのとき、夢中で見てたじゃない」
「え、西木野さんもいたんだ」
「え、いや、私はたまたま通りかかっただけだけど。
 やりたいならやればいいじゃない。そしたら少しは、応援してあげるから」
「ありがとう」 (4話)


この後、花陽の気持ちは加入に傾き始めますが、
声という自分のコンプレックスがきっかけで再び尻込みしてしまうことになります。
花陽は声が小さいという意識、凛はかわいい恰好が似合わないという意識、
真姫は将来への意識が原因となって、「やりたい」を一人では選べないわけです。

そこで、特徴的な相互の「引っ張り合い」が描かれることになります。
一人では選べないので、お互いにμ'sの方へ引っ張り合うことで、
自分の「やりたい」を掴み取るのです。

花陽は凛と真姫によって、最後には穂乃果たちのもとへ連れて行かれます。

「つまり、メンバーになるってこと?」(中略)

「わ、私はまだ、なんていうか……」
「もう! いつまで迷ってるの!? 絶対やった方がいいの!」
「それには賛成。やってみたい気持ちがあるなら、やってみた方がいいわ」
「で、でも……」
「さっきも言ったでしょう? 声出すなんて簡単! あなただったらできるわ」
「凛は知ってるよ。かよちんがずっとずっとアイドルになりたいって思ってたこと」
「凛ちゃん……。西木野さん……」
「頑張って、凛がずっと付いててあげるから」
「私も少しは応援してあげるって言ったでしょ?」

「え、えっと、私、小泉……」

「私、小泉花陽と言います。一年生で、背も小さくて、声も小さくて、人見知りで、
 得意なものも何もないです。でも、でも、アイドルへの想いは誰にも負けないつもりです!
 だから、μ'sのメンバーにしてください!」 (4話)


この言いたかった一言を、花陽は凛と真姫のおかげでついに言うことができたわけです。
そしてこの直後、花陽を引きずるようにしてμ'sに入れた凛と真姫も、
その花陽の姿に引きずられるようにしてμ'sに入ることになります。
この相互の「引っ張り合い」が、アニメ全体で度々描かれていたと思います。
例えば、にこと絵里は穂乃果が主に引っ張り込んだので(5話、7話)、
穂乃果が脱退したときには二人が逆に引っ張り込みました(13話)。
このようにメンバー全員に関して、一人ではμ'sを選び取れていない局面が存在し、
そこで仲間が極めて重大な役割を演じることになるのです。

何故このような「引っ張り合い」が描かれるかというと、先に述べたように、
アニメは「やりたいならやればいい」という考えで、
簡単には選び取れないことがあるということを重視しているからです。
思うにμ'sは、そういった選び難い目的地として描かれます。
アニメでμ'sは、それ自体がいわば「みんなで叶える夢」なのです。



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  九人のμ'sへの帰着、新しい夢への出発 (ラブライブ!全体感想)



テーマ:ラブライブ!
ジャンル:アニメ・コミック

お互いがキッカケとなって (原悠衣『きんいろモザイク』)

2013.11.03 11:42|きんいろモザイク
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原 悠衣

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本日は『きんいろモザイク』四巻の紹介も兼ねて、忍とアリスの関係を考えます。
四巻に収録された話というのは一つもアニメにはなっていませんが、
忍とアリスの関係を考える上で極めて重要な新事実が提示されています。
今回は特にその部分を取り上げ、二人の関係を改めて考えていきたいと思います。

原作を読み込んでいる方も、アニメから興味を持ったという方も、
少しの間だけお付き合いいただければ幸いです。



○忍とアリスの関係:お互いにお互いがキッカケとなって


二人の関係を考えるに当たり重要な事実が提示されたのは、
シノ部の一員としてアリスが、一見何を考えているか分かりにくい忍を調査する回です。
忍を除いたメンバーで、改めて色々と忍について考えていると、
やがて「どうしてホームステイに行こうと思ったのか」という話に行き当たります。

「外国によりハマったのはホームステイからだと思うけれど
 そもそもどうしてホームステイに行きたいと思ったのかしら」
「それは~ 駅で困ってる外国人のお婆ちゃんに出会ったからですよー」

「「「わぁーっ」」」

「何だか今日はみんなコソコソしてますね?
 私も仲間に入れてほしいです…」
「ごめんねシノ!!」

あれは私が小学生の頃 道に迷ってるお婆ちゃんがいて
私は話しかけたのですが言葉が全然分からなくて…
困っていた時に英語ペラペラなお姉さんが助けて下さいました

それ以来私も言葉で人を繋ぐ人になれたらと思ったんです」 (4巻37ページ)


