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終わらない『ゆるゆり』の日常 (ゆるゆり♪♪:十二話感想)

2012.09.18 23:05|ゆるゆり
さて、来週は三期予告ですね、分かっています。

と、若干逃避気味なわけですが、今週も十二話について、
考えたことを語っていきましょう。

本当の最終回です。
タイトルは「さようなら主人公、また会う日まで」。
どことなく、「一旦終わり」であることを強調するようなものですね。

何だかんだで毎週感想記事を書いていましたが、
長いようで短いような三か月間だったと思います。
しっかり眺めてみると、色々なことが読み取り得るのだということが分かったため、
非常に楽しい三か月間でした。

さて、12話は大きく分けて二つの部分で構成されていました。
前半は、京子が蛇のおもちゃを持ってくる、intermission.1「天使の悪戯」、
後半は、これまでの話を踏まえた劇を全員で演じる話となっています。
観客席にあかねさんを始めとする姉妹ズもいたので、
まさに最終回というにふさわしい、全員出演の回となっています。

特に気に入ったシーンは、劇でちなつの絵が背景として出て来たときに、
あかねさんが衝撃を受けて固まっていたシーンでしょうか。


周りの観客も引いてはいるのですが、彼女たちは青くなっているのに対して、
あかねさんは一人だけ、顔に影を落としているんですよね。
どうやらちなつの絵は、赤座家の血に特に作用するようにできているようです。
あかりの家に泊まりにいった回(七巻、八巻)辺りで、
ちなつはあかねさんに苦手意識を持っていそうですが、
今回の一件で、あかねさんもちなつに苦手意識を持ったかも知れません。
胸はあつくなり、本はうすくなりますね。

さて、今回は『ゆるゆり♪♪』の最後を飾った、
上述の劇について、今までの話も踏まえながら考えていきたいと思います。
今後も『ゆるゆり』関連の記事はときどき書くでしょうが、
『ゆるゆり♪♪』に関しては一区切りなので、気合を入れていきます。

もしよろしければ、少しお付き合いいただけると幸いです。



○アニメ終盤における「二人の主人公」:あかりと京子の「きずな」

第一に指摘したいのは、12話の最後、カーテンコールの場面で、
あかりは京子にハイタッチをするということです。

ここは文字だけブログなので分かり辛いのですが、
カーテンコールのときに、一人だけ上から降りてくるあかりは、
着地後まず京子とハイタッチをしています。
見ていただければ分かるのですが、何てことのないシーンです。
しかし、私はここに意味を見出すことができるように思うのです。

結論から言いましょう。
私は、アニメが「あかりと京子のきずな」を終盤の裏のテーマとして、
描いていると読み取れるように思っています。
順序立てて、説明していきましょう。

最初に、あかりと京子の関係は、作中である程度の緊張を含むものです。
それは、あかりと京子の仲が悪いということではありません。
もちろん、当人たちは仲のいい幼馴染ですが、
それを見る我々にとっては、「主人公」という位置を巡って、
緊張のある関係に見えないこともないということです。

現にあかりの存在感の薄さが取り沙汰されるとき、
比較対象として用いられやすいのは京子以外にはありません。
しかも作中では京子が存在感のことであかりをいじることが多いため、
一層高まった緊張が二人の間には鎮座していると取れます。

しかしアニメ終盤においては、そのような緊張を孕んでいるように見える二人の間に、
「きずな」が描かれていると読めるように思います。


特に、11話において、京子はあかりを主人公とした話を書きました。
前回の感想記事でも書いたように、この話は、
「あかりがみんなに想われている」ということを京子が書いたことによって、
「あかりが京子にも想われている」ということを示しています。
いつもあかりのことを色々といじる京子ですが、
彼女の根底にはあかりへの想いがあるということです。

現在に帰ってきたあかりに対して、まず泣きながら向かっていく京子。
それを描いたところに、あかりへの想いは見出せると思います。

この京子への返答という意味が、12話のカーテンコールで、
あかりが京子にハイタッチしに行く場面には託されていると読めると思うのです。
上から降りてきて、まず京子にハイタッチをするあかり。
ここには、あかりの京子への想いを見出すことができます。

観客に対して一礼をする前に、京子だけと、あかりはハイタッチをするのです。
当然、二人の位置が偶然近かっただけとも取れるのですが、
結衣でもちなつでもなく、京子だったところに、私は意味を見出したいと思います。

