スポンサーサイト

--.--.-- --:--|スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

あたたかいひだまりの方へ (菅野マナミ『ひまわりさん』)

2013.11.02 14:01|その他の漫画
ひまわりさん 4 (MFコミックス アライブシリーズ)ひまわりさん 4 (MFコミックス アライブシリーズ)
(2013/10/23)
菅野 マナミ

商品詳細を見る

幻想文学な夢を見たり、商店街をお散歩したり、
過去の情景に心を委ねたり、クリスマスに奔走したり――。
本と本屋に集まる人たちをめぐる、ハートフルストーリーをお楽しみください。

季節が秋から冬へ移ろいゆく中――
 ひまわり書房はいつでもあなたを待っています。(4巻帯より)


本日は菅野マナミさんの作品、『ひまわりさん 4』を紹介します。
古くて小さな本屋、ひまわり書房の店主であるひまわりさんと、
彼女のことが大好きな少女、まつりを中心とした人間関係を描くこの作品。
四巻は二人の関係を、改めて大事に提示して見せた話が多かった印象です。
今回はそのひまわりさんとまつりの関係に注目することで、
私なりに作品の魅力を明らかにしていきたいと思います。

既に読んでいる方は、一緒に振り返りながら作品を鑑賞してみましょう。
まだ読んでいない方は、少しでも作品の雰囲気を感じていってくだされば幸いです。



○『ひまわりさん』:あたたかいひだまりの方へ


(1)まつりからひまわりさんへの言葉

四巻では、前のひまわりさんやひまわりさんの兄の師匠・夕のような、
インパクトのある新しい人物は登場しませんでした。
その分改めて、まつりとひまわりさんの関係が大切に描かれたという印象です。
とりわけ、前向きで率直なまつりの言葉が、ひまわりさんに示唆を与える話が目立ちます。
まずはそうした、「まつりからひまわりさんに向けられた言葉」に注目してみましょう。

第29話・第30話では、夕が持ってきた「ひまわりさんへの」ラブレターが問題になります。
夕のからかいもあって、まつりはそれが今のひまわりさんへのものだと早とちりしますが、
実際はそれは今のひまわりさんの兄が書いた、前のひまわりさんへの恋文でした。
生前に手渡されることのなかった、想いの詰まった一葉。
ひまわりさんは少し悲しげに、その真実をまつりに語ります。

「それは 私宛てじゃないんだよ その手紙は届けられなかったんだ
 その人を想って書いたのに無意味になってしまうのは 少し悲しいな」
そんなことないですよ きっと意味のないことなんかじゃありません
 もしかしたら自分の気持ちを文章にすることで整理がついたのかもしれません
 わたしも…… 今回改めて再確認したのですよ」
「?」
「わたしもひまわりさんに手紙を書きます!」 (4巻82-84ページ)


ここでまつりは、非常に前向きにその手紙を捉え直しています。
手紙に書かれている想いに、自分の今のひまわりさんへの好意を重ねた上で、
手紙は無意味ではなかったと明るく言ってのけるのです。
そして、ひまわりさんへの手紙を自分でも書いてみることにします。
このまつりの言葉と行動を見て、ひまわりさんは穏やかな微笑みを浮かべます(84ページ)。
まつりはひまわりさんとは異なる解釈をして、
ひまわりさんの心の内にぼうっと小さな明かりを灯すのです。


続く他の話でも、同様の構図が現れています。
第32話では、安房直子さんの『きつねの窓』が話のタネになっていて、
書店に集うメンバーで実際に指を染めて「きつねの窓」を作ってみます。
けれどもただ一人、ひまわりさんだけはそれにあまり乗り気ではありません。
本来であれば、「きつねの窓に映るのは 会いたくてももう決して会えない人」。
しかし既に大人になってしまったひまわりさんには、それを見ることができません。

実際に窓を作って覗いてみて、何も見えなかったとき、
自分が取り残されたことをどうしようもなく知ることになる。

前のひまわりさんのことを想って、彼女は少し悲しい気持ちになっていました。
そこに、初めて『きつねの窓』を読んだまつりが現れます。

「読んだ感想はどうだった? きつねの窓」
「ほわわって感じですかね!」
「……そうか 全然わからん」
「窓を覗いて見えるのはもう会えない人だから それはすごく切ないです……
 もし もう ひまわりさんと会えないなんて想像したら…っ
 でも それは 会えないけど会いたいって思うくらい
 大好きってことだと思うのですよ
 大好きな人を想うと ほわわ――ってあたたかくなるでしょう?」(中略)

