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そして二人は世界に抗う (大北紘子『月と泥』)

2013.05.31 18:28|百合作品
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(2013/05/18)
大北 紘子

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絶望、諦観、羨望、孤独-―。
光のミエル先に、希望なんてなかった。

男なんて、みんな死んじゃえばいい。 (『月と泥』帯より)


まず衝撃的な文句が目につく本作。
これはおそらく表題作をイメージしたものでしょうが、
収録されている作品は基本的に、男性に対抗する二人という主旨を持っているわけではありません。
彼女たちが挑戦するのは、むしろ彼女たちを支配する運命、ないし彼女たちを取り巻く世界です。
作中で男性が対抗されるとしても、それはその延長で間接的に対抗されるに過ぎません。
今回は特に表題作「月と泥」を紹介する中で、このテーマについて考えてみたいと思います。



○世界に対抗するミリタリーベース:「拠点」としての二人の関係


「月と泥」は土壇場の描写から急に始まります。
何かから懸命に逃げる二人の少女。
体力は限界で、やがて長髪の少女が足を取られて転んでしまいます。

「ごめんなさい 足がもつれて」
「いいのよ 早く立って」
「リサ… 私もういいんです 帰りたい…」
「どこへ帰るって言うの!? あんな人のところへ!?」
「いいの 他に居場所がないんです ずっとそうだったの 構わないで…
 もうほっといてください… きっとまたひどい目に遭うだけです」 (5-6ページ)


ここでリサと呼ばれた少女は、長髪の少女の背後で不意に岩に手をのばし、頭上高く振り上げます。
そして、それを振り下ろす――

まさにその瞬間、カメラがフレームアウトして、時間が過去に飛んでいきます。
如何にしてリサが長髪の少女と出会い、ともに逃げるに至ったかが語られるのです。
長髪の少女は「お父さん」に売られる予定でした。
リサはそれを知り、少女の手を引いて駆け出していきます。

この物語において、私が指摘したいことは二つあります。

第一に、リサが岩を持って振り上げる場面が前置されているために、
リサが手にした岩でもって、諦めた少女に手を下そうとしているように見えるということです。


観察し得る限り、周囲にはリサと少女の二人以外の人影はありません。
そのような状況下でリサが岩を振り上げれば、
それは当然、少女に対して振り下ろされると予想することができます。
悲劇的な運命に従わせるくらいなら、自分の手でいっそ――
結局のところ、少女は不幸な身空から解放されることなく、悲劇的な最期を迎える――
そうした展開が、フレームアウトの後に想像できてしまうわけです。

けれども、この予想は見事に裏切られることになります。
後で改めて語られるように、リサは少女に向かって岩を振り上げたわけではありませんでした。
いつの間にか少女の傍に忍び寄っていた、「お父さん」に振り上げていたのです。
後には頭を砕かれた男が転がっていました。

問題は、こうした誤った予想を生み得る、土壇場の前置が行われた理由です。
私は、そうした誤解を敢えて生んで、二つの未来を対比させるためであったと考えます。
少女に岩が振り下ろされる未来と、男に岩が振り下ろされる未来。
少女の悲劇的な運命に対抗し、それを克服していく未来を、
運命に抗い切れなかった未来「に対して」提示する効果が、前置により生まれています。
対比により、「運命への対抗」が強く作中に表れるようになっているのではないでしょうか。

第二に、「運命からの逃避」では駄目であったということです。

リサは長髪の少女を連れて遠くの街に逃げようとしますが、
それだけでは少女が自身の運命を払拭することはできません。
実際に彼女は、リサに「ほっといてください」と言うに至ります。
ここに、「運命からの逃避」ではなく「運命への対抗」が必要とされていることが見出せます。
リサは、少女を連れて逃げるだけではなく、男を殺す必要があったのです。
作品のテーマは、あくまで「運命への対抗」であったことが分かります。


以上の二点から、「運命への対抗」というテーマが非常に強く表れていることが窺えます。
運命を否定し切れない結末でもなく、運命から逃げ切る結末でもなく、
運命に抵抗し、それを克服していく結末こそ、作品が提示しているものと言えます。


けだし、このテーマは作者の他の作品においても描かれています。
例えば『月と泥』に同じく収録されている「六花にかくれて」で、
具同は笹島を連れて逃げるだけではなく、その病を超克しようとしています。
具同は笹島が背負い、半ば受け入れていた死の運命と戦うわけです。
あるいは「丘上の約束」で、いつきは約束通りみつを救い出します。
それは彼女が受け入れていた運命から、いつきが脱却させたということです。

更に、前作である『裸足のキメラ』にも注目してみましょう。

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大北 紘子

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この中の「名もなき草の花の野に」でも、野薊は銀蘭の死を運命として受け入れ、
泣き寝入りするのではなく、復讐をきっちりと果たそうとします。
ここからも「運命への対抗」というテーマを引き出すことができると思います。

