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春香と澄の姉妹関係に見る春香の成長 (タチ『桜Trick (5)』)

2015.01.04 16:21|桜Trick
桜Trick (5) (まんがタイムKRコミックス)桜Trick (5) (まんがタイムKRコミックス)
(2014/12/25)
タチ

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今回は、先日第五巻が発売されました、『桜Trick』を考えていきます。
想えば、昨年の今頃はちょうどアニメの放送が始まった頃でしたね。
アニメは第三巻の途中、美月や理奈の卒業までの内容でしたが、
原作はその後、澄や理奈が本格的に春香たちの関係に絡み始めて、
作品の描く範囲が一層広がるところが、注目すべき点の一つだと思います。
原作でアニメの先を見てみても面白いのではないでしょうか。

さて、今回は第五巻の中でも、「春香と澄の姉妹関係」に注目します。
第四巻で澄の申出を契機に、二人は春香を姉とする姉妹関係を取り結びました。
この二人の関係は、この作品の中でどのようなものとして考えることができるでしょうか。
この記事ではこの問いについて考え、答えを出していきたいと思います。

まずは、二人が姉妹関係なった場面を今一度確認してみましょう。

「春香は澄のこと… みてくれてるのじゃ」
「え? そうかな… 友達ですもん!」
「は……春香」
「ん?」
たまにでいいので澄のお姉ちゃんになってくれませんか
「お姉ちゃん?」
「そ それはじゃなぁ 頭撫でてくれたりとか
 ぱふぱふとか そういう特別な関係というか…

――!! 優ちゃん以外の人と特別なこと…
 でもスミスミ会長は大切な友達だし… 友達が困ってるなら…
 きっと優ちゃんもそうするよ!

「わかった! 私 スミスミ会長のお姉ちゃんになりますよ」 (第4巻43-44頁)


これは、物語上の一つの「転」として読むことができます。
ここまでに描かれてきた春香と優の特別な関係に一石を投じるものとして、
春香と澄の姉妹関係は現れてきたと考えられるのです。
とりわけ、澄との関係は優に内密に結ばれているため、
後に特に美月に疑念を抱かせています(第5巻32頁等)。
ちょうど優が同時期に春香に秘密で理奈の相談に乗る(第4巻59頁から)のと対比的に、
春香と優の特別な関係とは別の、春香と澄の特別な関係が登場するのです。

しかし、春香と澄の関係は、このように「転」の意味を持つだけのものではないと思います。
つまり、この関係は、優との特別な関係を基に成長した春香が、
今度は自身との特別な関係を基に澄を成長させることを描いていると取れるのです。

実際に春香と姉妹関係を結ぶ直前の澄は、生徒会長として、
一人で皆を引っ張っていくことができない性質でした。

――なんてことじゃ 澄…
 美月先輩や理奈先輩のこと思い出してるのじゃ…
 澄にとってのお姉ちゃんたち…(中略)

――撫でられて思い出すなんて…
 もう澄はこの子たちを引っ張っていかなきゃならない立場なのに…
 ええい こんなところでへこたれちゃいかん!
 無理じゃ―― やっぱり無理じゃ――
 引っ張れないのじゃ―― (第4巻42頁)


こうした澄の姿は、かつての春香と重ねられるものです。
つまり、春香は中学までは優に頼りっぱなし(第1巻3頁)で、
特に「自分から実行委員なんてやらない」、
「そういうの苦手」(第1巻67頁)なタイプと優に評価されていました。
そんな春香が、体育祭に際しては優のために実行委員に立候補して、
応援団をやることを美月に直訴します(第1巻64頁から)。

この場面には、優との関係を基に変わった様を見ることができます。

ここで語られている春香の変化と同種のものを、
第4巻から第5巻にかけて澄も経験していると読むことができます。
すなわち、これまで美月たちに引っ張られてきて、
生徒会長として行為するのに心情的な無理があった(第4巻31頁から)澄が、
春香との特別な関係を助けに頑張って変わっていく。
そして澄は文化祭で、生徒会長としての大量の仕事をこなし、
春香に「妹」でなく「先輩」として認められることになります。

「私達はスミスミ会長が最後の文化祭なのに
 なかなか堪能できなそうで せめて
 ウチのクラスのプラネタリウムだけでもと思ってたんですけど…」
「そうじゃったのか… でも大丈夫じゃ
 澄は二年間生徒として文化祭を楽しめたから
 今年は会長の目線で楽しみたいのじゃ」

「澄が春香の妹でいられるのもあと少しじゃな」
――妹!?
ううん 今日のスミスミ会長は私の「先輩」です」 (第5巻114頁)


