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恋愛に関する陽子と綾の対照性 (きんいろモザイク:第四話感想)

2013.07.30 20:00|きんいろモザイク
きんいろモザイク アンソロジーコミック (1) (まんがタイムKRコミックス)きんいろモザイク アンソロジーコミック (1) (まんがタイムKRコミックス)
(2013/07/27)
アンソロジー (小梅けいと 他)

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先日、きんいろモザイクのアンソロジーが発売されました。
色々な方が忍たちを描いていて新鮮ですが、
私個人としては菅野マナミさんの作品がとっても好きですね。
『ひまわりさん』でもそうですが、この方の描く笑顔は爽やかで優しい印象です。
あと「友達」とか「親友」とか、そうした関係を大切に扱っていてほっこりします。
忍が英語で書いた、たった一行のアリスへの手紙は必見です。

さて、アニメの方は四話「あめどきどきあや」が放送されました。
印象深い話がまとめられていたので、序盤の良回と言えるかも知れません。
原作の三つの話が軸になっていましたが、私はどれも好きな話なんですよね。
そこで今回は、四話のハイライトを引用しつつ、感想を述べようと思います。
特に登場人物の関係性に注目して、三か所ピックアップしようと思います。



○四話の三つのハイライト:登場人物の関係性に注目して


一つ目は、勇が忍とアリスにプレゼントを買ってくる場面です。
忍は百均のスノードームを、アリスは盆栽の置きものを受け取ります。

「はい アリスにも」
「盆栽!!」
「置きものだけど」
「いいの!? わたし誕生日じゃないのに」
「アリスが喜ぶと思って買ってきただけだから」
「イサミありがとー!!」
「あらあら」

「え? アリスを取られた?
「お姉ちゃんにはかないません」 (4話、1巻58ページ)


ここは、忍とアリスが似た者同士であることがよく表れている場面です。
前回、アリスは忍のことでカレンにヤキモチを焼いていましたが、
今度は忍がアリスのことで勇に対して複雑な気持ちを抱いています。

忍は綾に「アリスを取られた」とまで説明しているわけです。
二人はそれぞれイギリス好き、日本好きであり、ある意味対照的でもあるのですが、
他方でこういう部分は本当によく似ていると考えられます。

こうした類似は、四話の末尾にも見出せます。
アリスが帰宅して、風邪を引いた忍のタオルを変えてあげる場面です。

「行きも帰りもちゃんとあいさつできたよ」

――お おはようございます!
――さよなら! さよならー!

「よかったです 一人で平気かなって ずっと心配していました
「でもやっぱり シノと一緒がいいよ」 (4話)


ここで、忍がアリスのことを心配していたということが分かります。
話の冒頭で、アリスが忍のことを気にかけていたのと同じように、
忍も家でアリスのことを考えていたのです。
このように「相手を想う気持ち」に関しては、二人はとても似ていると言えます。
自分以外の誰かに取られたくないという気持ち、相手が心配であるという気持ち。
それは相手を大切な存在と考えているからこそ生まれるものでしょう。
想いの類似に、二人の確かな友情を見出せるのではないでしょうか。


二つ目は、アリスがカレンのことを大切な友達であると、改めて思い出す場面です。
三話のときと同じく忍の言葉を受けて、アリスはカレンとの思い出を振り返ります。

「二人共! ケンカはだめですよ!
 アリスはアリス カレンはカレンです
 みんなちがって みんな良いんです」

「カレンはアリスを追って日本に来たのだし
 アリスがカレンのこと大好きなことも私知ってます!」
「シノ… あっ」

"We are forever best friends!" アリスはずーっと一番の友達だよ!
"Forever best friends!" うん!

――そっか わたし二人にヤキモチやいてたんだ

シノも好きだけど カレンも同じくらい好き!」 (4話、2巻83-84ページ)


ここで忍をめぐる三角関係は、「三人という関係」に落ち着いていることが分かります。
二人でも三角関係でもない、三人という関係に関しては、以前他の作品で述べましたが
アリスとカレンもちょっとした喧嘩の後、そこに向かっていくことになるのです。
忍もカレンも、アリスにとって大切な友達であることが三話と同じく強調されています
この展開と、このときの忍の言葉が、私はとても好きなんですよね。
原作のこのページに付箋を貼って、いつでも確認できるようにするくらい。
こうした忍とアリスとカレンの「三人の関係」は、作品の見所の一つと言えると思います。
あとアニメだとこの場面は、陽子と綾の見守っている姿がふーふみたいで素晴らしいです。

kinniro07.png
 (忍とアリスとカレンの三人を見守る陽子と綾:4話)


三つ目は、綾の言葉を受けて陽子がラブレターを確認しようとする前の場面です。
もはや涙目になっている綾に対して、陽子はさっくりと断言します。

「何かカン違いしてない?」
「え?」
「手紙は嬉しいけど最初から断る気でいるよ」
「どうして!?」
相手が誰であっても綾の方が好きだからさ!
「…と とっとと開けなさいよ!」
「何の話してるデス?」
「友達っていいなって話ー」 (4話、1巻101ページ)


ここに、陽子と綾の恋愛に対する意識の違いが現れていると思います。
すなわち、綾は陽子が一番好きだから、陽子との恋愛をよく意識していますが、
陽子は綾が一番好きだから、現時点で恋愛を大して意識していません。

現に陽子は、ラブレターをもらって喜んではいたものの、
それを気にする素振りもなく一日を過ごし、果てには存在を忘れていました。
今の綾との関係があるので、恋愛は意識するほどのものではないのです。
仮にこれから綾が告白してきたらどうなるか分かりませんが、
陽子は現状ではおそらく、自身が恋愛の当事者になることを考えていません。

それに対して綾の場合、恋愛は大きな意味を持ちます。
アニメ二話の進路調査で「お嫁さん」と書いていたことからも、
彼女にとって恋愛が憧れるべき素敵なものであることが分かります。
そして、そんな恋愛の相手として想定されるのが、彼女が一番好きである陽子です。
現に綾は、陽子と恋人らしい動作をしてしまって照れることが多くあります。
陽子は今の綾との関係があるから、恋愛をあまり意識していないのに対して、
綾は今の陽子との関係があるから、陽子との恋愛を意識しているのです。

先程の引用部は、そうした二人の対照性を浮き彫りにしているように思います。


以上の三点が、四話の中で私にとって特に印象的な場面です。
登場人物の関係性に着目してみても、『きんいろモザイク』は面白い作品だと思います。
忍とアリスの類似、カレンも含めた三人の関係、陽子と綾の対照性。
特にこの三つは、物語に欠かすことのできない要素であるような気がします。


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テーマ:きんいろモザイク
ジャンル:アニメ・コミック

『お願い! シンデレラ』から考えるシンデレラガールズ

2013.07.27 21:58|アイドルマスター
THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER お願い! シンデレラTHE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER お願い! シンデレラ
(2013/04/10)
CINDERELLA GIRLS!!