ここで忍がホームステイに行こうと考えた契機が提示されています。
しかしより重要なのは、アリスと出会えたホームステイの影響が示されるこの後の部分です。

でも通訳者になろうと本当に決心したのは
アリスと出会えたホームステイがキッカケだったんですよ

「ふふっ」
「何?」
「何でもありませんよ~」 (4巻38ページ)


忍が通訳者になろうと決心した最も大きなきっかけとして、ホームステイは挙げられています。
元々忍の中にあった外国への関心や、言葉で人を繋ぐ人になりたいという気持ちを、
アリスと出会ったことがさらに「加速」させて、現在の忍に繋がっているわけです。

これは、忍との出会いがアリスに与えた影響とほとんど同じと考えられます。

アニメ一話によれば、アリスは福笑いや花札を元々知っていたので、
忍と会う以前から日本にそれなりに興味があったと推測できます。
しかし、実際に日本に行きたいと考え始めて、
日本語を勉強するようになったのは、忍のホームステイを経た後でした。
忍と会って興味が「加速」し、留学するまでに至ったと言えます。
これは、忍がアリスとの出会いから受けた影響と変わりません。
お互いに相手との交流を経て、元々あった自分の関心が加速した結果、
アリスは日本に留学しようと決意し、忍は通訳者になろうと決心したのです。

これまでの話では、アリスにとって忍との出会いが重大だったことは明白に描かれても、
忍にとってアリスとの出会いが如何なるものであったのかということは曖昧にされていました。
元々外国に興味を持っていたことが分かっているだけに、忍が通訳者になりたいと言っても、
そこにアリスとの出会いがどれだけ絡んでいるのか、よく分からなかったのです。
けれども、引用部はそれをはっきりさせています。
忍はアリスと出会って、「通訳者になろうと本当に決心した」
現在の目標を立てる決定的なきっかけとして、交流は強調されているのです。

結論として、二人が出会ったホームステイは、
実際に行動を起こすアリスだけでなく、忍にも大きな影響を与えました。
アリスが日本に行こうと考え、言葉を勉強するようになったように、
忍も通訳者になろうと本当に決心したのです。
今はまだ、アリスのように成果が出ているわけではありません。
しかし忍の決心が本当だったことは、今もまだ彼女が努力を続けていることが証明しています。
お互いにお互いがキッカケとなって、それぞれの行動に繋がっている。
四巻で提示された先の事実は、忍とアリスの関係が、
忍からアリスへ、一方的に大きな影響を与えるようなものではないと改めて示しています。
二人はお互いに影響を与え合って、今一緒に並んでいるのです。


テーマ:きんいろモザイク
ジャンル:アニメ・コミック

あたたかいひだまりの方へ (菅野マナミ『ひまわりさん』)

2013.11.02 14:01|その他の漫画
ひまわりさん 4 (MFコミックス アライブシリーズ)ひまわりさん 4 (MFコミックス アライブシリーズ)
(2013/10/23)
菅野 マナミ

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幻想文学な夢を見たり、商店街をお散歩したり、
過去の情景に心を委ねたり、クリスマスに奔走したり――。
本と本屋に集まる人たちをめぐる、ハートフルストーリーをお楽しみください。

季節が秋から冬へ移ろいゆく中――
 ひまわり書房はいつでもあなたを待っています。(4巻帯より)


本日は菅野マナミさんの作品、『ひまわりさん 4』を紹介します。
古くて小さな本屋、ひまわり書房の店主であるひまわりさんと、
彼女のことが大好きな少女、まつりを中心とした人間関係を描くこの作品。
四巻は二人の関係を、改めて大事に提示して見せた話が多かった印象です。
今回はそのひまわりさんとまつりの関係に注目することで、
私なりに作品の魅力を明らかにしていきたいと思います。

既に読んでいる方は、一緒に振り返りながら作品を鑑賞してみましょう。
まだ読んでいない方は、少しでも作品の雰囲気を感じていってくだされば幸いです。



○『ひまわりさん』:あたたかいひだまりの方へ


(1)まつりからひまわりさんへの言葉

四巻では、前のひまわりさんやひまわりさんの兄の師匠・夕のような、
インパクトのある新しい人物は登場しませんでした。
その分改めて、まつりとひまわりさんの関係が大切に描かれたという印象です。
とりわけ、前向きで率直なまつりの言葉が、ひまわりさんに示唆を与える話が目立ちます。
まずはそうした、「まつりからひまわりさんに向けられた言葉」に注目してみましょう。