これは、これまでの頑張りの結果であり、生徒会長として成長した澄の姿に他なりません。
この姿は、実行委員としての頑張りを優や美月に認められた春香に重ねられるものです。

結論として、春香と澄が取り結ぶ姉妹関係というのは、
物語上の単なる「転」ではなくて、かつて優との特別な関係を基に変わることができた春香が、
自身との特別な関係を基に澄を変えていくことを描くためのものと読むことができます。

変えていく立場に転換して「お姉ちゃん」として振る舞う春香の姿に、
彼女がそうできる基礎を作った優との特別な関係を見出せます。



○関連記事

   楓が対峙するべき存在としての「ゆず」 (第3巻まで)

   キス以外に注目する『桜Trick』 (アニメ第一話)
   仲直りと告白の物語 (アニメ第二話)
   かしましい「肝試し」の裏には (アニメ第四話)
   文化祭に見える関係の変化と安定 (アニメ第六話)


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テーマ:桜Trick
ジャンル:アニメ・コミック

文化祭に見える関係の変化と安定 (桜Trick:第六話考察)

2014.02.20 17:30|桜Trick
桜Trick (2) (まんがタイムKRコミックス)桜Trick (2) (まんがタイムKRコミックス)
(2013/02/27)
タチ

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先日、アニメ『桜Trick』の第6話が放送されました。
早くもアニメの大体半分が終わってしまったということになります。
そこで今回は内容を振り返り、物語がどのように進んできたのかを確認してみたいと思います。
ちょうど文化祭の話は、作品の一つ目の山場と言っても過言ではないものです。
しずくとコトネ、楓とゆず、春香と優の三組にそれぞれ注目し、
第6話ではどのように各々の関係が描かれているのか、私なりにまとめてみます。



○『桜Trick』第六話:文化祭に見える関係の変化と安定


第一に、しずくとコトネの関係に注目してみましょう。
二人の関係については、特に文化祭前夜に深く描かれていました。
星空の下、二人きりで語り合う場面を引用してみます。
コトネは文化祭に対して積極的なしずくに違和感を覚えます。

「なーんか 無理してなぁい? この前の魔女とかもさ
 自分から言い出すなんて意外っていうか…」
「どういう意味?」
「しずくちゃんてこんなイメージだったから」
「私そんなにスカしてるようにみえてた!?」

「…それ当たってるかも 実は私の中学も泊まってよかったの
 私は輪の中に入っていけなくて 作業終わらなくても帰っちゃってた」
「じゃあどうして今回泊まったの?」
あなたのおかげです よ

「コトネがこういう行事楽しもうとすることが不思議で
 私も同じ事したら分かるかなって思ったの
 どうしてそこまで楽しもうとするの?
 コトネだって最初はそんなんじゃなかったじゃん」
「三年間って短いよ 大事にしなさいよって 姉に言われたことがきっかけかなぁ」
「私は三年間なんて長く感じるけどな…」
「でもでもー 好きな人といると自然とどんなことでも楽しくなるじゃない 私今楽しいもの!」
「! だったら私だって 今 楽しいよ 無理じゃないよ…」 (6話、2巻29-30ページ)


しずくのこうした変化は、肝試しの話でも示唆されていました。
すなわち、そのときの記事でも述べたように、
しずくは一度中止になった肝試しをそれでもやろうとしたのであり、
そこにはコトネのような「積極性」を見出すことができます。
こうした変化の意味を作中で明瞭に示したのが、上記の部分と言えます。
肝試しの仕掛け人として頑張る姿は、おそらく従来のしずくらしくはありません。
そうした「らしくない」行動がコトネの影響による彼女の変化であり、
決して「無理じゃない」ことが、本人の口から語られているのです。

『桜Trick』は春香が優に返していくことを決意するところから始まる物語であり、
「中学の頃からの変化」をテーマの一つにしているということは、以前の記事で述べた通りです。
文化祭の話では、しずくの「中学校の頃からの変化」の達成が描かれています。
肝試しの話と連続して描かれてきたしずくの成長は、ここで一つの完成を見るのです。
よって、二人の物語はここで一つのターニングポイントを迎えて、
次からはコトネの家に関わる別の課題に向き合っていくことになります。


第二に、楓とゆずの関係に注目してみましょう。
二人の関係については文化祭当日に記述がありました。
ふと楓がクラス委員をやっている理由が話題となった場面です。
ゆずは春香や楓に色々と煽られた結果、これについて思い出そうと躍起になります。