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今回は、『お願い! シンデレラ』の歌詞から、
シンデレラガールズのテーマを考えてみたいと思います。

アイドルマスターは今や大きなコンテンツであり、
その下では多様な「アイマス」が展開されています。
シンデレラガールズはその中で、どのようなテーマを提出しているのでしょう。

このことについて今回は、シンデレラガールズのテーマソングである、
『お願い! シンデレラ』の歌詞を足掛かりに考えていきます。
もうすぐ『輝く世界の魔法』やユニットCDが発売になりますが、
その前に『お願い! シンデレラ』を改めて聞いてみることにしましょう。

もちろん、シンデレラガールズ自体も既に色々な方向へと展開しており、
そのテーマを一言で表わそうとすることはほとんど無理な試みです。
示されたものとは異なるテーマも、探せばその中に確実に見出せることでしょう。
けれども、俯瞰したときにとりわけ目を引く特徴的な一部分を指摘することで、
シンデレラガールズの一つの見方を提供することはできるように思います。
私は今回の考察が、その意味で意義があるものであることを祈っております。

それでは、もしよろしければ少しの間お付き合いください。



○『お願い! シンデレラ』の示すテーマ:拡散していくアイドル


それでは、『お願い! シンデレラ』の歌詞を見てみましょう。
この歌の中の「私」は、「夢は夢で終われない」と考える全ての人を指すと解せますが、
それが歌詞の中で「シンデレラ」と喩えられていることを踏まえると、
「私」は第一に、シンデレラガールズの一人ひとりを重ねたくなる存在です。
『お願い! シンデレラ』は、彼女たちが自分だけの目的地へと進んでいく歌と考えられます。
この歌の中で私が特に重要であると考えるのは、二回目のサビの部分です。

誰もが シンデレラ 夢から今目覚めて
始まるよ 新たなストーリー 描いたら
つかもう! My Only Star まだまだ遠くだけど
光降り注ぐ 明日へ向かうために (『お願い! シンデレラ』より)


ここで重要なのは、「誰もが シンデレラ」という部分で同質性を強調した後に、
「つかもう! My Only Star」という部分で差異性、個別性を強調していることです。
彼女たちは「同じ」シンデレラとして目覚めて、それぞれ「違う」場所を目指しています。
同じところから違うところへと拡散していくイメージが、この歌にはあると言えるでしょう。
けだし、ここにシンデレラガールズのテーマの一つが現れています。

すなわち、歌詞のように、シンデレラという同じ位置から、
それぞれの目的地へと向かっていく、四方八方に「拡散していくアイドル」こそ、
シンデレラガールズが描こうとしているものではないでしょうか。
二百近い個性が同じシンデレラとして登場し、それぞれ異なった方向へと進んでいく。

それは、765プロの面々が往々にして「集合していくアイドル」として描かれるのとは対照的です。
実際に彼女たちはこれまで、違うところから同じところへ向かっていく曲を歌っています。
いくつか例として挙げてみることにしましょう。

いつも忘れてた 他事に気を取られ すごく大切な人たちの存在を
自分一人だけ苦労した気がしてた だけどそれは違う 今だから分かるけど

みんな楽しく笑顔で舞台に立とう 歌やダンスで自分を伝えよう
言葉だけでは言えない熱い気持ちを 少しだけでも届けられたならば幸せ (『i』より)


『i』はここで、精神的に一人だった過去から、
みんなと一緒にいる現在への移行を描いています。
これを一種の集合と捉えることは無理ではないように思います。

ひとりでは出来ないこと 仲間となら出来ること
乗り越えられるのは Unity is strength (中略)

ひとりずつ 違うパワー ひとつに重ね合えれば
この地球の未来は The beams of our hope (『The world is all one!!』より)


『The world is all one!!』も、一人ひとり異なる個人が、
力を合わせて一つになっていく様を描いています。

また、「集合していくアイドル」というテーマにおいて外せないのが『団結』です。
それぞれの差異を強調する自己紹介から入り、衝突を経て団結に至るアイドルを描く『団結』は、
ばらばらだった個々のアイドルが集合していく歌であると考えることができます。

このように、いくつかの曲の中には、集合していくアイドルの姿が見出せます。

さらに、音楽に限らずとも、(特に2以降の)765プロの面々を描く作品においては、
「団結」やそれに近いものが重要なテーマとして、ほとんど欠かさず登場しています。
とりわけ目立つのは、2011年に放送されたアニメのアイドルマスターにおける強調です。
十話の描いた765プロの「結束」は、ほとんど『団結』と同じ内容のものですし、
終盤も、忙しさでばらばらになりつつあった面々が「集合」するところを描いていました。
シンデレラガールズが始まったのが、このアニメが放送されていた頃であることもあり、
今になって考えてみると両者のテーマの対照性が際立って見えます。

これまでに765プロが提出してきたテーマは「団結」だけに留まりませんが、
「集合していくアイドル」が重大なテーマの一つとして描かれてきたことは明らかです。
シンデレラガールズは対照的に、「拡散していくアイドル」を描いているとは言えないでしょうか。