もちろん、「運命への対抗」という一つのテーマで、
ある作者の全ての作品を捉えようとすることは乱暴ですし、不可能でしょう。
事実、作者はこの枠内に収まらない作品もたくさん描いています。
しかし、自身の現状を運命として受け入れさせようとするような世界を前提とした上で、
それに二人の紐帯でもって対抗し、超克していくというテーマを、
作者の作品の一つの特徴として考えることはできるように思います。


そして「月と泥」の最後の場面は、こうしたテーマを象徴するものです。
男の頭を打った後、リサは少女に声をかけます。

「…行こう 誰も助けないなら私が助ける
 あんたも私を守ってくれるね 離さないで」 (26ページ)


この言葉を受けて少女はリサの手を取り、二人は月下の泥濘を駆けて行くことになります。

二人の関係は、運命と、それを受け入れさせようとする世界に対抗するための拠点です。
前述の台詞には、この関係があるからこそ対抗することができるということが示されています。
それは二人を外界の荒波から隔絶する「乙女の港」とでも言うべき、優しいものではありません。
二人が外界に対抗するために必要な「ミリタリーベース」とでも言うべきものです。
二人はその拠点から世界に対抗し、その拠点によって運命を乗り越えていきます。
そうした「拠点」としての二人の関係を、『月と泥』の中に見出すことができるのではないでしょうか。


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テーマ:百合
ジャンル:アニメ・コミック

九人のμ'sへの帰着、新しい夢への出発 (ラブライブ!考察②)

2013.05.12 21:03|ラブライブ!
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引き続き、アニメ『ラブライブ!』についての記事です。

まず、この記事は以下にリンクを貼った記事の続きになります。
正直こちらだけ読んでいただいても内容の理解に差支えはありませんが、
以下の記事を先に読んでいただいた方がおそらくより分かりやすいので、
もしよろしければ目を通していただければと思います。

自分の想いとの邂逅、みんなの想いとの対峙

前回は、13話で穂乃果が自分の想いと出会い、
またみんなの想いを受け止めて復帰に向かう過程を確認しました。
今回はそれを踏まえた上で、『ラブライブ!』が最後に改めて強調した「μ's」というユニットは、
九人にとってどのような関係だったのかということについて、考えたいと思います。

けだしこのことは、13話で穂乃果とことりの復帰が描かれる中で表現されました。
ゆえに、穂乃果の復帰とことりの復帰、この二つの側面から始めていきます。



○穂乃果の復帰:「補い合う関係」としてのμ's


まず、穂乃果の復帰という側面から考えます。

穂乃果はアイドルに戻ることを決意した後、その気持ちを海未に伝えます。
二人きりの講堂で、穂乃果は自身の正直な気持ちを告白するのです。

「私ね、ここでファーストライブやって、ことりちゃんと海未ちゃんと歌ったときに思った。
 もっと歌いたいって、スクールアイドルやっていたいって。
 辞めるって言ったけど、気持ちは変わらなかった。
 学校のためとか、ラブライブのためとかじゃなく、あたし好きなの、歌うのが!
 それだけは譲れない。だから……ごめんなさい!
 これからもきっと迷惑かける。
 夢中になって誰かが悩んでいるのに気付かなかったり、入れ込み過ぎて空回りすると思う。
 だって私、不器用だもん!
 でも! 追いかけていたいの!
 わがままなのは分かっているけど、私!」 (13話)


ここで、穂乃果の考えが逆転していることが見て取れます。
12話で穂乃果はことりを傷つけたを契機に、「自己否定」へと向かいました。
その結果、「これまでの自分」、スクールアイドルに夢中になって取り組んでいた自分が否定され、
最終的にアイドルを辞めると宣言するところまで至ってしまいます。
その時点では、彼女の中でアイドルをやりたいという気持ちは半ば忘れられ、
アイドルをやるべきではないという気持ちの方が強く前に出ていたと言うことができます。
それは穂乃果が自己否定の末に、自分を見失った結果もたらされた優劣です。

その力関係が、この場面では反転しています。

すなわち、この時点でも穂乃果は迷惑をかけたり、誰かを傷つけたりする可能性を考え、
自分はアイドルをやるべきではないかも知れないという気持ちを少しは持っていますが、
それは「好き」という感情に基づく、アイドルをやりたいという気持ちに道を譲っているのです。
にこが叱咤で自身の気持ちを強く意識させ、絵里が告白で自己否定を止めた結果、
穂乃果は自分の中で本当に大切な気持ちを掘り起こすことができたのでした。

そして、この穂乃果の言葉を受けて、海未は以下のように返します。

「でもね、はっきり言いますが、穂乃果には昔からずっと迷惑かけられっ放しですよ。
「え!?」

「ことりとよく話していました。穂乃果と一緒にいると、いつも大変なことになると。
 どんなに止めても、夢中になったら何にも聞こえてなくて。
 大体、スクールアイドルだってそうです。私は本気で嫌だったんですよ」
「海未ちゃん……」