第29話・第30話では、夕が持ってきた「ひまわりさんへの」ラブレターが問題になります。
夕のからかいもあって、まつりはそれが今のひまわりさんへのものだと早とちりしますが、
実際はそれは今のひまわりさんの兄が書いた、前のひまわりさんへの恋文でした。
生前に手渡されることのなかった、想いの詰まった一葉。
ひまわりさんは少し悲しげに、その真実をまつりに語ります。

「それは 私宛てじゃないんだよ その手紙は届けられなかったんだ
 その人を想って書いたのに無意味になってしまうのは 少し悲しいな」
そんなことないですよ きっと意味のないことなんかじゃありません
 もしかしたら自分の気持ちを文章にすることで整理がついたのかもしれません
 わたしも…… 今回改めて再確認したのですよ」
「?」
「わたしもひまわりさんに手紙を書きます!」 (4巻82-84ページ)


ここでまつりは、非常に前向きにその手紙を捉え直しています。
手紙に書かれている想いに、自分の今のひまわりさんへの好意を重ねた上で、
手紙は無意味ではなかったと明るく言ってのけるのです。
そして、ひまわりさんへの手紙を自分でも書いてみることにします。
このまつりの言葉と行動を見て、ひまわりさんは穏やかな微笑みを浮かべます(84ページ)。
まつりはひまわりさんとは異なる解釈をして、
ひまわりさんの心の内にぼうっと小さな明かりを灯すのです。


続く他の話でも、同様の構図が現れています。
第32話では、安房直子さんの『きつねの窓』が話のタネになっていて、
書店に集うメンバーで実際に指を染めて「きつねの窓」を作ってみます。
けれどもただ一人、ひまわりさんだけはそれにあまり乗り気ではありません。
本来であれば、「きつねの窓に映るのは 会いたくてももう決して会えない人」。
しかし既に大人になってしまったひまわりさんには、それを見ることができません。

実際に窓を作って覗いてみて、何も見えなかったとき、
自分が取り残されたことをどうしようもなく知ることになる。

前のひまわりさんのことを想って、彼女は少し悲しい気持ちになっていました。
そこに、初めて『きつねの窓』を読んだまつりが現れます。

「読んだ感想はどうだった? きつねの窓」
「ほわわって感じですかね!」
「……そうか 全然わからん」
「窓を覗いて見えるのはもう会えない人だから それはすごく切ないです……
 もし もう ひまわりさんと会えないなんて想像したら…っ
 でも それは 会えないけど会いたいって思うくらい
 大好きってことだと思うのですよ
 大好きな人を想うと ほわわ――ってあたたかくなるでしょう?」(中略)

「………私 本当はずっと思い出すことが辛かったんだ
 指で窓を作ったって 現在しか見えない
 思い出す度に あの人はもういないのだと 私はひとりなのだと痛感する でも」
「何か見えましたか ひまわりさん」
「うん まつりが見えた」
「いぇ~い」
「だから なんだそれ」

「はああっ 冷たい風が! 秋ですねー! 中に入りましょう ひまわりさん!」

私はちょっとだけあたたかくなれたよ」 (4巻112-118ページ)


ここでまつりは、ひまわりさんの『きつねの窓』の解釈とは異なる解釈をしています。
すなわち、「もう会えない人」を、「それでも会いたい大好きな人」と捉え直すのです。
「もう会えない人」と言ったときの重い響きが、「大好きな人」と言ったときにはありません。
まつりの言葉を受けて、ひまわりさんは改めて前のひまわりさんを思い出します。
そのとき彼女が感じたのは、先述した取り残された悲しみではなく、
まつりの言ったような「ほわわ」としたあたたかさでした。

再びひまわりさんは、穏やかな微笑みを浮かべます(116ページ)。
ここでもまつりは、ひまわりさんの心の内に小さな光を灯すのです。

この二つのケースでは、まつりが「知らないこと」が極めて重要だと思います。
まつりは前のひまわりさんのことをあまり知りません。
だからこそ、ひまわりさんとは別の考え方を提示することができます。
前のひまわりさんを知っているひまわりさんが、どうしても悲しく捉えてしまうところを、
まつりは知らないことを武器に、前向きに解釈し直すことができるのです。