「………私 本当はずっと思い出すことが辛かったんだ
 指で窓を作ったって 現在しか見えない
 思い出す度に あの人はもういないのだと 私はひとりなのだと痛感する でも」
「何か見えましたか ひまわりさん」
「うん まつりが見えた」
「いぇ~い」
「だから なんだそれ」

「はああっ 冷たい風が! 秋ですねー! 中に入りましょう ひまわりさん!」

私はちょっとだけあたたかくなれたよ」 (4巻112-118ページ)


ここでまつりは、ひまわりさんの『きつねの窓』の解釈とは異なる解釈をしています。
すなわち、「もう会えない人」を、「それでも会いたい大好きな人」と捉え直すのです。
「もう会えない人」と言ったときの重い響きが、「大好きな人」と言ったときにはありません。
まつりの言葉を受けて、ひまわりさんは改めて前のひまわりさんを思い出します。
そのとき彼女が感じたのは、先述した取り残された悲しみではなく、
まつりの言ったような「ほわわ」としたあたたかさでした。

再びひまわりさんは、穏やかな微笑みを浮かべます(116ページ)。
ここでもまつりは、ひまわりさんの心の内に小さな光を灯すのです。

この二つのケースでは、まつりが「知らないこと」が極めて重要だと思います。
まつりは前のひまわりさんのことをあまり知りません。
だからこそ、ひまわりさんとは別の考え方を提示することができます。
前のひまわりさんを知っているひまわりさんが、どうしても悲しく捉えてしまうところを、
まつりは知らないことを武器に、前向きに解釈し直すことができるのです。

『きつねの窓』の感想に関しても、あまり本を読んだことのないまつりらしく、
拙くふわっとしたものですが、それゆえに率直で示唆に富むものになっています。
今のひまわりさんとは全然異なるまつりだからこそ、
ひまわりさんに明かりを灯すことができるのです。


(2)ひまわりさんからまつりへの言葉

ここまでは、まつりからひまわりさんに向けられた言葉に注目してきました。
けれども、『ひまわりさん』では逆方向の言葉も印象的です。
すなわち、ひまわりさんからまつりにかけられる言葉も、
まつりに勇気を与えるあたたかいものなのです。
今度は「ひまわりさんからまつりに向けられた言葉」に注目してみましょう。

まつりがひまわりさんから言葉を受け取る話として外せないのが第1話です。
まつりがひまわりさんに言葉を送る話を見ていると忘れそうになりますが、
まつりは単なる前向きで明るい少女というわけではありません。
自分がドジで何もできないことに落ち込み、悩んでしまうという一面も持っています。
以下の場面では、そうしたまつりが現れています。
そして、そういった彼女に対して言葉をかけるのがひまわりさんです。

「見返したかったんですよ …きっと 先生も親も
 わたしにはどうせ出来ないって決めつけて 信じてもらえないのが悔しくて」
「…だからウチでバイトを?」
「わたしにも出来ることあるって 言いたかったのね…
 でも結局 出来ないことから逃げて やるべきこと何も出来てない
 この間のテストで 数学の点数一桁取ってしまったし…っ」
「そんな告白されても反応に困るのだが
 …悔しいと思うのは 諦めていないということだ 共感したり時には励まされたり
 世の中にはたくさんの本があるけれど 自分のために書かれた物語は無いのだろう
 でも その人にはその人だけの物語が確かにある
 それを諦めていないのならきっと大丈夫だ」 (中略)

――わたしの為に書かれた本は無くても
 わたしの為に言葉をくれる人がいてくれるから… 頑張ろう (1巻10-17ページ)


ひまわりさんの言葉を受けて、まつりが立ち直っていることが分かります。
受験前にノイローゼに陥っていたときにも、
まつりを支えたのは「大丈夫」というひまわりさんの一言でした(2巻34ページ)。

一方で、まつりの言葉がひまわりさんの心に明かりを灯しているのに対し、
他方で、ひまわりさんの言葉がまつりの心に明かりを灯しているのです。

四巻でも、ひまわりさんがまつりを勇気付けていることが分かる話があります。
それが、まつりの学校での態度が問題となる第27話です。
まつりは意外にも学校では「おしとやか~」に過ごしているということが、
友人たちによってひまわりさんに知らされます。
何故猫を被るような真似をしているのか。
気になったひまわりさんはまつり本人に尋ねてみます。