「どうにかして辞めようと思っていました。穂乃果を恨んだりもしましたよ。
 全然気づいてなかったでしょうけど」
「……ごめん」

「ですが、穂乃果は連れて行ってくれるんです。
 私やことりでは、勇気がなくて行けないような凄いところに」
「海未ちゃん……」

「私が怒ったのは、穂乃果がことりの気持ちに気付かなかったからじゃなく、
 穂乃果が自分の気持ちに嘘を付いているのが分かったからです。
 穂乃果に振り回されるのは、もう慣れっこなんです。
 だからその代わりに、連れて行ってください! 私たちの知らない世界へ!
 それが穂乃果の凄いところなんです。私もことりも、μ'sのみんなもそう思っています」(13話)


この一連のやり取りに、μ'sがどのようなものなのかという答えが鮮明に表れていると思います。
ここで海未は、穂乃果の弱みを認識しながら、それを正すように要請しません。
穂乃果の性質としてそれを受け入れています。
それが反面で、「凄いところ」へと向かっていく推進力になることを海未は知っているのです。

ただ、それを放置しておくほど、海未は能天気ではありません。
海未は穂乃果の弱みを、穂乃果自身の努力により解決させようとはしませんが、
自分たちの抑制により適切なものへと収めようとはするのです。

このことは11話で穂乃果が暴走した場面を見れば分かります。

「ちょっと、振り付け変えるつもり!?」
「そ、それはちょっと……」
「絶対こっちの方が盛り上がるよ! 昨日思い付いたとき、これだって思ったんだ。
 はぁ~、私って天才!」
「ことり、これはさすがに……」 (11話)


「私たちはともかく、穂乃果は少し休むべきです」
「大丈夫! 私、燃えてるから!」
「夜も遅くまで練習しているんでしょう?」
「だって、もうすぐライブだよ!」
「……ことり」
「私?」
「ことりからも言ってやってください」 (11話)


海未は穂乃果が暴走した場合、自分たちでそれを抑制することを予定しています。
11話ではことりが本調子ではなかったため上手くいきませんでしたが、
普段はそうすることで行き過ぎを是正してきたと考えられます。
穂乃果の弱みは個人の「努力」により克服されるのではなく、
周囲との「関係」の中で乗り越えられるのです。
これが、アニメで描かれてきたμ'sという関係性における最大の特徴の一つだと思います。

穂乃果だけではありません。
例えば海未は人前に出ることが苦手ですが、これも個人の努力によって克服されるのではなく、
μ'sという関係の中で乗り越えられることになります。

「はぁ、困ったなあ……」
でも、海未ちゃんが辛いんだったら、何か考えないと
「ひ、人前じゃなければ大丈夫だと思うんです。人前じゃなければ……」
「色々考えるより、慣れちゃった方が早いよ。じゃあ行こう!」 (3話)


下線部でことりが、海未の問題を三人の問題として考えていることは象徴的です。
実際にこの後で三人は、海未の苦手克服のために「三人で」ビラ配りを行います。
そして最終的に、海未は率先してビラを配るまでになるのです。
ここでも「海未の努力によって」というより、「μ'sという関係の中で」、
海未が弱みを乗り越えていることが強調されています。

9話の路上ライブの際にも、海未の苦手意識は表出しますが、
このときも最終的には「九人で一緒に」海未はライブをやり遂げて見せます。

完全に同じ構造が、9話でことりの弱みが取り上げられたときにも見出せます。
9話では、穂乃果や海未に比べて「何もない」と感じることりの「自信のなさ」が問題となります。
ゆえに、「新しい自分になるべく歌詞作りに挑戦」(10話)するわけですが、
これは結局、ことり一人の力で成し遂げられるわけではありませんでした。

「やっぱり私じゃ……」
「……ことりちゃん! こうなったら一緒に考えよう! とっておきの方法で!」 (9話)


結果として、全員でメイド喫茶に押しかけて考えることになります。
ことりはその中で、特に穂乃果から助言を受けて歌詞を完成させるのです。
そして最終的に、ことりは穂乃果すらリードする勢いでライブへと進んでいきます。
路上ライブに尻込みする海未を前に、穂乃果よりも先に「面白そう!」と答えたのはことりでした。
ここでも、ことりの問題が「μ'sという関係の中で」克服されていることが分かります。
ライブの後のことりの言葉は端的にこのことを示しています。

「うまくいってよかったね。ことりちゃんのおかげだよ」
「ううん、私じゃないよ。みんながいてくれたから、みんなで作った曲だから
「そんなこと。でも、そういうことにしとこうかな」 (9話)


明らかにことり一人の努力ではなく、「μ'sという関係」に強調点が置かれています。

10話でも、素直になれない真姫の「面倒なところ」が話の中心になりますが、
これも「真姫の努力によって」というより、「μ'sという関係の中で」克服されます。
すなわち、同じように「面倒なところ」を持つ希の助けもあって解決されるわけです。
希は最初、真姫に「無茶」を勧めますが、最後には半ば強引に無茶させます。
けれどもそのおかげで、真姫は「ありがとう」を伝えることができました。

このように、『ラブライブ!』は誰かの弱みに焦点を当てる場合、
それが「努力」によって乗り越えられる様を描き出そうとしてきたと言うより、
それが「関係」の中で乗り越えられる様を描き出そうとしてきたと言えます。