そっか 楓は昔から私に張り合ってきたんだよなぁ

「クラス委員やりたい人ー!」
「はーい」
「ハイハーイ」
「あら楓ちゃんも? じゃあジャンケンしてくれる?」

「ジャンケンぽん!」
「やったー! あたしの勝ち」
「じゃあクラス委員はゆずちゃんに決定ね」
「ぬうぅ 来年からは私がクラス委員の座を奪ってやる… おぼえておれ…」

「うーん 違う」
「じゃあ なんなの!?」
「その頃ゆずが大量のノートを運んでてさ
 前が見えなくて 階段から落ちて ケガしたんだよ」
「そんなことあったっけ?」
だからゆずにそんな痛い思いさせないように
 これからはこういう事は私が引き受けようと思ったんだ
「そうだったんだ…」 (6話、2巻39ページ)


ここで重要なのは、春香がこの話題のきっかけになっているということです。
ゆずは春香に言われなければ、楓が委員長をやる理由など気にも留めなかったでしょう。
ゆずと楓にも自分たちと同じような関係を勝手に期待している春香が、
ゆずが知らないことを問題視したからこそ、最終的に楓が理由を語ることになりました。
言うなれば、ゆずと楓の関係に一石を投じるものとして春香が現れているのです。

ここでの話の展開は、この後に繋がってくるものだと思います。
すなわち、春香と優を初めとする周囲の影響で、楓とゆずも少しずつ変わり始めるのです。
ゆずと楓は、これまで「特別な関係」にはほとんど縁のない人物として現れていました。
二人は初登場の時点で、腕組みすら普通じゃないという立場を表明しています。
そして、ゆずは文化祭でもこの立場を崩していません。
楓との間に、彼女の考える友達としての距離を依然取り続けています。

しかし、その距離のままであればずっと分からなかったであろう、
楓が委員長をやる理由は春香をきっかけとしてゆずに知られることになりました。
この話は象徴的で、二人は今後このように、周囲の影響を受けて少しずつ変容していきます。
以前の記事で、『桜Trick』は「特別な関係の外側」も描く作品であると述べましたが、
まさしくこの文化祭の話から、外側であった二人が変わっていくことになるのです。
とりわけ楓は明らかに影響を受けていきます。
よって、楓とゆずの関係も、ここを境に新章に突入すると言えます。


というわけで文化祭の話は、しずくとコトネ、楓とゆずの二組にとって、
一つのターニングポイントとなっています。
ここから、これまでとは少し異なる事柄を問題にしていくことになるのです。
ただその一方で、春香と優についてはいつも通りの日常を過ごしています。
文化祭の当日に、二人が仲直りする場面を引用してみましょう。

「本当にごめんね 春香」
「もう怒ってないからいいって」
「だって私が楽しい思いしてる間 春香はずっとモヤモヤしてたんでしょ?
 今だけ春香の好きにしていいよ」

え? 冗談なのかな? …なわけないよね

「じゃあ好きにしちゃう」

私と優ちゃんは体育館が明るくなるまでずっとキスしてた
バンド演奏はいつの間にか終わっていて 音なんて全然聴こえなかった
聴こえたのは 優ちゃんの鼓動と 吐息と
唇と唇から微かに漏れる声だけ (6話、2巻41-42ページ)


これはただの個人的な感想ですが、この後で二人の会話などが差し挟まれず、
春香の独白のままで文化祭の話の幕が引かれるというところがいいんですよね。
張りつめた空気を弛緩させないことで、いい余韻を残している気がします。

さて、ここで二人は仲直りするわけですが、ここまでの展開というのは、
「特別な関係」である二人であるからこその、いつも通りのものと言えます。
実際に第5話では、これに対応するよく似た流れで話が進行していました。
すなわち、春香が優へのサプライズも兼ねて美月を朗読劇に誘おうとしたとき、
優は春香が黙っていなくなっていたため怒ってしまいましたが、
このときも二人はやはりキスで仲直りをするのです。
文化祭の話と極めて似た流れを踏んでいることが分かります。
このことを鑑みると、しずくが三年間を楽しむために行動できるようになり、
ゆずが春香の問題提起で楓の気持ちを知ることになった一方で、
春香と優は文化祭で重大な局面を迎えているわけではありません。

彼女たちの関係の変化は、ここでは温存されています。
この事実が、他の二組との対比で結構目立っていると思います。

また「仲直り」と言えば、第2話のしずくたちの話を思い出せますが、そことの違いも顕著です。
すなわち、第2話の記事でも述べたように、しずくたちの場合は「仲直り」は「告白」を含むもので、
それによって関係が明らかに進展したと言えました。
しかし春香たちの場合、「仲直り」は文字通りの「仲直り」で、
それによって関係が進むわけではなく、元の関係に回帰するだけであったと言えます。