「まつりは学校では猫被ってるんだってね」
「え… え――っ?」
「なんで?」
「昔から「なんでそんな失敗するの」っていうドジばかりして
 「もういいよ」って呆れられて 自分でもすっかり自信とか無くしちゃったんですね
 だから失敗して迷惑かけたくないって いつも考えちゃうんです
 そんな自分は嫌なんですけど…」
「ふーん… 私といる時はそんなことないのに?」
「そっ それはその… ………すっ 好きだからです!」
「どうした突然」
自分でも不思議なんですが 失敗して嫌われたらどうしようとかよりも
 ひまわりさんの役に立ちたいとか 
 一緒に居たら嬉しいとか そういう気持ちの方が大きいんです」 (4巻12-15ページ)


ここでは、まつりがひまわりさんから直接言葉を受け取ったわけではありません。
しかし、ひまわりさんの存在がまつりにパワーを与えていることは分かります。
ひまわりさんへの好意が、まつりに前を向かせる原動力になっています。
少し悲しげな表情を浮かべたひまわりさんを、まつりが微笑ませるように、
少しうつむき気味なまつりを、ひまわりさんが明るい笑顔にしているのです。



(3)あたたかいひだまりの方へ

結論として、まつりとひまわりさんの二人は、特に言葉を通して、
お互いの心の内に小さな明かりを灯していると言えます。
第32話での言葉を借りれば、二人はそうして「ちょっとだけあたたかくなる」のです。
こういった二人のやり取りが、四巻では再び見所になっていたと思います。
二人はお互いに言葉をかけ合いながら、あたたかいひだまりの方へ歩いていく。



スポンサーサイト

テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック

友達がいるから踏み出せた一歩 (乙ひより『お友達からはじめましょう。1』)

2013.08.03 16:27|その他の漫画
お友達からはじめましょう。 1巻 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)お友達からはじめましょう。 1巻 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
(2013/07/25)
乙 ひより

商品詳細を見る


高校生になったんだから、一緒に笑って、一緒に泣ける、友達が欲しい。

 この娘と 友達になりたい  (1巻帯)


乙ひよりさんの連載の単行本が、先日ついに発売されました。
タイトルから分かるように「友達」をテーマにした作品です。
不器用美人の姉・明(あきら)と、元運動バカの弟・遥(はるか)が、
友達と過ごすハイスクールライフをまったりと描いています。

特徴的なのは、明と遥の物語が並行して進んでいくという点です。
二人の物語はほとんど重なることなく独立していて、
それぞれ別のところで展開していきます。
学校での出来事をお互いに話すということはありますが、
二人の物語が交わるということは今のところありません。
いわば、一つの作品で二つの物語を読むことができるのです。
ガール・ミーツ・ガールの物語と、ボーイ・ミーツ・ボーイの物語。

今回は、この作品の紹介も兼ねて、一巻のテーマについて考えていきます。
上述した通り、明の物語と遥の物語はそれぞれ別々に進んでいきますが、
一巻の時点ではほとんど同じテーマを抱えていたように思います。
すなわち、「二人が過去と決着をつけて先に進んでいく」というテーマです。
明も遥も、高校での「お友達」との関わりを通して、一応は前進していくことになります。
具体的に作品の表現を見ながら、この部分を確認してみましょう。



○友達がいるから踏み出せた一歩:高校での新たな日々へ


まず、明の物語から確認していきます。
明は、かつて些細なことで友達から無視されたことが一つの傷となっていました。

突然無視された

「え ちょっ まき?」
「あーっ ほっときな! ほら まきの好きな佐藤がさ
 あんたのこと好きみたいなんだよ まー しっとだわなー」

変なの… 私は佐藤なんかより まきのほうがずっと好きなのに…
結局まきとは卒業まで話すことはなかった…

――うっとおしい
髪 切ろうかな……

高校はとにかくまきと違う学校ならどこでもよかった…
特に夢も希望もない春  (1巻7-10ページ)


まきとの関係の破綻のために明は傷つき、長かった髪も切ってしまいます。
そしてそのほの暗い気持ちのままで、高校へと進学することになるのです。
ここで注目すべきなのは、「短い髪」が明の過去の傷を象徴しているということです。
まきとの関係が壊れたから、明は自身の髪を切るに至りました。
ゆえに、彼女の短い髪は、間接的に彼女の過去を示していると言えます。