ただ注意すべきなのは、「努力」をないがしろにしているというわけではないということです。
その証拠に『ラブライブ!』では、「練習風景」が強調されてきました。
5話や8話の屋上での練習を中心として、「努力」は終始描かれています。
しかし、穂乃果の暴走癖や真姫の「面倒なところ」を初めとする、個人の性質と不可分な「弱み」、
換言すれば、それ自体がその個人の特徴の一つと呼べるような「弱み」は、
「μ'sという関係の中で」助け合うことにより、乗り越えられるのです。

アニメは乗り越えられる対象の性質によって、「努力」によって乗り越えられるべきものと、
「関係」によって乗り越えられるべきものを峻別しています。

そして、「関係」による克服こそ、アニメの描いたμ'sという関係の特徴でした。
誰かの弱みは、その関係の中で一人ひとりが助け合うことで乗り越えられる。
そうした「補い合う関係」として、μ'sは作中に表れています。
私は、μ'sがそうした関係だからこそ、個々人がμ'sという関係の中で、
時に自分の限界を乗り越えて前に進むことができるのだと思います。
海未の言葉を借りれば、その中でこそ「自分の知らない世界」へと漕ぎ出すことができるのです。



○ことりの復帰:「みんなで目指す場所」としてのμ's


次に、ことりの復帰という側面から考えます。

ことりは海未の後押しを受けた穂乃果の言葉により、復帰を決意します。
穂乃果は空港で自身の素直な気持ちをぶつけるのです。

「ことりちゃん!」
「あっ!」
「ことりちゃん!」

「ことりちゃん、ごめん! 私、スクールアイドルやりたいの!
 ことりちゃんと一緒にやりたいの!
 いつか、別の夢に向かうときが来るとしても! 行かないで!」

「……ううん、私の方こそごめん。私、自分の気持ち、分かってたのに」 (13話)


ここで問題なのは、「私、自分の気持ち、分かってたのに」ということりの言です。
彼女はスクールアイドルを続けたいと本当は思っていたけれど、
それを選び取ることができなかったと、ここでは示されています。
そのことは、13話に入っても穂乃果からのメールを待ち続けていることからも分かります。

lovelive13.png

これは、穂乃果が復帰を決意した場面で、まるで対比させるかのように差し込まれています。
留学が決定しても、ことりは穂乃果に止められることを何処かで望んでいたのです。
このことは一見、「自分の気持ち」を一人で選択できない意志の弱さを明示しているように見えます。
先述の通り、9話でことりの「自信のなさ」は、μ'sという関係の中で乗り越えられました。
それなのに、13話では彼女が自身の意志に関して依然自信を持てていないとも捉え得るので、
ここでことりの成長のなさが浮き彫りになっていると読むこともできるでしょう。
11話でことりの母が以下のように述べていることも、その読み方を援護します。

「どうするの? こんなチャンス、滅多にないわよ」
「うん……」

「お母さん! お母さんは行った方がいいと思う?」
「それは自分で決めることよ」 (11話)


ことりの母はことりに自分で決める機会をしっかりと与えているのにも係らず、
ことりは一人で「自分の気持ち」を選べず、穂乃果の助けを要したというわけです。
ことりのその姿にもやもやした方というのは、結構多かったのではないでしょうか。

けれども、μ'sか留学かという選択におけることりの迷いは、
この一部だけを見て捉えられるべきではなく、アニメ全体を見て捉えられるべきです。


そもそもアニメは「μ's」ないし「スクールアイドル」という選択肢を、
一人で選び取るものではなく、一貫して「みんなで選び取るもの」として描いています。
以下、具体的な場面を抽出していきたいと思います。

それが最初に示されるのは1話です。
海未は一人では決してスクールアイドルになろうとはしなかったでしょうが、
弓道の練習中にアイドルポーズを決めてみる姿から分かるように、
「やりたいという気持ち」はあったのであり、穂乃果とことりがいたからそれを選び取れました。
一人では選べない「自分の気持ち」を、彼女はみんなと一緒だから選べたのです。
海未は以下のように述べています。

「一人で練習しても意味がありませんよ。やるなら三人でやらないと」 (1話)


ここで海未は、三人であるから意味があることを指摘しています。
そして結果として、三人でスクールアイドルを始めることになるのです。

全く同じことが、4話でもテーマになっています。
花陽、凛、真姫の三人は、それぞれスクールアイドルに興味を持っていましたが、
それぞれの理由からなかなか入部することができませんでした。
彼女たちが一人であったなら、その状況はずっと動かなかったでしょう。
しかし、彼女たちは三人だったから、μ'sに入ると意思表示することができました。

「つまり、メンバーになるってこと?」(中略)

「わ、私はまだ、なんていうか……」
「もう! いつまで迷ってるの!? 絶対やった方がいいの!」
「それには賛成。やってみたい気持ちがあるなら、やってみた方がいいわ」
「で、でも……」
「さっきも言ったでしょう? 声出すなんて簡単! あなただったらできるわ」
「凛は知ってるよ。かよちんがずっとずっとアイドルになりたいって思ってたこと」
「凛ちゃん……。西木野さん……」
「頑張って、凛がずっと付いててあげるから」
「私も少しは応援してあげるって言ったでしょ?」