無論、765プロの物語が「拡散していくアイドル」を提示していないとは言い切れません。
例えば1st Vision時代のゲームにおいては大抵、同じ765プロという事務所から、
Pとともにそれぞれの路へ歩んでいくアイドルの姿が描かれています。
それを、「拡散していくアイドル」と解することは不可能ではありません。
しかし、シンデレラガールズは、その膨大な数の個性によって、
これまで以上に強力に「拡散していくアイドル」を打ち出していると言えると思います。

けだし『お願い! シンデレラ』の歌詞は、その側面に呼応するものになっています。

結論としてシンデレラガールズは、シンデレラという同じところから、
異なる方向へと進む「拡散していくアイドル」を一つのテーマとして抱えています。
それは765プロが最近特に描いている、「集合していくアイドル」と対をなすもので、
シンデレラガールズが特に強調しているものであると考えられます。
彼女たちは、あらゆる方向へ無限に広がっていくアイドルなのです。



今回は結びに代えて、一つシンデレラガールズのコミカライズを紹介したいと思います。
『アイドルマスター シンデレラガールズ シャッフル!!』の凪庵さんの作品です。

アイドルマスター シンデレラガールズ シャッフル!! コミックアンソロジー (ガンガンコミックスアンソロジー)アイドルマスター シンデレラガールズ シャッフル!! コミックアンソロジー (ガンガンコミックスアンソロジー)
(2013/04/25)
バンダイナムコゲームス

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この物語の最後で、留美、莉嘉、春菜、みく、鈴帆の五人は、
小さなステージに出ることになり、それぞれ衣装を考えることになります。

「衣装どうするー?」
「アタシこっちがいいなー」
「みくもお気に入りので出たいにゃぁ」
「ちょ ちょっと待って 衣装みんなで統一しなくてもいいの!?」
「みんなで着ぐるみやか!?」
「いや…着ぐるみじゃないけど…」
「そーやか…」
「私も… できれば自分の衣装で出られないでしょうか…」
「留美さんまで…」
「はっはっは まぁいいじゃないか 彼女たちの好きにやらせよう」
「社長っ でも… 折角の初ライブなのにみんなバラバラじゃ…」
「ちひろ君には彼女たちがバラバラに見えるのかい?」
「えっ…?」
僕には同じ目標に向かって走る 『個性』に見えるよ」(65-66ページ)


ここで、別々の衣装を着てステージに出るというのが、
とてもシンデレラガールズらしく、彼女たちならではであると思います。
同じ事務所のメンバーなのに、それぞれの衣装で勝負していく。
そこには先に述べた「拡散していくアイドル」の姿を見出すことができます。

また、最後の事務所の社長の台詞がとても印象深いものになっています。
けだし、ここにおいて作品は「拡散していくアイドル」の一歩先に進んでいます。
つまり、やりたい仕事も異なっていて、衣装も別々でステージに上がる彼女たちを、
それでも社長は「同じ目標に向かって走る」と評するのです。

これは、シンデレラガールズが数多の「個性」を登場させ、
その「拡散」を描くとは言え、彼女たちはシンデレラガールズという出発点において、
同じ志を持つ仲間であるということを、端的に示した一文であると思います。


確かに、先に引用した『お願い! シンデレラ』でもアイドルたちは、
それぞれ自分だけの星を目指すという意味では別々の方向に進むと考えられる一方、
「星を目指す」という括りでは同じ目標を持っていると考えられます。

それぞれの方向に邁進していくとしても、彼女たちは孤独ではないのです。



○関連記事

   凛・卯月・未央の持ち歌から考えるシンデレラガールズ


テーマ:アイドルマスターシンデレラガールズ
ジャンル:ゲーム

二人に向けられたアリスの「スゴイ」 (きんいろモザイク:第三話感想)

2013.07.23 20:59|きんいろモザイク
きんいろモザイク (3) (まんがタイムKRコミックス)きんいろモザイク (3) (まんがタイムKRコミックス)
(2013/06/27)
原 悠衣

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というわけで、第三話「どんなトモダチできるかな?」が放送されました。
タイトル通り、「転校」が話のテーマの一つになっていたと思います。
このテーマを中心にして、特に二つの話が展開されていました。
すなわち、カレンがクラスに馴染む話と、綾が陽子と出会う話です。
今回は、以上の二つに注目して、三話を見てみることにしましょう。



○アリスにとってのカレン:「ライバル」かつ「大事な友達」


まずは、カレンに関係する部分です。
カレンがやってきたことで、アリスは内心穏やかではなくなりました。
忍とカレンが急速に仲良くなり出したためです。
果てにカレンは、「シノは特別な感じするデス」とまで言ってのけます。
このような状況下で、アリスは露骨にヤキモチを焼きます。

「カレンは部活入らないの?」
「ブカツデスカー アリスはどこかに入ってマスか?」
「私達は帰宅部…」
「シノ部だよ!」
「えっ 何それ!?」
「シノとお話したり お弁当食べたりする部活だよ」
「わあーっ それ私も入りタイ~」
「ぶ 部長はわたしだからね!!」 (3話、1巻92ページ)


アリスはこのように、各所でカレンにヤキモチを焼いて、変な対応をしてしまいます。
アリスが「忍の一番の友達でありたい」と考えていることがよく分かる部分です。
カレンはそこで、アリスの「ライバル」として現れてくることになります。

ただ、私が注目したいのはこの話の着地点です。
単にアリスがヤキモチを焼きっぱなしで、三話は終わるわけではありません。
アリスはやがて、カレンが「大事な友達」でもあることを改めて思い出します。
カレンが壇上で発言して、クラスに受け入れられたときのことです。

「うわーやるなー!」
「うん!」
「カレンってすごいですねー」
「あっ……」

"Don't worry! Maybe we don't speak the same language,
 but we can communicate as long as we try to listen to each other's heart!"