「特別な関係」はケンカによって動揺せず、十全に堅持されるのです。
この意味でも、春香と優の関係の安定が際立っています。

この安定が意味するものは、春香と優の関係が内発的には変化しがたいということです。
二人の「特別な関係」はそれだけ既に堅固なものになっていると考えられます。
よって、二人が関係を進展させるのならば、もっと決定的な、外発的な要因が必要です。
春香と優の関係については、そのようなことが示唆されていると言えるのではないでしょうか。



○関連記事

  キス以外に注目して見る『桜Trick』 (第1話)
  仲直りと告白の物語 (第2話)
  かしましい「肝試し」の裏には (第4話)


テーマ:桜Trick
ジャンル:アニメ・コミック

かしましい「肝試し」の裏には (桜Trick:第四話考察)

2014.02.06 17:00|桜Trick
アニメ「桜Trick」OPテーマ『Won(*3*)Chu KissMe!』/EDテーマ『Kiss(and)Love』アニメ「桜Trick」OPテーマ『Won(*3*)Chu KissMe!』/EDテーマ『Kiss(and)Love』
(2014/01/29)
SAKURA*TRICK【高山春香/園田優/野田コトネ/南しずく/池野楓/飯塚ゆず】(CV:戸松遥、井口裕香、相坂優歌、五十嵐裕美、渕上舞、戸田めぐみ)

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今回は、アニメ『桜Trick』第四話の中の、一つのミステリーに注目したいと思います。
そのミステリーというのは、「肝試し」の話でのしずくの反応のことです。
しずくはこの話の冒頭で、肝試しの雰囲気を作るのに明らかに一役買っています。
しかしそれにもかかわらず、春香たちが合流した後の彼女の言葉は次のようなものでした。

「肝試しは?」
肝試しなんて一言も言ってないよ 私」 (4話、1巻104ページ)


確かに、しずくは「肝試し」とは一言も言っていませんでした。
けれども、コトネのバッグに「髪の毛」が入っていたなどと言って、
肝試しの雰囲気を作った張本人の言葉としては、これは不可解に思えます。
何故しずくはここで、肝試しなどする気がなかったかのような態度を取っているのでしょう。
このことについて考えてみることで、肝試しの話の新たな一面が見えてきます。



○『桜Trick』第四話:かしましい「肝試し」の裏には


先の問いに対するヒントとなるのは、肝試しの計画が本当は頓挫していたということです。
春香たちが花火を楽しむ面々と合流した後の場面で、コトネは次のように述べています。

「本当は肝試しもやろうと思ってたんだけど
 打ち上げ花火しか準備できなくて 肝試しは来年やろうね」 (4話、1巻104ページ)


一度はやろうとはしたものの、肝試しは結局中止になったということが分かります。
楓がこの計画に加わっていたかは分かりませんが、加わっていたとしても、
中止になった時点で何かやらかすことは諦めたと考えられます。
というのも、楓は春香に「みんなで花火しよう」というメールを送っています。
仮に楓が、それでも肝試しをやろうとしていたのならば、雰囲気を出すためにも、
「肝試しにいい場所がある」などと言ったのではないかと思います。
もしかしたら、春香たちをいきなり肝試しに放り出すために言わなかったのかも知れません。
しかし、そうだとしたら広場で合流した後の楓の言葉が不自然です。

「花火しようってメールしたじゃん」 (4話、1巻104ページ)


肝試しを実施したにしては、楓の反応というのはあまりにも淡白です。
これを鑑みると、彼女は本当に花火だけをやるために来たと考えられます。
また、楓やコトネが肝試しをやる気がなかったことは、
春香たちが森を通る間に誰も驚かせに来なかったことからも分かります。

準備ができなかったなりに肝試しをやろうとしていたのならば、
この二人が特に何もしなかったことを説明できません。

そこで、作中の「肝試し」はしずくの独断で行われたと推測できます。
コトネや楓は、少なくとも計画が中止になった時点で、肝試しをやる気はなくしていたのです。
ただしずくだけが、それでも肝試しをやってやろうとして、改めて計画を練ったと考えられます。
ここまで作品をご覧になった方であれば分かると思いますが、
これは比較的真面目なしずくにしてはかなり意外な行動です。
何故しずくは、中止になった肝試しをやろうと考えたのでしょうか。
この答えは、物語の中で明示されています。