「え、えっと、私、小泉……」

「私、小泉花陽と言います。一年生で、背も小さくて、声も小さくて、人見知りで、
 得意なものも何もないです。でも、でも、アイドルへの想いは誰にも負けないつもりです!
 だから、μ'sのメンバーにしてください!」 (4話)


このように、凛や真姫の助けがあって、花陽が加入できたということが非常に強調されています。
そして凛と真姫も、花陽の表明を受けて、直後に加入することになります。
それぞれの理由から「自分の気持ち」を選べなかった三人が、
三人一緒だったからこそ、μ'sに加わることができたのです。

4話は、そうした主題を持った話でした。

同様のことが、5話や8話でも形を少し変えて描かれています。
すなわち、にこや絵里はμ'sに興味がありながら、素直にそこに入ることができませんでした。
しかし、周囲の助けもあって、無事μ'sの一員になることになります。
その過程で特に大きな存在感を発揮したのは穂乃果です。
やはりここでも、一人では選び取れないものとしてμ'sは提示されていることが分かります。
みんなが一緒だから、「自分の気持ち」を選択することができる。
希も10話で示されるように、μ'sへのただならぬ想いは早い段階から持っていたにも係らず、
他の八人がいない限りは、そこに入ることができなかったと考えることができます。

唯一の例外は、最初にアイドルになることを決意した穂乃果です。
しかし彼女も、13話において、μ'sから抜けた後に一人ではそこに戻れませんでした。
前の記事で述べましたが、にこや絵里の言葉があって、穂乃果は復帰するのです。
穂乃果が5話で気持ちを再燃させたにこにより気持ちを再燃させられ、
穂乃果が8話で手を伸ばして救った絵里により、手を伸ばして救われることは象徴的です。

彼女も「みんながいるから」μ'sに帰るという選択ができました。

以上の場面で繰り返し提示されてきたのは、
「誰かと一緒だからこそ選択できる自分の気持ちがある」ということです。
それは自分の正直な気持ちですが、だからこそ一人では選び難い気持ちであり、
選ぶためには誰かの後押しを必要とします。
μ'sというのは、そうした「みんなで選び取るもの」なのです。

終盤のことりの留学に関しても、この延長で見るべきだと思います。
つまり、ことりの「自分の気持ち」は自分一人で選択できるものではなく、
誰かと一緒だからこそ選べるものだったということです。
ことりにとって「誰か」とは、特に親友である穂乃果のことを指します。
彼女の一声こそ、ことりがμ'sを選ぶための条件なのです。

留学に際しての騒動は、ことりの意志の弱さを明らかにしていると言うより、
μ'sがどのようなものであるかを改めて示していると考えることができます。


結論として、μ'sは一人でではなく、みんなで選択するものとして描かれています。
一人ではそこに向かうことはできないけれど、みんなと一緒ならば向かうことができる。
そうした「みんなで目指す場所」として、μ'sは作中に表れているのです。
ことりの復帰までの道程は、そのことを改めて強調しています。



さて、長くなってしまいました。
もしここまで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございます。

簡単にまとめますと、13話での穂乃果とことりの復帰はそれぞれ、
μ'sが「補い合う関係」であることと、「みんなで目指す場所」であることを示しています。
廃校を阻止するための手段としての意味が失われても、
九人にとってそうしたものとしてμ'sは意味を持ち続けます。
みんなと一緒だから成り立つμ'sという関係の中で、
九人は相互に補い合いながら、新たな世界へと向かっていく。

そうした情景を、九人での講堂ライブに見出すことができるのではないでしょうか。
穂乃果は晴れやかな表情で、集まった観客に伝えます。

「私たちのファーストライブは、この講堂でした!
 そのとき、私は思ったんです。いつか、ここを満員にしてみせるって!
 一生懸命頑張って、今、私たちがここにいる。
 この想いを、いつかみんなに届けるって! その夢が今日、叶いました!
 だから、私たちはまた駆け出します! 新しい夢に向かって!」 (13話)


μ'sの出発から始まった物語は、μ'sへの到着で一先ず終わりを告げます。
しかし、九人の物語はそこから「新しい夢」へと続いていくのです。
それは九人が相互に助け合うことができる、μ'sだからこそ掴み得る夢に違いありません。



【関連記事】

 「穂乃果の物語」ではなく「三人の物語」として (3話感想)
 本当の意味で、同じグループの一員へ (10話感想)


テーマ:ラブライブ!
ジャンル:アニメ・コミック

自分の想いとの邂逅、みんなの想いとの対峙 (ラブライブ!考察①)

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放送から一ヶ月以上経過していますが、今回はアニメ『ラブライブ!』について考えてみます。
最終話、物語が辿り着いたのは廃校阻止でもなく、ラブライブ出場でもありませんでした。
廃校阻止は12話でさらっと達成され、ラブライブは辞退することになったのです。
物語の到達点は、ことりの留学と穂乃果の脱退を経た上での「μ'sの再出発」でした。
おそらくこれは、大方の予想や期待を裏切る展開だったのではないでしょうか。
この展開の賛否はともかく、こうした流れの中でアニメは何を描いたのか。
今回はそのことについて、13話に特に注目して改めて考えてみたいと思います。