「うん! スゴイんだよ カレンは!」 (3話、1巻93ページ、アニメ改変有)


カレンが忍から離れた位置にいて、少し冷静になったこともあって、
ここでアリスはカレンが大切な友達であることを改めて思い出しています。
その結果、ここまでアリスはヤキモチもあって、カレンを「友達」としてより、
「ライバル」として扱っていましたが、その態度が改まります。
カレンのすごいところ、好きなところをいきいきと忍に話し出すわけです。

この場面は、アリスにとってカレンが「大事な友達」でもあることを示しています。
特に、忍がホームステイに来る前の回想が差し挟まれていることが重要です。
この回想に出てくるカレンは、アリスにとって、
自分を勇気付けてくれた「大事な友達」としてのカレンです。

これがあるからこそ、アリスにとってカレンは「ライバル」であると同時に、
かけがえのない「大事な友達」でもあるということがはっきり示されています。

kinniro06.png
 (忍がホームステイに来る前、アリスを勇気付けるカレン)

またここで、アリスがカレンのことを「スゴイ」と褒めていることに注目してみましょう。
三話でアリスは、同じように忍のことを「スゴイ」と褒めています。

「シノはニンジャ? 壁あるける?」
「あー 「忍」な」
「それは ちょっと…」
「ええー できないデスかー」
「そんなことないよ シノはスゴイから何でも出来るよ!」 (3話、1巻83ページ)


アリスは、忍のこともカレンのことも、同じように「スゴイ」と褒めるのです。
この辺りからも、アリスにとっては二人とも「大事な友達」であることが分かります。
大切な友達であるからこそ、つい「スゴイ」と褒めたくなってしまう。

結論として、アリスにとってカレンは、「ライバル」でもあり「大事な友達」でもあります。
アニメでは回想によって、特に「大事な友達」であることが強調されていると取れます。
またアリスが二人を同じように「スゴイ」と褒めていることからも、
二人とも同様に大切な存在であることが分かります。
ヤキモチからの過去の回想と「スゴイ」で、
カレンへの気持ちが雄弁に語られているのです。



○綾と陽子:綾が「空気を読まない」でいられるという意味


次に、綾と陽子に関係する部分です。
綾は転校生の先輩として、カレンに人と仲良くなるコツを話すことになります。

「そういえば 綾ちゃんは転校経験者なんですよ」
「中1の時に こっちに引っ越して来たんだよなあ」
「う…うん」
「おー! 先輩でーす クラスの子と仲良くなるアドバイス お願いしマス!」
「そ…そうね 一番大切なのは 空気を読むこと」 (3話、1巻88ページ)


このときの言葉の通り、綾は転校してきた当初、「空気を読む」ことに徹しています。
すなわち、相手に話しかけられたとき、すごく気を遣って応答するのです。
しかし、この綾の行動は空回っていた感があります。

「大宮忍って言います 綾ちゃんって呼んでもいいですか?」
「え…ええ お好きにどうぞ」
「学校案内させてください 一緒に行きましょー」
「おっ お気遣いなく 先生に校内の地図をもらってますので!」
「ええー」
「あ…あの 別に嫌だとかではなくて!」 (3話、1巻89ページ)


空気を読もうとして、忍に気を遣い過ぎた結果、好機を逸してしまうわけです。
そんな綾に対して、陽子は全く空気を読まずに強引に近付いていきます。

「綾ー! 一人で何やってるんだ?」
「え? あ…あの」
「あ ごめんごめん 自己紹介がまだだったな 私 猪熊陽子 陽子って呼んでくれていいよ」
「あ はい」
「よろしくな! あ そうだ! 折角だから学校案内してやるよ 行こうぜ」
「え!?」
「今日とかヒマ?」
「え ちょっと!」
「綾んち 遊びに行っていい?」 (3話)


ここで綾と陽子が好対照になっています。
空気を読んだ結果として、上手く人と仲良くなれなかった綾と、
空気なんて全く読まずに、綾の方へとずかずか向かっていった陽子。
「空気を読む」綾と、いい意味で「空気を読まない」陽子の違いが浮き彫りになっているのです。
綾は、そうしてぐいぐい引っ張ってくれる陽子だったからこそ、友達になることができました。
三話の最後で、陽子が後ろを歩く綾を引っ張るシーンは象徴的です。
陽子のおかげで、綾は初めて隣を歩けた。

kinniro05.png
 (帰り道、肩を並べて歩く中学時代の二人)

また、転校当初の「空気を読む」綾は、現在の綾とも対照的です。
前回の最後で、綾は盛大に空気を読んでいない発言をします。

「あ 飛行機雲」
「あの飛行機 イギリス行きかなあー」
「あれは多分東京行きよ」
「空気読めよ!」 (2話、1巻7ページ)


ここで綾は空気を全く読まず、陽子につっこみを入れられています。
空気を読もうとして失敗していた過去の綾からは想像できない姿です。
けだし、この綾の変化は、彼女がみんなとの関係に馴染んだことを意味します。
すなわち、かつては親しくないからこそ、空気を読まなければいけませんでしたが、
陽子たちは今や「気の置けない」友人だからこそ、空気を読まずに入られるのです。

今回の話を踏まえると、前回の東京行きを初めとした、綾の空気の読めない言動も、
みなと仲良くなったことを示す感慨深いものとして見えてくるのではないでしょうか。

結論として、転校当初の「空気を読む」綾は、陽子や現在の綾と対照的なものです。
綾は空気を読もうとし過ぎて、むしろ誰かと打ち解けることがなかなかできませんでしたが、
自分とは逆に「空気を読まない」陽子のおかげで、彼女の隣という居場所を見つけられました。
また、現在の綾の「空気を読まない」発言は、みなとの仲が深まったことを示していると思います。
綾の過去の姿の描写によって、陽子やみなとの繋がりが、より明らかになっているのです。


テーマ:きんいろモザイク
ジャンル:アニメ・コミック

二人同じ「好き」を抱えて (大沢やよい『ストレンジベイビーズ』)

2013.07.20 09:04|百合作品
ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ (IDコミックス 百合姫コミックス)ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ (IDコミックス 百合姫コミックス)
(2012/05/18)
大沢 やよい