このように暗い気持ちで進学した明ですが、千鶴(ちづる)との出会いが転機になります。
常に自分らしく、はっきりとものを言う千鶴は、明にとって魅力的でした。
明はなかなか千鶴に話しかけられませんでしたが、期せずしてその機会を得ます。

「仲良くなりたいのよね?」
「そっ そう!」
「…… 断る!」

「なんで? 別にいいじゃない」
「だって こいつ隣にいたらチビが目立つじゃん!」
「まー ちづちゃん 心までちっちゃくなっちゃったのね…」
「うっ うっせー! 嫌なもんは嫌なんだ!!」

「ごめんね ちづちゃん口以外は悪い子じゃないんだけど…」
「あっ いや… 大丈夫です ちょっとショックだったけど…」

「はっきりしてていい…」
無視されるよりずっといい…  (1巻39-41ページ)


この後、明は千鶴や、彼女の友達であるあみと仲を深めていきます。
そして、彼女たちとの関わりの中で、明は過去から一歩踏み出すことになるのです。
明は家に帰ってから、遥との会話の中で以下のように述べています。

「めずらしーよなー アキが俺より帰り遅いの」
「うん ……」
「何かあった?」
「別に… 何もないけど… また髪伸ばそうかなー
「おっ 何? 好きな人でもできた?」

好きな人…

「なのかな~?」 (1巻63-64ページ)


ここで明が「髪伸ばそうかなー」と言っていることが重要です。
これは明が過去と一応の決着を付けて、先へ進み始めたことを暗示しています。
先述の通り、明は友人との関係が壊れたことを契機に髪を切りました。
それを改めて「伸ばそうかなー」と考えているということは、
過去のことを引きずって、ほの暗い気持ちでいる状態から抜け出て、
これからに向けて一歩踏み出したことを象徴していると読めます。
その一歩は、千鶴たちがいたからこそ踏み出せた一歩です。
以上のように、一巻では明が千鶴たちとの出会いを通して、
過去と一応は決別し、新しい日々を過ごし始めるまでを描いています。



次に、遥の物語を確認してみましょう。
遥はサッカー少年でしたが、事故により運動全般ができなくなってしまいます。

朝起きてサッカーして授業中寝て
昼休みサッカーして授業中寝て
放課後サッカーして帰って寝る日々

あの時までは…

それから
ドラマで何回か聞いたことあるあの言葉を聞いて

「リハビリすれば普段の生活に支障はありませんが残念ながら運動は…」

暇だから勉強しまくったら進学校に受かってしまった。 (1巻67-68ページ)


遥は全く気にしていないかのように振る舞いますが、
内心ではサッカーができなくなったことに大きなショックを受けていました。
その抑え込まれた気持ちは、再会したくなかったかつてのサッカー仲間、
隼(はやと)を前にしてある時ついに爆発します。

「お前さー なんなの? なんでいちいち俺の気分下げんの?」
「… …無理してるから…?」
「無理しちゃいけないのか?」
「体にわりーぞ」
「じゃあ どうすればいいんだ?
 俺は俺をひいた運転手を一生恨んでいくほど嫌な奴でもないし
 誰かのためにってマネージャーやるほどいい奴じゃない…」

お前なんでここにいんの? お前さえいなければ
 何も思い出さずに高校生活がおくれるはずだったのに…

なんでいんだよ…

「そうやって また俺をさけるのか…?」
「は?」
「俺は… お前しか友達がいなかったのに…」 (1巻91-94ページ)


ここで遥は、サッカーに対する複雑な気持ちを全てぶちまけています。
その結果、隼には会いたくなかったということまで本人にぶつけます。
この遥の壮絶な内心の吐露に対して、隼は率直な告白で応えました。
すなわち隼も、遥が離れていくことで負った自身の傷を彼に見せるのです。
この「とてつもなく恥ずかしい青春ごっこ」(96ページ)は、
何かを解決したわけではありませんが、遥の気持ちをかなり軽くしました。

結局なんにも解決してねーけど
色々ぶちまけたせいか なかなかスッキリした気分だ…

…近所のガキにでもやるかな…」 (1巻99ページ)


ここで遥は自分のサッカーボールを、「近所のガキにでもやるかな」と考えています。
これまでサッカーから目を背けながらも、そこから脱却できてはいなかった遥が、
ボールを誰かに譲ることを考えているこの場面は示唆的です。