くじはコトネがせっかく作ってたのに
 使わないのもったいないと思って って何ニヤニヤしてんの」 (4話、1巻104ページ)


コトネの頑張りを無駄にしないために、雰囲気だけの肝試しを断行したのです。
春香が美月に応援団のことを直談判する場面からも分かるように(3話、1巻64ページ)、
コトネは色々な事情もあって、「一度きりの三年間」を特に大切に思っています。
肝試しを計画するに当たっても、おそらく全力で取り組もうとしていたのでしょう。
それを隣で見ていたのだとしたら、しずくの行動も理解できます。
結局コトネが準備できたのはくじだけだったとしても、何とか活かしてやりたかった。

こうした背景を鑑みると、しずくが春香たちの前で明らかに肝試しの雰囲気を作りながら、
合流後に「肝試しなんて一言も言ってない」と述べた理由もある程度は推察できます。
おそらくしずくは、自分は「くじを引かせただけ」ということにしたかったのです。
実際はしずくは、コトネのバッグに髪の毛が入っていたと語ったり、
「助けて」と書かれた楓からの手紙を指さしたりする箇所から分かるように、
演技や小道具を含めて、肝試しのお膳立てをしっかり行っていました。
はっきり言って、かなり本気で肝試しの雰囲気を作りにいっています。
しずくは何だか恥ずかしくて、このことをコトネに隠したかったのではないでしょうか。
コトネのことを想って自分が色々と頑張ったということを露見させないために、
まるで肝試しをやるつもりなどなかったかのような反応を見せたのだと思います。

自分はただくじを引かせただけで、みんなに肝試しだと思われてしまったことは誤算だった。
しずくはコトネの前で、こうしたポーズを取っていたというわけです。

肝試しの話は、美月も乱入してのドタバタ劇という印象が強いものだと思います。
しかし、そのかしましい肝試しの裏には、しずくのコトネへの想いがあったのです。
しずくの不可解な受け答えに注目すると、このように物語を捉え直すことができます。
『桜Trick』は、ざっと目を通すだけでも面白いのですが、
このように登場人物の想いに注目してもう一度じっくりと見てみると、
それぞれの微妙な心情を描いた側面が見えてくることもあります。
アニメをもう一度流してみて、あるいは原作を手に取ってみて、
今一度物語を味わってみると違った姿が見えてくるのではないでしょうか。



○関連記事

   キス以外に注目して見る『桜Trick』 (第1話)
   仲直りと告白の物語 (第2話)


テーマ:桜Trick
ジャンル:アニメ・コミック

仲直りと告白の物語 (桜Trick:第二話考察)

2014.01.20 17:00|桜Trick
桜Trick (1) (まんがタイムKRコミックス)桜Trick (1) (まんがタイムKRコミックス)
(2012/08/27)
タチ

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今回は、アニメ『桜Trick』二話の、コトネとしずくのケンカの話に注目します。
二人の擦れ違いは何故起こり、また解決に何を必要としたのか。
問題が解決した結果として、二人の関係はどこに帰着したのか。
こうした問いに答えていく中で、この物語が特に描いたものを考えていきます。

先に結論を言ってしまえば、それは二人の「仲直り」の物語でしたが、
同時に関係を進展させる「告白」の物語としても読めるものでもあったと思うのです。
アニメ二話の前半を振り返りながら、このことについて明らかにしていきます。



○『桜Trick』二話:仲直りと告白の物語


まず、コトネとしずくの擦れ違いが何故起きたのかというところから考えてみましょう。
直接の原因は、コトネが何気なく伝えたしずくへの感謝の言葉でしたが、
不和が長引いてしまったのは、しずくがそれ以降コトネと口を利かなかったからです。
それでは、しずくは何故自分の不満をコトネに直接伝えなかったのでしょう。
作中では、彼女の「シカト」は「逃げ」であったと強調されています。

「私だってシカトしまくって申し訳ないとか一応思ってるよ
 でも学校と近いから私の家が好きとかさ
 学校が近ければ誰の家でもいいのかよって感じじゃん
 居候させてくれれば誰にだってキスするんじゃない?」
――ほっぺにキスしてきたから怒ってるわけじゃないんだ
「けどこんなこと考えてるなんて誰にも言えるわけないし」
――私たち 今聞いちゃってるんだけどな…
「しずくちゃんはコトネちゃんとケンカしたままで本当にいいの…?
 嫌な事から逃げてるままじゃ状況は変わらないよ」 (2話、1巻38-39ページ)