言うまでもなく、13話で問われたのは「μ'sそのものの意味」です。
廃校を防ぐための手段として選択されたそれは、今や手段としての意味を失いました。
そのとき、九人にとってどのようなものとして、μ'sは存在し得るのか。
けだし、13話ではそれが、穂乃果の復帰とことりの復帰、この二つの側面から描かれていました。
ゆえに、まずは復帰の過程を確認し、その後で読み取れるものを提示していこうと思います。
ただ長くなりましたので、二回に分けて論じていきます。
今回は13話の内容を見ていくことで、復帰の過程を確認します。

もしよろしければ、内容を思い出しながら少しお付き合いください。



○13話で穂乃果が受け止めるもの:自分の想いと、みんなの想い


まず、12話から13話にかけての流れを確認してみましょう。
前回12話の最後で、穂乃果はメンバーの前でアイドルを辞めることを宣言します。
この前後の穂乃果の心理は複雑ですが、根本には「自責の念」があったと考えることができます。
それは、脱退を表明する場面にはっきりと示されています。

「私がもう少し周りを見ていれば、あんなことにはならなかった」
「そ、そんなに自分を責めなくても……」
「自分が何もしなければ、こんなことにはならなかった!」(中略)

「やめます」
「え?」
「私、スクールアイドル、やめます」 (12話)


ここで穂乃果は、強烈な「自己否定」に陥っています。
ことりの留学が決定し、μ'sを抜けることになったのは自分のせい。
そうした「自責の念」から、穂乃果はこれまでの自分を徹底的に否定していきます。
スクールアイドルを始めた自分、ラブライブを目指して邁進していた自分。
それらを全て過ちとして、無理矢理に処理しようとするのです。

アライズ(A-RISE)に追いつくことを無理と断じる箇所は、最も象徴的なワンシーンです。

12話時点の穂乃果にとって、ラブライブに出場してアライズに挑戦しようとしていた自分は、
暴走してことりの異変に気付けなかった、否定されるべき自分に他なりませんでした。
ゆえに穂乃果は、これまでの努力を水泡に返すような言葉を敢えて言ってのけるのです。
「アライズみたいになんて、いくら練習したってなれっこない」。

こうして自分を否定していく中で、穂乃果は自分を見失っていきます。
そして本来の自分であれば言わないようなことを、自分の意見として提示してしまうのです。
それが、スクールアイドルを辞めるということでした。
実際に海未は、13話でそれを穂乃果の「嘘」と見なしています。

「私が怒ったのは、穂乃果がことりの気持ちに気付かなかったからじゃなく、
 穂乃果が自分の気持ちに嘘を付いているのが分かったからです」 (13話)


13話は、こうして自己否定の末に自分を見失った穂乃果が、
「自分を取り戻していく物語」として考えることができます。
以下ではその奪回の過程に着目することで、物語のテーマを探っていきます。


(1)心の奥に残っていた光景


第一に、13話では穂乃果が自分の気持ちと改めて対峙します。
それはクラスメイトに連れられて向かったゲームセンターでのことでした。
穂乃果はダンスゲームの最中、とある景色を想起します。

lovelive10.png

ここで想起されたのは、みんなとの練習の風景と、μ'sのランキング画面です。
穂乃果は12話の自己否定の中で、それらを拒絶し遠ざけました。
それらが自分を夢中にさせ、暴走させたに違いないからです。
しかし、それでもなお、ここで穂乃果の心中にはそれらが浮かんできます。
穂乃果は、如何に否定しても否定しきれない本当の気持ちに改めて出会うのです。
眼前に顕現した二つの景色は、それを証明するものと考えられます。

ゲームセンターに向かう際、クラスメイトたちは穂乃果を責めませんでした。
穂乃果の意志を尊重して、むしろ彼女の決断を肯定しています。

「だって穂乃果は学校守ろうと頑張ったんだよ」
「そうだけど……」
「学校を守るためにアイドル始めて、その目的が達成できたから辞めた」
 何も気にすることないじゃない。ね?」 (13話)


穂乃果自身も12話で、手段としてのスクールアイドルの役目が終わったことを強調していました。
ゆえに、穂乃果は辞めても問題ないと結論したのです。
しかし、その論理が間違っていたことを、穂乃果はゲームセンターで悟ることになります。
彼女にとって、μ'sでの活動は手段としての意味以上のものを持っていたからです。
ダンスの最中に思い出と出会い、ダンスの楽しさに久々に触れたことで、穂乃果はそれを再確認します。

けれども、それだけでは穂乃果はμ'sに戻ることができません。
自分にとってアイドルとしての活動がかけがえのないものだったとしても、
それが自分を暴走させ、友達を傷つけたということは否定されないからです。
ゲームセンターからの帰り道、穂乃果は一人で考えます。