遥は隼との告白合戦を通して、過去に一応の決着を付けたと考えられます。
実際に遥はこの後、隼とともに康太郎の調理部に参加することにします。
高校での新しい友達と、経験したことのない新しい活動を始めていくわけです。
以上のように、一巻では遥が隼との関わりを通して、
過去と一応は決別し、新しい日々を過ごし始めるまでが描かれてます。



結論として、明の物語にしても遥の物語にしても、
一巻では二人が過去と一応の決着を付け、一歩踏み出すまでを描いています。
言うまでもなくその一歩は、「友達がいるから踏み出せた一歩」です。
特に明の「また髪伸ばそうかな」と、遥の「近所のガキにでもやるかな」が、
それぞれ一歩踏み出した事実を象徴的に伝えているように思います。

乙ひよりさんの柔らかい筆致、穏やかな雰囲気で描かれていく、友達との物語。
一歩踏み出した二人がこれからどこへ向かうのか、今から続きが楽しみです。


テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック

紡がれていく「三人」という関係 (華々つぼみ『放課後アトリエといろ』)

2013.06.29 15:33|その他の漫画
放課後アトリエといろ -4 (角川コミックス)放課後アトリエといろ -4 (角川コミックス)
(2013/05/25)
華々 つぼみ

商品詳細を見る


見ていて羨ましくなる 「可愛さ」の結晶!! (1巻帯)


今回は、華々つぼみさんの作品を紹介したいと思います。
結構ボケボケな寧々(ねね)と、しっかり者な香(かおり)を中心として、
二人の所属する美術部での日々をほんわかと描いていく本作。
その最大の特長は、「一人で」よりも「二人で」が重視されていることです。
「寧々」だけでなく、「寧々と香」という風に、登場人物の「関係」が凄く大切にされています。
「一人でも可愛い、けど二人だともっと可愛い」。
そのような文句がぴったりと当てはまる作品ではないでしょうか。

この作品の四巻が先日発売されましたので、華々つぼみさんの作品を語ってみます。
同じく華々つぼみさんの手による『コドクの中のワタシ』の話も交えていきますので、
もしよろしければ少しの間お付き合いください。



○紡がれる「三人」という関係:「二人」でも「三角関係」でもない「三人」


まず、個人的には白眉だったと考える、四巻のとある部分を引用します。
寧々と香の同輩である、すみれが級友に唆されて、
文化祭の「ミスメイドコンテスト」に立候補する場面です。

「ねえ華村さんが遊園地好きって知ってた?」
「なにそれっ 知らない!! だいたいなんで香のこと!?」

――よしっ

「このコンテストの優勝賞品…なんと遊園地のペアチケットなんだよっ!!」
「え!?」

――か、香と二人で遊園地…
 あ だめだめ 寧々がいるんだし 三人じゃないと
 そうだ寧々の分は三人で出し合って… そうすれば (4巻42-43ページ)


すみれは香の中学のときの同級生で、昔から香のことが大好きだったのですが、
その彼女が香との二人よりも、寧々も含めた三人を選び取っています。
これは一巻の時点では考えられなかった選択です。
実際、初登場時においては、すみれは香の傍にいる寧々をほとんど敵視していました。

「あ…あの この人は…」
「あ えっと 私の中学のときの同級生 同じ写真部だった」
「葛城すみれ …よろしく」

「ねえ この子だれ」
「え」
「入学式の日からいつも一緒にお昼食べたり
 一緒に帰ってるこの子は誰って聞いてんの」

――なんで知ってるの!? (1巻152ページ)


このように、香の傍にいる寧々に対してにべもない態度を取っていたのです。
当初、香と寧々とすみれの関係は、香を真ん中とした「三角関係」だったと言えます。
それが、同じ日々を過ごした末に、最初の引用のように「三人」を選ぶまでになる。
そこには、「三角関係」から「三人」への、明らかな進展を見出せます。

私は「三角関係」から「三人」へという、この変化こそ、
『放課後アトリエといろ』の見所の一つであると思います。
通常、「三角関係」は対立を含む不安定な関係と規定され、
「二人」になることが終着点に選ばれることが多い気がしますが、
この作品はそうしないで、それが「三人」になっていく様を描くのです。