『きつねの窓』の感想に関しても、あまり本を読んだことのないまつりらしく、
拙くふわっとしたものですが、それゆえに率直で示唆に富むものになっています。
今のひまわりさんとは全然異なるまつりだからこそ、
ひまわりさんに明かりを灯すことができるのです。


(2)ひまわりさんからまつりへの言葉

ここまでは、まつりからひまわりさんに向けられた言葉に注目してきました。
けれども、『ひまわりさん』では逆方向の言葉も印象的です。
すなわち、ひまわりさんからまつりにかけられる言葉も、
まつりに勇気を与えるあたたかいものなのです。
今度は「ひまわりさんからまつりに向けられた言葉」に注目してみましょう。

まつりがひまわりさんから言葉を受け取る話として外せないのが第1話です。
まつりがひまわりさんに言葉を送る話を見ていると忘れそうになりますが、
まつりは単なる前向きで明るい少女というわけではありません。
自分がドジで何もできないことに落ち込み、悩んでしまうという一面も持っています。
以下の場面では、そうしたまつりが現れています。
そして、そういった彼女に対して言葉をかけるのがひまわりさんです。

「見返したかったんですよ …きっと 先生も親も
 わたしにはどうせ出来ないって決めつけて 信じてもらえないのが悔しくて」
「…だからウチでバイトを?」
「わたしにも出来ることあるって 言いたかったのね…
 でも結局 出来ないことから逃げて やるべきこと何も出来てない
 この間のテストで 数学の点数一桁取ってしまったし…っ」
「そんな告白されても反応に困るのだが
 …悔しいと思うのは 諦めていないということだ 共感したり時には励まされたり
 世の中にはたくさんの本があるけれど 自分のために書かれた物語は無いのだろう
 でも その人にはその人だけの物語が確かにある
 それを諦めていないのならきっと大丈夫だ」 (中略)

――わたしの為に書かれた本は無くても
 わたしの為に言葉をくれる人がいてくれるから… 頑張ろう (1巻10-17ページ)


ひまわりさんの言葉を受けて、まつりが立ち直っていることが分かります。
受験前にノイローゼに陥っていたときにも、
まつりを支えたのは「大丈夫」というひまわりさんの一言でした(2巻34ページ)。

一方で、まつりの言葉がひまわりさんの心に明かりを灯しているのに対し、
他方で、ひまわりさんの言葉がまつりの心に明かりを灯しているのです。

四巻でも、ひまわりさんがまつりを勇気付けていることが分かる話があります。
それが、まつりの学校での態度が問題となる第27話です。
まつりは意外にも学校では「おしとやか~」に過ごしているということが、
友人たちによってひまわりさんに知らされます。
何故猫を被るような真似をしているのか。
気になったひまわりさんはまつり本人に尋ねてみます。

「まつりは学校では猫被ってるんだってね」
「え… え――っ?」
「なんで?」
「昔から「なんでそんな失敗するの」っていうドジばかりして
 「もういいよ」って呆れられて 自分でもすっかり自信とか無くしちゃったんですね
 だから失敗して迷惑かけたくないって いつも考えちゃうんです
 そんな自分は嫌なんですけど…」
「ふーん… 私といる時はそんなことないのに?」
「そっ それはその… ………すっ 好きだからです!」
「どうした突然」
自分でも不思議なんですが 失敗して嫌われたらどうしようとかよりも
 ひまわりさんの役に立ちたいとか 
 一緒に居たら嬉しいとか そういう気持ちの方が大きいんです」 (4巻12-15ページ)


ここでは、まつりがひまわりさんから直接言葉を受け取ったわけではありません。
しかし、ひまわりさんの存在がまつりにパワーを与えていることは分かります。
ひまわりさんへの好意が、まつりに前を向かせる原動力になっています。
少し悲しげな表情を浮かべたひまわりさんを、まつりが微笑ませるように、
少しうつむき気味なまつりを、ひまわりさんが明るい笑顔にしているのです。



(3)あたたかいひだまりの方へ

結論として、まつりとひまわりさんの二人は、特に言葉を通して、
お互いの心の内に小さな明かりを灯していると言えます。
第32話での言葉を借りれば、二人はそうして「ちょっとだけあたたかくなる」のです。
こういった二人のやり取りが、四巻では再び見所になっていたと思います。
二人はお互いに言葉をかけ合いながら、あたたかいひだまりの方へ歩いていく。



テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック

今傍にいる友人として、アイドルとして (アイカツ!第五十五話考察)

2013.11.01 18:00|アイカツ!
KIRA☆Power/オリジナルスター☆彡KIRA☆Power/オリジナルスター☆彡
(2013/10/23)
STAR☆ANIS

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アイカツ!第55話「合い言葉はオケオケオッケー☆」が放送されました。
きいのプロデューサーという仕事への想いが語られるとともに、
セイラの後押しできいがアイドルデビューするという、多くが詰まった話でした。
『カレンダーガール』の、朝あわててリボンを付けて外に飛び出していく主人公が、
ステージに立っていたきいにマッチしていて素晴らしかったと思います。
彼女もママからのリボンをつけて、土壇場で舞台に上がっていく。

またあまり本筋に関わらないところでは、おとめが印象に残りました。
ここ数回、彼女はちょい役で登場していますが、
その短い登場時間で確実に掴んでくる印象があります。
この辺り、さすがスターライトクイーンといったところです。
今回は上目使い気味な困り顔からのしょぼーん。

さて、セイラときいの関係、またママとの思い出など、盛り沢山な内容でしたが、
特に今回は、きいがアイドルデビューするに当たってセイラが演じた役割に注目します。
セイラはきいにとってどのような存在として現れていたのでしょうか。

もしよろしければ、中身を思い出しつつ少しの間お付き合いください。



○『アイカツ!』第五十五話:今傍にいる友人として、アイドルとして


(1)第54話との繋がり

まず、前回の54話との繋がりを確認しておきましょう。
思うに、55話は54話のテーマと深く結びついています。
先週の復習も兼ねて、最初に確認しておきましょう。

というのも54話は写真撮影を材料に、二つの意味で「仲間の大切さ」を描いた回でした。
「自分の気付かない表情に気付いてくれる」仲間。
「一緒にいることで最高の笑顔にしてくれる」仲間。
この二つの意味での仲間の大切さを、特にいちごたちが提示していました。
55話は、この54話で描かれたテーマに乗っかっていきます。

すなわち55話は、きい自身が気付かなかったかわいさにセイラが気付いて、
きいをアイドルとして出発させることで、結果として、
自分を最高の笑顔にしてくれるアイドルの仲間をセイラが手に入れるというストーリーです。
54話で特にいちごたちが提示したものを、セイラが実践し獲得するという流れになっています。


(2)プロデューサーの活動の先に

次に、ステージ前に尻込みするきいを、セイラが後押しする場面に注目します。

「やっぱりムリ! ムリムリムッリー! きいがオーディションなんて!」
「そんなことない! きいのプロデューサーとしての才能を、あたしは信じてる!
 そして何より、あたしはきいのママの次に、きいのことを分かってる。
 きいは向いてる! ぽんぽんクレープのイメージガールに!」
「で、でも……。きいは、ママみたいな、
 女の子を元気で可愛くするプロデューサーになるのが夢で……」
「そんなママは、きいに元気で可愛くいてもらいたいと思ってる。
 そんな気がするんだ! だから出よう!」 (55話)


ここでセイラが巧みなのは、躊躇するきいに対して、
まず第一に「プロデューサーとしての才能」を推すところです。
ここでは、きいがアイドルに向いている根拠の方を先に出してしまいそうなものですが、
かわいいとか元気だとか、セイラはそうしたことを先に言いませんでした。
これにより、セイラはきいを、プロデューサーからアイドルへ移すのではなく、
プロデューサーの活動の先に、アイドルの活動を置くことに成功しています。

考えてみると、55話でセイラは二つの役割を担っていました。
すなわち、一方できいがプロデュースにどんな想いをかけているのかを知り、
他方できいをアイドルとして出発させるという役割です。
この二つの役割の間には緊張が存在します。
セイラはきいがプロデューサーにこだわる理由を知ったのにも係らず、
彼女をプロデューサーに専念するところから逸脱させて、
アイドルとしても出発させる必要があるのです。

この辺りが結構なダブルバインドに成り得ます。
現にきいは冒頭で、プロデューサーだからと言ってオーディションを断っています。
プロデューサーの活動と、アイドルの活動は異なるという意識が、
少なくともきいの中にはあったわけです。