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大沢やよいさん『ストレンジベイビーズ』が先日発売されました。
この作品は、『ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ』の表題作の続編で、
超人気ネットアイドルのまどか(HN劇薬まどれーぬ)と、
少し根暗なカリスマヘタレ、八木さん(HNブラックヤギー)が、
一層仲を深めていくストーリーになっています。
今回は、前作『ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ』から、
今作『ストレンジベイビーズ』までの間に、
二人の関係が如何に変化したかを考えてみたいと思います。

もしよろしければ、お付き合いいただければ幸いです。



○「肩を並べる関係」への一歩:二人同じ「好き」を抱えて


まずは、『ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ』での二人を確認しましょう。
自分が近づいたことでまどかが非難に晒されていると考えた結果、
八木さんがインターネット上での生放送を辞めようと決意した後の場面です。
まどかは生放送に乱入して彼女を止め、自身の気持ちを伝えます。

「…好きです 八木さんのことも 八木さんと作る放送も
 八木さんを好きな自分のことも 私は全部好きなんです
 だから 八木さんともっと一緒にいたいんです」

――まどちゃん あなたはそうやって
 いつだって何度だって 私を救ってしまうんだね

「…こんな 私なんか …好きでいいの?」
「はい 八木さんがいつか私と同じくらい
 世界をたくさん「好き」になるまで 私…」(65-67ページ)


ここで重要なのは、まどかが「救う立場」、八木さんが「救われる立場」にいることです。
まどかは、八木さんに自分を変えたいと思わせた、
まどれーぬとしての彼女そのままに、ここで再び八木さんを救っています。
救うまどかと救われる八木さん、まどれーぬと八木さん。
ここでは二人の間に非対称性が存在しています。

引用部では、「好き」という気持ちにも差異を見出すことができます。
既にたくさんの「好き」を持っているまどかと、これから世界を「好き」になる八木さん。
『ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ』の時点では、二人は違う位置にいたわけです。

ストレンジベイビーズ (IDコミックス 百合姫コミックス)ストレンジベイビーズ (IDコミックス 百合姫コミックス)
(2013/07/18)
大沢 やよい

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この非対称性が解消されるのが、『ストレンジベイビーズ』です。
これは、違う位置にいた二人が「隣に並ぶ」物語であると捉えることができます。
クライマックスで、今度は八木さんがまどかの元へと駆けて行きます。

まどれーぬはつくりものなんですよ?
 八木さんが…愛してくれたまどれーぬはどこにもいなくて
 私 八木さんが思ってるよりずっと汚いし
 ぜんぜんキラキラかがやいていたりしてない
 この間のも大炎上で メーワクばっかかけてます もう私なんか…」

「…大丈夫だよ! わ 私なんてただの根暗だよ!
 誰かを助けるヤギー様なんかじゃない どんかんでバカでわからずやだよ…
 でも それでまどちゃんは私のことキライになった?
 好きって言ってくれた… だから今度は私の番なの
 まどちゃんが好き!! もっともっと好きになりたい
 …まどちゃんと同じ気持ちがいいの」(154-157ページ)


ここでは、前作で「救う立場」であり、まどれーぬであったまどかが、
こころというライバルの登場で完全に崩れてしまっています。
そして、そんな彼女を今度は八木さんが救うことになります。
八木さんは、単にまどかに救われるだけでなく、まどかを救いもするのです。
これが、『ストレンジベイビーズ』において行われた関係の転換です。

それを象徴するかのように、「好き」という気持ちにも変化があります。
前作では、まどかと八木さんの間に差異がありましたが、
今作では相手に対して二人とも「同じ好き」を抱いていることが分かります。
救い救われるという関係が、相互に救い合い、想い合う関係に変化しているのです。
二人はここから、同じ位置で肩を並べて歩いていくことになります。

そのためには、八木さんが逃げずに立ち向かう必要がありました。
特に、被り物である「ヤギー様」を手放す場面に、彼女の意志が見出せます。

――私はずっと自分のことを隠してきた それって実は
 悩んでるフリして イヤなことから逃げて
 過ぎ去るのを待ってただけだ
 だけどまどちゃんは あのとき私を受け入れてくれた
 これは私の問題だ 私がなんとかしなきゃダメなんだ (144-145ページ)


この後、八木さんはヤギー様を手放して、まどかの家へと駆けて行きます。
彼女がこうした場面で自らヤギー様を手放すのは初めてのことです。
『ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ』では、まどかが八木さんから被り物を外しました。
描き下ろしの後日談では、八木さんはそれを被って「一緒にいたい」と言います。
これらと対照的に、ここでは八木さんがヤギー様を手放すわけです。
ここには八木さん自身の変化や決意を見出すことができるでしょう。
「助けてヤギー様」と縋って、自分の決断から逃げるのではありません。
彼女は逃げるのを止め、ただまどかに救われるだけなのも止める。

結論として、『ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ』では「救い救われる関係」だったのが、
『ストレンジベイビーズ』では、まどかがまどれーぬとしての自分を崩し、
八木さんがヤギー様を自ら手放して、まどかに「好き」と伝え返したことで、
同じ気持ちを持つ、「肩を並べる関係」に変化したと言えるのではないでしょうか。


テーマ:百合
ジャンル:アニメ・コミック

忍とアリスの友情と愛情 (きんいろモザイク:第二話感想)

2013.07.16 18:00|きんいろモザイク
きんいろモザイク (2) (まんがタイムKRコミックス)きんいろモザイク (2) (まんがタイムKRコミックス)
(2012/04/26)
原 悠衣

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「アリス・カートレット 今日もめいっぱい 日本の高校生活楽しみます!」 (2話)


アリスによるみんなの紹介から始まった、二話「ちっちゃくたって」。
指摘すべきは、この冒頭と末尾が呼応しているということです。
つまり、二話はアリスの紹介で始まり、アリスの紹介で終わることになります。
実際にアリスは、ED後にもう一度、紹介者として登場してきます。

「担任のミス・カラスマ ちょいちょい子ども扱いします」(2話)


原作では、このアリスによる紹介は一連の流れになっています。
しかし、アニメではこのように二つの部分に分けられているのです。
二話は、四コマ漫画である原作の話をいくつかぎゅっと束ねているので、
ところどころでカットインが入り、違う場面に飛ぶことがありますが、
こうした「呼応」のおかげで「一つの話」になっていると思います。