--今度は誰も悲しませないことをやりたいな。
 自分勝手にならずに済んで、でも楽しくて。
 たくさんの人を笑顔にするために、頑張ることができて。

「そんなもの、あるのかな?」 (13話)


「誰かを傷つけ得る」ということが否定されないため、穂乃果は戻れないのです。
ことりを傷つけたという事実が持つ重大さが、この独白には表れています。
そのため、穂乃果はこの時点で復帰を決意するには至りません。
彼女が一人ではμ'sに戻れなかったということは、けだし重要な意味を持っています。
このことについては、ことりの復帰を論じる際に改めて取り上げようと思います。


(2)にこの叱咤:目的としてのスクールアイドル


第二に、穂乃果は自分の正直な気持ちに出会った後で、練習に励むにこたちに出会います。
そしてにこに、厳しい叱咤を受けることになります。

「μ'sが休止したからって、スクールアイドルやっちゃいけないって決まりはないでしょ?」
「でも、何で?」
「好きだからよ」

「にこはアイドルが大好きなの! みんなの前で歌って、ダンスして、
 みんなと一緒に盛り上がって、また明日から頑張ろうって、
 そういう気持ちにさせることができるイドルが私は大好きなの!
 穂乃果みたいないい加減な好きとは違うの!」
「違う! 私だって!」
「どこが違うの? 自分から辞めるって言ったのよ。やってもしょうがないって」 (13話)


にこはここで、穂乃果がゲームセンターで薄々気付いていたことを明確に述べて見せています。
すなわち、スクールアイドルとしての活動は単なる学校存続のための手段ではなく、
それ自体として意味のある目的であるということを提示して見せるのです。

にこは「目標が達成できたから辞める」と言った穂乃果に対して、
自分にとってそれは手段に過ぎないものではないと言い放ちます。
これは13話冒頭での絵里の問いかけに答えるものです。

「正直、穂乃果が言い出さなくても、いずれこの問題にはぶつかっていたと思う。
 来年までだけど、学校が存続することになって、私たちは何を目標にこれから頑張るのか、
 考えなきゃいけないときが来てたのよ」 (13話)


これに対して、にこは「大好きだから」アイドルを続けると答えるわけです。
自分にとっては、そもそもスクールアイドルは「手段」ではない。
それ自体が大切な「目的」だから、学校の存続が決まっても当然続ける。
にこの提案について来たのが、当初からアイドルに興味があり、
自分からアライズの映像ライブを見に行っていた花陽と凛だったことは示唆的です。

穂乃果はにこの答えを聞いて、自分にも同様の想いがあることを明らかに自覚しています。
だからこそ、彼女の挑発的な言葉に反論しかけるのです。
にこの叱咤は、穂乃果に自身の本心を一層悟らせたと言えると思います。
しかし、穂乃果は先述の自責ゆえに、まだ復帰を選ぶことはできない。

この時点では、穂乃果の復帰のために必要な両輪のうち、一つが修復されたに過ぎないのです。


(3)絵里の告白:自己否定からの脱却


第三に、穂乃果は家で絵里と出会います。
彼女は穂乃果の部屋で、自分のことについて正直に告白します。

「私ね、すごくしっかりしてて、いつも冷静に見えるって言われるけど、
 本当は全然そんなことないの」
「絵里ちゃん……」

「いつも迷って困って泣き出しそうで、希に実際はずかしところ見られたこともあるのよ。
 でも、隠してる。自分の弱いところを……。私は穂乃果が羨ましい。
 素直に自分が想っている気持ちを、そのまま行動に起こせる姿がすごいなって」
「そんなこと……」

「ねえ、穂乃果。私には、穂乃果に何を言ってあげればいいか、正直分からない。
 私たちでさえ、ことりがいなくなってしまうことがショックなんだから、
 海未や穂乃果の気持ちを考えると辛くなる。でもね。
 私は穂乃果に、一番大切なものを教えてもらったの。
 変わることを恐れないで、突き進む勇気。
 私はあのとき、あなたの手に救われた」 (13話)


この言葉を受けて、穂乃果は復帰を決意するわけですが、
何故この言葉が穂乃果にとって有効打になったかは語られていません。
しかし穂乃果が、自責に端を発する「自己否定」から辞めるに至ったことを踏まえると、
絵里の言葉は穂乃果の否定した「これまでの穂乃果」を描き出した上で、
それを肯定して見せたから、復帰のきっかけとなったと考えることができます。

ここまで穂乃果にとって、これまでの自分は自分勝手で、周囲に迷惑をかけ、
あまつさえ親友を傷つけた、否定されるべきものでした。
それを絵里は、自分の立場から肯定してみせるのです。
彼女は、自己否定の結果として見失われた穂乃果の姿を言明した上で、
その穂乃果だったからこそ、もたらすことができたものを提示しています。

そのため穂乃果は、自分を見つめ直すことができたのではないでしょうか。
否定されるべき自分は、絵里を救った自分でもあった。
極端にマイナスに傾いた天秤は、ここで修正をかけられています。
自己否定のループは、ようやくここで終わりを告げることになります。