そしてここに現れる「三人」という関係が、とても魅力的に描かれています。
香と寧々とすみれにせよ、成と藤乃と静にせよ。

この「三人」という関係は、『コドクの中のワタシ』の中にも見出せます。

コドクの中のワタシ (1) (まんがタイムKRコミックス)コドクの中のワタシ (1) (まんがタイムKRコミックス)
(2013/05/27)
華々 つぼみ

商品詳細を見る


これは、宇宙人や吸血鬼、天使やエスパーやケモノっ娘など、
一癖も二癖もある生徒たちを集めた教室に、
極めて普通な高校生・真由が放り込まれるところから始まる物語です。
そこで真由は、特に宇宙人であるぐれ子に気に入られるのですが、
ある日、ぐれ子が人間の身体に寄生していたことが明らかになります。
その、ぐれ子の宿主である少女、麗華は真由に次のように語ります。

「わ 私はぐれ子さんに出会うまで、外に出るどころか
 歩くことさえままなりませんでした…
 そんな私を救ってくれたのが…ぐれ子さんなんです。
 私の命の恩人… 神様……
 私は面と向かって会うことすらかなわない憧れの人なのに
 それをあなたは毎日毎日ベタベタと……」(中略)

「けれど毎日ぐれ子さんと意識を共有して、
 真由さんを見ていて き 気づいたんです……」
――ちっ 近っ…
「どうせ叶わぬ願いならいっそ… いっそのこと…」
――私、もうだめかも…っ
真由さんの事を すっすす 好きになってしまおうと!!」 (1巻106-107ページ)


麗華は、自身の憧れであるぐれ子に近づいていく真由に対抗すると見せかけて、
彼女のことを何故か好きになってしまう方向に行くのです。
ここでも、ぐれ子を中心にした典型的な「三角関係」ではなくて、
真由とぐれ子と麗華という、ちょっと不思議な「三人」の関係に至っているのが分かります。
この三人の関係は、二巻でも面白い部分ではないかと思います。

さて、色々と述べてきましたが、『放課後アトリエといろ』にせよ、
『コドクの中のワタシ』にせよ、「三人」という関係だけが美点であるというわけではありません。
例えば先述したように、「二人」の関係も作品の特長と言えるでしょう。
しかし、「三人」という関係もそれに負けないぐらい、作中で際立っているように感じます。

「二人」でも「三角関係」でもない、「三人」という関係。

もし既に作品をお持ちの方や、購入した方がいらっしゃったら、
そこに注目して今一度読んでみると、新たな作品の魅力を発見できるように思います。
ここに来て『放課後アトリエといろ』の四巻の表紙は、楽しそうな「三人」の姿なのです。


テーマ:4コマ漫画
ジャンル:アニメ・コミック

楓が対峙するべき存在としての「ゆず」 (タチ『桜Trick②』)

2013.03.03 20:38|その他の漫画
桜Trick (2) (まんがタイムKRコミックス)桜Trick (2) (まんがタイムKRコミックス)
(2013/02/27)
タチ

商品詳細を見る


昨年より何かと話題の『桜Trick』の二巻が発売されました!
読んで改めて思ったのは、この作品がほんわかした空気を醸しながらも、
それぞれの「関係の深化」をしっかり描いているということです。
こういった変化が明確な作品は、四コマだと相対的に珍しい気がします。

今回は、作中で変化していく関係の中でも、特に「楓とゆずの関係」に着目してみたいと思います。
『桜Trick』の中ではおそらく一番ライトな関係である二人ですが、
一巻から二巻にかけて、確かに関係の転換を見出すことができます。
私が一読したとき、何だかんだで一番印象に残ったのはその二人のことでした。

そこで、二人に関して私のTwitterでの感想を基に、以下にまとめていきます。
2月27日に書き込んだ内容です。
長めになった一連のツイートを、新たな試みとして、ちょっとまとめ直してみます。
基本的には自分のツイートを加筆しつつ引用していきます。
内容は二巻時点までです。



続きを読む >>

テーマ:桜Trick
ジャンル:アニメ・コミック

プロフィール

天秤

Author:天秤
天秤と申します。
アニメや漫画など、好きなものについて考えたことを書き込みます。
よろしくお願いいたします。

カレンダー

03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -

カテゴリ

最新記事

最近のつぶやき

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

アクセスカウンター

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

RSSリンクの表示

リンク

QRコード

QR

  • ページトップへ
  • ホームへ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。