作中に見出せる呼応は、アリスによる紹介の部分だけではありません。
今回は、物語をまとめている、こうした「呼応」に着目してみましょう。



○二話を一つに束ねる「呼応」:「四コマ漫画らしさ」とともに


第一に、二話は全員で町に遊びに行く話や、進路を考える話が挿入されていますが、
タイトルから分かるように、アリスのコンプレックスの話が中心に据えられています。
これも、原作で一連の流れなのが二つに割かれ、前半と後半に分けられています。

「日本の学校にも慣れたみたいでよかったわあ お友達もたくさん出来て」
「トモダチ……?」

――アリスは今年でいくつになるんですか?
――すごいなあアリス、手あげて
――その問題はアリスには難し過ぎます! (2話)


ここで、忍がアリスに年齢を聞く、前半の話が想起されています。
ただ原作の話を並べて順番に詰め込むだけではなくて、
きちんと最初の話を後で受け止める形式にしているわけです。

この辺りを鑑みるに、アニメはこまめなカットインによって、
四コマ漫画である原作の雰囲気を保ちつつも、
二話を一つの物語としてまとめようともしているように思います。

第二に、忍の金髪の話に対して、アリスの黒髪の話が当てられています。
綾とアリスが登場する、次回予告代わりの四コマ漫画の箇所です。

「アリスは髪染めたりって興味ある?」
「色んな色にできて面白そう!」
「そういえば 外国の人には 黒髪が人気だって聞いたことが」
「綾ちゃん!! やめて… やめて下さい…!」
「マジ泣きだ!」 (2話)


忍に対して金髪はないと明言したアリスを受けて、
アリスに黒髪はないと意思表示する忍が当てられています。
これにより忍とアリスが似た者同士であることが強調されていると思います。
原作でも忍は、アリスが黒髪にする夢を見て飛び起きたり(2巻23ページ)、
綾がアリスに黒髪に染めることを勧めたときに激怒したりしていますが(3巻73ページ)、
忍が金髪にしたいと言った話の中では元々、こうした返答はありませんでした。
アニメでは同じ二話の中に入っているので、二人の「相互性」がよく見えます。

上述のように「呼応」は、二話の特徴の一つになっています。
一見二話は、それぞれ独立している話の集合のように見えますが、
その間の繋がりに着目してみると、一つの物語としての姿が現れてくるように思います。

最初の方で投げたボールは、きちんと後で受け取られているのです。



○忍とアリスの「友情」と「愛情」:きんいろの中の飛行機雲


ここまでは形式の話でしたが、内容にも注目してみましょう。
まずは二話の最後に添えられた、四人の会話を引用します。
綾の、いい意味で空気を読まない一言が光る場面ですね。

「そういえば アリスは何で日本に留学してきたの?」
「シノと同じ高校に行きたかったからに決まってるYO!」
「そんなお手軽な理由でいいの!?」
どんだけ愛されてるんだよ しの!
「私もずっとアリスに会いたかったです
 大人になったら もう一度イギリスに行きたいと
 アリスが会いに来てくれたので 夢が叶っちゃいました!」

「あ 飛行機雲」
「あの飛行機 イギリス行きかなあー」
「あれは多分東京行きよ」 (2話)


二人はお互いのことを「大事なお友達」と思っている点で同じだけではなく、
お互いに、相手に会いに行こうとしていたという点でも同じだったという流れになっています。
アリスは忍にどう思われているのか不安に思っていたけれど、
二人の気持ちは確認するまでもなく同じだったということです。

言葉を勉強して、いつかまた、あの子に会いに外国に行きたい。
その相手への気持ちを名付けるとするならば、一種の「愛」ということになるでしょう。
少なくとも、上述の陽子の言葉から分かるように、作中ではそう称されているのです。

その意味で二話は、二人の「友情」「愛情」を、それぞれ描いてみせたと言えます。

また、この場面は「夕空の中の」飛行機雲がとても印象的です。
私の個人的な感想ですが、橙色というより、淡い「きんいろ」に見える夕空なんですよね。
というと勘繰り過ぎな感じもしますが、原作では「青空の中の」飛行機雲だっただけに、
この「夕空の中の」飛行機雲に何か意味を見出してみたくもなるのです。
それだけ綺麗に描かれていた場面だったとも思います。

kinniro04.png
 (きんいろモザイクの夕空は明度が高く、きらきらした印象)

けだし、「桜」と「飛行機雲」は、アリスがやってきたことを想起させるため、
『きんいろモザイク』の「はじまり」を象徴する二大アイテムと言えます。

実際に原作では、一巻の最初のカラーページの部分に、二つとも登場しています。
またアニメで、OPの題字の場面に、この二つがあしらわれていることは象徴的です。

kinniro01.png
 (桜と飛行機雲がポイントとして添えられている題字)

ゆえに、「きんいろ」の中の「飛行機雲」は、アリスの手にした輝く毎日と、
それがまた、ここから始まっていくということを語らずして示しているように思います。
この「またここから始まっていく」を受けて、物語は来週転機を迎えることとなります。
すなわち次回三話のタイトルは、「どんなトモダチできるかな?」でした。
五人目が加わって、また新たな毎日が始まっていくことになるのです。


テーマ:きんいろモザイク
ジャンル:アニメ・コミック

全てになり得る合言葉 (きんいろモザイク:第一話感想)

2013.07.09 18:11|きんいろモザイク
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ついに待ちに待ったアニメ『きんいろモザイク』が始まりました。
今回は一話の感想も踏まえて、ホームステイの場面を中心に考えてみたいと思います。
原作ではホームステイでの忍とアリスの交流はあまり描かれていませんでしたが、
アニメ一話ではそこが補われ、非常に細かく描かれていました。
その中で特に印象的だった部分について、以下では論じていきます。



○忍の「ハロー」とアリスの「コンニチハ」:全てになり得る合言葉


今回私が注目するのは、忍の使う「ハロー」と、アリスの使う「コンニチハ」です。
まずは、漫画での「ハロー」と「コンニチハ」について確認しておきましょう。
そこでは、ホームステイのときの話はアリスが日本に来た後に、回想という形で出てきます。