つまり、にこが穂乃果に自分の正直な感情を強く意識させたのに対して、
絵里は「これまでの穂乃果」を肯定することで彼女の自己否定を止めたのです。
前に進む両輪が揃って、穂乃果は復帰へと向かうことになります。


(4)みんなの想いを受け止めて


第四に、絵里が帰った後、穂乃果は復帰の決意を固めます。
部屋でのシーンには穂乃果の独白がないため、彼女が何を具体的に考えたかは分かりません。
しかし、映像上の表現が何より雄弁にそれを語っています。
いくつか重要な表現を抜き出してみたいと思います。

まず、穂乃果はパソコン上のランキング画面に向かいますが、
このとき何らかの音楽を聞いています。
耳にイヤホンがささっていることに注目してください。

lovelive08.png

これより少し前に巻き戻すと、このとき聞いていると考えられるCDのケースが確認できます。

lovelive07.png

これは色から判断するに、おそらく12話で真姫が穂乃果に送ったCDです。
ほんの数秒のカットなので証左に乏しいですが、敢えてCDケースを映していることを鑑みると、
それが作中で登場した「特別な」CDであると考えても、あながち無理ではないと思います。
真姫のCDは12話で穂乃果に送られながら、作中では一度も聞かれてこなかったものです。
以下に12話の一場面を引用します。

lovelive06.png

このように、真姫からのCDは聞かれることなく地面に落ちています。
そして、この後に穂乃果がCDを聞く描写は全くありません。
13話の先のシーンになって初めて、穂乃果はCDを聞くのです。
これにはどのような意味があるのでしょうか。

真姫のCDは11話のライブで倒れた穂乃果に送られたものです。
それは、「μ'sのメンバーからの穂乃果への気持ち」を象徴するものと捉えられます。
倒れた穂乃果を労わる温かい心、落ち込む穂乃果に差し伸べられた手。
そういったものを示す記号として、CDを考えることができます。

12話で穂乃果はその気持ちを素直に受け取り、手を掴むことができません。
なぜなら、そこには「穂乃果のせいではない」というメンバーの気遣いがあるからです。
実際に絵里は、穂乃果ではなく、メンバー全員に責任があることを強調しています。
だからこそ、穂乃果はそれを受け取ることができないのです。
ラブライブの辞退とことりの留学の決定を受けて、
穂乃果は強い自責の念を抱き、徹底的な自己否定へと向かいました。
そうした方角へと進んでいた穂乃果にとっては、
μ'sのみんなの気持ちは、自分と対立する受け入れがたいものだったはずです。

「そうやって、全部自分のせいにするのは傲慢よ」
「でも!」 (12話)


絵里の言葉に対して咄嗟に出た「でも!」。
そこにCDを聞かなかった理由を見出すことができます。

けれども、13話で絵里の言葉を受けて、穂乃果は極端な自己否定を止めにします。
彼女がμ'sのメンバーから差し伸べられた手を払う理由はもうありません。
ゆえに、ここで初めて真姫の想いが詰まったCDに手を伸ばしたのではないでしょうか。
それは自己否定でどんどんμ'sから離れて行った穂乃果が、
μ'sのメンバーの気持ちを受け取って、戻っていくのを象徴する行為です。

穂乃果はこの場面で、知覚した自分の正直な気持ちを受け入れるだけでなく、
μ'sのみんなの気持ちも受け入れているということが、CDにより示されています。

また、穂乃果はここで押入れに仕舞っていた練習着を取り出します。

lovelive12.png

現実的に考えれば、ここで練習着に着替えた意味はほとんどないと言えます。
穂乃果はこの後、一人で自主練を行うわけではないのです。
穂乃果が練習着に着替えたのは、その必要があったからではなく、そうしたかったからに他なりません。
スクールアイドルに戻る固い決意はここにも見て取れます。
これは、12話でのことりの行動に対応するものです。

lovelive11.png

ことりは穂乃果に留学のことを伝えた後、
最後まで残しておいたステージ衣装を荷物の中に仕舞います。
彼女が衣装を最後まで仕舞わずにおいたのは、まだアイドルと留学との間で揺れていたからです。
しかし、穂乃果からの謝罪のメールを受けて、ことりの考えは一先ず固まります。
「衣装を仕舞う」動作はそれを表現していると考えられます。

穂乃果の「練習着を取り出す」動作は、「衣装を仕舞う」動作の真逆に当たります。
アイドルから離れていくことりに対して、穂乃果はアイドルへと戻っていく。
二人の対照的な状況が、動作の差異により上手く表現された場面だと思います。

まとめれば、これまでに自分の想いと向き合い、自己否定を止めた穂乃果は、
この場面でみんなの気持ちを受け止めて、前に進むことを決心します。


そしてこの後、海未とことりに正直に自分の考えを伝えて、九人のμ'sを取り戻すのです。
これが大まかな13話の流れでした。
それでは、こうした流れの中においてμ'sはどのような関係として現れているのでしょうか。
それに関しては次回、改めて論じていこうと思います。

 ⇒続き: 九人のμ'sへの帰着、新しい夢への出発 (ラブライブ!感想②)


テーマ:ラブライブ!
ジャンル:アニメ・コミック

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