しかしセイラは、きいにきいをプロデュースさせることでこの緊張を克服します。
それが象徴的に示されたのが、ステージ前に尻込みするきいに対して、
まず「きいのプロデューサーとしての才能を信じてる」と述べる先の場面です。
これにより、きいのアイドル活動は、プロデューサーの活動の先に位置づけられています。

つまり、きいがオーディションに合格することは、
今やきいがアイドルとして成功することを意味するだけではなく、
きいのプロデュースが成功することをも意味することになっています。
アイドルへの出発が、プロデューサー業からの逸脱に最早ちっともなっていないのです。
セイラはオーディションに際してきいにきいのプロデュースを任せることで、
彼女のプロデュースへの気持ちをきちんと受け止めながら、
アイドルとしても出発させることに成功しています。


(3)今傍にいる友人として、アイドルとして

最後に、きいのアイドルデビューに際して、セイラが演じた役割を考えます。
第一に、セイラはきいのママと同様の位置に立っています。
きいの可愛さを認めて背中を押すという位置にです。

このことを、各所でのセイラの行動は象徴的に示しています。

「髪の毛やわらか~」
「でしょ。ママもいつも苦労してたよ。へにょへにょで結ぶの大変って
「うん、これはなかなか」
「でもセイラ上手だね、ちょっと意外」
「妹の髪、いつも編んでたから」
「へー知らなかった」
「はいできた!」
「わー! ありがとう!」
「さすがママ。きいに似合うの、よく分かってる!」
「そりゃあなんたって、ママはきいのプロデューサーだもん!」(中略)

きいのママ、きいが元気にしてるかどうか、心配なんじゃないかな?
 離れているから、髪の毛結んであげられないし」 (55話)


ここでセイラはきいのママと同じく、髪を結んでいます。
きいに対して、ママに近い立場で接していることが分かります。
この極致がステージ直前の次の場面です。

「遠くにいるママに、元気で可愛いきいを見せてあげよう!」
「37号……カードにしてくれたの?」
「デザイナーコースの子にやってもらった」
「セイラ……。そういえば……」

「似合う?」
「とっても似合うよ! 
「本当に?」
「本当に可愛い」
「ママ?」
「ごめんごめん。ママ嬉しくて。あんなに引っ込み思案だったきいが、
 こんなにも元気に可愛く育ってくれて。ママ、本当に嬉しい」
「ママ……」

「きい?」
「見せてあげたくなってきた。きいの元気な姿、ママに!」
「そうこなくっちゃ! じゃあ行くぞ!」
オケ
オケ
オッケー!」 (55話)


ここでセイラは、きいと一緒にオケオケオッケーをやっています。
言うまでもなく、これは元々きいの「ママとの合い言葉」です。
それをセイラがやるという点に、彼女がママと同様の位置にあることを見出せます。
既述の引用でセイラは、きいのママの気持ちを推測して、代弁することもしています。
セイラは今きいの傍にいる友人として、きいのママのように振舞い、
きいのママの気持ちを代弁することで、きいの背中を押していくのです。

しかしセイラは、完全にきいのママと同じように行動するわけではありません。
第二に、彼女はきいにプロデュースされてきたアイドルとしても行動します。
これが特に、セイラのみが演じることのできる、彼女に固有な役割だったと言えます。

とりわけ重大なのが、セイラはきいに魔法をかけるわけではないということです。
きいのママはきいに魔法をかけて、彼女を元気に可愛くしましたが、
セイラはこれを自分で直接担うわけではありません。
セイラは魔法をかける役割をきい自身に委ねています。
けだしこの理由は、最初の引用で明らかになっています。


「きいのプロデューサーとしての才能を、私は信じてる!」


セイラはこれまでプロデュースされてきた張本人として、
最も上手に魔法をかけることができると信じるきいにそれを任せるのです。
ここにおいてセイラはママに近い立場から抜け出していって、自分だけの役割を演じています。

結論として、セイラはきいのデビューに当たり、二つの役割を演じました。
きいのママに近い立場で、きいの可愛さを認め、彼女の背中を押していく役割と、
プロデュースされてきたアイドルとして、きいのプロデュースの才能を信じ、
彼女自身のプロデュースを任せるという役割です。

セイラだけが演じることのできるこの二つの役割を、セイラが演じきったからこそ、
きいはプロデューサー業の先にアイドル活動を掴むことができたのだと思います。


テーマ:アイカツ!
ジャンル:アニメ・コミック

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