「やっぱり日本語で書けばよかったねー」
「文字も書けるの?」
「すっごく遅いけど」
「すごいですねー」
「しのは英語苦手だから ホームステイの時は助かったんじゃない?」
「その頃はわたしも 日本語全く喋れなかったよ」
「そうなの!?」
「アリガトとコンニチハくらいなら」
「私もハローくらいなら」
(しの… 中学生でそれは…)

出会い。「ハロー 大宮忍です」「コンニチハー」
ふれあい。「ハロー」「アリガト」
別れ。「ハロー ハロー」「コンニチハー」
「こんな感じでちゃんと会話になってましたよ」
「なってない!!」  (1巻12-13ページ)


アリスが「アリガト」を忍から学ぶというような変化はありますが、
アニメのホームステイの場面は大体、この場面などを膨らませたものになっています。
重要なのは、「ハロー」や「コンニチハ」、「アリガト」以外を使った会話が登場していないことです。
それ以外にどのような掛け合いがあったのかということはほとんど分かりません。
「それしか話せなかった」から、大体それしか話さなかったように見えます。

それがアニメ一話では、このやり取り以外の会話が描かれることになりました。
実際に忍がかんざしをプレゼントする場面や、一緒にお菓子を作る場面などでは、
二人はお互いの国の言語を使いながらコミュニケーションを行っています。
時に噛み合わないこともありましたが、それでも大体は分かり合える。
この場面が追加されたことで、けだし二つの効果が生まれています。

第一に、アニメならではのテーマが追加されていると考えることができます。
そのテーマとは、以下の場面でカレンがアリスに述べていたことです。

"Maybe we don't speak the same language,
 but we can communicate as long as we try to listen to each other's heart!"
    言葉が通じなくても心は通じるから! (アニメ1話)


お互いの心に耳を傾けようとするなら、コミュニケーションは図ることができる。
日本人の父親とイギリス人の母親を持つカレンだからこそ出てくる言葉です。
アリスは忍と過ごす中で、実際にこれを経験することになります。

というわけで、忍とアリスが自国の言葉を使って仲良くなっていく場面が追加されたことで、
アニメは、「言葉が通じなくても心は通じる」ということを強調していると考えることができます。

第二に、それぞれが母国語で話すシーンが追加されたことで、
原作の「ハロー」と「コンニチハ」による会話が非常に際立っています。

つまり、普段は二人が自分の国の言葉を使っているからこそ、
忍が「ハロー」を、アリスが「コンニチハ」や「アリガト」を敢えて使う場面が、
特別な意味を持つものとして見えるようになっているのです。
二人は「それしか話せなかった」のではなく、敢えて「それを話している」
今回私が最も強調したいのは、他ならぬこの点です。

自国の言葉を使っても大体分かり合えるのに、何故二人は相手の国の言葉を使うのでしょう。
もちろん、自分の知っている言葉は、なるべく相手の国の言葉を使うことで、
もっとお互いに分かり合いたいという気持ちはあったと思います。
最初に会ったときの「ハロー」と「コンニチハ」、
お土産をもらったときの「アリガト」などは、この意識の下に出て来たと考えられます。

しかし、全てをその理由で説明することはできません。
実際二人の場合、その言葉の持つ本来の意味を無視して、
一種の合言葉のように相手の国の言葉を言い合うことがあります。

演出も相まって最も目立っているのが、忍が空港に送られていく別れの場面です。

「お世話になりました」
「また遊びにいらっしゃい」
「はい!」

「ハロー」
「アリガト」
「写真、送りますね」

「ハロー!」
「コンニチハー!」
「ハロー、ハロー!」
「コンニチハー!」  (アニメ1話)


kinniro02.png

二人は自国の言葉で、例えば「さよなら」、「またね」を言い合ってもよかったはずです。
しかし忍とアリスは、敢えて「ハロー」と「コンニチハ」の応酬を選ぶ。
アニメはコミュニケーションに自国の言葉を使う二人を描いているだけに、
ここで「ハロー」と「コンニチハ」が使われることには、特別な意味があるように見えます。

けだし、二人の「ハロー」と「コンニチハ」は、「想いを共有する」ためのものです。
意味を伴わない言葉の応酬は、一緒に作ったお菓子を食べる場面から始まります。
ここで二人は、作ったクッキーを頬張りながら、「ハロー」、「アリガト」と言い合っています。
そのやり取りにより、「おいしいね」というような想いを共有していると読めます。

また、アリスが忍と一緒に寝るために、部屋を訪れる場面も同じように考えられます。

「コンニチハー」
"Can I sleep next to you?"
    一緒に寝てもいい?
「ハロー!」   (アニメ1話)


ここでも「一緒に眠りたい」というような想いを、「コンニチハ」、「ハロー」で確認しています。
普通に会話する場合ではなく、何か想いを共有したい場合に、合言葉が使われているのです。
やり取りされる言葉の中身というより、言葉をやり取りすること自体に意味があります。

以上の点を鑑みると、別れの場面もお互いの想いを共有しているのだと思います。
それではあの瞬間、二人はどのような想いを共有していたのでしょう。

さようなら、また会おうね、ありがとう、楽しかったよ、元気でね――

思うに別れの瞬間には、言いつくせないほどの沢山の想いが浮かんでくるものです。
だからこそ忍とアリスは、他のどのような言葉も取らずに、
誰にも訳出することのできない二人の合言葉を選んだのではないでしょうか。

けだしそれは、意味を伴わない一言であるからこそ、全てになり得る一言です。


テーマ:きんいろモザイク
ジャンル:アニメ・コミック

夢みるファム・ファタルのように ――夢を追いかける美月 (アイカツ!38話感想)