ここの、優たちとのやり取りで「逃げ」であるとされていることが分かります。
そして、しずくを逃げさせている「嫌な事」とは、
コトネに自分が怒っている理由を伝えたときに、それを否定されないという可能性です。
つまり、「居候させてくれれば誰でもいいのではないか」という疑惑が、
コトネの返答により確信に変わってしまうことを恐れていると考えられます。

だからしずくは、怒っているポーズを取るだけで直接の異議申し立てをしません。
自分が想っているほどにはコトネが自分を想っていないということを、
はっきりと確定させてしまうことを恐れて「シカト」へと逃げているのです。

あまり明白にはなっていませんが、コトネにも似た事情があったと考えられます。
つまり、しずくに怒っている理由を確認すれば、彼女が自分にキスを許すほどには、
自分のことを想っているわけではないということが確定してしまうかも知れないのです。
それを鑑みて、強引にでも解決へ引っ張っていくことを避けた可能性があります。
コトネはこの話の中で飄々としているように見えますが、いつも通りではありませんでした。

「おはモニ!」
「わー!」
「あ コトネちゃん」
「びっくりしただろ!」
「ねえ コトネちゃん しずくちゃんがいつもと違うんだけど… 何かあったの?」
「んー? 昨日の夜ケンカしちゃって 怒ってるみたいなの てへ」
――なんでケンカしたらこういう反応になるの… (2話、1巻35ページ)


しずくほどでないにせよ、コトネもしずくと同じように普通でない反応を見せています。
ケンカが長引いた直接の原因はしずくの無視でしたが、
その中でコトネもしずくと似たような心情でいたことを、
この場面での「いつもと違う反応」に見出すことができるのではないでしょうか。
もちろん、これだけでそこまでは言うことはできないかも知れませんが、そうだとしても、
後に「しずくちゃんと話せなくなるのは嫌だしね」と述べている(2話、1巻41ページ)ことから、
下手したらしずくと話せなくなるかも知れないと考えていたことは推測できます。

コトネにとっても、しずくと向き合うことが勇気の要ることだったということは確かでしょう。

こうした状況下にあったため、不和の解消には「勇気」を必要としました。
とりわけ焦点となっていたのは長期化の直接の原因となっていたしずくの側の勇気です。

――でも もしかしたら 私と話がしたくて持ってったのかな
 本当は別の理由があって コトネも実は私と同じ事考えていて
 それを伝える為とか …… 違う

 話がしたいの 私だ (中略)

「わ 私は別にキスしたことに怒ってるんじゃない…
 コトネが私の家に居るのは学校が近いからなの?
 それともお母さんが優しいからなの?
 そんな理由で私と一緒に暮らしてるの?

 私の事なんてどーでもいいみたいじゃん!」 (2巻、1巻41ページ)


コトネが「話せなくなるのは嫌」との考えから勇気をもってきっかけを作ったことを受けて、
しずくは自分が「話がしたい」と思っているのを認めて、勇気を出して不満だった点を伝えます。
お互いに真意を確認しようとし、実際に本心を言葉にしたことで二人は仲直りに向かいます。

ただ重要なのは、ここで行われた「仲直り」の結果、
その言葉の表す通り、二人の関係が元に戻ったというわけではないことです。
二人の関係は元に戻るのではなく、元のところから更に先に進みます。
「ノリ」にしてしまえない「唇と唇」のキスを通して、特別な関係に踏み出すのです。

「つかまえた しずくちゃんがなんで怒ってたのかわかった
 しよっか 昨日の「やり直し」」
「待って! 別に学校が近いから私の家が好きってのも
 全然嬉しいから なかった事にしなくていい
 でも今日は 昨日と違う「やり直し」がいい
「唇と唇?」

「しずくちゃんがいるから狭くても好き
 あったかいとこもおばさんも好き
 しずくちゃんがいるからしずくちゃん家が好き」 (2話、1巻42-43ページ)


ただの「やり直し」でもって、元の鞘に収まるというわけではないことが分かります。
二人の関係が「仲直り」の結果、このように更に先に進んだのは、
仲直りの際の言葉が恋愛における「告白」のようなものでもあったからであると考えられます。
すなわち、自分の家を褒める文言に自分のことが入っていなかったことに対して、
「私の事なんてどーでもいいみたいじゃん!」と思ったことを伝えるということは、
はっきり言って、相手にも自分のことを想っていて欲しいということの表現に他なりません。
あなたが私のことを想っていないみたいで嫌だったと述べることが、
どうして好意の「告白」の言葉でなかったと言えるでしょうか。