11話では、現在に帰ってきたあかりに対して、まず京子が駆け寄り、
12話では、降りてきたあかりが、京子だけにハイタッチをするということ。


この二つの場面は同様に「二人のきずな」を端的に表しています。
そして、二つの場面は対照的でもあり、片や京子のあかりへの想いを表象し、
片やあかりの京子への想いを示すものです。
相互の想いによって、月並みな言い方ではありますが、「きずな」が素描されています。

先にも述べたように、あかりと京子は、
「主人公」をめぐって緊張関係にあると解されやすい二人です。
あかりの存在感が薄い分、京子が真の主人公のように見えるというのは、
原作でも時に提示される事実ですし、一期でも強調された事実でした。
そして、今回の12話でも、シンデレラを京子が演じ、
「特徴がないことが特徴妖精」をあかりが演じることで再確認されています。


しかし、アニメが二期の最後で描いたのは、
京子という真の主人公の影に隠れて、
不憫な想いをするあかりという、それぞれの姿ではありません。
「きずな」という紐帯によって繋がれた、「二人の主人公」の姿をこそ、
アニメは最後に描いたと言えるのではないでしょうか。

今回の話のタイトルは、「さようなら主人公、また会う日まで」です。

ここで言われている主人公は、私にはあかりでも京子でもなく、
背中合わせにタッグを組む「二人」であったように思われるのです。




○「劇中劇」という終わり方:「これまで」を振り返り「これから」を仄めかす

第二に指摘したいのは、最終話が「劇中劇」で終わるということです。

12話は、最後に「劇中劇」を持ってきています。
つまり、『ゆるゆり』という物語の中で、
さらに劇が行われる話を持ってきているということです。
全員で大いに改変された白雪姫を演じることが『ゆるゆり♪♪』の末尾でした。
このことが持つ意味について順番に論じたいと思います。

まず、劇中劇はこれまでを振り返らせるために挿入されたのだと思います。
というのも、劇中劇は『ゆるゆり♪♪』を特徴づけるものであるためです。
印象に残る回では、「劇中劇に相当するもの」が常に使われていました。

例えば、一話は「あかりの夢」から始まりました。
これは、あかりが無意識に作った劇であると言うことができます。
非常に『ゆるゆり』らしくない(原作サイドでは『がちゆり』と名付けられる)、
あかりがみんなに大人気になる劇中劇です。

また、6話は「ミラクるん」の劇中劇から始まりました。
京子がコムケのために作ったアニメーションです。
これも劇中劇に相当する制作物と言うことができます。

そして、同様に京子が脚本を書いた劇中劇と言えば、
11話の「SFチックな紙芝居」があります。
あかりが過去に戻ってしまうという劇中劇です。

このように、『ゆるゆり♪♪』においては、
劇中劇という形式が一つの特徴と言えるほどに多く使われていました。

そもそも冒頭の「アッカリーン」パートも、あかりが出ている裏に「カメラさん」がいて、
京子(たち)がそこで色々と糸を引いているように見える点では、
「小さな劇中劇」と捉えられるかも知れません。
劇中劇は、『ゆるゆり♪♪』の主要な一部なのです。
二期のOPが、垂幕の前に立つごらく部の面々に、
順番にスポットライトが当たっていくという、
劇を想起させるものであることは偶然ではないでしょう。
『ゆるゆり♪♪』は劇(劇中劇)のイメージを持ったアニメと言えます。

12話の後半が白雪姫の劇だったことは、
最後に『ゆるゆり♪♪』の要素である「劇中劇」を入れてきたことを示します。

これにより、視聴者はこれまでを振り返ることが可能となります。
形式的に劇に近い、前述の11話などを思い出すことができるのです。
最終話の「劇中劇」は、振り返ることを促す効果を持つと思います。

そして、その形式からしてこれまでを想起させる「劇中劇」とともに、
劇の内容もこれまでを振り返らせるようなものとなっていました。
1話の「あかりの夢」という劇中劇とは対照的に、
非常に『ゆるゆり』らしい内容の劇が演じられたのです。


トマト、綾乃に差し出されたプリンを櫻子が空気を読まずに食べる、
あかりのちなつ(仮)とのキスなど、
今一つ一つ例を枚挙していく暇はありませんが、
これまでの内容をふんだんに使った劇になっていたことは明らかです。

この内容を見ても、これまでを振り返らせることを意識していたのは分かるので、
最終話の「劇中劇」は、「振り返らせるツール」として使われたとまず言えます。


次に、これが最も強調したいことだったのですが、
「劇中劇」が最後を飾ったことにより、
「劇」自体は終わらず続いていくということを示したと考えられます。


12話はカーテンコールの最中で終わってしまいます。
具体的には爆発オチの直前に切られてしまうわけです。
劇中劇の終わりと、アニメの終わりがほぼ同時に訪れています。
このことによって、アニメが終わっても、
劇(『ゆるゆり』という物語)の中の日常は、
アニメ外で続いていくということが仄めかされています。