2013.07.06 15:03|アイカツ!
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新生トライスターが誕生したということで、今回は美月について考えていきます。
33話から始まったトライスターのメンバーを巡る一連の物語においては、
美月と一緒に活動することを目指すアイドルたちの奮闘が描かれましたが、
その裏でトライスターの人選に強い拘りを持つ美月の姿も描かれました。
この流れの中で、これまでとは異なる美月の姿が提示されていたように思います。
では、トライスター編において、美月はどのようなアイドルとして作中に現れたのでしょうか。



○明確に強調される「夢を追いかける美月」:目標からライバルへ


結論から言えば、新生トライスター結成までの一連の流れが行ったのは、
美月を「夢を追いかけるアイドル」として描くということだったと思います。
これまで美月は、アイドル界のトップに君臨する存在であるために、
いちごを初めとした、他のアイドルの夢や目標として描かれてきました。
換言すれば、「夢として追いかけられるアイドル」こそ美月だったのです。
しかし38話では、美月が明確にトライスターという夢を追いかける側に回ります。
特に学園長と美月が二人で話し込む、以下の場面にはそのことが表れています。

「らしくないわね」
「トライスターのメンバーは、紫吹ではありませんでした」
「あなたらしくないと言ったのは、人選を失敗したと思っていることよ」
「トライスターとして輝ける三人目を見つけます!」 (38話)


この後、美月は実際に三人目を探しに行って、ユリカを見つけるわけですが、
重要なのは、「美月が」トライスターという夢を追いかける形になっているということです。
これは物語における大きな反転であったと思います。
というのも、33話から始まったトライスターのオーディションでは、
「美月が」夢を追いかけるという描き方はされていませんでした。
彼女が自分で審査することに拘っていたのは確かですが、
あくまでそこで夢を追いかける主体として描かれたのは、
美月と組んでいた三人を初めとした、他のアイドルだったと言えます。

美月はそこでも追いかけられる立場だったと考えることができるでしょう。

それが上述の部分では、追いかける側として登場しています。
ここで、「他のアイドルの夢や目標」として描かれがちだった美月が、
他のアイドルと同じ、「夢を追いかけるアイドル」として描き直されているのです。
以下のメールの文面も、美月が蘭たちと同じ、夢を追うアイドルであることを強調しています。

私、決めたよ。
蘭の心にこれ以上雨が降らないように、蘭にはトライスターを外れてもらいます。
あなたには太陽のもとでかがやいてほしいから!
私の夢であなたの夢を振り回してしまって、ごめんなさい。
いつも、夜空からあなたたちのことをみまもっています。
行く道は違っても、お互い同じ空でかがやきましょう。 (37話)


メールの中で美月は、トライスターで更に上を目指すという自身の夢を、
いちごやあおいと一緒に頑張りたいという蘭の夢と並べています。
ここには明らかに、他のアイドルと同様に「夢」を抱く美月の姿を見出せます。
例えば16話のスペシャルライブや、27話のフレッシュガールズカップでは、
美月は他のアイドルとは一線を画するトップアイドルとして描かれていましたが、
ここにきて美月は他のアイドル(いちごたち)と並列の位置に来るのです。
蘭がトライスターを脱退した後、美月はソレイユの一員となった蘭に言います。

「蘭、あなたかがやいているわ。本当よ」
「ありがとうございます」
でもね、ソレイユはトライスターのライバル。お互い高め合いましょう」 (38話)


美月はここで、自分をいちごたちの「ライバル」に位置づけています。
よもや彼女たちの遥か上にいる、彼女たちの「目標」ではないのです。
このように、最終的に美月は、夢として追いかけられる「目標」ではなく、
同じく夢を追いかける「ライバル」として強調されることになります。
いちごが38話において、「太陽」という美月にもらった目標を参考にしながらも、
「いちごパフェ」という自分の目標をリーダーとして打ち立てたのは象徴的です。

結論として、トライスターの結成に際して、美月は「夢を追いかけるアイドル」として描かれ、
いちごたちの目標ではなく、いちごたちのライバルとして改めて登場したと言えます。

実際に、ソレイユとトライスターは根本にある考えからしてかなり異なっており、
別々の道を歩むユニットであることが前面に押し出されています。
すなわちソレイユが、「そろってこそおいしい」、「いちごパフェ」のようなユニットであるのに対し、
トライスターは「一人でも強く輝ける」、「何光年先からでも輝ける星」によるユニットなのです。
ともすればソレイユとトライスターは、正反対のユニットと言うこともできるかも知れません。
「一緒だから強く輝ける」ソレイユと、「一人でも強く輝ける」トライスター。

特に美月はトライスターの人選に当たり、「一人でも強く輝ける」ということを重視しました。
『Take Me Higher』も、このトライスターの理念を示すような歌詞になっています。

きみの眼に 私を灼きつけたい 譲らない 求めるものはすべて
奪いとる ファム・ファタルの引力
I know, I know, I know You love me, Baby (中略)

ここは ハートが目覚めて 花咲いて リスペクトしあう場所
どこか大胆なところが好きだから チャンス無駄にしないで
どうぞ もっと近づいて Please Take Me Higher 抱きしめて 踊りましょう
どんな惑星だって ひとりぼっちで 輝けるわけじゃない (『Take Me Higher』より)


ここで描かれるのは、一方で自身の持つ強力な「ファム・ファタルの引力」を自覚しながら、
他方で「どんな惑星だって ひとりぼっちで 輝けるわけじゃない」とも認識していて、
「きみ」と一緒に更なる高みへ向かうことを目指す主人公の姿です。
この「夢みるファム・ファタル」の姿に、夢を追いかける美月の姿を重ねることができます。
つまり彼女も、一方で自分の持つアイドルとしての強い輝きを自覚しながら、
他方でそれに満足せずに更に上を目指して、「リスペクトし合える」仲間を求めるのです。
特に38話は、美月が「夢みるファム・ファタル」のように実際に夢を追いかける回になっています。

そして美月は、ついに一緒に高みを目指すことができるトライスターの仲間を獲得しました。
美月はもはや、たった一人のトップアイドルではありません。
隣にはトライスターの仲間が、正面にはソレイユの三人がいます。

これから始まるのは、彼女たちと同じ夜空で競い合う、美月の物語の新章でもあるのです。



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