ここで改めて物語の全体を眺めてみると、このケンカの話の流れというのは、
恋愛を題材にした物語で言う、「告白」の物語の流れに極めて近いことに気付きます。
勇気がなくて、相手に本心を伝えるのを先送りにする。
それでも伝えたいという気持ちを見つけて、相手に告白する。
その告白を契機として、二人の関係は一歩先に進む。
逡巡の後に告白して付き合い始めるというような物語と極めて似た路を辿っているのです。
こうした面を鑑みると二人の仲直りの物語は、「告白」の物語でもあったと言うことができます。

相手が寝ている間に、誤解を生む言い回しで、「頬への」キスとともに行われたという意味で、
コトネのしずくへの好意の表現は非常に中途半端とも言えるものでした。
それを二人で勇気を持ってやり直し、面と向かった明白な告白と「唇への」キスでもって、
特別な関係に至るというのが、仲直りの物語の別の側面であったのです。



○関連記事

  キス以外に注目して見る『桜Trick』 (第一話)


テーマ:桜Trick
ジャンル:アニメ・コミック

キス以外に注目して見る『桜Trick』 (桜Trick:第一話考察)

2014.01.13 17:09|桜Trick
桜Trick (1) (まんがタイムKRコミックス)桜Trick (1) (まんがタイムKRコミックス)
(2012/08/27)
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今回は、アニメ『桜Trick』について考えてみたいと思います。
特に注目するのは作中の「キス以外」の部分です。
色々なところで話題になっているように、「キス」が非常に印象的な作品ですが、
『桜Trick』はそればかりの作品というわけではありません。

一話の中に現れていた「三つの柱」とでも言うべき、キス以外の要素を提示していきます。
そのため今回は考察というより、紹介の色が強いかも知れません。
全文を通して、後の内容がはっきりと分かってしまう決定的なネタバレはないので、
アニメで初見の方は見所の紹介だと思って気楽に読んでいただければ幸いです。

また脚注には、その要素が後に実際に絡んできたと考えられる箇所を原作から例示しておきます。
既に原作をお持ちの方は、そのページを確認していただければよりよく分かると思います。

それではアニメ一話の内容を、キス以外の部分に注目して振り返ってみましょう。



○キス以外に注目して見る『桜Trick』:一話に見出す三本の柱


(1)春香の優に対する頑張り

まずは、春香と優の関係に注目してみたいと思います。
アニメ『桜Trick』は、高校入学前夜、春香が決意を新たにするところから始まります。

「明日から高校生かぁ… 私…ちゃんと友達できるかな…」

――優ちゃんに相談してみよっかな…
 ううん 優ちゃんに頼ってばっかじゃダメ!
 もう高校生になるんだから! (1話、1巻3ページ)


春香は何でも優に頼ることを止めて、高校生として頑張っていこうと考えるわけです。
この始まり方を見た時点では、春香は作中で優離れしていくのではないかとも予想できます。
優に頼り切りだったこれまでとは決別し、高校入学を機に新しい日常へと向かっていく。
そのような物語として、『桜Trick』の今後を期待することができるのです。

しかし、その予想は外れであると早々に告げられることになります。
優に頼るまいとして電話をかけるのを止めた春香は、
直後に優からの電話を受けて、そこで色々と世話を焼かれて、明らかに喜んでいるのです。
これまでのように優に頼らないという目標から導かれる、
優から相対的に離れるという選択肢はここで早くも否定されることになります。

けれどもこれで、春香の計画が頓挫したというわけではありません。
彼女は優から離れることはできませんが、別の方法で頼り切りの関係から脱け出ようとします。
入学式で校長が話している最中、春香は次のように考えます。

――もう高校生かぁ… きっとあっという間の三年間なんだろうな…

「あっ 寝てる…」

――私はまだまだ側にいたいんだよ 優ちゃん

 今でも覚えてる 初めて優ちゃんに会った日のこと
 優ちゃんに会うまで 私 一人だったんだよ
 だから今度は 私が返す番だね
 部活とか文化祭とか体育祭 修学旅行も 
 いっぱい いーっぱい 楽しもうね (1話、1巻14ページ)


これまで頼らせてくれて、支えてくれていた優に対して、お返しをしようと決意するのです。
ここが『桜Trick』という作品の、一つのポイントであると思います。
これまで優に世話になりっぱなしだったらしい春香が、
限りある高校三年間の中で如何に優に「お返ししていくか」。
そうした意味での「春香の優に対する頑張り」が、描かれていくものの一つなのです注1
優のことを考え、春香が色々と行動していく姿に注目して、視聴してみてはいかがでしょうか。
それは春香の成長の現れとして、また二人の関係の新しい形として提示されていきます。