通常、劇中劇の後には、劇の中への引き戻しが行われます。
これは『ゆるゆり♪♪』中でも例外ではありませんでした。
1話では「あかりの夢」という劇中劇から、
旅館へ向かう電車の中という劇の領域に引き戻されます。
11話も、最終的に京子が紙芝居をめくっている劇中に引き戻されます。

しかし、12話だけ、劇中への引き戻しがありません。
劇中劇(カーテンコール)のまま終わってしまいます。

劇中劇の終わりとアニメの終わりが重ねられたからです。

これによって、アニメ内では「劇の終わり」は描かれなかったと言えます。
けれども、劇中劇が終わった後には、当然劇が来ると考えられるため、
アニメ外で「劇中の日常」は続いていると考える余地が生まれるのです。
劇中劇の終わりとアニメの終わりが重ねられたことで、
劇は終わらず、その日常は続いていく。
最後に劇中劇を持ってきたことで、このような効果が生まれます。

このことの説明を助けるものとして、「爆発オチ」があります。
12話の末尾は、そこまで描かれませんでしたが、明らかに爆発オチでした。

お姉ちゃんたち、うしろ、うしろー!

え?


爆発オチというのは、11話でも劇中劇の中で選択されたものでした。
京子の紙芝居の中で、先生の手を経たタイムマシンは爆発して、
ごらく部室が吹き飛び、物語は劇中劇から劇中に戻されます。
ここで爆発オチは、「劇中劇から劇中へと戻る契機」として用いられているのです。
それが、直後の12話でも使われているということ。
描かれなかったオチの後に、劇中の日常への回帰があることを示していると取れます。
そこで、『ゆるゆり』の日常は続いていく。

最後が「劇中劇」であり、その終わりとアニメの終わりが重なったことにより、
アニメの中で劇の終わりは描かれず、『ゆるゆり』の日常は、
この後も変わらず続いていくことが示されたのだと思います。


結論として、「劇中劇」は、
まず「これまでを振り返らせる」役割を担い、
次に「『ゆるゆり』の日常はこれからも続く」ことを示すきっかけになったと言えます。

「これまで」と「これから」を示す標識として、「劇中劇」があったのではないでしょうか。



以上です。
「劇中劇」のパートを中心に語ってみました。

他にも色々興味深い部分はありました。
例えば、あかりが蛇のおもちゃを踏んでしまった場面です。
踏まれた「ヘビさん」に思いを馳せていたことを説明するあかりを彩っていたのは、
やはりあの天使を表象するようなBGMでした。

5話辺りから、あのBGMはほとんど「あかりのテーマ」として使われていましたが、
今回、ある意味もっとも正しい使い方がされたように思うのです。


これまでは、あかりが不憫な目に遭う際によく使われていました。
それはそれでよかったのですが、それに対して、
今回は純粋にあかりの「天使性」を表すために、あのBGMが合せられていました。
まさしくBGMと表現する場面が、ぴったり符号していたように思います。
「天使としてのあかり」

また劇も細かいところまで見ると、ほっこりする場面は結構あって、
鏡を演じていた会長が、先生相手にむっとするところや、
ともこさんが「あかねちゃん」呼びするところや、
撫子はともかく、花子も「櫻子がにぶい」と気付いているところは、
何故か説明はし辛いのですが、何となく微笑ましく、印象に残ったシーンと言えます。

それでは、そろそろ締めに入ることにしましょう。

仮に、ここまで読んで下さった方がいるのだとしたら、
みなさまにとって、『ゆるゆり♪♪』という作品はどのようなものだったでしょうか。
当然いいアニメであったかという問いに対しては、両面の意見があるでしょうが、

私にとっては、原作の『ゆるゆり』という作品を改めて考える契機となり、
かつ特にオリジナルパートでは、『ゆるゆり♪♪』というアニメの『ゆるゆり』観や、
キャラクターの解釈を見出すことができたため、非常に興味深い作品でした。


アニメを見る中で、時にうなずき、時に描写に疑問を抱く中で、
『ゆるゆり』という作品自体と色々な面で対話することができたように思います。
その意味で、私にとってはかけがえのない作品でした。
最大限の感謝をここに表します。

ありがとうアニメ『ゆるゆり』、また会う日まで。
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テーマ:ゆるゆり
ジャンル:アニメ・コミック

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