(2)変わることとの対峙

次に、物語の舞台に注目してみたいと思います。
『桜Trick』は、三年後の廃校が決まっている「美里西高校」を舞台にしています。

我が校は三年後には東校と合併し 廃校となります
 よってみなさんは西高最後の一年生となるわけですが」 (1話、1巻14ページ)


やがてなくなってしまう学校で、春香たちは過ごしていくわけです。
この特殊な舞台設定が、不可避な変化を意識させるのに一役買っています。
卒業や環境の変化に伴い、友人との関係もいずれ変わっていってしまうかも知れない。
そういった寂しい雰囲気が、作品の中でふとした瞬間に思い出されていきます。
現に一話では、春香が空き教室で不安にかられています。

――思わず逃げ出しちゃった ここ空き教室?
 変わっちゃうのかなぁ… 私と優ちゃんも この教室みたいに
 前はちゃんとそこに在ったのに (1話、1巻16ページ)


このように、この学校で過ごす限り、来たるべき変化というものに対峙せざるを得ません。
やがて変わってしまう学校は、自分たちが変わってしまうことを意識させてしまうのです。
こうした「変わることとの対峙」が、作品の柱の一つであると思います注2
近い将来の変化を前にして、今どのように行動し、今をどう過ごしていくか。
例えば、春香と優は「特別」な関係になって歩んでいくことを選びました。
何てことのない日常の裏にある、この一種の寂寥感も作品の要素であると言えるでしょう。
先程は、春香が優に頼り切りの関係を変えていこうと決意していた点を取り上げましたが、
『桜Trick』には、それとは逆に変わることに立ち向かっていく側面もあるのです。


(3)特別な関係の外側

最後に、春香と優を取り巻く人物たちに注目してみたいと思います。
『桜Trick』は、春香と優の特別な関係が中心に据えられた作品ですが、
二人の関係は辞書通りの意味で「特別」であり、必ずしも「普通」ではないということが、
彼女たちの関係の外側の人物たちによって度々強調されています。

一話ではゆず(と楓)が、二人に対して自分の「普通」を提示していました。

「腕組みやなの?」
え… しないでしょフツー 高校生にもなって
「ゆずちゃんは 楓ちゃんを同性として意識しすぎ!」
「アンタらはお互いを異性だと思ってんだ?」 (1話、1巻12ページ)


このように、そもそも腕組みすらしないというような他者が近くに存在するのです。
春香たちの関係は、こうした外部の存在によって絶えず「特別」なものに定義され続けていきます。
親しい二人がキスをすることは、この作品の中の世界では当たり前という設定にはされていません。
こうして春香たちに対して提示される、「特別な関係の外側」に位置する人物たちこそ、
春香たちの関係の裏で描きこまれていくものであると思います注3
彼女たちがどのように春香と優に対して関わって、どのように変化していくか。
ゆずや楓を初めとする外部の人物たちの立ち回りや漸進的な変化が見所の一つになっています。
『桜Trick』を見るときは、「キスをしない面々」にも注目してみるといいかも知れません。



以上の三つが、『桜Trick』という物語には欠かせない要素なのではないかと思います。
もちろん、春香と優の「キス」は、これらを超える最大の注目点です。
当初、関係が変わっていくことを恐れて、「特別な関係になるために」行われたキスは、
次第に「特別な関係だから」行われるようになり、そこからさらに「特別な関係」とは何なのか、
二人は結局どのような関係なのかということが改めて問われていくことになります。
キスの意味と二人の関係の変容は、この作品に触れるなら必ず直面するテーマでしょう。
けれども今回は、敢えてそれ以外の部分に注目して一話を振り返ってみました。
春香の優に対する頑張り、変わることとの対峙、特別な関係の外側。
物語の冒頭で既に現れてきていた、こうした要素を心に留めておくと、
アニメ『桜Trick』がより魅力的な作品として見えてくるのではないかと思います。



 注1 例えば、春香は優がやりたがったことの実現のために奮闘します(1巻57-65ページ)。
 注2 特に、コトネとしずくは関係の変化と対峙せざるを得ません(3巻23-25ページ)。
 注3 楓の考え方は最も分かりやすく変化しています(1巻36ページ→2巻97ページ)。
    また三巻は、美月が卒業の前に気付き、変わっていく姿を描いています(3巻57-92ページ)。


テーマ:桜Trick
ジャンル:アニメ・コミック

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